中藤の姿が見えなくなったとき、石崎は(おや?)と思った。
三沢の毒気が一瞬消えたように感じたのだ。
くるっとこちらに振り返り
「うふふ。どんなパーティか気になる?でもマー君には無縁な世界でしょうから教えな~い♪」
さっきの感じは気のせいだったのか・・・相変らず軽いノリの男だ。
「こほん」
ひとつ咳払いをして
「ところで、私はこれから何をすればいいんです?それにあなたは一体何者なんですか?」
「・・・・さっきの。」
「?」
「息子さんのはなし・・・」
「あ、ああ・・・」
ふっと軽く溜息をついて
「血の繋がりは無いってアイツが言ってたけど?」
「まあ・・・」
「でも、大切に思っていらっしゃる・・・」
「・・。」
石崎から視線を逸らせ
「そっかぁ~、親子共々人質に取られたってワケだ」
「可哀想に、それであなたには嫌なお役目が回されちゃったのね」
バカにしているのか、気の毒がっているのか。。。
「ふーっ」 大きく息を吐き出し
「さっきはごめんなさいね」
「?」
自分の股間を指差す三沢
言葉につまる石崎
何を思ったのか、三沢は突然服を脱ぎだした。
「何をしているんだ!やめなさい!」
助けを求めてキョロキョロと周りを見渡す石崎
「大丈夫。私が呼ぶまでは、誰も入って来ないわ」
スーツの上着を脱ぎ、カッターシャツのボタンを外すと・・・
さらしをきつく巻いてはいるが、胸の膨らみは隠しきれていない。
石崎は混乱していた。
さっき、三沢の股間に手を押し付けられた時には確かに感触があったのだが?!
シャツのボタンを留めながら悲しげに微笑み
「両性具有って分かる?」
「一応、この世界では男ってことにしているんだけど、本当は男でも女でもないのよ・・・」
「・・・戸籍上は?」 やっとの事で声を出せた石崎
「女・・」
「これも生まれた時は、チョンってした可愛いものだったんでしょうね。デキモノくらいに思ったんじゃないの?アハハ」 自嘲気味に乾いた笑い声を上げる。
「男なのか女なのか・・自分でも、もうわかんないのよ」
「だけど、この事は誰にも言わないでね」
「どうして初対面の私に・・?」
「どうしてかしら?・・・何かね、こういうドロドロした世界の人間ってね、私の事を男だと紹介されると『本当に男なのか~』とか言いながら触ろうとしてくるのよね。そうでなくても、あなたはさっき手を振り解いたけど、ギュッと握ってくるヤツもいるわ」
「まさか?!」
「本当よ。こういう世界にはそういう下種な人間が多いってことね」
「私のさっきの行動はリトマス試験紙のようなものかしら?」
「それと、貴方と息子さんの事も・・・」
「そうだわ、折角の良いお天気なんだから少し外を歩きましょうよ」
三沢が、何かのボタンを押すとドアが開いた。
つづく
※この物語はmasumiさんの被害妄想に基づくフィクションです(^^;
実在の人物及び団体とは一切関係ございません。
尚、加筆修正及びキャラの変更等もあるやも知れませぬことをお断り申しておきまする(^^;