ヒトリシズカのつぶやき特論

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ガンやリュウマチなどを画像診断する医療用診断装置を開発している話を伺いました

2012年11月22日 | 汗をかく実務者
 ガンやリュウマチなどの人体の軟組織の画像診断ができる医療用の診断装置を開発しているお話を伺いました。

 東北大学多元物質科学研究所教授の百生(ももせ)敦さんとコニカミノルタエムジー(東京都日野市)は、位相型X線撮像装置のプロトタイプを医療向けの画像診断装置として開発し、医療機関と臨床研究を始めていると解説しました。


 
 この位相型X線撮像装置の開発は、文部科学省系の独立行政法人である科学技術振興機構(JST)が推進する先端計測分析技術・機器開発プログラムの支援対象の一つとして、位相型X線撮像装置の開発が支援を受けています。

 位相型X線撮像装置は、X線が物質を透過した時に、約1万分の1と微細な角度で屈折する現象を利用するものです。「従来のX線透過画像は、ごくわずかな屈折を無視して、人体の骨などを観察してきましたが、軟骨などの軟組織が観察できるようになると、乳ガン診断などが可能になる」と、百生さんは説明します。



 現行のNMR(核磁気共鳴)装置に比べて、10分のi1程度安い医療用計測機器の実用化を目指す計画だそうです。

 位相型X線撮像装置の開発・実用化は、JSTが推進する先端計測分析技術・機器開発プログラムの要素技術開発タイプ、機器開発タイプにそれぞれ継続して採択され、現在はプロトタイプ実証・実用化タイプ(2010年~2013年)に引き継がれて、開発・実用化が進められています。

 コニカミノルタエムジー開発本部の画像応用開発チームが開発したプロトタイプを利用し、2012年から埼玉医科大学教授の田中淳司さんのチームが関節リウマチ診断向けに臨床試験を開始しているそうです。従来のX線の透過画像診断では識別できなかった関節部の軟骨が画像診断できるようになった成果でそうです。さらに、今後は名古屋医療センターが乳ガンの画像診断の臨床研究を始める予定だそうです。

 位相型X線撮像装置は連続X線を照射し、物質を透過したX線の微細な屈折を計測する仕組みであるために、微細な間隔の格子を利用する仕組みがポイントになるそうです。格子は、微細な間隔に、X線を通さない物質を配置したもので、

 今回はケイ素(シリコン)結晶の上に、半導体デバイスで使うレジストを塗布し、すだれ状のマスクをかけて露光し、すだれ状の溝を作製しています。この細長い溝に、金(Au)をメッキし、すだれ状の溝を金で埋めています。金はX線を透過させない物質だからです。この結果、X線を格子に照射すると、格子のケイ素部分を透過した格子状の並行X線(位相がそろっている)が観察対象に照射されます。観察対象を透過し、微小に屈折した並行X線を、別の格子を透過させると、モアレ現象によって屈折が強調されます。このモアレ現象を起こたX線を、FPD(Flat Panel Detector、平面型画像検出器)によって、入射したX線を電子に変換し、画像として可視化します。



 開発した位相型X線撮像装置は3種類の画像を観察できる(得られた観察画像は画像処理されています)。第一番目は従来のX線透過画像に相当する吸収画像、二番目は屈折したX線のモアレ現象を利用した微分位相画像、三番目はコンプトン散乱を観察する散乱画像です。散乱画像は、線維組織などを観察できる利点があるとのことです。

 コニカミノルタエムジーは「2014年には医療機器として、薬事申請する予定」だそうです。