報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「急展開」

2020-09-25 20:05:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日09:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 仙台コロナワールド(キャッスルイン仙台)]

 昨夜、仙台の地下鉄がBOWに襲われた。
 時間帯的に、あれ?と思うところがあった。

 高橋:「先生、リサとビアンガキは散髪に行きました」
 愛原:「そうか。今から大体2時間くらいってとこか」
 高橋:「そうっスね。で、俺達はどうします?」
 愛原:「情報収集だよ、そりゃ」

 私はホテルの客室にいる。
 ここならネットもテレビもあるので、チェックアウトギリギリまでいようと思う。

 善場:「おはようございます、愛原所長」
 愛原:「善場さん、おはようございます」

 私のスマホに善場主任から電話が掛かってきた。

 愛原:「今朝のニュースですが、やっぱりBOWのしわざで間違い無いですか?」
 善場:「はい。BSAAの報告では間違い無いようです」
 愛原:「BOWはハンターですか?」
 善場:「いえ、G生物の原型……つまり、リサ・トレヴァーの原型と言って良いものだと思います」
 愛原:「私達が調査した地下道と関係があるんですね?」
 善場:「はい。所長達が調査された際、屋敷に向かう方が崩れていたわけですね?」
 愛原:「そうです」

 その為、私達は屋敷跡へ向かうのを豪快に挫折したのだ。

 善場:「BOWはその崩壊の向こう側、つまり屋敷跡から来たようです。瓦礫を壊して来たということですね。そして例の地下道を進み、行き止まりの壁を壊して突き進んだ。その先が地下鉄のトンネルだったわけです。そこへたまたまやってきた電車を襲ったということでしょう」
 愛原:「それなんですが、あれ?と思うことがありまして……」
 善場:「何でしょう?」
 愛原:「襲われた電車というのが、もしかしたら私達が乗っていたヤツかもしれないんですよ」
 善場:「と言いますと?」
 愛原:「もし私達が一泊せず、昨日中に帰ろうとしたならば、最終の新幹線にしようと思ったんです。仙台21時47分発“やまびこ”70号ですね。もしも私達がコロナワールドで一泊せず、最終の新幹線で帰ろうとしたなら、多分乗っていたと思います。……偶然ですかね?」
 善場:「その確率は高いですが、一応お聞かせください。宿泊することになったのは何故ですか?」
 愛原:「斉藤社長から娘さんのお守りを頼まれたからです。八丈島だけでなく、仙台でもということでね」
 善場:「なるほど。斉藤社長ですか……」
 高橋:「先生、先生」

 高橋が私の肩を叩く。

 愛原:「何だよ?」
 高橋:「あれを!」

 高橋がテレビを指さした。
 そこでは今話題の地下鉄の事件のことをやっている。
 今、被害者の名前がで出ているところだった。
 それを見ると……。

 愛原:「五十嵐親子!?」
 善場:「は?」
 愛原:「今、テレビで五十嵐親子がその電車に乗っていて、襲われて意識不明の重体って出てます!」
 善場:「その情報は初めてです。すぐに向かいます。というか、もう向かっている最中ですけど」
 愛原:「ああ、それで新幹線の走行音が聞こえるんですね」

 ちゃんとデッキに出て話をしているようだ。

 善場:「しかし参りました。確かにあの親子が都内にいないというのは分かっていました。しかし、まだ仙台にいたとは……」
 愛原:「そうですね。しかも車で来たはずなのに、どうして地下鉄に乗っていたのやら……」
 善場:「五十嵐親子は、あのタイミングでBOWが襲ってくることを知っていたのかもしれませんね。それで自分達で対処しようとして、逆にやられてしまったか。旧アンブレラ関係者にはよくある末路です。……まだ、亡くなってはいないようですが」
 愛原:「どこの病院に運ばれたんでしょうね」
 善場:「それはこちらで調査します。愛原所長方は、今の任務を優先してください」
 愛原:「分かりました」

 さすがに、もう民間の探偵業者の出る幕ではないか。

 愛原:「あっと、すいません。ちょっと着信が入りました。また後で情報が入りましたら……はい、よろしくお願いします」

 私は一旦電話を切った。

 愛原:「もしもし。お待たせしましたー」
 斉藤秀樹:「ああ、愛原さん。お忙しいところ、失礼します」
 愛原:「斉藤社長、おはようございます」
 秀樹:「仙台の方ですが、大変なことが起きたようですな」
 愛原:「はい。ですが、私達は無事です。ただ、地下鉄が不通になってしまったので、どうやって仙台駅まで行こうか悩んでいるところですが……」
 秀樹:「何でしたら、娘のタクシーチケットを使ってください」
 愛原:「ありがとうございます。ですが、なるべく公共交通機関を使いたいと思います」
 秀樹:「そうですか。ですが、あまり無理はなさらないでください。それより、五十嵐氏の埼玉県の住所がわかりましたよ」
 愛原:「おおっ、さすが斉藤社長です」
 秀樹:「今から言いますので、メモしてください」
 愛原:「はい!」

 私はメモ用紙を用意した。
 部屋の電話機の横にそれはある。

 愛原:「埼玉県川口市……ですか。本当に川口ナンバーですね」

 個人商店として薬局を営んでいるらしい。

 愛原;「その五十嵐親子ですが、昨夜の地下鉄事故に巻き込まれて意識不明の重体だそうです」
 秀樹:「何ですって!?」
 愛原:「私も信じられないんですが、今テレビでやってますよ」
 秀樹:「意識不明の重体……何てことだ……」
 愛原:「せっかく色々な情報が聞き出せると思ったのに残念です」
 秀樹:「口封じ……」
 愛原:「え?」
 秀樹:「いや、もしかしたら、誰かが愛原さん達に情報が流れるのを恐れて口封じをしたのかもしれないと思いまして」
 愛原:「社長、そのような者に何か心当たりが?」
 秀樹:「未だに謎の組織というのは存在しますからね。そういった所から見れば、五十嵐氏の存在を快く思わない者もいると思うんですよ」
 愛原:「! 未だに国内にいるという、旧アンブレラ関係者……!?」
 秀樹:「五十嵐氏を見限った……ね。五十嵐氏は英断だったと思いますが、反発者達は『会社倒産を阻止できなかった無能者』で、尚且つ『しかも元社長の立場で、危険な情報を握っている爆弾』と思っても不思議ではありません」
 愛原:「何か複雑ですね」
 秀樹:「愛原リサさんの価値は、BOWとして最高の物です。けして悪用を考えている奴らに取られないよう、注意してください」
 愛原:「わ、分かりました」

 私は電話を切った。
 リサは将来、善場さんの所属する政府機関で働くことが決まっている。
 それでいいはずだ。
 問題は、他の奴らも狙っているということか。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台最後の日」

2020-09-25 16:02:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日08:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は宮城での仕事を終え、やっと帰京できる日だ。
 私と高橋、そしてリサと斉藤絵恋さんは2Fのレストランで朝食を取っていた。
 ここ最近のホテルは、朝食サービスを付ける所が多い。

 高橋:「昨夜はお楽しみだったのか?」
 斉藤:「危うくリサさんに食べられるところでしたぁ……」(´∀`*)ポッ
 リサ:「おい」

 真相はどうだったのかというと……。

 リサ:「サイトーが『抱いて』『食べて』ってうるさかったので、触手で縛り付けておいた」

 リサは自分の背中を指さした。
 リサの背中には痣があるのだが、これはただの痣ではなく、触手を収納している所。
 アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーも、背中から触手を生やして特殊部隊に攻撃したという。

 高橋:「緊縛プレイ!?最近のJCはやるなぁ!」
 愛原:「高橋、公共の場で18禁の話を堂々としない」
 高橋:「さ、サーセン」
 愛原:「リサも、だからって正体を曝け出して触手を出すのは如何なものかと思うぞ?」
 リサ:「それは……」
 斉藤:「ち、違うんです、先生!私が悪いんです!リサさんは悪くありません!」

 オリジナル版もどうだったのかは知らないが、リサは触手からも人間を捕食できる。
 細い触手を耳の穴に突っ込み、獲物の脳髄をちゅるりと吸うのだとか……。
 そのリサ、今朝は髪形を変えて来た。
 昨日まではロングを二つ結びにしていたのが、今はポニーテールになっている。

 愛原:「分かった分かった。それよりリサ、髪形変えたんだな?」
 リサ:「先生の大好きな『マリンちゃん』の髪形。これでいいでしょ?それとも金髪に染める?胸は……どうせ私は小さいもんね」

 リサはジト目で私を見た。

 斉藤:「リサさんはどんな髪形も素敵よ!金髪!?斬新でいいわね!」
 愛原:「リサ、俺が悪かった。確かによく似合う。だけど、やっぱりお前は好きな髪形をしてくれ」
 リサ:「コロナワールドに美容室があった。私はやっぱり短くしたい。……そう。先生と最初に会った頃の髪形」

 ショートボブか。
 あの時のリサはまだJSだったな。
 いや、学校自体行ってなかったのか。
 あの頃と比べて、リサも大きくなったなぁ……。
 体内に宿しているTウィルスとGウィルスの混合ウィルスのせいで、体の成長が遅いと言われているが、見た目はそんなこと無いがな。
 体型や身長は、現代の女子中学生の平均である。
 空手黒帯の斉藤さんの方が背が高く、肉体的にも筋肉質な所が見受けられるが。
 因みにリサの戦い方が斉藤さんのそれと似ているのは、やはり斉藤さんから申し訳程度の手ほどきを受けているかららしい。
 よく学校などでそうしているそうだ。

 愛原:「分かったよ。リサがそれでいいというなら、そうするといいよ」
 リサ:「やった!サイトーのメイドさんくらい切る?」
 高橋:「それはダメだな。真珠とキャラ被りは良くねーよ」

 高橋が猛反対した。

 斉藤:「ベリーショートのリサさんも素敵……
 愛原:「要はあれだろ?おかっぱにするってことだろ?それでいいよ。……それで、白い仮面を着けてくれるのかな?」
 リサ:「! い、嫌だ……」

 リサが途端に怯えだした。
 白い仮面とは私がリサと初めて会った時、リサが着けていた仮面のこと。
 目の部分が横長に開いただけの能面である。
 それで顔を隠した状態で、彼女は私と高橋の前に現れた。
 服装は夏用のセーラー服を着ていたが、要はこれが彼女達のような少女実験体が研究所内で着用を許された服装だという。
 仮面は制御装置である。
 この2つは今でも家にある。
 さすがにセーラー服はサイズが合わなくなり、もう着れなくなってしまったが。
 もしも東京中央学園の制服がブレザーではなく、セーラー服だったらリサは通うのを諦めたかもしれない。
 それくらいのトラウマだ。

 愛原:「冗談だよ」
 斉藤:「リサさんのセーラー服も似合いそう……」
 愛原:「似合うよ。だけど本人がもう着るのを嫌がってるからね」

 それでもだいぶ前、無理を承知で着てもらったことがあるが。
 その時でも既にサイズはキツキツだったな。
 だから、ちゃんとリサの体は成長しているということだ。
 中高一貫の東京中央学園でも、高等部になるとブレザーがダブルに変わるのはそういった理由もあるのかもしれない(つまり、高等部用のブレザーを買い直さないといけないが、子供の体の成長の関係で、既に中等部用の制服が合わなくなっていることが多いので、理には適っている。尚、下のスラックスやスカートのデザインは共通)。

 斉藤:「そうだ。リサさんが髪を切るなら、私も切ろうかな」
 リサ:「サイトーは……その髪形でいいんじゃない?セミロングで」
 斉藤:「でも少し伸びたのよ。ね?一緒に切ろうよ」
 リサ:「まあ、いいけど……」
 斉藤:「あ、自分のお金は自分で出しますから。何だったら、リサさんの分も出します」
 愛原:「いや、それはいいよ」

 その時、高橋がテレビを観て驚いた。

 高橋:「せ、先生!あれを!」
 愛原:「ん?」

〔「……昨夜9時15分頃、仙台市若林区の地下鉄東西線のトンネルで、突然化け物が走行中の電車を襲いました」〕

 愛原:「ファッ!?」

〔「……現場となったのは地下鉄東西線、薬師堂駅~連坊駅間のトンネルで、突然トンネルの側壁を破って出て来た化け物が、走行してきた八木山動物公園行きの電車を襲いました。この事件で乗員乗客合わせて5人が死亡、25人が重軽傷で病院に運ばれています。現在地下鉄東西線は始発から運転を見合わせています。尚、化け物は一時トンネル内を徘徊していましたが、出動したBSAA極東支部日本地区本部の部隊によって、午後11時30分頃に殺処分されました。現場はガス爆発が発生した場所と程近いことから、警察とBSAAでは何らかの関連があるものと見て、捜査を進めています」〕

 高橋:「え?ハンターがどこかにいたんですか?」
 愛原:「ハンター……なのかな」
 高橋:「ど、どうします?電車、動いてないっスよ?」
 愛原:「そ、そうだな……」
 斉藤:「タクシーチケットで……」
 愛原:「い、いや、それには及ばない。恐らく、代行バスくらいは出ているだろうから、それで仙台駅に向かおう」

 後で私は善場主任に電話してみることにした。

 愛原:「とにかく、キミ達は散髪していいから」

 地下鉄が不通だと、そう簡単には帰れないだろうからな。
 あと、情報収集の時間も欲しいから、ちょうど彼女らの散髪に掛ける時間は渡りに舟だ。
 とはいえ、ハンターねぇ……。
 確かにあの地下道にはハンターがいたけど、全部倒したと思ったのになぁ……。
 ハンターじゃないのか?
 テレビだと化け物としか言っておらず、実際の映像は出ていないからな。
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“私立探偵 愛原学” 「皆で過ごす最後の夜」

2020-09-23 20:50:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日19:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 仙台コロナワールド(D’STATION)→同施設内(ウェルキッチン)]

 愛原:「ちくしょう!俺だけ赤字じゃん!」
 高橋:「そういう日もありますよ、先生」

 テナントのパチンコ屋に入ったのだが、私はボロ負けで高橋だけウハウハだった。
 4円パチでウハウハできるって、どんだけだよ。

 高橋:「後でバックさせて頂きますんで、先生」
 愛原:「悪いな」

 景品交換所で現金と換える高橋。

 高橋:「先生も回転数の良い台を選べばいいのに……。そんなに“海物語”に固執する必要あります?」
 愛原:「だってマリンちゃん好きなんだもん!しょーがねーべよ!」
 高橋:「俺という者がありながら、あんな二次元キャラに……」
 愛原:「悪かったな、ヲタクで!てか何だよ!?『俺という者がありながら』って!気持ち悪いな!」
 高橋:「センセ、ヒドいっス!」
 愛原:「お前には霧崎さんがいるだろうが!」
 高橋:「あれはただのセフレです」
 愛原:「真顔で言うなや!セフレだったら中田氏すんなや!」
 高橋:「あれはハメられたんスよ。てか先生、マリンちゃんが好きってことは、ああいうタイプの女イチオシってことで?」
 愛原:「まあ、そうだな」
 高橋:「嫁にするなら、あのタイプってことですか?」
 愛原:「見た目で選ぶとするならな」
 高橋:「なるほどなるほど。俺の人脈探せば、あれと似たタイプの女をセフレとして紹介できるかもしれません」
 愛原:「一瞬期待しかけたけど、お前の知り合いって男女不問で目つき悪いからやめておくよ」

 目つきの悪いマリンちゃん。
 いやだ~。
 その時、私達は背筋に寒気を感じた。
 それは、背後からボスクラスの強大なBOWが現れた時のそれに似ていた。

 リサ:「『先生にお嫁さん』って……聞こえたけど……?」(# ゚Д゚)

 リサは第0形態でありながら、両目の瞳を赤く光らせ、両手の爪を長く鋭く伸ばしていた。

 高橋:「ま、まあ、所詮パチンコの話っスからねー!」
 愛原:「そ、そう!お、俺は生涯独身まっしぐら!」
 リサ:( 一一)

 リサ、近くにあったベンチを爪で真っ二つ!

 リサ:「生涯独身じゃないでしょ?先生のお嫁さんは、私ただ1人なんだから」
 愛原:「い、いや、だから何度も言ってるだろ。お前は俺の娘として……」
 リサ:「ここで第3形態まで変化して暴れてやる……!」
 愛原:「わーっ!分かった分かった!後で話し合おう!な!?な!?」

 私は何とかリサを宥めすかした。
 その後でトイレに行っていた斉藤絵恋さんと合流すると、私達は別のテナントである飲食店に行って夕食を取ることにした。
 券売機で食券を買うタイプらしい。

 愛原:「何がいい?」
 リサ:「ハンバーグ定食!」
 絵恋:「私もリサさんと同じので。……あ、私は自分で出します。父からそう言われてるので」

 リサのヤツ、昼はカレーバイキングで、夜はハンバーグ定食か。
 さっき変化しかかったから、少しエネルギーを消費したか?

 愛原:「危うくリサを暴走させるところだった……」

 私は未だに震える手で、醤油チャーシュー麺を注文した。

 高橋:「先生。もういっそ『リサを嫁』でいいんじゃないですか?もしくは、『性奴隷』とか」
 愛原:「最後の一言が余計だ。全く。他人事だと思って……」
 高橋:「サーセン……」

[同日20:00.天候:晴 同場所同施設 大江戸温泉物語・露天風呂(男湯)]

 夕食を終えた私達は一旦ホテルに戻り、タオルなどを持って温泉施設に向かった。
 フロントで宿泊者専用のカードキーを受け取る。
 ホテルと施設とを繋ぐ電子ロックのドアを開ける為の物だ。
 これで宿泊者以外の者が出入りするのを阻止するわけである。
 で、さすがにリサ達とは脱衣所の入口で分かれる。

 愛原:「ふぅ~。温泉はいいねぇ~」
 高橋:「……ですね」

 さっきのレストランもそうだが、露天風呂にも大画面のテレビが点いていて、そこで何かのバラエティ番組をやっている。

 高橋:「先生。さっきの『リサを嫁』の話ですけど、ぶっちゃけリサって、オバハンなんですよね?」
 愛原:「あの『お化け屋敷』にあった写真が、リサと同一人物だったらな。俺よりも10歳は年上だ。アラフォーどころか、アラフィフだよ」

 旧アンブレラに拉致された際、色々な人体実験を繰り返されたおかげで、体の成長や老化が極端に遅くなり、未だに14~15歳の姿をしている。
 人間に戻れた場合、今の人間形態の姿から加齢がカウントアップされるとのことで、いきなりアラフィフまで歳を取ることはないらしい。
 それはアメリカのシェリー・バーキン女史も同じとのこと。

 高橋:「てことは、今更気にすることないじゃないですか。見た目に騙される必要はないですよ」
 愛原:「リサの戸籍、作り直されたから、戸籍上の年齢も今の見た目年齢のままだぞ?」
 高橋:「ここだけの話ですが、リサのヤツ、俺達……特に先生の前ではいいコぶってますが、学校では結構エゲつないらしいですよ」
 愛原:「何だって?」
 高橋:「噂じゃ、イジメの加害者だとか……」
 愛原:「おい、それ本当かよ?」

 リサが人心掌握術に長けているのは何となく分かっていた。
 しかし、イジメの加害者はダメだな。

 高橋:「ただ、被害者はあのビアンガキで、リサにイジメられてヒーヒー喜んでるらしいです」
 愛原:「そっちかよ!」
 高橋:「JCで既にSMプレイ楽しんでるんですよ?どうします?」
 愛原:「……斉藤さん以外のガチ被害者が、もしも出るようなら考えよう!」

 リサには人間を襲ってその血肉を食らうのは一切禁止であると言い伝え、約束してある。
 もしも破るようならリサはその場で殺処分され、俺達とはもう一緒に暮らせなくなるのだと。
 いいコで約束を守っているように見えるが、こりゃひょっとすると万が一、それを破ってしまうことも考えないといけないのだろうか。

 高橋:「先生、洗い場に行きませんか?お背中、お流しします」
 愛原:「おー、そうか。じゃあ、またお願いしようかな」
 高橋:「はい!」

 私達は一旦、岩風呂から出て内湯に向かった。
 露天風呂には洗い場が無いからだ。

 高橋:「先生、きっとあいつら、部屋でレズプレイ楽しむつもりですよ?」
 愛原:「ヘタに介入してリサの機嫌を損ねて暴走させたり、斉藤さんの機嫌を損ねて報酬をもらい損ねるわけにはいかん。ここは、知らんぷりを決め込むこととする。お前はもう何も言うな。分かったな?」
 高橋:「は、はい」
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“私立探偵 愛原学” 「風評被害、大変かと思われ」

2020-09-22 20:42:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日16:25.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 仙台コロナワールド(キャッスルイン仙台)]

 私達を乗せたタクシーは無事にホテルのエントランス前に到着した。
 料金は斉藤絵恋さんが持って来たタクシーチケットで払う。
 見ると、クレジット会社が発行しているチケットのようだが……?

 運転手:「はい、チケットのご利用ですね。では、御記入お願いします」

 私も使ったことの無いタクシーチケット、それをまだ中学生の絵恋さんが慣れた手つきでスラスラと書く。
 因みに私が若かりし頃、まだ警備会社に勤めていた時、当時の上司から面白い話を聞いたことがある。
 その上司は所謂バブル世代で、当時は全く別の仕事をしていたそうだが、その会社では若手社員でも自由にタクシーチケットが利用でき、接客態度の良い運転手に当たると、半分冗談でチケットの金額欄に0を1個、チップのつもりで書き足してやったそうだ。
 さすがにそれは運転手としてもマズいらしく、大抵の運転手が慌てて書き直させて来たそうだ。
 私はそんなことを思い出しながら、絵恋さんの記入を興味津々に見ていた。
 さすがに0を1個、書き足すようなことはしなかったが。
 しかし、そんな私の様子をリサがキッと睨みつける。

 リサ:「先生、あんまりジロジロ見ないで!」
 愛原:「す、すまん!」

 もちろん、アラフォーオヤジがJCの手つきに下心満載で見つめていたわけではない。
 純粋に昔の話を思い出していただけだったのだが、しかし当のJC側から見れば、エロオヤジがエロい目で見てキモい!とでも思ったらしい。
 私は慌ててタクシーから降りた。

 高橋:「先生、荷物は降ろしておきましたよ」
 愛原:「あ、ああ、すまない」

 助手席に乗っていた高橋が真っ先に降り、トランクから荷物を降ろしていた。

 高橋:「何かあったんスか?」
 愛原:「い、いや、俺みたいなオヤジが、思春期の女の子をジロジロ見るのはマズいなぁ……と」
 高橋:「先生は気にすることないですよ。リサにとっては御褒美でしょうし、ビアンガキにとっては、こっちはお守りしてやってるんスから、ガン見くらい先生にサービスさせろよって感じです」
 愛原:「……高橋、ちょっと日本語おかしいぞ」
 高橋:「ええっ!?」

 JC2人が降りて来る。

 リサ:「お待たせ」
 斉藤絵恋:「お待たせしましたー!」
 愛原:「じゃ、じゃあ早速チェックインしようか。悪いね。宿泊代まで出してもらって……」
 絵恋:「いいんですのよ。どうせ父が後で払いますから」
 高橋:「何なんスかね……。今ちょっと一瞬ムカついたんスけど……」
 絵恋:「文句あるのでしたら、お兄さんだけ別料金で」
 高橋:「あぁ!?何だ、レズビアン!」
 絵恋:「何か文句ありますか?バイセクシャルのお兄さん」
 愛原:「まあまあまあまあ!」

 LGBT同士が仲が良いとは限らない。
 中にはあの運動がウザい、静かにしてくれと言う方も、いらっしゃるらしい。

 絵恋:「うちのパールが、いつ結婚してくれるのかってうるさいんですけど?」
 高橋:「俺に聞くな!俺達の生殺与奪の権は、全て先生が握っておられる!」
 愛原:「俺はまだ許さないからな」

 私達にさんざんっぱら迷惑掛けて、まだ反省が足りない。
 反省文書かせるだけでは、まだ足りないな。

 フロント係:「いらっしゃいませー」
 愛原:「大日本製薬の斉藤で予約を取っている者ですが……」
 フロント係:「はい。斉藤様ですね」

 名義は斉藤社長になっているらしい。
 それにしても斉藤社長、よくこういう所にあるホテル、見つけたもんだ。
 多分、私達が泊まることで、何か斉藤社長に得な部分があるのだろう。
 まあ、確かに何だか宿泊料金は安い。
 しかも絵恋さん、またバッグからクーポン券みたいなものを出してるし。
 私ら庶民には理解できない金の動き方をしているぞ。
 言っておくが、料金的には高級ホテルとは言い難い。
 あくまでも、アミューズメント施設に隣接したビジネスホテルといった感じだ。

 絵恋:「では、お支払いはこれで」
 フロント係:「クーポンご利用ですね。ありがとうございます」
 絵恋:「有料チャンネルは自腹でお願いします」
 愛原:「ああ、分かったよ。多分観ないと思うけど」

 まさかホテルの有料チャンネルでホモビは無いだろうから、高橋が観ることもあるまい。
 ……いや、ベリーショートのメイドさんが【あれやこれ】するAVなら観るかも。

 フロント係:「それでは、こちらが御部屋の鍵でございます」

 このホテルには朝食会場があること、宿泊者は無料で大江戸温泉物語の施設が利用できるという説明を受けた。
 他にもゲームセンターやパチンコ屋があるが、それは全く別とのこと。

 愛原:「そうか。温泉に入れるのか。それじゃ、早速入りに行こうかな」
 高橋:「先生。風呂は夜にして、先に遊ぶという手もありますよ」

 高橋は右手で何かを掴むような仕草をした。

 愛原:「あー、コホン。その手もあるかなぁ……」

 私と高橋の会話の意味に、いち早く気づいたリサが言った。

 リサ:「2人でパチンコに行ったこと、高野さんにバレたら怒られるよー?」
 愛原:「リサ、後で口止め料払うから!」
 高橋:「俺も少し出します!」
 リサ:「私もサイトーと遊びたーい」
 愛原:「わ、分かった。ゲーセンでいいな?」
 リサ:「おー!」

 尚、仙台コロナワールドにはボウリング場もあるのだが、リサにはやらせない方がいい。
 人間形態でありながらその投てき力は凄まじく、ピンどころか、その先の機械を破壊してしまったことがあり、未だに某ボウリング場は出禁である。
 ゲーセンなら、まあ……パンチングマシンさえやらせなければ大丈夫か。

 愛原:「取りあえず、先に荷物を置いてこよう」

 私達はルームキーを手に、エレベーターに乗った。
 私と高橋はいつもの通り、ツインルームだが、リサと絵恋さんはクイーンルームらしい。
 文字通り、クイーンサイズのベッドがある部屋だ。
 そこに2人で寝ることになるわけだが、明らかに絵恋さんの意向が大きく働いているだろう。
 リサが間違って本当の意味で『捕食』しなければいいのだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「新たな仕事」

2020-09-21 19:45:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日15:59.天候:晴 宮城県仙台市若林区荒井 仙台市地下鉄荒井駅]

〔荒井、荒井、大成ハウジング本店前。終点です。降り口は、右側です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います〕

 仙台駅西口バスプールで斉藤絵恋さんと合流した私達。
 彼女の父親である斉藤秀樹社長から、確かに仕事の依頼があった。
 それは予想通り、絵恋さんのお守りであったが、問題はその場所である。
 それは仙台市地下鉄東西線に乗り、東の終点駅に向かうというものらしい。

 

 電車を降りて、地上の改札口を出る。
 平日の夕方のラッシュに差し掛かっている頃だが、あんまり利用者の数は多くない。

 愛原:「あ、もしもし。斉藤社長ですか?愛原ですけど、いつもお世話になっております」
 斉藤秀樹:「おお、愛原さん。今、宮城だそうですね。どうですか?そちらは涼しいですか?」
 愛原:「いや、あんまり東京と変わんないです。って、それよりお嬢さんのことですが……」
 秀樹:「娘から聞きましたよ。引き受けて下さるそうで、ありがとうございます。ちょっと変わった場所になりますが、よろしくお願いしますよ」
 愛原:「それはいいんですが、観光とかでなくていいんですか?」
 秀樹:「娘は友達と遊べればいいんです。それも、愛原リサさんとね。これから行って頂くところは、正に打ってつけですよ。ホテルも併設されてますから、今日一日、時間を気にせず遊べると思います」
 愛原:「分かりました。お引き受けしましょう」
 秀樹:「ありがとうございます。娘には十分なお金を渡してありますから、娘にはお金を使わなくて結構ですよ」
 愛原:「でしょうね。現金を使わなくていいようにしていますもんね」

 タクシーなんて、タクシーチケットだよ。
 どんだけだよ。

 愛原:「ついでに、ちょっとお願いしたいことがあります」
 秀樹:「アンブレラ・コーポレーション・ジャパンの代表取締役社長だった五十嵐皓貴氏のことですか?」
 愛原:「よく御存知で……」
 秀樹:「それも娘から聞きました。そうですね。世田谷に住んでいたことまでは知っていますが、その後のことは知りません。何か愛原さんの方でヒントは無いですか?」
 愛原:「あ、それなら……」

 私は五十嵐親子の車のナンバーを伝えた。

 秀樹:「ほお、川口ナンバーですか。なるほどなるほど……」
 愛原:「何か、お心当たりでも?」
 秀樹:「実は五十嵐家は、代々薬屋を営む家系だったそうなんですよ。それが埼玉県にあると聞いたことはあります。川口ナンバーの地域に限定すれば、意外と早く見つかるかもしれません。そこは私にお任せください」
 愛原:「ありがとうございます!で、でも……」
 秀樹:「心配せずとも、私とてバイオテロを憎む者です。使用者責任逃れをしている者を追い詰める為なら、協力は惜しみませんよ」

 斉藤社長も大企業家。
 恐らく、大企業の社長という同じ立場上、主犯ではないことは知っているようだ。
 しかし、主犯格に主犯たらしめた責任は取ってもらうということか。
 会社が潰れて、富を手放したくらいでは許されないということだ。
 私は斉藤社長との電話を切った。
 そこへ高橋がやってくる。

 高橋:「先生。バスはあと30分以上あります。とんでもない田舎のバスですよ。どうします?」
 愛原:「30分か。微妙だな……。あっとその前に……リサ」
 リサ:「はい?」

 私はリサを手招きした。

 リサ:「なに?先生」

 私は自動券売機に連れて行くと、リサのPasmoにチャージしてやった。

 愛原:「多分、向こうでも使うだろうから、今のうちに入れておいたよ」
 リサ:「おー!ありがとう!」
 高橋:「ございます、だろ!」
 リサ:「……ございます」
 愛原:「別にいいよ。また報酬入ることになったし」
 斉藤絵恋:「あの、もし良かったらタクシーで行きましょうか?チケットならありますし」

 絵恋さんはバッグの中からタクシーチケットの束を取り出した。
 どんだけぇ~!

 絵恋:「多分、あのタクシー会社なら使えます」

 どうせ交通費は、経費として後で請求することになる。

 愛原:「じゃあ、お願いしようかな。帰りはバスの時間に合わせるからね」

 駅の外に出てタクシー乗り場に向かう。
 今や東京都心では見かけなくなった、トヨタ・コンフォート(クラウンコンフォートではない)が客待ちしていた。
 こういう時は高橋が助手席に乗る。
 リアシートの助手席の後ろに座った私が運転手に行き先を告げた。

 愛原:「仙台コロナワールドまでお願いします」
 運転手:「はい。ありがとうございます」

 車が走り出す。

 絵恋:「愛原先生、先にホテルにチェックインしてからの方が荷物も少なくなると思います」
 愛原:「それもそうだな。すいません、車はホテルの前に着けてもらえますか?」
 運転手:「ホテルの前ですね。かしこまりました」

 リサはリアシートの真ん中に座っている。
 運転席の後ろに絵恋さんが座っているわけだが、そんな絵恋さんをリサが見た。

 絵恋:「なぁに?リサさん」
 リサ:「サイトー、いい服着てる。でも、その服だと遊びにくくない?」

 絵恋さんが着ているのはアイボリーホワイトを基調としたワンピースに、麦わら帽子である。
 いかにも御嬢様といった感じだ。
 とても空手を習っていて、しかも黒帯だということが信じられないくらいである。

 絵恋:「もちろん着替えてから行くよ。ちゃんと着替え持って来たもの。リサさんも着替え持って来たよね?」
 リサ:「うん。他に制服も入ってる」
 絵恋:「せ、制服!?どうして?」
 リサ:「先生の御両親に御挨拶する為」
 絵恋:「そ、そうなの」

 そうか。
 リサには制服を着させたけど、別に、絵恋さんのように、もっと高い服でも良かったんだな。
 うーん……。

 絵恋:「今は普通に私服だね」
 リサ:「うん。動き易さ重視。午前中、ハンターと格闘したから」
 絵恋:「は、ハンターって、あのトカゲだかカエルの化け物みたいな奴!?」
 リサ:「そう!」
 愛原:「リサ。そういうのは堂々と話さない」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「あ、先生。父には先生のお仕事のこと、お話しておきましたので」
 愛原:「うん。お父さんから聞いたよ。どうもありがとう」

 あとは斉藤社長からの情報待ちだな。
コメント (3)
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