月の王宮(おうきゅう)。帝(みかど)を前に、月の将来(しょうらい)を決める御前会議(ごぜんかいぎ)が開かれていた。あの、かぐや姫(ひめ)もそこにいた。まず、議長(ぎちょう)が口火(くちび)を切って、「今や、月を見上げる子供たちが激減(げきげん)している。何とかせねば、我々(われわれ)の存在(そんざい)も危(あや)うくなる。子供の関心(かんしん)を月に向(む)けさせる手立(てだ)てを考えていただきたい」
「それなら…」ひとりの大臣(だいじん)が口を開いた。「新しいかぐや姫を送(おく)り込めばいい」
「それはどうでしょう」別の大臣が異論(いろん)を唱(とな)えた。「今の日本に、かぐや姫を宿(やど)すことのできる太(ふと)い竹(たけ)がどれだけあるか。それに、人間に見つけてもらわなければ何にもならない」
議長はかぐや姫に意見(いけん)を求(もと)めた。かぐや姫は哀(かな)しげな顔で、「残念(ざんねん)ながら、かぐや姫を大切(たいせつ)に育(そだ)てることのできる人間はいないでしょう。人間の心は欲望(よくぼう)に満(み)ちています」
「ならば、我々もそれに従(したが)おう」急進的(きゅうしんてき)な議員(ぎいん)が発言(はつげん)した。「子供たちに欲望を植(う)え付けてやるのです。夢(ゆめ)よりも欲望の力のほうが、エネルギー量(りょう)は桁違(けたちが)いに大きくなる」
「でも、どうやって」議長は先を促(うなが)した。
「簡単(かんたん)なことです。人間の可愛(かわい)い娘(むすめ)たちを集(あつ)めて、アイドルグループを作るのです。そうすれば、人間たちは群(むら)がってくる。我々は労(ろう)せずして、欲望を手にすることが可能(かのう)です」
「私は反対(はんたい)です」かぐや姫が言った。「そんなことをしたら、人間は滅(ほろ)んでしまう」
議員はさらにつけ加えた。「この役目(やくめ)は、かぐや姫にお願(ねが)いしたい」
「私が?」かぐや姫は一瞬(いっしゅん)考え、「分かりました。でも、私は人間を信じたいです」
<つぶやき>子供の頃の夢、いつから忘れてしまうのでしょう。いつまでも忘れないで。
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