報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「善場からの作戦依頼」

2021-11-15 20:37:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日13:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 無事に帰所した私は、まずは昼食を取った。
 高橋が弁当を作ってくれたので、それを食べる。
 それからしばらくして午後になり、私は善場主任へ電話を掛けた。
 善場主任に、私の推理を話してみた。

 愛原:「伯父が開発した『枯れた苗を元に戻す薬』……つまり、死んだ植物……生物を生き返らせる薬……。それを日本アンブレラが欲しがったという事実……。盗まれた“トイレの花子さん”の遺骨……」
 善場:「つまり、愛原公一名誉教授が何か知っているかもしれないというわけですね?」
 愛原:「そうです。しかし、もしそうだとすると、伯父さんは……」
 善場:「ええ。白井に与する犯罪者ということになりますね」
 愛原:「で、ですが、これはあくまで私の推理で……」
 善場:「分かっていますよ。少なくとも、遺骨と名誉教授の薬だけではまだ足りません。しかし、ある物を加えれば、遺骨からでも生き返らせることは可能でしょう」
 愛原:「ある物?」
 善場:「特異菌です。ルーマニアの山奥で発生したバイオハザード事件、そこでは1人のBOWが亡くなりました。名前をイーサン・ウィンターズと言います。彼は死ぬ間際まで、自分を人間だと信じていました。いえ、周囲も、ごく限られた一部の者以外は彼を人間だと信じて疑わなかったようです。しかし、彼は明らかに人間ではなかったのです」
 愛原:「と、言いますと?」
 善場:「一度死んだ人間が、全く生前の状態のまま生き返る。その生き返った人間は、人間だと言えるでしょうか?」
 愛原:「えーと……」
 善場:「私でさえ、一度は化け物にされた者です。しかし、死んではいませんよ。生きたまま、ちゃんと人間に戻れました。しかし、ウィンターズ氏の場合は違います」
 愛原:「で、では……?」
 善場:「今は特異菌があるので、遺骨からでも蘇生が可能なのかもしれません。愛原所長、確かめに行ってはもらえませんか?これは私からの依頼です」
 愛原:「わ、分かりました!すぐに宮城に向かいます!」
 善場:「明日でいいですよ」
 愛原:「は!?」
 善場:「今日はリサの誕生日を祝う日でしょう?それをすっぽかしては、新たなバイオハザードを生むことになります。それは何としてでも阻止しなければ、なりません」
 愛原:「そ、それもそうですね」
 善場:「それと、恐らくAkibaエージェンシーに遺骨捜索の依頼をしたのは、遺族でしょう。国際テロ組織ヴェルトロが事実上の犯行声明を出したことで、地元の警察では手に負えないと判断しましたから」
 愛原:「そうなんですね」
 善場:「明日の朝一番で結構ですので、お願いします」
 愛原:「分かりました。リサも一緒でいいですか?」
 善場:「いいでしょう。その方が自然でしょうから」
 愛原:「分かりました」

 私は電話を切った。

 愛原:「高橋、明日朝一で伯父さんの所に行くぞ。公一伯父さんの所だ」
 高橋:「あの名誉教授っスか?あの人、そんなに悪い人だったんスかね?」
 愛原:「俺も信じたくない。だが、何らかの事情があるのかもしれない。それを調べに行きたいんだ」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「リサも一緒に行くが、いいな?」
 高橋:「先生の御意向でしたら……」
 愛原:「善場主任にも、そうしろと言われたんだ。そこを自分に言い聞かせて納得してくれ」
 高橋:「御命令とあらば……」
 愛原:「とにかく、今日は予定通り、家でリサの誕生日パーティーだ。分かったな」
 高橋:「うス」

 私はパソコンのマウスを動かし、キーボードを叩いた。

 愛原:「明日の新幹線の予約だ。それと、レンタカーだな。また、運転は頼むぞ」
 高橋:「あ、はい。それは任せてください」

 私はJR東日本のサイトにアクセスして、明日の新幹線を予約しようとした。
 と、また事務所の電話が鳴る。

 高橋:「ハイ、愛原学探偵事務所っス」
 善場:「あ、善場です。愛原所長はもう新幹線を予約しましたか?」
 高橋:「今やってるところだが?」
 善場:「こちらから新幹線は手配するので、それは中止してもらってください」
 高橋:「わ、分かった!先生!」

 高橋はすぐに私にその旨伝えて来た。
 今ちょうど空席照会をしているところであり、まだ予約はしていなかった。

 愛原:「もしもし、お電話代わりました。何か事情が変わったんですか?」
 善場:「そうです。作戦上、やはり今日中に宮城入りして頂きます。要は前泊ですね」
 愛原:「前泊!」
 善場:「新幹線のキップと、宿泊先のホテルの宿泊券はこちらでお送りします」
 愛原:「レンタカーはどうしましょう?私の推理が正しければ、伯父の送り迎えには期待していけないでしょうし、タクシーを使うのも……」
 善場:「それは所長の判断にお任せします。レンタカーの手配もお任せします。その費用については、後でこちらに請求して頂ければ、お支払いさせて頂きますので」
 愛原:「リサには何と言えば……」
 善場:「パーティーはできますよ。要は、その後で出発して頂ければ良いので」
 愛原:「あ、そうなんですか」
 善場:「つまり、夜の新幹線で出発して頂くということですね。バイク便でそちらに届けますので、しばらくお待ちください」
 愛原:「わ、分かりました。つまり、デイライトさんでは、それくらいのことをする確信を得たのですね?」
 善場:「内容については、今はお話しできませんが、つまりはそういうことです」
 愛原:「分かりました。その御依頼、お引き受けしましょう」
 善場:「御理解が早く、助かります。リサの方も説得をお願いします。場合によっては、リサの力に頼ることも想定できますので」
 愛原:「分かりました」

 伯父さん、何をやったんだよ。
 ていうか、遺骨泥棒なんて……。
 16時頃、バイク便が届いた。
 その中には、夜の新幹線のキップと、仙台駅近くのホテルの宿泊券が入っていた。
 どうやら、ガチのようだ。
 もしも単なる調査であれば、当初の予定で良かっただろう。
 しかし、ガチの作戦となると話は別になる。
 私はスマホを取り出し、リサに大事な話があるから早めに帰るように伝えた。
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“私立探偵 愛原学” 「新しい推理」

2021-11-15 10:53:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日10:45.天候:晴 東京都新宿区西新宿 エステック情報ビルB1F]

 よーし、リサへのプレゼント、ゲット!
 あとは帰るだけだな。
 私がビルの1階へ上がろうとした時だった。

 男:「あのー、すいません」
 愛原:「はい?」

 私よりも小柄な中年の男が話し掛けて来た。
 しかし、年齢は私よりも上だろう。
 50歳くらいか。

 男:「探偵の愛原学さんですよね?」
 愛原:「はい、そうですが。どちら様で……」
 男:「私、同業の者です」

 男は名刺を差し出した。
 そこには、『世界探偵協会日本支部東京地区本部所属 Akibaエージェンシー 秋葉悟』と、書かれていた。

 愛原:「同業の秋葉さんと仰いますか。それで、その同業者の方がどのような御用件で?」
 秋葉:「ちょっと、お話よろしいですか?」
 愛原:「は、はあ……」

 私達は同じビルのカフェに入った。
 まだ昼前ということもあり、店内は空いている。

 秋葉:「実は私、とあるクライアントに頼まれて、遺骨の捜索に当たっているのです」
 愛原:「その遺骨って、もしかして、50年くらい前に無くなった女子高生の物では?」
 秋葉:「やはり御存知ですか。さすが、尾行した甲斐がありました」
 愛原:「尾行なんてしなくても、直接うちの事務所に来て下されば、情報の共有くらいはしますよ?」

 “トイレの花子さん”こと、斉藤早苗さんの遺骨そのものについては、私の業務とは直接関係無い。
 白井伝三郎が盗んだとされているが、まだ決定的な証拠が無いからだ。
 それに、直接その遺骨捜索のことは全く依頼されていない。

 秋葉:「いやいや!私もさすがに、そんな危険は冒しませんよ!」

 秋葉氏は帽子を被っていたが、さすがに店内ではそれを取っている。
 盗ると、さすがに私よりも頭頂部は薄めであった。
 私も10年後はこうなるのだろうか。
 それにしても、恰好が昔の探偵だな。
 さすがに、松田優作ほどではないが……。

 愛原:「危険?」
 秋葉:「今、『最もテロ組織に近い探偵』として有名ですよ?愛原さんは」
 愛原:「私が……。あー……まあ、ねぇ……」
 秋葉:「少しだけでもあなたのことを尾行させてもらって、今あなたを狙うテロリストがいないかどうかを確認したのです」
 愛原:「で、いないと判断された?」
 秋葉:「そうですね。現時点で、あなたのことを尾行している人間はいないようです」
 愛原:「それは良かったです。で、私に何を聞きたいんですか?業務内容の物については、お話できないが……」
 秋葉:「それはお互いさまでしょう。私が聞きたいのは、そこではありません。愛原さんの身内の中に、科学者はいらっしゃいませんか?ジャンルは問いません」
 愛原:「私の身内?まあ、1人農学者がいますが……」
 秋葉:「農学者ですか。その方、主にどんなことを研究されてますか?」
 愛原:「詳しくは知らないですよ。まあ、本人は『グスコーブドリの再来』なんて自称してますけど……」
 秋葉:「グスコーブドリ?あの、宮沢賢治の?」
 愛原:「そうです。宮沢賢治作“グスコーブドリの伝記”の主人公です。もっとも、キャラクター的にはクーボー大博士の方ですがね」
 秋葉:「いずれにせよ、凄い方が身内にいらっしゃるんですね」
 愛原:「それが何か関係あるんですか?」
 秋葉:「その農学者の方は愛原公一博士ですね?」
 愛原:「分かりますか?」
 秋葉:「少なくとも、ネットを検索すれば出てきます。今は東北の大学の農学部名誉教授ですね」
 愛原:「そうです」
 秋葉:「ネットの情報によれば、農薬や化学肥料の研究・開発も行っていたということですが?」
 愛原:「そのようですね。製薬会社から、そのライセンス契約の話が来たこともあるくらいです」

 もっとも、それが日本アンブレラだったのだから皮肉なもんだ。

 秋葉:「なるほど。分かりました」
 愛原:「今のでいいんですか?」
 秋葉:「ええ、結構ですよ。ありがとうございます。御礼に、ここの代金は私が持ちましょう」

 秋葉氏は伝票を手に取った。


[同日11:43.天候:晴 同地区内 都営地下鉄新宿駅・新宿線ホーム→新宿線1120T電車最後尾車両]

〔「今度の電車は11時43分発、各駅停車の本八幡行きです」〕

 菊川駅には止まらない急行電車を見送り、その次の各駅停車を待った。
 新宿始発ということもあり、無人の状態で入線してくる。
 先発の急行は京王電車だったが、こちらの各駅停車は都営の車両だ。

〔この電車は、各駅停車、本八幡行きです〕
〔This is a local train bound for Motayawata.〕

 私は再び硬い座席に腰かけた。
 秋葉氏とは、新宿駅で別れた。
 急ぎ足でJRの方に向かって行った。
 こりゃもしかしたら、公一伯父さんの所に行くかもしれないな。
 しかし、“花子さん”の遺骨捜しで、どうして公一伯父さんが出てくるのだろう。

 愛原:「……!?」

 私は、ある仮説が浮かんだ。
 い、いや、まさかな。
 だが、秋葉氏の言動がどうも怪しいというか……。

〔「この電車は11時43分発、都営地下鉄新宿線、各駅停車の本八幡行きです。終点、本八幡まで、急行電車の通過待ちはありません。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 地下ホームに発車ベルが鳴り響く。
 同時に車外スピーカーからも、メロディが鳴った。
 私はスマホを取り出した。
 まずは、高橋にLINEを送る。
 そうしているうちに、電車が走り出した。

〔都営新宿線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、各駅停車、本八幡行きです。次は新宿三丁目、新宿三丁目。お出口は、右側です。丸ノ内線、副都心線はお乗り換えです。一部、電車とホームの間が広く空いておりますから、ご注意ください〕

 高橋には遅くなった理由を話した。
 だが、この電車なら昼頃には菊川に到着できるだろう。
 高橋は特に何か言ってくるわけでもなく、ただ単に、『お疲れ様です。お気をつけて』と、返して来ただけだった。
 あとは、善場主任だ。
 主任はLINEではなく、メールである。
 主任には、まず他の探偵に遺骨の捜索を依頼したかどうかの確認をした。
 そしたら、そんなことはしていないという。
 私はそれを確認した上で、先ほどの秋葉氏とのやり取りを報告した。
 それに対し、主任は、『そのことについて、愛原所長の推理をお伺いしたいので、午後にでも電話ください』とのことだった。
 複雑だ。
 いや、話はそんなに複雑ではない。
 私の心中がだ。
 もしも私の推理が正しければ、公一伯父さんが悪者になってしまうからだ。
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“私立探偵 愛原学” 「リサ、16歳の誕生日」

2021-11-14 20:00:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「いよいよ、今日はリサが16歳になる日だな」
 リサ:「うん。勇者として旅立つ日!」
 愛原:「いつのRPGかな?」
 高橋:「勇者っつーか、魔王だろー。オメーはよ」
 愛原:「まあ、場合によっては主人公達にラスボスとして立ちはだかる側だよな」
 リサ:「ぶー……」
 愛原:「まあ、とにかく、オマエの誕生会やるから、今日は早めに帰って来いや」
 リサ:「分かってるよ。誕生日プレゼント、期待してる」
 愛原:「へいへい」
 高橋:「先生の快気祝いも兼ねてるんだからな?」
 リサ:「分かってるよ」

 リサは朝食を掻っ込んだ。

 リサ:「それじゃ、行ってきます」
 愛原:「行ってらっしゃい」

 学校へ向かうリサの後ろ姿を見た時、確かに成長はしているなと思った。
 体つきはまだ小柄なものの、段々と大人びてきているような気はした。

[同日10:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所]

 配達員:「簡易書留でーす!」
 高橋:「うっス」

 事務所に簡易書留が届く。
 高橋が受け取って、代わりにハンコを押した。

 配達員:「ありがとうございましたー!」
 高橋:「うっス」

 もちろん、簡易書留以外に普通郵便も混じっている。

 高橋:「先生、簡易書留、善場の姉ちゃんからですよ」
 愛原:「ほお。中身は何だろう?」

 私宛なので、私が開ける。
 すると、中に入っていたのは図書カードNEXTだった。
 添え状が入っていて、どうやらリサへの誕生日プレゼントだそうだ。
 これで、本でも買ってくれということだろう。
 善場主任は、とにかくリサへのプレゼント関係は図書カードやクオカードなどのプリペイドカードであることが多い。
 現金だとマズいことがあるのだろうか。

 愛原:「図書カードNEXTだな」
 高橋:「これで本でも買って、勉強しろってことっスかね。さすがは、頭の固ェ姉ちゃんなだけありますよ」
 愛原:「高橋」

 確かにこれで辞書を買ったりすることもあったが、リサの場合、マンガを買うことが多かった。
 何しろ、アニメイトでも使えたりするんだからな。
 とはいえ、用途については善場主任は何も言ってこなかった。
 なので、マンガを買っても特に問題は無いのだろう。
 考えようによっては、マンガであっても、化け物と化したBOWはそんなものに興味は無いだろう。
 それを興味を持って読んでいるということは、それほど人間に近づいているということの現れなわけだ。
 もしかしたら、主任はそれを狙って、リサに本を買わせて読ませようとしているのかもしれない。

 愛原:「俺達も誕生日プレゼント、考えなきゃな」
 高橋:「俺は、新しいゲームでも買ってやろうかと思ってますが」
 愛原:「なるほど。それも人間らしいアレだな。俺はどうしようかな……」

 中学校の卒業祝いや高校の入学祝で、だいぶプレゼントしちゃったからな……。

 愛原:「俺はクオカードでもプレゼントするか」

 善場主任の図書カードNEXTが最高額の1万円券だったから、私も同額の券を送ってやるか。

 愛原:「ちょっとクオカード、買いに行ってくる。高橋は?」
 高橋:「俺はもうAmazonで注文しました。あいつに、欲しいゲーム何なのか既に聞いてたんで。Amazonギフトで」
 愛原:「その手があったか。俺は入院中だったからな……」
 高橋:「まあ、しょうがないっスよ。車、出しますか?」
 愛原:「いいよ。俺1人で行って来る。オマエは留守番しててくれ」
 高橋:「分かりました」

 新宿に行けば買えるようだ。
 私はスーツの上着を羽織って、事務所の外に出た。
 幸い、新宿なら都営地下鉄一本で行ける。

[同日10:07.天候:晴 同地区内 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線915T電車先頭車内]

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 私がホームに下りると、ちょうど接近放送が鳴るタイミングであった。
 今からおよそ2時間半前、リサはここから電車に乗ったというわけだ。
 眩いヘッドライトを灯して、やってきたのは東京都交通局の電車。
 乗り入れて来る京王電車と違い、こちらは緑色がモチーフである。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私は電車に乗り込むと、空いている硬い座席に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが鳴り響く。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 特に駆け込み乗車も無かったか、電車とホームのホームのドアはスムーズに閉扉した。
 運転室の中から、車掌の発車合図のブザーが聞こえてくる。
 ガチャッというハンドルを操作する音も聞こえてくる。
 そして、ブレーキのエアーが抜ける音がして、電車が加速を始めた。

〔次は森下、森下。お出口は、右側です。都営大江戸線お乗り換えの方は、ホーム後方の連絡階段をご利用ください〕
〔The next station is Morishita.S11.The doors are right side will open.Please change here for the Toei Oedo line.〕

 これが都営大江戸線だったら、広告放送も流れるのだが、都営新宿線では流れない。
 ツーマン運転で、車掌が肉声放送しているというのなら分かるが、このように自動放送だというのに、広告は流れないのである。
 これが都営大江戸線だと、確か森下駅近辺の桜鍋の店の広告が流れるんじゃなかったかな。
 桜鍋か……。
 “ウマ娘”が流行っている間は、風評被害食らってる?肉好きのリサを、そういう所に連れて行ってあげるのもいいかもしれないな。
 とにかく、食人衝動を抑えさせる為には、別の肉を食わせるしかない。
 今日は高橋が腕によりをかけて、御馳走を造るはずだ。
 リサには特にデカいステーキを焼いて食わせるように言ってある。
 今日のところは、それで凌げるだろう。
 リサが成人するまで、暴走させないようにするのが、NPO法人デイライトさんとの長期契約だ。
 なるべくリサは人間扱いし、BOWであることを忘れさせるくらいがいい。
 もっとも、気を抜くとあいつ、第一形態に戻るからそこが難点なんだけどな。
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“私立探偵 愛原学” 「久しぶりの帰宅」

2021-11-14 14:35:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月30日16:05.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所→JR新橋駅]

 お昼を挟んで、善場主任との話が終わったのは3時間以上経ってからであった。
 その中には、俄かには信じがたい話もあった。

 善場:「これからも、所長方に協力をお願いする機会が多々あると思います。その時は、よろしくお願いします」

 とのことだった。
 帰り際、新橋駅前のタクシー乗り場からタクシーで帰ることにした。
 いつもなら都営バスだが、私の入院の時の荷物が大きいし、何より早く帰ってリサを安心させてやりたいという気持ちもあった。
 今日は普通の平日の為、リサは学校で、私の退院に付き合うことはできなかった。
 駅前から乗ることにしたのは、万が一テロリストが偽タクシーに化けているかもしれないことを考慮してのことである。
 駅前の正式なタクシー乗り場なら、そこに偽タクシーが潜り込もうとするとすぐに怪しまれるからである。

 運転手:「はい、どうぞ」

 

 先頭に並んでいた東京無線タクシーに乗り込む。
 その前にトランクを開けてもらい、大きな荷物をそこに入れた。

 愛原:「墨田区の菊川1丁目までお願いします」
 運転手:「菊川1丁目ですね。ご希望のルートとか、ございますか?」
 愛原:「森下辺りから新大橋通りを行く感じでいいです」
 運転手:「かしこまりました」

 タクシーが走り出す。

 愛原:「リサにLINEを送っておこう」

 私はリサにタクシーに乗った旨のLINEを送った。
 すぐに既読が付いて、返信も早く帰って来るだろうと思っていた。
 だが、既読は付いたが、返信はなかなか帰ってこない。
 私がそれを伝えると、高橋は……。

 高橋:「既読スルーなんて、いい度胸してますね」
 愛原:「もう学校から帰ってるはずだよな?」
 高橋:「ですね。で、フツーに考えたらリサ1人だけのはずです」
 愛原:「そうだな。だから、早く帰ってやんないと」
 高橋:「いや、そんなに急ぐ必要も無いんじゃないスか?」
 愛原:「何で?」
 高橋:「リサのヤツ、きっと今頃、家でオナってますよ?」
 愛原:「ブッ!何でそう思うんだ!?もしかしたらトイレとか、シャワーを使ってるだけかもしれんぞ?」
 高橋:「シャワーだったら、そもそも既読すら付かないっスよ。それにあいつ、トイレに行くくらいなら、スマホは部屋に置いてるんです。だから、そもそも既読が付くこと自体が無いわけです」
 愛原:「……なるほどな。いや、それだったら、オマエの予想通りでも既読は付かんだろ?」
 高橋:「まあ、女のアレでしたら片手でもできますから。空いた片手で、既読にすることは可能でしょう」
 愛原:「それにしてもだな……」
 高橋:「だって先生、あれっスよ?先生がリサに大人のおもちゃ、買ってやったんじゃないスか」
 愛原:「いや、あれはだな……!」

 リサのBOWとしての食欲は旺盛である。
 ところが、だ。
 人間に近い姿形をしている為か、性欲も強いのである。
 もちろん、リサにはそれを発散する相手などいない。
 私にそれをやって欲しいようだが、まだ15歳以下のリサにそんなことをする方が犯罪である。
 性欲を抑え込むのも人間に戻る修行だと思えと言い付けたのだが、ある日、リサはついに爆発した。
 私の部屋のドアには、鍵を3つ付けていたのだが、リサは変化してそれを全部壊して侵入してきた。
 いや、もう高橋はブチギレるわ、BSAAは出動してくるわの大騒ぎでねぇ……。
 それを防止する為に、買い与えたのだ。
 電マとか、ピンクローターとか……。
 まあ、その……何だ。
 栗原蓮華さんはれっきとした人間だが、彼女もまた性欲が強いらしく、彼女が入院中に頼まれて買ってあげたこともあり、それでリサに買い与えたのである。
 おかげであれ以来、リサが襲って来ることはなかった。

 愛原:「おっ、返信来た」

 やっとリサから返信が来た。
 だがその内容は、『わかった気をつけて』という短いものだ。

 高橋:「ヤってる最中に何とか返したみたいですねぇ……」

 高橋はニヤニヤと笑っていた。

 高橋:「イクところを押さえてやりましょうか?」
 愛原:「やめろよ、悪趣味だ」

 まあ、15歳だからな。
 性に目覚めて当然だろう。
 ましてや、東京中央学園は共学校。
 エロいことは、もっと性に目覚めた男子生徒から見聞きするかもしれない。

[同日16:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学のマンション]

 タクシーは無事にマンションの前に着いた。
 料金を払っている間、先に高橋が降りて、トランクから荷物を降ろしている。

 運転手:「ありがとうございました」
 愛原:「どうもお世話さま」

 私もタクシーを降りると、マンションの中に入った。

 リサ:「先生!お帰りなさい!」
 愛原:「ああ、ただいま」

 制服を着たままのリサがエントランスまで出迎えてくれたが、抱き付かれた。
 それでも力をセーブしているのだろうが、やはりBOWに抱き付かれると結構苦しい。
 何しろ、オリジナルのリサ・トレヴァーは石像を殴り壊すことができるほどだ。
 そして、抱き付かれた時に、リサの体から体臭を感じた。
 いわゆる、SWEET臭である。
 第一形態の時は、そのような臭いはしないが、人間の姿である第0形態の時にこの臭いが出ることがある。
 特に、生理中かその前くらいにすることが多い。
 エレベーターに乗ってから、高橋が言った。

 高橋:「おい、リサ。オナった後は、シャワー浴びた方がいいぞ?特に、女の場合は臭いが残りやすいからな」
 リサ:「なっ……!」
 愛原:「まあまあ、高橋」

 リサは顔を赤らめたが、否定はしなかった。
 で、帰ってからリサは部屋に戻ると、すぐに着替えて浴室に飛び込んだのだった。

 愛原:「いやー、久しぶりに帰ってきたなぁ!」
 高橋:「ええ。先生の快気祝い、やりたいところですよ」
 愛原:「それはありがたい」
 高橋:「ですけど、明日にしたいと思ってるんです」
 愛原:「と、いうと?」

 高橋は浴室を指さした。

 高橋:「10月1日は、あいつの設定上の誕生日なんで」
 愛原:「おお、そうか!」

 リサも、明日から16歳になるのか。
 もちろん、人間だった頃の誕生日は不明だ。
 なので、10月1日というのは便宜上である。
 それでも昨年祝った時、リサは喜んでくれていたが。

 愛原:「よし!明日はリサの誕生会をやろう!」
 高橋:「先生の快気祝いもです!」
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“私立探偵 愛原学” 「愛原の退院」

2021-11-13 21:16:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月30日10:00.天候:晴 東京都八王子市 東海大学医学部付属八王子病院・病室]

 高橋:「先生、迎えに来ましたよ」
 愛原:「ああ、高橋。すまない」

 退院の付き添いで、高橋が迎えに来た。
 私のリハビリは順調に進み、今では普通に歩けるようになった。
 Tウィルスワクチン副反応による筋力低下が症状の理由だったが、その副反応が収まれば回復は早かったようだ。

 愛原:「オマエ1人だけか?……ああ、そうか。コロナ禍の影響で、面会は原則禁止だったもんな」
 高橋:「そうなんです」

 例外はいくつかあり、その1つが入退院の付き添いだ。
 但し、それとて1人までという制限が課せられている。
 だから、ここには高橋1人しか来れなかったのだ。

 高橋:「でも、下に姉ちゃん達がいますよ」
 愛原:「そうか」
 高橋:「多分、受付で退院の手続きやってるんだと思いますよ」
 愛原:「すると、俺の退院費用は……」
 高橋:「姉ちゃん達で出してくれたんじゃないスか?リサ・トレヴァー亜種の被害者なんスから」
 愛原:「そうか……」

 WHOは、バイオテロに巻き込まれた被害者達への手厚い補償を各国に呼び掛けている。
 新型コロナウィルスは武漢ウィルスといって、陰謀論信奉者達の間では、これもバイオハザードの1つであると主張しているが、WHOとしては単なる自然災害扱いとなっている。
 その為、バイオテロによる補償の対象とはなっていないのである。

 愛原:「俺を感染させたリサ・トレヴァー亜種は?」
 高橋:「あいつですよ。ほら、片足義足の……」
 愛原:「栗原蓮華さんか。あのコが倒してくれたのか?」
 高橋:「ええ。大正時代を舞台にした某アニメのように、日本刀で首をぶった切ったらしいです。ある意味、パールより怖いヤツだ」
 愛原:「そうか。仇討ちは蓮華さんがしてくれたか。後で礼を言わないとな」

 私は荷物をまとめて、2階エントランスに向かった。
 すると、そこには善場主任が待っていた。

 善場:「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原:「善場主任、お迎えありがとうございます」
 善場:「所長はバイオテロの被害者ですし、当組織の委託先ですから」

 NPO法人デイライトとしては、私が業務中にバイオテロに巻き込まれたということで、補償の対象と考えているようだ。
 よくよく考えてみれば、確かに私は善場主任に頼まれて情報収集をしていて、その帰りにバイオテロに巻き込まれたのだ。

 善場:「退院の手続きは済んでいます。まずは事務所に向かいましょう」
 愛原:「それは……デイライトさんの事務所ですか?」
 善場:「……所長の事務所に行かれますか?」
 愛原:「あ、いや、結構です」

 まあ、そうなるわな。
 2階のエントランスから立体駐車場に行き、そこに止まっている黒塗りミニバンに向かった。
 運転席には主任の部下が乗っていて、わざわざ降りて来てスライドドアとハッチを開けてくれた。
 私の荷物は後ろに乗せる。

 善場:「では、乗ってください」
 愛原:「すいません」

 私は運転席の後ろ、高橋は助手席の後ろに乗り込んだ。
 善場主任は助手席に乗り込む。

 善場:「じゃ、事務所までお願い」
 部下:「了解しました」

 車が走り出す。
 ハイブリッドなので、走行音は静かだ。

〔駐車券をお入れください〕

 部下の人が駐車券を入れる。
 さすがに無料ではないのか、部下の人が現金を投入していた。
 その後で、領収証を発行させていたので、後で経費請求するつもりなのだろう。
 最短距離で行くつもりなのか、病院を出ると、中央高速の入口へ向かう。
 病院から中央高速は見える位置にあったが、いざインターへ行こうとすると、ぐるっと回る形になるようだ。

 愛原:「主任、あの後何か情報はありましたか?」
 善場:「それも踏まえて、事務所でお話しさせて頂くつもりです」
 愛原:「あ、そうですか」
 善場:「とにかく今は、お寛ぎください」
 愛原:「はあ、分かりました」
 善場:「強いて言うなら……」
 愛原:「は?」
 善場:「東京中央学園上野高校の旧校舎には、幽霊がいるんですってね?」
 愛原:「あ、ああ。“トイレの花子さん”ですか。主任は信じられないかもしれませんが、実際私達は……」
 善場:「まあ、いると仮定しても良いでしょう。実際、リサが随分と仲良く付き合っていたようですから」
 愛原:「ああ。何か、よくその話をしてくれましたねぇ……」
 善場:「突然いなくなったそうですよ」
 愛原:「は?」
 善場:「リサの話によれば、“トイレの花子さん”、突然いなくなったそうです」
 愛原:「そ、そうなんですか?」
 高橋:「呆然としてましたよ、あいつ。最近の話じゃ、幽霊らしからぬ、随分と人間臭いキャラになってたらしいですから」
 愛原:「な、何だろう?成仏したのかな?それとも、誰か除霊した?」

 確か彼女が未練を残していた理由は、白井伝三郎への復讐を果たしていないからだった。
 “トイレの花子さん”の正体は、50年ほど前に、イジメを苦にして自殺した女子生徒の幽霊だ。
 名前を斉藤早苗さんという。
 彼女はイジメ加害者の子供達をあの世に送ることで、復讐とした。
 ところが、加害者の1人であった白井伝三郎だけは生涯独身であった為に子供がおらず、“花子さん”の復讐が達成できないままとなっていた。
 しかし、“花子さん”は達成しないと成仏できないという。
 その為、50年も幽霊を続けざるを得なかったのである。
 それが急にいなくなったということは、もしかして、白井が死んだ?

 善場:「どちらもハズレですよ。この前、その“トイレの花子さん”の遺骨が盗まれ、その後に『新12番』の存在が噂されるようになったと言いましたね?」
 愛原:「そうですね。……えっ?」
 善場:「恐らく、無理やり『生き返らせられた』状態になったのでしょう。その為、幽霊としては存在できなくなったのでしょうね」
 愛原:「そんなことができるんですか!?」
 善場:「私は『新12番』はTウィルスやGウィルスを宿したリサ・トレヴァーではないと考えています。恐らく、特異菌を使用したものと考えています」
 愛原:「特異菌って、死体を生き返らせられるんですか?」
 善場:「はい。実際、その報告例があります。ただ、死亡前に特異菌に感染し、それがたまたま100%適応できていた為に起きた奇跡に近い状態だったとされています。しかも、死亡してすぐに蘇生した形です。しかし、どうも白井は遺骨から蘇生させるのに成功したようです」
 愛原:「どうやって!?」
 善場:「それが分かれば苦労はしません。白井本人を捕まえるかしませんと。それに、まだ直接『新12番』の目撃例は1回もありません。現時点では、まだ本当に噂の段階なんですよ」

 しかし、ガチだろうな。
 “花子さん”の遺骨が盗まれた→幽霊としての“花子さん”が消えた→新型BOW『新12番』存在の噂とくれば……。
コメント (2)
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