報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサ、16歳の誕生日」

2021-11-14 20:00:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「いよいよ、今日はリサが16歳になる日だな」
 リサ:「うん。勇者として旅立つ日!」
 愛原:「いつのRPGかな?」
 高橋:「勇者っつーか、魔王だろー。オメーはよ」
 愛原:「まあ、場合によっては主人公達にラスボスとして立ちはだかる側だよな」
 リサ:「ぶー……」
 愛原:「まあ、とにかく、オマエの誕生会やるから、今日は早めに帰って来いや」
 リサ:「分かってるよ。誕生日プレゼント、期待してる」
 愛原:「へいへい」
 高橋:「先生の快気祝いも兼ねてるんだからな?」
 リサ:「分かってるよ」

 リサは朝食を掻っ込んだ。

 リサ:「それじゃ、行ってきます」
 愛原:「行ってらっしゃい」

 学校へ向かうリサの後ろ姿を見た時、確かに成長はしているなと思った。
 体つきはまだ小柄なものの、段々と大人びてきているような気はした。

[同日10:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所]

 配達員:「簡易書留でーす!」
 高橋:「うっス」

 事務所に簡易書留が届く。
 高橋が受け取って、代わりにハンコを押した。

 配達員:「ありがとうございましたー!」
 高橋:「うっス」

 もちろん、簡易書留以外に普通郵便も混じっている。

 高橋:「先生、簡易書留、善場の姉ちゃんからですよ」
 愛原:「ほお。中身は何だろう?」

 私宛なので、私が開ける。
 すると、中に入っていたのは図書カードNEXTだった。
 添え状が入っていて、どうやらリサへの誕生日プレゼントだそうだ。
 これで、本でも買ってくれということだろう。
 善場主任は、とにかくリサへのプレゼント関係は図書カードやクオカードなどのプリペイドカードであることが多い。
 現金だとマズいことがあるのだろうか。

 愛原:「図書カードNEXTだな」
 高橋:「これで本でも買って、勉強しろってことっスかね。さすがは、頭の固ェ姉ちゃんなだけありますよ」
 愛原:「高橋」

 確かにこれで辞書を買ったりすることもあったが、リサの場合、マンガを買うことが多かった。
 何しろ、アニメイトでも使えたりするんだからな。
 とはいえ、用途については善場主任は何も言ってこなかった。
 なので、マンガを買っても特に問題は無いのだろう。
 考えようによっては、マンガであっても、化け物と化したBOWはそんなものに興味は無いだろう。
 それを興味を持って読んでいるということは、それほど人間に近づいているということの現れなわけだ。
 もしかしたら、主任はそれを狙って、リサに本を買わせて読ませようとしているのかもしれない。

 愛原:「俺達も誕生日プレゼント、考えなきゃな」
 高橋:「俺は、新しいゲームでも買ってやろうかと思ってますが」
 愛原:「なるほど。それも人間らしいアレだな。俺はどうしようかな……」

 中学校の卒業祝いや高校の入学祝で、だいぶプレゼントしちゃったからな……。

 愛原:「俺はクオカードでもプレゼントするか」

 善場主任の図書カードNEXTが最高額の1万円券だったから、私も同額の券を送ってやるか。

 愛原:「ちょっとクオカード、買いに行ってくる。高橋は?」
 高橋:「俺はもうAmazonで注文しました。あいつに、欲しいゲーム何なのか既に聞いてたんで。Amazonギフトで」
 愛原:「その手があったか。俺は入院中だったからな……」
 高橋:「まあ、しょうがないっスよ。車、出しますか?」
 愛原:「いいよ。俺1人で行って来る。オマエは留守番しててくれ」
 高橋:「分かりました」

 新宿に行けば買えるようだ。
 私はスーツの上着を羽織って、事務所の外に出た。
 幸い、新宿なら都営地下鉄一本で行ける。

[同日10:07.天候:晴 同地区内 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線915T電車先頭車内]

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 私がホームに下りると、ちょうど接近放送が鳴るタイミングであった。
 今からおよそ2時間半前、リサはここから電車に乗ったというわけだ。
 眩いヘッドライトを灯して、やってきたのは東京都交通局の電車。
 乗り入れて来る京王電車と違い、こちらは緑色がモチーフである。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私は電車に乗り込むと、空いている硬い座席に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが鳴り響く。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 特に駆け込み乗車も無かったか、電車とホームのホームのドアはスムーズに閉扉した。
 運転室の中から、車掌の発車合図のブザーが聞こえてくる。
 ガチャッというハンドルを操作する音も聞こえてくる。
 そして、ブレーキのエアーが抜ける音がして、電車が加速を始めた。

〔次は森下、森下。お出口は、右側です。都営大江戸線お乗り換えの方は、ホーム後方の連絡階段をご利用ください〕
〔The next station is Morishita.S11.The doors are right side will open.Please change here for the Toei Oedo line.〕

 これが都営大江戸線だったら、広告放送も流れるのだが、都営新宿線では流れない。
 ツーマン運転で、車掌が肉声放送しているというのなら分かるが、このように自動放送だというのに、広告は流れないのである。
 これが都営大江戸線だと、確か森下駅近辺の桜鍋の店の広告が流れるんじゃなかったかな。
 桜鍋か……。
 “ウマ娘”が流行っている間は、風評被害食らってる?肉好きのリサを、そういう所に連れて行ってあげるのもいいかもしれないな。
 とにかく、食人衝動を抑えさせる為には、別の肉を食わせるしかない。
 今日は高橋が腕によりをかけて、御馳走を造るはずだ。
 リサには特にデカいステーキを焼いて食わせるように言ってある。
 今日のところは、それで凌げるだろう。
 リサが成人するまで、暴走させないようにするのが、NPO法人デイライトさんとの長期契約だ。
 なるべくリサは人間扱いし、BOWであることを忘れさせるくらいがいい。
 もっとも、気を抜くとあいつ、第一形態に戻るからそこが難点なんだけどな。

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