報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「市役所へ」

2020-11-23 22:56:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日15:00.天候:曇 某県霧生市中心部 霧生電鉄南北線 市役所前駅構内]

 私は高橋とリサ(引き続き、『2番』とする)を連れ、改札口の中に入った。
 ライフラインが全て止まっている市内において、地下駅構内は真っ暗であったが、手持ちのマグライトで照らしながら進んだ。
 ライトは私と高橋が1つずつ持っている。
 当然、無札であっても、自動改札機がゲートを閉めることは無かった。
 まるで地下鉄のような駅であり、ホームは更に下の階にあった。
 停電でエスカレーターは止まっており、階段でホームに向かう。
 バイオハザード最中の霧生電鉄東西線、霞台団地駅を探索した時とは少し違った。
 向こうは山岳トンネル内に設置された駅(但し、駅舎は外部にある)であり、ホームだけがトンネル内にあるといった感じだった。
 そして霞台団地駅が2面2線の対向式ホームだったのに対し、市役所前駅は1面2線の島式ホームだった。
 これは大山寺駅も同じである。
 ホームに下りると、東京の地下鉄よりも小ぢんまりとしていた。
 そりゃそうだろう。
 普段は2両で1編成の電車が走っているだけなのだ。
 ラッシュ時に、それをもう1編成増結して4両編成で走っているだけに過ぎない。
 霧生市の人口はおよそ10万人と、世界で最初にバイオハザードで壊滅したアメリカのラクーン市と同じ規模の町である。
 あそこにも地下鉄は走っていたが、本線が1本に支線が1本の小規模なものであったという。
 そして、このホームにも電車が立ち往生した状態で止まっていた。
 2番線の北行、紫雲山行きの電車である。
 バイオハザードが本格化したのは夕方くらいだったから、ちょうど夕方のラッシュが始まる頃だった。
 その為か、立ち往生している電車は4両編成になっていた。
 ホームに停車中にバイオハザードに巻き込まれたか、ドアは全て開いている。
 しかし、惨劇があったであろうことは、車体の損傷の仕方や死屍累々の白骨死体を見れば分かる。
 窓ガラスの殆どが割れ、乗客の荷物が未だに散乱したまま放置されている。
 安全宣言が出れば、生き残った住民達の帰還が叶うと政府は発表しているらしいが、まずは復興の前に、この犠牲者達の遺体回収が先だろう。
 尚、当時市内にいた10万人のうち、7万人が死亡、残りの3万人が脱出に成功している。
 その3万人の中に、私達も入っているわけだ。
 運良く救助隊に助け出されたり、県道・霧生バイパスと旧・県道を上手く辿れて市外に脱出できた者が殆どだという。
 私達も最後に探索した日本アンブレラの秘密研究所が、その霧生バイパスと繋がっていたから助かったようなものだ。

 愛原:「あっちだな?A3出口は」
 高橋:「そのようです」

 この駅の構造は多少変わっていて、出入口が南北に5ヶ所ある。
 北部にあるのがA1とA2とA3、南部にあるのがB1とB2である。
 この南北の出入口、コンコースでは繋がっていない。
 もしもAとBを行き来したければ、ホームを通らないといけないのである。
 もっとも、東京の地下鉄にも、一部そういった駅は存在するが。

 愛原:「A3出口というのは、市役所に直接出入りできる出口のようだ」

 他の出入口は通りに面しているのに対し、A3出口だけはそのような案内が掲示されていた。
 よって、A3出入口を利用できるのは、市役所の開庁時に限られるわけだ。
 あの『8番』と『9番』、市役所に来いと言っているようなものだ。
 JR東日本E127系からワンマン機器を取り去り、トイレを取り去ったような感じの電車の横を通り、北側の出入口への階段を登る。
 2両編成の時はワンマン運転をしていたらしいが、車内で運賃の収受は行わない、いわゆる都市型ワンマンであったらしい。
 階段を登って改札口を出ると、もう目の前が市役所の地下1階出入口になっていた。

 愛原:「ん!?」

 シャッターが3分の1しか開いていなかった。
 閉めようとして閉め切れなかったのか、或いは何かの拍子に閉まりかけただけなのか……。
 下から見る限り、シャッターの向こうの自動ドアは開いているようだ。
 私はシャッターの下にしゃがみ込み、市役所の中を懐中電灯で照らした。
 どうやらロビーとか何かの案内所のようなものが見えるが、敵はいなさそうだった。

 愛原:「よし。大丈夫っぽい」
 『2番』:「わたし、先に行くね」

 リサが四つん這いになってシャッターの下を潜り抜ける。
 リサもまた制服のスカートを短くしているので、中が見えそうになる。
 まさか、学校にいる時までそんな短くしているわけではあるまい。
 高等部はそういった規制は少し緩やからしいが、中等部でそれは無いぞ。
 他のリサ・トレヴァー達はセーラー服のスカート、そんなに短くしていないというのに、こっちのリサときたら……。
 多分、それも『アンブレラからの解放感』でやっているのだろう。
 何せ、『もしも東京中央学園の制服がセーラー服だったら、通いたくなかった』と言うくらいだからな。

 愛原:「次は高橋だ」
 高橋:「うっス!」

 高橋は少しシャッターを持ち上げた。

 高橋:「先生、お先にどうぞ」
 愛原:「そういうことかよw」

 私は先に入った。
 そして内側からシャッターを更に持ち上げる。
 なかなか重いシャッターだったが、リサが手伝ってくれると軽々と開いた。
 リサ・トレヴァーの自慢は怪力。
 この小さな体のどこにそんな怪力が備わっているのか疑問だが、あえて追及しないことにした。

 愛原:「高橋、入れ」
 高橋:「はい!」

 高橋も中に入り、私達が手を放すと、シャッターが勢い良くガッシャーンと閉まった。

 愛原:「あ、ヤベッ!閉じ込められた!?」
 高橋:「多分、上から出れるんじゃないスか?」

 高橋は上を指さした。

 愛原:「そうかもな」

 ここはホールになっているらしく、上の1階とは吹き抜けになっていた。
 ここにも至る所に白骨死体が転がっているが、今向かってくる敵らしき者はいない。

 愛原:「リサ、敵の気配はするか?」
 『2番』:「うーん……」

 リサは首を傾げた。
 すると……。

〔上に参ります〕

 愛原:「!?」

 突然、奥のエレベーターが開いた。
 中は非常灯の薄暗いランプしか点いていない。
 どうやら非常予備電源で動くエレベーターのようだ。
 このタイミングで開いたということは……。

 愛原:「やっぱり……」

 中を覗くと、鏡の上に『8階へ来い』と赤い文字で書かれていた。

 高橋:「上等ですよ。行きましょうか」
 愛原:「いや、ちょっと待て」
 高橋:「何ですか?」
 愛原:「準備をしてから行こう」
 高橋:「ええっ?」
 愛原:「このホール、何か色々落ちてる」

 よく見ると警察官の死体もあり、そこからハンドガンの弾や、ショットガンの弾なんかも落ちていた。
 どうやら日本アンブレラ直営の警備会社JUSSが持っていたと思われる壊れたショットガンが落ちていたので、その弾だろう。
 他にも観葉植物に交じってグリーンハーブが落ちていたり、救急スプレーなどの回復アイテムが落ちていたりした。

 高橋:「先生、マシンガンの弾もありましたよ」
 愛原:「よし。これも頂いて行こう」

 何気に、ゾンビ化したBSAA隊員から奪ったマシンガンを高橋は持っているからな。

 愛原:「準備ができたら行くぞ」
 高橋:「はい」

 私達はエレベーターに乗り込み、8階のボタンを押した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「市街戦」

2020-11-22 19:47:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日14:00.天候:曇 某県霧生市内市街地(市役所付近)]

 リサ・トレヴァー『8番』と『9番』と思しきBOWによってゾンビ化させられたBSAA隊員が攻撃してくる。
 持っている銃は狙いを定めず、ただ乱射するだけ。
 でも流れ弾には注意だ。
 また、装甲車を運転中にゾンビ化したか、高速度で電柱に突っ込む装甲車もあった。

 善場:「意外と多いですね、ゾンビ」
 隊長:「市街戦を展開していた部隊は全滅したようです」
 高橋:「弱ェな、BSAA!」
 隊長:「あくまでも我々はバイオテロを鎮圧するのが目的であって、BOWを倒すのが目的ではないのだ」
 愛原:「クリス・レッドフィールド氏やジル・バレンタイン氏は?」
 隊長:「“オリジナル・イレブン”は格別なのだ!」
 愛原:「リサ!『8番』と『9番』はどこだ!?」
 『2番』:「臭いが分からない!」

 BSAA隊員ゾンビが銃を乱射したり、火炎放射器を乱射したりして、辺りには火薬や焦げ臭い臭いが広がっている。
 そのせいで、リサの鼻が利かなくなってしまったのだ。

 隊長:「皆さん、目を瞑って耳を塞いで!」

 BSAA隊長は閃光手榴弾をゾンビ達に放った。
 眩しい閃光と大きな音で耳がキィーンとなる。
 目を閉じて耳を塞いでいてもそうなるのだから、そうしていないゾンビ達は右往左往した。
 さすがにゾンビ化しても、目がチカチカし、耳はキィーンとなるらしい。

 高橋:「死にさらせ、死にぞこない共!」

 高橋はゾンビが落としたマシンガンを拾い上げると、それで動きが止まったゾンビ達に乱射した。
 絶叫や断末魔を上げてバタバタと倒れるゾンビ達。
 これで粗方片付いたかのように思えたが……。

 愛原:「うわっ、また来た!」

 またもや運転中にゾンビ化したBSAAのトラックが突っ込んで来た。
 先ほど突っ込んだ装甲車に思いっ切りぶつかる。
 そこから漏れ出した燃料が……。

 隊長:「爆発するぞ、逃げろ!!」
 愛原:「マジかよ!?」
 高橋:「先生、早くこっちへ!」

 高橋に引っ張られて、私は地下への階段を転がり落ちた。
 と、上から大爆発の音がした。

 愛原:「く、崩れたぞ!どうする!?」
 『2番』:「ここ、どこ?」

 どうやら地下への階段に飛び込んだのは、私と高橋とうちのリサの3人のようだ。

 愛原:「ほ、他の皆は!?」

 私達は地上に戻ろうとした。
 だが、階段の途中にあったシャッターが爆発のショックで閉まってしまった。
 それが歪んだか、手で開けようとしても開かない。
 真っ暗なので、大山寺探索の時に持って来たマグライトの明かりが頼りだ。
 リサは夜目が利くので必要無い。

 高橋:「わ、分かりません」
 『2番』:「ここ、駅みたいだよ?」

 リサが指さした所をライトで照らすと、『霧生電鉄南北線 市役所前駅』と書かれた看板があった。
 確か、霧生電鉄の市街地の区間は地下を走るのだったか。

 愛原:「市街地の駅なら、他にも出入口があるはずだ。一旦、駅の中に行って、他の出口を探そう」
 高橋:「はい!」

 私達は階段を下りた。
 所々に死屍累々の白骨死体が転がっている。
 餓死したゾンビの成れの果てか、或いはゾンビに食い殺された人達の成れの果てか……。
 その数の多さからして、やはり市街地が一番被害が大きかったようである。

 愛原:「南北線の隣の駅が『五十嵐記念病院前』になってる。多分これは、あの日本アンブレラの五十嵐社長のことだろう」
 高橋:「あの大火事起こしてた総合病院っスかね?」
 愛原:「多分な」

 途中に十字型の路線図があった。
 霧生電鉄には南北線と東西線の2つがある。
 それが交差する場所が、『霧生中央駅(日本アンブレラ前)』となっていた。
 東西線の霞台団地駅と大山寺駅の間には研究所が、市街地には日本アンブレラの支社とか支店でもあったのだろう。
 中央駅に副駅名が付けられるほどなのだから、如何にこの町が日本アンブレラの企業城下町だったかということだ。

 愛原:「栗原姉妹の家があったというのは、東西線の東端の駅か。駅名が……何か焦げ跡があって見えないぞ」
 高橋:「どっちみち、電車では行けないスよね」
 愛原:「動いてるわけねーだろ。とにかく、別の出口を探すぞ」
 高橋:「はい」
 愛原:「リサは辺りを警戒してくれ。どこからBOWが現れるか分からんから」
 『2番』:「うん」

 とっくに電源の落ちたキップ売り場の券売機の前を通る。
 その横には自動改札機があった。
 2両~4両編成の電車で運転されるだけのローカル線なのに、随分と駅は近代化されている。
 これも日本アンブレラの力によるものなのだろうか。

 愛原:「ぅわっ!」
 高橋:「わっ!」
 『2番』:「なに!?」

 私が一番先に驚いた。
 いや、びっくりしたのは人がいたからだ。
 もちろん、それは生きている人間ではなかったが……。
 たまたま私が改札口の方を照らしたら、有人改札口の方に駅員が座っていたのだ。
 それは既に白骨化しているが、ちゃんと制服を着ており、制帽まで被っていた。
 な、何でこんな状態で死んでるんだ?
 他の白骨死体は転がったり、或いは壁を背にしたまま倒れた状態で死んでるのに……。
 気になったので近づいてみると、その駅員は右手に改札鋏を持っていた。
 そして、左手には定期券サイズのキップを持っている。

 愛原:「だ、誰がこんなことをした?!」

 恐らくこの駅員も、この近くで死んでいたのだろう。
 それを誰かが意図的にこのような状態にしたに違いない。

 高橋:「先生、これを!」

 高橋がキップを照らした。
 そこには赤い文字で『A3出口へ行け 遠藤』と書かれていた。

 愛原:「遠藤って……」
 『2番』:「『8番』と『9番』の人間だった頃の名字だ。私達を……呼んでるんだよ、あいつら……」

 リサが深刻な顔をして言った。

 愛原:「……行くか」
 高橋:「マジっスか、先生!姉ちゃん達と合流してから行った方が……」
 愛原:「もちろん俺と高橋だけならそうする。しかし、こっちにはリサがいる。リサ、『8番』と『9番』相手と戦って勝つ自信あるか?」
 リサ:「…………」

 リサは肯定も否定もしなかった。

 愛原:「マジか」
 『2番』:「『8番』と『9番』が別行動してくれてるなら勝てる。だけどあの2人がタッグを組んでいたら……私は勝てても、先生達が危ない」
 愛原:「何だ、そんなことか。大丈夫だ。俺達は大丈夫。なあ、高橋?」
 高橋:「うっス。まあ、俺達で何とかしましょうや。少なくとも、ここに来ているBSAAはハンターまでしか倒せそうにないみたいっスから」
 愛原:「でもリサ、お前が頼りだ。頑張ってくれ」
 『2番』:「頑張ったら御褒美にキスしてくれる?」
 愛原:「わ、分かった」

 するとリサ、少し鼻息を荒くした。

 『2番』:「わたし、頑張るね!」

 ということで、指定されたA3出口に向かった。
 因みに、さっきいた場所はB1出口である。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「『8番』と『9番』の影」

2020-11-22 15:46:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日12:30.天候:曇 某県霧生市西部郊外 新日蓮宗大本山大山寺境内]

 私達は大山寺の南側に移動した。
 そこは壱之坊と弐之坊という宿坊のある所で、どちらも同じ構造をしている。
 そのうち、1つの宿坊で化け物と化した主管僧侶と戦闘になったんだっけ。
 広い広場にはBSAAの大型トラックや装甲車が何台も止まっており、天幕も張られていた。
 私達はそのうちの1つの天幕に入った。
 まずはそこで昼食。
 BSAAは本来は独立した国連組織なのだが、一般的には国連軍の一派として知られている。
 なので職員達も軍人同然である。
 だからというわけではないだろう。
 出された昼食がカレーだというのは。
 今でこそカレーは金曜日に出るが、昔は土曜日だった。
 今日が土曜日だからだろうか。
 食事が不味くなるからだろうか、食事中は一切市街地の様子は教えられなかった。
 後で聞いたところ、戦況は悪いらしい。
 リサ・トレヴァー達は体内に宿したウィルスを相手に送り込み、感染させることができる。
 感染させても活性化させるかどうかは、リサ・トレヴァーが決める。 
 つまり、感染させられた者は生殺与奪の権を奪われ、リサ・トレヴァーに従うしか無くなるのである。

 BSAA隊長:「感染させられた隊員達はゾンビ化したり、銃を乱射して同士討ちを始めるといった有り様です」
 善場:「それはいけませんね。やはりここは、『2番』と『退魔士』に行ってもらいましょう」
 愛原:「市街地にいるリサ・トレヴァーというのは何番ですか?」
 善場:「分かりません。ですが、2人と聞いています」
 愛原:「2人か……。そのうちのどちらかが『1番』かな」
 隊長:「もう既に何人も隊員が食い殺されています。これほどまでに手強いBOWは初めてです。どうか頼みます」
 愛原:「分かりました」

 BSAAからの報酬は高い。
 私はHQから休憩所に戻った。

 愛原:「リサと蓮華さん、市街地に行きますよ。リサ・トレヴァーが2人暴れているそうです」
 蓮華:「分かりました」
 『2番』:「2人……」

 リサは考え込んだ。

 愛原:「どうした、リサ?何か心当たりがあるのか?」
 『2番』:「もしかして、アクアとミリアかな」
 愛原:「知ってるのか?」
 『2番』:「リサ・トレヴァーの中で、唯一人間だった頃の名前を覚えてるコ達。双子の姉妹なんだって」
 愛原:「なに?てことは、『1番』じゃないか」
 善場:「それは何番ですか?」
 『2番』:「『8番』と『9番』。本名は遠藤天空海(あくあ)と遠藤美里愛(みりあ)」
 愛原:「DQNネームかい!」
 善場:「しかも姉の方は大相撲の力士に同じ名前のがいますね……」
 『2番』:「でも手強いよ。あいつら、私と初めて会った時点で人間を70~80人は食べてるから」
 愛原:「はあ!?」
 善場:「海外からの輸入組でしょうか。それだと海外で大勢食べて来た可能性もあります」
 『2番』:「そして、今もね」

 リサ・トレヴァー達は体臭がキツい。
 それは人食いをしているからだ。
 人食いでなくても、肉食が好きな人は体臭が強くなる傾向がある。
 それと同じだ。
 人を食べたことがないリサが1番体臭が弱いのだ。
 さっきの『7番』ですら、それが分かるほどだった。

 善場:「これ以上被害がヒドくならないうちに現地に向かいましょう」

 私達は今度は装甲車に乗り込んだ。
 これなら外から攻撃されても、ビクともしない。

 愛原:「『8番』と『9番』はリサより年上?」
 『2番』:「いや、私と同じくらい。区別を付ける為に、アクアは黒い服、ミリアは白い服を着てる。アクアは髪が長くて、ミリアは髪が短い」

 双子が外から区別してもらう為に違う服を着るのと、髪形を変えるのと同じことだ。
 ところで学生時代、学校に一組は双子がいるわけだが、何故だか全員もれなく髪形まで同じにするものだから区別が付かなかったな。

 善場:「他に情報は?」
 『2番』:「……あ、そうだ。あの2人、研究所から出たんだけど、『真っ当なお金でちゃんと買われた』って聞いたよ」
 愛原:「買ってる時点でまともじゃないんだよ」
 善場:「唯一、『商品として』売れた個体ですか。しかし、それがどうしてここで暴れているのでしょう?」
 『2番』:「それは知らないよ」
 愛原:「商品!?」
 善場:「商品ですよ。アンブレラにとって、TウィルスもGウィルスもタイラントもネメシスも、日本ではリサ・トレヴァーも商品なんですよ。ただ、本当に商品として売れるレベルに達せたのは『1番』と『2番』だけということらしいですが、実際に商品として売れたのは、検品で弾かれたはずの『8番』と『9番』だったということですね。どうして売れたか知ってる?」

 リサは少し考え込んだ。

 『2番』:「……双子だから?」
 愛原:「どうかな?」
 蓮華:「双子でも何でも、化け物は斬る」
 善場:「もし話ができるようでしたら、先にそのコ達と話をさせてください。彼女らを購入したのがどこの誰かを突き止めたいのです」
 蓮華:「分かりました」
 愛原:「もしかしたら『1番』の行方も知ってるでしょうからね」
 蓮華:「そうですね」

 『7番』は『1番』はいないと言っていたが、どうも『7番』はウソツキのようなので、あまり信用できない。
 『8番』と『9番』に聞いてみることにしよう。

[同日13:30.天候:曇 霧生市内市街地(市役所付近)]

 BSAAゾンビ:「ヒーハー!」

 狂気的な笑いを浮かべてマシンガンを乱射してくる、ゾンビ化したBSAA隊員。
 しかし、ゾンビ化すると銃器を使う知能すら無くなるはずだ。
 確かに今は乱射に近い撃ち方をしているが、ちゃんと撃っている。
 こっちのBSAA隊員が対応した。
 かつての仲間を射殺するのは忍びないだろうが、しかしもう医学的には死んでいる状態なのだから致し方ない。

 善場:「まるでCウィルスのゾンビみたいですね」
 愛原:「Cウィルス?」
 善場:「Tウィルスよりも感染力や毒性が強く、感染するとあっという間にゾンビ化します。しかし、肉体の腐敗は起こるものの、劣化はそこまでではなく、知能も低下はしますが、武器が使えるくらいのそれは残ります」

 Cウィルスのゾンビは走ることができたり、フェンスをよじ登ったりすることができる。
 Tウィルスのゾンビは肉体の腐敗や劣化が激しい為、走ったりすることはできない。
 また、先ほども述べたように、乱射状態ではあるものの、銃を撃つこともCゾンビはできる(もちろん、生前の残った記憶だけでそうしているだけで、当の本人は自分が何をしているか全くわからないらしい)。

 善場:「どうやってCウィルスを取り込んだのかは不明ですが、どうやら『8番』『9番』はCウィルスを使って攻撃してくるようです」
 愛原:「気を付けることは?」
 善場:「Cウィルスは全体的に青いです。青いガスなどを見かけたら注意してください。そこから感染します。因みに、Tウィルスと違って空気感染しかしません。Tウィルスのように、血液感染や接触感染はしません」

 実際、Cウィルスのゾンビが現れた香港やトールオークス市でも、そのゾンビに噛まれた人がゾンビ化した例は報告されていないという。

 愛原:「分かりました。それでは、私達も行きます」
 善場:「その前に、Cウィルスの予防接種をしてください」
 愛原:「あ、ワクチンあるんですねw」
 善場:「Cウィルスの事件が発生したのは2013年で、それはもう解決済みです。当然、ワクチンも開発されています」

 『2番』のリサを除く、人間全員がワクチンを接種した。
 これでもう怖いモノ無しだ。

 『2番』:「『8番』と『9番』、近くにいる。気をつけて」

 リサは鼻をフンフン鳴らしながら言った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「大山寺内を探索」

2020-11-22 12:42:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日11:30.天候:曇 某県霧生市西部郊外 新日蓮宗大本山・大山寺]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「大山寺は意外と無事なんですね」
 善場:「そのようです」

 西部郊外の山の中腹に位置する山寺、大山寺。
 駅前が荒れ果てている中、こちらは本当にただの廃墟といった感じだ。
 所々に白骨死体が落ちているのは、餓死したゾンビやクリーチャーなどであろう。
 さしものゾンビも腐乱死体で徘徊することはあっても、白骨死体で歩き回るということはないようだ。

 愛原:「でも、ここにリサ・トレヴァーはいませんでしたよ?」
 善場:「それは所長達が気が付かなかっただけのことです」
 愛原:「んん?」
 善場:「この広いお寺を総合的に監視する場所があるはずです。所長は御存知ですか?」
 愛原:「あ、はい。それはもう」

 それは大講堂の地下だろう。
 あそこには警備室があって、境内を全体的に監視していた。
 私は大講堂を案内した。

 高橋:「この寺でアネゴと初めて会ったんでしたね」
 愛原:「そうだ。懐かしいな。忘れもしない。……きっと、一生忘れないんだろうな」
 善場:「高野事務員が、どうして大山寺に来たか知っていますか?」
 愛原:「確か彼女は地元の新聞記者で、このバイオハザードの真相がこのお寺に隠されていると知って来たって言ってたような……」

 実際はこの寺というよりは、鉄道トンネルの中にあったのだが。

 善場:「そうですか」

 善場主任はそれだけ言った。
 大講堂に到着する。
 入口のガラスは割られ、シャッターも破られていた。
 私達がここを出てから、何者かが侵入したりしたのだろう。
 もう誰もいないはずだが、私達は一応警戒しながら、地下の警備室に向かった。
 既に境内は停電しており、マグライトを装備している。

 愛原:「ここが警備室です。……って、わっ!?」

 地下の警備室はメチャクチャに荒れていた。
 よく見ると、血の跡などがあっちこっちに見受けられる。

 愛原:「何だこれ!?俺達が来た時はこんなんじゃなかったぞ!?」
 『2番』:「ハンターの臭いが残ってる。ここにハンターが侵入したんだ」
 愛原:「ハンターだって!?」

 私達が出た後、奴らが侵入してきたというのか。
 一体どうしてだ?

 善場:「やられましたね」

 善場主任は散乱した書類やら何やら探していたが、その中から1枚の紙を取り出した。
 そこには、こう書かれていた。

 『敵を探してハンター連れて来た。いなかった。でも取りあえず、カメラの機械は壊しておいた。「1番」に頼まれた。 7番』

 『2番』:「『7番』のしわざか!」

 『7番』はハンター達を使役する。
 でも確かに、タイラントを使役する『2番』のリサから見れば弱い部類なのだろう。

 愛原:「『1番』に頼まれたというのは?」
 善場:「私達の調査では、この寺の境内に『1番』が来たことを把握しています。その動きを押さえる為、ここのカメラの録画ビデオを押収しようと思っていたのですが、『1番』も同じ事を考えていたようです」
 愛原:「頭いいんですね」
 善場:「……ええ。私が『1番』の脅威的な所は、『人間と何ら変わらない思考』であることだと考えています」
 愛原:「『人間と何ら変わらない思考』?」
 善場:「『2番』のリサもそうではあるのですが、でも、やはり感覚が普通の人間とズレている部分はあるでしょう?」
 愛原:「確かに……」

 ただ、教育して修正できるレベルではあるので、それで学校に入れて教育させるプランが発動している。
 でも今でもたまに羞恥心が欠如していたり(今では無くなったが、かつては私の前で平気で裸になっていた)、食生活がズレていたり(生肉を食したり)することはあるな。

 高橋:「姉ちゃん、機材はダメだ。全部ぶっ壊れてやがる。中のDVDもごっそり無くなってるぜ」
 善場:「それは残念です。ここでの探索は無意味なものとなりました。引き上げましょう」

 私達は警備室を出た。

 愛原:「『1番』はここへ何しに?」
 善場:「『1番』こそ五十嵐社長達の忠実な下僕だったわけです。バイオハザードの最中、日本アンブレラの悪事の露呈防止に動いてたのでしょうね」
 愛原:「その割には栗原さん達を捕食したり、悪事を重ねてますけど?」
 善場:「リサ・トレヴァー達にとって、食人はただの食事です。悪事でも何でもないのですよ」

 再び大講堂のエントランスホールに出る。
 そこでは栗原姉妹が待っているはずだが、何故かいなかった。

 愛原:「あれ?いない」

 しかし、『2番』リサがフンフンと鼻を鳴らして言った。

 『2番』:「トイレにいるみたいだよ」
 愛原:「何だ、そうか」

 すると、トイレの方からライトを持った栗原姉妹が出て来た。

 栗原蓮華:「妹がトイレに行きたいと言って……。でも、水が流れないんですよ」
 善場:「そりゃそうですよ。今はライフラインは全て止まってる状態ですから。HQに行けばトイレもありますよ」
 愛原:「BSAAの本部か。どこにあるんですか?」
 善場:「ここの境内ですよ」
 愛原:「え?」
 善場:「市街地は他のリサ・トレヴァーやBOWが現れています。今現在、安全が確保されているこの境内にHQが設置されました」
 蓮華:「早く言ってくださいよ」
 善場:「申し訳ありません。午前中までに、『1番』の動きを押さえておきたかったのです。で、それは無理だと分かりました。次はHQに向かいましょう。そこで休憩を取ります」
 愛原:「ちょうど昼休みくらいの時間だな」

 私達は大講堂の外で待っているBSAA隊員に先導されてHQに向かった。

 『2番』:「老廃物なら、私が吸い出してあげるよ」

 ヒョイと栗原姉妹の前に現れる『2番』のリサ。

 栗原愛里:「ひぅ……!」

 びっくりした愛里が姉の後ろに隠れる。

 蓮華:「ちょっと!妹に近づかないで!斬るよ!」

 蓮華はスカートの腰の部分にベルトを通し、そこに刀を差している。
 歩く度にカチャカチャと音がした。
 それが二重に聞こえるのは、左足の義足からも金属音がするからだろう。
 動きだけ見ると、まるで義足ではなく、本物の足みたいに見えるから不思議だ。
 ベルトで腰の部分を上げているのでその分、裾が短くなっているが、義足を隠さないのは、偏に『1番』に対する主張の意味が大きい。
 いくら『2番』を除くリサ・トレヴァー達が多くの人間を捕食してきたとはいえ、左足しか食わなかったことは憶えているだろうから、それで的確に仇討ち相手を探すという意味が込められているんだな。

 愛原:「いいから、リサ。こっちに来い」
 『2番』:「はーい」

 私はリサを引き寄せて、栗原姉妹から離した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「霧生ハイウェイの戦い」

2020-11-21 22:26:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日10:30.天候:曇 某県霧生市西部郊外 県道(霧生バイパス)]

 『7番』のリサ(以下、『7番』とする):「がっ……!」

 おきゃんな感じで登場したリサ・トレヴァー。
 しかしその仮面を善場主任がいきなり打ち壊した。
 仮面の内側には『7』という番号が印字されていたようだ。
 すると、こいつは『7番』か。

 善場:「無駄口叩くなら、こちらの質問に答えなさい。『1番』はどこ?」
 『7番』:「さあね。でも、『0番』なら知ってるよ」

 善場主任、更に手持ちのハンドガンをバンバン『7番』に発砲する。
 心なしか、善場主任が動揺しているような気がする。
 ポーカーフェイスの彼女は、その表情からはなかなか読み取れないのだが。

 栗原蓮華:「化け物は斬る!」

 仮面の下は鬼だった。
 両目はうちの『2番』と違って金色の瞳だが、ニヤけた顔からはしっかり鋭い牙が覗いている。
 そして、額の上には角が2本生えていた。

 『7番』:「ヒドーイ!化け物なんて!せめて『鬼』って言ってよ!」
 蓮華:「うるさい!同じようなものだ!」

 蓮華さんは本物の右足や義足の左足を踏み込んで、『7番』に斬り掛かる。
 『2番』のリサも両手の爪を鋭く尖らせて、『7番』に掛かった。
 オリジナル版のリサ・トレヴァーは普段の動きは緩慢だったそうだが、いざ戦闘となれば人外的な跳躍力や怪力を振るったという(それでも何故か、特殊部隊員達を先回りしていたことがあったらしいが)。
 しかし日本版の彼女らは、俊敏性も備わっている。

 『7番』:「ピィーッ!」

 『7番』が指笛を吹いた。
 すると!

 ハンターα:「ガァッ!」
 ハンターβ:「ガウゥウ……!」

 高架となっている道路の下からハンターが2匹飛び上がって来た。
 どうやら『7番』はハンターを使役できるらしい。

 愛原リサ(以下、『2番』とする):「私に任せて!」
 蓮華:「……頼む」

 蓮華さんは『7番』に集中し、ハンター達は『2番』のリサやBSAA隊員達が対応した。

 蓮華:「本当に『1番』を知らないのか!?私の兄弟を食い殺し、私の左足を食い千切ったヤツだ!」
 『7番』:「知らないよ。でも、『0番』は知ってるよ」
 蓮華:「だったら『0番』はどこだ!?」
 『7番』:「私に勝ったら教えるって言ったじゃない。……あら?もうやられちゃった」

 ハンター2匹はリサとBSAA隊員達に倒されてしまった。

 『7番』:「もういっちょ!」

 『7番』が再び指笛を吹くと、今度はハンターγの他、ファルファレルロというインビシブルタイプのハンターも現れた。
 これは止まっている時、動いている時は姿を消すことができるハンターのことである。
 但し、攻撃する際や、攻撃を受けた際に姿を現してしまう。

 BSAA隊員A:「消えた!?」
 BSAA隊員B:「くそっ!見えない!」
 BSAA隊長:「落ち着け!」
 『2番』:「私に任せて!」

 『2番』のリサは鼻が利く。
 例え姿を消すことができるハンターであっても、臭いまでは消せず、リサ・トレヴァーには誤魔化せなかった。

 『2番』:「そこだっ!」

 『2番』のリサは空間に対し、鋭く尖った自分の爪を振り下ろした。

 ファルファレルロA:「ギャッ!」

 顔を『2番』のリサに引っ掛かれたファルファレルロAは、顔から血を流して姿を現した。
 しかし気を取り直して、再び姿を消そうとする。

 隊長:「させるか!撃てっ!撃てっ!」

 BSAA隊員達がファルファレルロAに対して、マシンガンやショットガンの集中砲火を浴びせる。

 ハンターγ:「グワーッ!」
 高橋:「しゃらぁーっ!」

 ハンターγは高橋を丸呑みにしようと口を大きく開けて近づいてきたが、高橋がそいつの口の中にマグナム44を撃ち込んだ。

 善場:「その調子です!」

 善場主任も高橋と一緒にハンターγの口の中に撃ち込んだ。

 愛原:「!?」

 しかし私は背後に気配を感じて、思わず振り向き様、手持ちのショットガンを発砲した。
 それが人間だったらエラいことになっていたが、幸いそいつは人間ではなく……。

 ファルファレルロB:「ギャッ!」

 消えるハンターだった。
 それは一匹だけではなかったのだ。

 愛原:「ここにもいやがった!リサ!」
 『2番』:「今行くよー!」
 高橋:「先生!よく気が付きましたね!?さすがっス!」
 愛原:「第六感か……」

 『2番』のリサが私の所へ走って来る。
 手は血だらけだったが、自分がケガしたのではなく、ハンターを引っ掻き殺した際の血だ。
 その血を舐めとるリサ。

 『2番』:「ちっ、マズい。さすが化け物」
 愛原:「そりゃそうだろ」
 『2番』:「やっぱり先生の血が一番美味しそう。てか、絶対美味しい」
 愛原:「勝手に美味認定すんな。とにかく、あのハンターも倒してくれ」
 『2番』:「うん。先生の命令は絶対。報酬は?」
 愛原:「ん!?」
 『2番』:「報酬」

 リサはまるで小遣いをねだるかのような仕草をした。

 愛原:「分かった分かった。また、マッサージで俺の老廃物吸っていいから」
 『2番』:「やった!契約成立ぅ!」

 『2番』のリサは喜び勇んで、もう一匹の消えるハンターの所に走って行った。
 そして彼女は、私の命令通り、そいつに対して『流血の惨』を見舞わせたのである。

 『7番』:「ぐっ……!」

 『7番』のリサの胸に日本刀を突き刺した蓮華。

 蓮華:「あんたがこのくらいでは死なないことは分かってる。だけど、実力差は分かったはずだ。さあ!『0番』がどこにいるか言え!」
 『7番』:「『0番』ね。すぐ近くにいるよ。分かんないの?」
 蓮華:「は?」
 『7番』:「ほら。すぐそこにいるじゃない」

 『7番』はある方向を指さした。
 だが、蓮華はその方向を見ない。
 その隙を突いて攻撃してくることは明らかだったからだ。

 『7番』:「引っ掛からなかったか」
 蓮華:「当たり前だ!フザけるな!」

 蓮華はそう言って『7番』の首を跳ね飛ばした。
 ゴロンと首は道路の上に落ち、残った首からしたはドッと道路の上に倒れた。
 首からはどす黒い血が噴き出している。

 『7番』:「ウソは付いてない……よ……。本当に、すぐ近くに……『0番』は……いる……。『1番』は……いない……」

 『7番』のリサはドロドロに溶けていった。
 死んだら骨すら残さず消えるのが、人工生物兵器たるBOWの宿命なのである。

 蓮華:「っ……!」

 蓮華は『7番』が指さした方を振り向いた。
 そこにいたのはBSAA隊員達以外の全員であった。
 即ち、そこに私も含まれている。
 もちろん、私はリサ・トレヴァー『0番』なんかではない。
 左腋の下にそんな番号、入れ墨なんかされていない。
 もちろん、高橋も違う。
 旅行に行った時、一緒に大浴場に入ったことがあるが、あいつの左腋の下には何も無かったはずだ。
 となると、残りは……。

 善場:「すぐにHQに報告を!」
 隊長:「少々お待ちください」
 栗原愛里:「終わったの……?」
 蓮華:「愛里!トラックの中にいな!」
 愛原:「蓮華さん。きっと『7番』は、キミを惑わす為にあんなことを言ったんだ。あるいは、もっと向こうの方にいるのかもしれないよ?BOWの感覚は、人間のそれとはズレてるから」
 蓮華:「そうかもしれませんね。あいつらは平気でウソを吐きますから。人間を好きなだけ食う癖に、いざ自分が殺されそうになったら、助かる為に平気でウソを吐く。『3番』も『5番』もそうでした」
 愛原:「これでキミが倒したのは、『3番』『5番』『7番』か。奇しくも奇数だね。でもこの流れで行けば、『1番』も奇数だから、きっと倒せるよ」
 蓮華:「そうしたいです」
 愛原:「だから、『2番』のリサは偶数だから殺さないでね?」
 蓮華:「それは、本当に人を食わないことが分かったら約束します」
 愛原:「大丈夫だよ」

 でもやっぱり代わりの餌は必要か。
 人間にとって老廃物は必要の無いものだし、『2番』のリサがそれで満足だって言うなら、それは妥協してあげてもいいような気がする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする