田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

先住民国際シンポジウム

2017-12-02 22:51:29 | 講演・講義・フォーラム等
  大切なレポートを失念していた。私が知るかぎり(乏しい知識だが)世界中で最も先住民を敬い、先住民に対する施策が充実している国はニュージーランドではないだろうか?ニュージーランドの先住民マオリの人たちのお話を聴いた。

               

 11月25日(土)午後、参加申し込みをしていた「先住民国際シンポジウム」の入場券がなんと前日になって届いた。他に予定していたことがあったが、急遽変更して参加することにした。主催は、内閣官房アイヌ総合政策室、会場はSTVホールだった。

 シンポジウムのテーマは、「アイヌ文化復興に向けて ~ニュージーランドから学ぶこと~」というテーマで、2020年に白老町にオープンが予定されている「民族共生象徴空間」の開館に合わせてアイヌ文化の復興を図るために開催されたようだ。

 プログラムは、第1部がマオリの方とアイヌの方が登壇したパネルディスカッション、第2部が「先住民族文化の相互交流」という構成だった。
 パネルディスカッションはなかなか興味深いものだった。話題になったのは「言葉」である。マオリの登壇者の一人が語った「言葉を失うことは、文化を失うことだ」という言葉に象徴されるように、先住民の言葉をどう「復興」させるのかが話題となった。
 ニュージーランドにおいてもけっして理想的な状況にあるのではなく、現在マオリ語の話者は5%だという。(これは全マリオ族に対しての割合?)そこで、マオリ語で教育できる学校を増やそうとしていること、そしてマオリ族がマリオ語で日常生活ができるようにする社会を目指しているという。

               

 私の体験で恐縮だが、3年前ニュージーランドを旅した時、ホテルでテレビをつけるとマリオ語オンリーのチャンネルがあったことを記憶している。
 また、その旅の際、私は積極的に現地の博物館に足を運んだのだが、どの博物館でも入館した直後にマオリに関する展示が占めていたことである。さらには、博物館スタッフのユニフォームが伝統的なマオリの文様をデザインしたものだったことが印象的だった。
 さらには、ラグビーのニュージーランド代表のオールブラックスが試合前にマオリ族の伝統的なダンスで自分たちを鼓舞するシーンは有名である。
 ことほど左様に、ニュージーランドでは先住民族マオリに対する施策を充実させているが、現実にはまだまだ問題も抱えているようだ。
 パネルディスカッションでは触れられなかったが、やはりマオリの人たちの多くは低所得階層に属しているという。事実、私が旅した時にもオークランドの街でホームレスのような風体をしていたのはマオリの方がほとんどのように見えた。
 まだまだ、ニュージーランドにおいてもマオリに対する教育や保護政策が必要ということかもしれない。

 一方、アイヌの方はどうだろう?
 自らアイヌ民族であり、北大でアイヌ文化を研究する北原准教授がアイヌの現状を語った。
 北原氏は、アイヌから意図的にアイヌ語が奪われていった歴史に触れ、アイヌ語が消滅する危機を訴えた。そして、アイヌ語をまだ記憶している年長者から教授を受けて、それを維持・普及するための研究者の育成が急務であると訴えた。
 さらには、公用語、公教育への導入、公的機関での使用、文化の商業利用に対する配慮が必要とした。

 先住民に対する施策が最も進んでいると思われるニュージーランドにおいてもさまざまな課題を抱えながら理想に向かっているということだから、北海道の先住民族であるアイヌの人たちへの施策も一朝一夕にというわけにはいかないかもしれない。しかし、アイフ文化復興に関するナショナルセンターとしての「民族共生象徴空間」のオープンは一つの大きなキッカケとなることは間違いないように思う。

               
               ※ シンポの最後に、マオリとアイヌの人たちが民族に伝わる文化をそれぞれ披露した。

 それにしても国際会議における同時通訳は慣れない者にとっては、なかなか話される内容を理解するのに苦労を伴うものである。今回もマオリの方々が話された内容のどの程度理解できたのか、少々不安である。