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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

改めてデスティネーション・マネジメントを考える

2017-12-09 20:16:29 | 大学公開講座
 これまで3度にわたってデスティネーション・マネジメント(DM)について講義を受けてきたが、今一つモヤモヤとしたところがあった。今回、西山教授の講義を受け、そこのところが少しは氷解した思いである。 

 12月7日(木)夜、北大観光学高等教育センター(CATS)が主催する「デスティネーション・マネジメントと地域のこれから」と題する公開講座の第4講があった。
 今回の講師は、観光学高等教育センターのセンター長を務める西山徳明教授「北海道大学の観光創造学とデスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション(DMO)」と題して講義された。

                  

 実は、このシリーズの最初の講義をする予定だったのが西山教授だった。というのも、西山教授の講義が、センター長としてこのシリーズ全体の趣旨を説明することになっていたようなのだ。ところが、西山教授の都合により、第4回目での講義となったしまったということだ。
 
 西山教授の講義は明解だった。
 これまでの日本では、「旅行は観光業界(旅行業・運輸業・宿泊業)つくるもの」という常識がまかり通り、観光業界と観光地域は支配・被支配の関係にあったと断じた。
 典型的な例としては、旅行会社がコースを設定し、他社とダンピング競争を展開するが、その際に旅行会社は観光地域にあるホテル・旅館、あるいは観光施設に対して、徹底的にダンピングを強いていたのが実態だった。(観光業界の宿泊業とは大手のホテルを指し、観光地域にある地元資本のホテル・旅館を指すのではない)

 そうしたこれまでの関係を、これからの日本では、観光地域は自らをDestination=観光目的地と据える戦略的視点からDMOを経営の中心とするように整備すべき、というのがDMOを推進する側の主張である。
 そのDMOの役割であるが、西山氏によると次の3点があるという。
 ① 官民協働・相互尊重の理念に基づき、地域における観光開発の公益性を宣言する将来ビジョンを描き、経営の継続性を担保するマスタープランをつくる。
 ② コミュニティ・行政とともに自律的な観光開発を実践する。
 ③ 観光に関する地域の利益を代表し、外部のステークホルダー(外部資本や観光業界)との関係を調整する。
 誤解を恐れずに私流に翻訳すれば、これまでの観光地域は、観光業界の要求に応えることに精一杯だったが、これからは地域自らが地域の発展のために、官民が協働して組織する自律的な組織づくりを図っていくべきである、という主張と受け止めた。

 ここまで聞いていて、私は最近道内の市町村において、観光協会などが事務局長職を公募している例を聞くことが多くなっていることに気が付いた。あるいは、この例もDMOを意識した人選なのかな?と思ったのだが…。

            

 西山氏は現在の日本においてDMO的な動きを見せる観光地として「白川郷合掌造り保存財団」の名を挙げた。白川郷では、自らの地域の魅力を発信するだけでなく、その保存・維持のために財政的な裏付けも含めて官民挙げて取り組んでいるということだ。
 また、沖縄・竹富島においても地域住民の中にそうした芽が芽生えつつあるとした。

 さらに、北大においては地域にDMOの動きを加速させるために「デスティネーション・マネージャー育成のための履修証明プログラム」を今年度スタートさせたそうだ。
 これまでの講義で旅の姿が変わりつつあることについて各講師が触れてくれたが、そうした旅人を受け入れる地域も少しずつ変わっていくのかもしれない…。