報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「ユタの添書登山」

2014-05-28 20:28:59 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月31日06:30.JR大宮駅・京浜東北線ホーム 稲生ユウタ&威吹邪甲]

〔おはようございます。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、6時33分発、各駅停車、大船行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

 ユタは随行者として威吹を連れ、眠い目を擦って京浜東北線の電車に乗り込んだ。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、大船行きです〕
〔This is the Keihin-Tohoku line train for Ofuna.〕

「いいよ、ユタ。東京駅で降りるんでしょう?着いたら起こしてあげるよ」
「ああ。ゴメン……」
 ユタは昨晩の夢のことで、夜半過ぎから眠れなかった。
「ムリしないで中止すればいいのに……」
 威吹は呆れた顔をした。
「いや……。この睡魔も障魔だ。僕は行くよ」
「…………」
 威吹は何も言えなかった。
 白い足袋の紐を締め直くらいしかできなかった。
 ユタはドア横の座席に座ると、仕切り板にもたれ掛って目を閉じた。
「……!」
 威吹はふとドアの上のモニタを見た。
 2つあるうちの向かって左側。
 たまたまニュースが流れていたのだが、一瞬、
『長野県で隕石落下。大規模な山林火災発生。今も尚、延焼中』
 という映像が見えた。
 夜明けくらいにイリーナから連絡があり、マリアが無事だということを知らされたユタは、その場に脱力した。
 マリアの無事が確認できたのだから、今更総本山に詣でる必要など無いではないかというのが威吹の思いであったが、逆らうわけにはいかないので従った。

 電車が定刻通りに発車して、しばらくモニタを見ていた威吹だった。
 再びニュース映像が流れてきて、やはり長野県に隕石が落ちたというのは、正にユタが見た予知夢と一致するという確信を持った。
(キノではないが、本当に凄いヤツだ。世が世ならこいつ、本仏として崇めている日蓮と同様に拝まれる立場だったんじゃないのか……)
 威吹はそう思った。
 イリーナの見解では、南光坊天海僧正の生まれ変わりではないかというのだが……。

[同日07:20.JR東京駅 稲生ユウタ&威吹邪甲]

 電車が南下するにつけ、車内の賑わい度は増してきた。
 それでも平日と違って、メチャ混みというわけでもない。
 どことなくまったり感があるのが、週末朝の電車だ。
「ユタ、そろそろだよ」
「ん?ああ……」
 電車は東京駅にホームに滑り込んだ。

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます〕
〔「6番線の電車は、京浜東北線各駅停車の大船行きです」〕

 ユタは眠い目を擦りながら、電車を降りた。
「少しまだ時間があるな。ちょっと、朝飯でも食べようか」
「ああ」
「威吹はガッツリ食べるでしょう?」
「まあ、ボクは……」
「うん、分かった」
 2人は改札口を出ると、八重洲側の出口へ向かった。

[同日07:30.さいたま市中央区 ユタの家 威波莞爾]

 ユタが添書登山に向かい、威吹が護衛として随行している間、カンジは留守を預かっている。
 家事全般を引き受けているらしく、今は掃除をしていた。
 テレビを点けていて、そこでは頻繁に長野県の山林に落ちた隕石のニュースをしているのだが、そこにマリアの屋敷は出てこなかった。
 イリーナ達が屋敷自体を無かったことにしたのだろう。
 本当にマリアの命が狙われたことで、2人の魔道師は身を隠すことにしたという。
 だからマリアの無事がユタに伝えられて以降は、何の連絡も無い。
(オレ達の出る幕ではないか。それにしても……)
 カンジは改めてニュース画面を見つめる。
(無関係の人間を巻き込むことも厭わないというのは、魔道師の共通項らしいな)
 乾燥していた為に延焼が予想以上であり、近くの集落に避難勧告が出たそうである。
 机の上に置いたノートには、4人の魔道師の名前と簡単なデータが載っている。
(ポーリン・ルシフェ・エルミラとエレーナ・マーロンか。弟子の方は隠密行動くらいしかできないだろうが、師匠の方……。イリーナ師より脅威だな……)
 ノートには最後にユタとやり取りした模様が記録されている。
『何とか先生と合流できればいいんだけど……』
 というのが気になった。
 イリーナが言うのだから、イリーナにも見習の時期があって、それを指導していた師匠がいたはず。
 その師匠のことを言ってるのだろう。
 だがどうやら、イリーナは行方を掴めていないようだ。
(自分が弟子を取る身分になったから、ある程度自由に活動できるとはいえ、かつての師匠の居場所を把握できないとは……ちょっと抜け過ぎてるな……。その辺も、ポーリン師に出し抜かれた原因だろうな)

[同日08:05.JR東京駅八重洲口バスターミナル ユタ&威吹]

〔「お待たせ致しました。まもなく8番乗り場には8時10分発、富士宮駅、富士宮営業所経由、大石寺行き“やきそばエクスプレス”1号が参ります。ご利用のお客様は、お手持ちの乗車券をご用意の上……」〕

「しばらく乗らないうちに、様相が変わったねぇ……」
 バスは頭をポールの前に突っ込ませて止まる。
 いわゆる、頭端式である。
 似たような方式は小樽駅前バスターミナルや草津温泉バスターミナルでも見受けられる。
 但し、この2つのバスターミナルと違うのは、隣の乗り場にバスがいなければ、出発する時にいちいちバックしないで出られるという点である。

 
(ユタと威吹が乗った“やきそばエクスプレス”1号。グランルーフができる前は、このようにバスも横一列に並ぶ方式だった)

「あー、ここだね」
 ユタと威吹はバスに乗り込むと、座席に座った。
「着くまで寝てる?」
「うん。そうする」
 週末のせいか、乗客は行楽客が多そうだった。
 ユタ達の他にも、大石寺に向かう信徒が多く見られた。
 その為、この“やきそばエクスプレス”は、御開扉のある日だけ大石寺まで延長運転されるのである。

 
(ユタと威吹が座った“楽座シート”。夜行用にも使われる?)

 東名高速は本当の東海道とは違うルートを通るせいか、途中のバス停を見ても、威吹には分からなかった。
 東海道新幹線の場合、品川とか小田原とかは分かるのだが……。
 東名向ヶ丘(とうめい・むかいがおか)とか東名江田(とうめい・えだ)とか言われても首を傾げるようだ。

 ほとんど満席に近い状態で、バスは8時10分に発車した。
 あとは東名高速などが渋滞していないことを祈るばかりである。

[期日不明 時刻不明 場所不明 人物不明]

 ユタはまたまた見たくも無い夢を見た。

 闇夜を照らし出す真っ赤な炎。
 崩壊し焼け落ちる屋敷の様子を近くの山の頂から見下ろす魔女が2人。
 不敵な笑みを浮かべているが、1人は江蓮に似た顔立ちをしており、そちらの方は、まるでマリアがそうしたように狂気に近い笑みになっている。
 ただそれだけの夢だったのだが、それまでの予知夢と違い(というか内容的に予知夢ではないだろうが)、薄気味の悪い夢だったとのことである。
コメント (3)
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小説の途中ですが、ここで普通の日記をお送りします。

2014-05-28 19:30:57 | 日記
 今夜は関東地方で大気の状態が不安定になるらしい。
 既に北部では大雨が降っているようだ。

 色々と日蓮正宗法華講員や顕正会員のブログを覗いてみると、色んな人間模様が見えてきて面白い。
 その集大成が「あっつぁブログ」だったのかもしれない。
 今は見る影も無いが。
「同心の徒を謗るは重罪」
 ということだろう。
 どういうことかは推して知るべし。
 顕正会とその会員だけ非難していればまだしも、ねぇ……。
 

 女性顕正会員、パラパラ茜さんとこにコメント欄が無いので、ちょっとここでコメントさせて頂こう。
 ブログ内容を見るに、言いたいことは分かるし、共感できる部分もあるのだが、いかんせんトゲのある表現が気になる。
 いや、あからさまな誹謗中傷が書かれているわけではないのだが(随分キツいことが書いてあることもあるが)、閲覧している顕正会員にAKBファンがいたらどうするんだろう?あの内容で。
 ヘタすりゃこれも、
「同心の徒を……」
 にならないかな。
 まあ、私もAKBには興味が無いし、あの売り方に批判的な人達が多いのもまた事実である。
 あと、これは物凄い疑問なのだが、よっぴんさんが本当にスパムコメントを15通も送ってきたって?
 1日に?
 もし仮に茜さん本人が嫌がってるのに1日15通も送ったりしたら、これはマズいんじゃないのか。
 いくら破折だといったところで、男が嫌がる女に15通もコメントだかメールだか送ったら事件じゃないかな???
 どうも、一部の武闘派のやることは分からない。

 何でもかんでも破折すりゃいいってもんじゃない、という私のスタンスは変えるつもりはないよ。
 本人が楽しくやっているうちはそれでいいと思う。
 ん?それで何の落ち度も無い人が顕正会に引っ張られたらどうするのかって?
 私の御受誡の経緯を知っている人は知っているけど、その方が法華講に引っ張りやすいという現実……おや?誰か来たようだ。

 私が昔お世話になっていた本山塔中坊にも、公式サイトができたようだ。
 うん。
 今の私の所属寺院のものよりも見やすいんでないかい。
 ネットの時代になって、これからもどんどん末寺単位で公式サイトを開設していくようになるのだろう。
 これも時代の流れだ。

 最後に……。
 顕正会員ブロガーでも古参の厳虎さん。
 何故か顕正会員のブログに学会員が多く出入りしていて、しかも学会員同士が口論法論しているところが実にウザい面白いブログであるが、その中でも常連の沖浦克治さん。
 この人は法華講員の樋田さん同様、実名で活動しておられるので、こちらでも実名で御紹介させて頂く。
 実名で活動する理由にも一家言お持ちであるので、それに対する敬意でもある。
 時々、先方(厳虎独白)ブログで御自身の功徳を披露されることがある。
 実名で活動し、紹介している以上、その内容に嘘偽りは無いと思われる。
 内容については、凡人には成し得ないことばかりであるため、それは確かに素晴らしいことだと素直に思う。
 私とは違う世界のせいで、ピンと来ない部分ばかりが多いのが少々残念であるが。
 で、ふと思ったのだが、それって本当に創価仏法の功徳なのだろうかと。
 フェイスブックも覗かせて頂いたが、パワーリフティングの件や御自身が経営されるジムの生徒さんが世界へ羽ばたいたことは本当に素晴らしいのだが、これは仏法のおかげというより、御本人方の弛まぬ努力の賜物なのではないかなと思った次第だ。
 つまり、ぶっちゃけ仏法は関係無いのではないかなと。
 顕正会の体験発表は眉唾ものだが(仏法の不思議を誇張しすぎ!オレの小説じゃあるまいし!)、法華講の体験発表と比べても沖浦さんの体験発表に違和感があるのはそこだと思う。
 法華講の場合は、確かに「まこと仏法の不思議」が働いていると見受けられる部分がある。
 しかし沖浦さんの場合は、何か自力で努力して成し得たもののような気がしてならないのである。
 いや、それは本当に何度も言うけど素晴らしいと思うよ。

 ま、何でもいいから、私も何か体験発表できるものが出るといいね。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「グッド・エンドかバッド・エンドか」

2014-05-28 15:18:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月30日13:00.さいたま市中央区 ユタの家・リビング 威吹邪甲、威波莞爾、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

「何だかユタに似てる。顔とかじゃなく、雰囲気っていうのか……」
 威吹が1人の人物写真を見て言った。
 イリーナは、
「さすが威吹君。目の付け所が違うわね」
「この人は……『何もしなかった』?」
 カンジが覗き込んで、このユタに似た人物がマリアに何をしたかの欄を見た。
「何もしなかったのであれば復讐の対象ではないのでは?」
「違うね」
 イリーナは首を横に振った。
「マリアは『見て見ぬフリをして助けなかった者』も対象者リストに入れたから」
「メチャクチャだな。何もしなくても復讐対象かよ。ユタもとんだ女掴まされたもんだ」
「この人は……ん?服役中?」
「そう。無期懲役でね」
「何をしたんですか!?」
「この、マリアをレイプしたヤツに対する殺人罪」
 イリーナはキノに似た男を指さした。
「ますますワケが分からなくなってくるな」
「この男は落下物が直撃し、脳挫傷で死んだことになっていますが、その落下物を仕掛けたのが、この稲生さん似の人だというのですね?」
「それも違う」
「はあ?」
「落下物を仕掛けたのはまた別の人間ね。つまり、この稲生君に似たコはとどめを刺したわけ。但し、それはマリアも想定外だった。マリアは復讐対象が、必ずしも死んでほしいとは思っていなかったからね。それでも結果的に死んだ場合は、それはそれで棚ボタ的な」
「何だか、やるせない話ですね。この稲生さん似だけ、貧乏くじではないですか?マリア師的には服役させていることで、復讐完了なのでしょうが……」
「実はこの32人、マリアが想定した形とは違う結果でチェック・メイトになったのが何人かいるの。不良のケンカに巻き込まれて結果的にチェック・メイトになったりしたのもいたんだけど、このユウタ君似のコもまたマリアが好きだったんだって」
「ええっ?」
「このタイプのコは、マリアみたいなコが好きになるみたいね。もっとも、人間界的にはマリアも自殺してこの世にいないことになってるけど……」
「ふーん……」
「少なくともあなた達には、最低限のことは知っといてもらおうと思って」
「キノを意図も簡単に殺そうとしたのは、過去の記憶もあってのことか」
「稲生さんに対する態度が少し軟化しているのもまた過去の記憶でしたか」
「しかし最初、マリアはユタも殺そうとしてたぜ?」
 威吹は眉を潜めた。
「まあ、屋敷の物を持ち出そうとしたのもあるけど……」
「過去の記憶では、このコも復讐対象だったからね」

[5月30日15:00. 地獄界・叫喚地獄 蓬莱山家 蓬莱山鬼之助&栗原江蓮]

「おー、もうケガ治り掛かってる」
 江蓮はキノの包帯を交換してみて驚いた。
「人間とは体の作りが違うんだよ」
「ほんと、鬼は首と胴が離れても死なないっていうけど、マジっぽいね」
「へへっ、まあな。ところで午前中、イブキが来てたのか?」
「えっ?」
「妖狐のケモノ臭ェ臭いがした」
「妖怪の臭いが云々は、あんたも言えないと思うけどね。何か、そうみたいだよ。あんたの見舞いじゃないみたいだけど」
「ふーん……。おい、魔鬼いるか!」
「なぁにー?」
「午前中、イブキがうちに来たらしいが、何の用だ?」
「『“獲物”がここに行け』って理由だったらしいよ」
「ユタが?」
「で、姉ちゃんと何か話ししてた」
「姉貴とかよ。2人とも『溜まってる』からって、午前中からランデブーかよ。やるなぁ……」
「違うと思うけど……」
 江蓮は呆れた顔になった。
「いやいやいや。意外とあの姉ちゃん、ヤリマンなんよ。で、イブキも意外とヤリチンだからよ、ちょうど2人の利害が一致してだな、互いにいつでもどこでもヤりまくり。いやー、羨ましいったらありゃしない」
 キノの嘯きに、江蓮と魔鬼が固まった。
「あ、あの、キノ兄ィ……」
「あー?それより、あの姉貴もよ、早いとこ結婚して家出てってもらわねーとよ、家ん中が地獄絵図に……」
 ゴンッ!
「いつもすまんねぇ、こんなアホ弟の世話してくれてからに……」
「い、いえ……」
 実は背後にいた美鬼。
 手におやつを乗せた大皿を持っていて、それでキノの後頭部を【お察しください】。
「いま人間界は大変なことになってるき、いつまた江蓮ちゃんも巻き込まれるか分からんのよ。もう少し収束のメドが立つまで、ここに避難しとってね。学校や家の方は、ウチからよう説明しておくき。なぁも心配せんでええよ」
「は、はい。すいません……」
「キノ兄ィの頭のケガ、少し悪化したような……?」
「魔鬼、鬼之助のケガが完全に治るまでは、家から出んように見張っておくんよ?」
「ラジャ!」
 ピッと右手を挙手する末妹だった。

[5月31日02:00.長野県某所にあるマリアの屋敷 地下室 マリアンナ・ベルゼ・スカーレット]

 今現在動かせる人形は2体。
 それほどまでに低下した魔力を回復させるのは容易なことではない。
 ミク人形とフランス人形1体だけが、広い屋敷を徘徊するように歩き回って侵入者の警戒に当たってる。
 屋敷の主人たる魔道師の師匠イリーナからは、マリアの命を狙う者がいるということで、魔力が回復するまではなるべく地下室に避難しているように通達されていた。
 常時10体の精鋭たる人形を操れただけに、たった2体では心許ない。

 どうしてこんなことになったのか。
 イリーナの予知夢はよく当たる。そして、ユタの予知夢も確率が高い。
 その2人が同時に、自分が死ぬ夢を見たからだという。
 イリーナ曰く、順番的にイリーナの予知夢の内容が早そうだから、それを回避すればユタの夢の内容も回避できるだろうという。
 師匠にケチをつけるわけではないが、そんな簡単な話なのだろうか。

 その時、地下室のドアが開いた。

 入ってきたのは……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この後、作家によってストーリーが分岐する。
 多摩先生の原案ではイリーナに化けたエレーナがやってきて、緊急事態が起きたとマリアを連れ出し、エントランスまで来たところで後ろから刺殺。
 屋敷に火を放ってエレーナは逃亡する。
 後でこのことを知ったユタが慟哭するというもの。
 主人公がそれで行動不能という異常状態の中、魔道師達の抗争を止めるべく残った威吹達で奔走させよということだが、ちょっと待てよと。
 原案の中に、
「仏法なんぞやってても幸せにはなれねーんだよ。仏にすがる時間があったら(31日に大石寺に行く時間があったら)、もっと安全な所に避難させるくらいの行動をさせろよ」
 という威吹のセリフがあるのだが、これ、明らか多摩先生のアンチ日蓮正宗入ってるよな……。
 仏法をマジメにやってても(1回目は顕正会だが)好きな人を失うことには変わりないよ、と。
 何をやったって、運命は変えられないよという多摩先生のオマージュだ。

 さすがにこの設定はやり過ぎなので、私の独断で変えます。
 以下、変更したストーリー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 入ってきたのは……。
「ミカエラ?どうしたの?」
 邸内の警備に当たっているミク人形こと、ミカエラだった。
「え?電話?こんな時間に?誰から?……ユウタ君?」
 マリアは目を丸くしたが、すぐに夜着の上から魔道師のローブを羽織り、地下室を出た。
「さすがに私が電話の所まで行く間、長時間待たせることになるから、時間を置いてまた掛け直してもらうのね?」
 電話の所まで来ると、待ち構えていたように着信音が鳴った。
「はい、もしもし?」
{「もしもし?マリアさん?すいません、こんな時間に!」}
「何か緊急?」
{「そうです。そうなんです!すぐに屋敷から出てください!このままだとマリアさん、死んじゃう!」}
「!!!」
 マリアは電話を切ると、急いで屋敷を飛び出した。

 その直後、

「きゃっ!!」

 ドーン!!と屋敷に大きな隕石が落ち、みるみるうちに屋敷が崩壊していった。
「こ、これは……!『メテオ・シューティング』!?」
 マリアは前に1度、師匠から教わった魔法を思い出した。
 隕石を意図的に呼んで、狙った所に落とすという魔法だ。
 隕石の大きさや命中率は魔道師の魔力に大きく左右される。
 が、さすがに地球を壊すほどの巨大隕石までは引っ張ってこれない。
 それもそうだろう。魔道師も地球の住民である以上、それを破壊する魔法でどうするんだという感じだ。
 ただ、町1つ消すくらいのことはできるらしい。

[5月31日同時刻 さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ]

{「ユタよぉ、後でゆっくり話しようや。オレも頭かち割られてムカついてたからよ」}
「そうしよう」
 ユタは何故かキノと電話していた。
{「まさかオメー、『予知夢の続き』を見るなんてな。あの魔道師を超えてるんじゃねーのか?」}
「いや、そんなことないよ」
 ユタはまた夢を見た。
 それはキノがマリアに対する復讐完了を宣言した直後、大きな隕石が現れてキノもろとも鬼族も全滅するというものだった。
 今、何とか水面下でキノの動きは抑えられている。
 しかし隕石に関しては、ただの偶然とは思えない。
 RPGの世界で、隕石を召喚して敵を攻撃したり、それこそ町を破壊するテロリズムを行うという魔法使いの話を知っていたユタは、実際にそういう魔法があるのではないかと思った。
 そして夢の中に出て来た夜空。
 ほんの僅かしか月が出ていない。
 それはまるで、新月から数日しか経っていないかのように。
 郵便物が届いて、それをキノが見たとしよう。
 そしてキノが行動を起こしたとして、計算すると、多分この予知夢は今夜のことではないかと思ったのだった。

 ビンゴであった。

 明るくなってから、ユタは屋敷は隕石によって全壊したものの、マリアは直前に脱出して無事だったことが知らされた。
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“ユタと愉快な仲間たち” 「駆け引き攻防」

2014-05-28 02:19:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月30日08:00.東京都区内某所 日蓮正宗・正証寺 稲生ユウタ]

「あのー、御住職様。1つ相談が……」
 朝の勤行も終わった後で、ユタは所属寺院の住職に相談を持ちかけた。
「えっ?明日の添書登山に参加したいですと?」
「はい」
「それはまた急な話ですな。まあ、いいでしょう」
「ありがとうございます!」
「しかし、どうしてまた急に?」
「どうしても……どうしても今、大御本尊様に御祈念したいことがあるんです」
 ユタは頭(こうべ)を垂れながら、決意したかのように言った。

[同日09:30.地獄界・叫喚地獄、蓬莱山家正門 鬼門の左右]

 蓬莱山家の正門前に、1台の古めかしいオート三輪が止まる。
 そこから降りて来て、荷台の箱から台車を使って荷物を降ろしたのは……。
「毎度どうも~。郵便でやんす~」
 ……地獄界にも郵便制度があるようだ。
 よく見ればオート三輪は赤く塗られていて、荷台の箱には〒のマークが付いている。
「おう」
「ご苦労さん」
 蓬莱山家の郵便物は大量だ。
 そこは叫喚地獄を統べる獄長一族の家でもある。
 ここに来る郵便局員も人間では無く、下級の鬼族である。
「あと、簡易書留が1通ありやす。蓬莱山鬼之助様宛てでやんすね」
「なに?」
「鬼之助様宛だと?」
 高さ3メートルくらいある鬼門の左右。
 ハンコ捺印の際は、いちいち屈む必要がある。
「ハイ、確かに。毎度どうもでやんした~」
 郵便局員は再びオート三輪に乗って走り去っていった。

 届けられた郵便物は鬼門の右側によって邸内に運び込まれ、執事によって仕分けられる。
「1通、鬼之助様宛ての簡易書留があります」
 右が言うと執事は、
「さようか。しかし今、鬼之助様はケガの療養中で面会謝絶だ。どうしたものだろう?」
 思案していると、
「それならウチが預っておくき」
 ヒョイとキノの姉である美鬼が顔を出した。
「美鬼様!」
「ですが美鬼様、この郵便物は親展になってまして……」
「かまへんかまへん」
 美鬼は笑ってA4サイズの封筒を受け取った。
 差出人の欄を見ると、こう書いてあった。

 威吹邪甲と。

[同日10:00.同場所 蓬莱山美鬼]

「ふーむ……」
 美鬼は何となく怪しさを感じていたので、封筒の中を開けてみた。
 すると中に入っていたのは1枚のCD。
 聴いてみると、威吹とカンジとユタの会話が録音されていた。
 内容を聴くに、上の弟の頭が割れたのは魔道師の魔術によるものらしい。
「これは一体……」
 美鬼には真相が分かって納得した面もある。
 しかし、弟の頭をかち割られた怒りよりも、むしろ疑問の方が多かった。
 と、そこへ、
「失礼します、美鬼様」
 先程の執事がやってきた。
「なに?」
「妖狐の威吹邪甲様がお見えになっておりますが、いかが致しましょう?」
「また鬼之助の見舞いに来てくれたん?」
「それが、どうも的を得ないのです。『“獲物”にここに行くよう命ぜられた』の1点張りで……」
「ふむ……。それなら、ここに通し。ウチが話聞くき。ウチも聞きたいことあんねや」
「かしこまりました」

 そしてやってきた威吹。
「随分と変わった用件ですなぁ……」
「申し訳無い。某の“獲物”に、ここに向かうように強く申し付けられた次第」
「それはどういう経緯で、そのような話になりましたん?」
「昨夜、夢を見たそうです」
「夢?」
「鬼之助殿の元に届いた郵便物。それを見た鬼之助殿が憤慨し、手勢を引き連れ、人間界へなだれ込むという夢でござったそうです。何かお心当たりは?」
「その郵便物いうのは、これですか?」
 美鬼は威吹に先程の封筒を見せた。
「あなたが差出人になっております」
 すると威吹は眉を潜めた。
「はて?そのようなもの、全く心当たりはござらんが……」
「これが入っておりました」
 美鬼はCDを差し出した。
「これは……?」
 そしてその内容を聴いてみる。
 昨日、稲生家でユタが帰宅してからの会話が録音されていた。
「!?」
「正直、これが鬼之助に送られた理由っちゅうのが全く不明やったんですが、威吹はんが否定されたことで、何となく分かりました」
「と、申されると?」
「鬼之助を使うて、人間界を襲わせるというものです。あのコは1度暴れ出すと、なかなか手ェつけられんとこがありますき、それが目的やと思うんです」
「それが正解でござろう。実は今、魔道師同士の抗争が人間界で起きている様子で、某共を駒にする意図があるようでござる。鬼之助殿の復讐心も理解できるが、今怒りに任せて行動するのは魔道師共の思う壺としか申し上げようが無く、得策とは存じかねる。それは鬼族の望むところではございますまい?」
「そやね。さすが威吹はん、よう分かっとる。鬼之助にはこのことは内緒にしておくのと、万が一ばれてもウチらで抑止しますき。“獲物”はんにもよう伝えておいてください」

[同日13:00.さいたま市中央区 ユタの家 威吹邪甲&威波莞爾]

「先生、お帰りなさい」
「おう。さすがユタだ。これでユタの懸念は、ひとまず回避できたと言える」
「それは良かったわね」
 リビングに行くと、イリーナがいた。
「おっ!?」
「先程、こちらに参られました。まもなく先生がお帰りになられるということで、それまで待たれると……」
「オレに何の用だ?」
「威吹君だけでなく、カンジ君にも聞いて欲しい事なの」
「ユタはいいのか?」
「ユウタ君はちょっと……」
 イリーナは魔道師のローブの中から、1枚の紙を取り出した。
 そこにあるのは若い男女の顔写真と名前、それと……。
「32人ですね」
「32?どこかで聞いた数字だな」
 名前はアルファベットで書いてあるため、威吹には全く読めなかった。
「マリア師が人間だった頃……学生だった頃、復讐した同窓生ですね?」
「そうよ。この面々を見て、何かに気づくこと無い?」
「は?」
 2人の妖狐は32人の写真を見た。
「この者、キノに少し似ていますが……そういうことですか?」
 カンジは1人の顔写真を指差した。
 褐色の肌と黒髪の男子生徒。
「まあ、そうね。名前の下に何て書いてある?」
「……レイプですか。強姦ですね」
「名前の下には、その生徒がマリアにしたことが書いてあるのよ」
「えっ!?」
「ほほう。するとあの魔道師は、生娘ではないということか。ユタもとんだ傷モノを掴んだものだ」
「威吹君の場合、マリアが処女だろうがそうでなかろうが関係無いでしょ?」
 イリーナはやや強い口調で言った。
「まあ、それもそうだが……」
「落下物直撃により、頭蓋骨陥没・脳挫傷で死亡とありますね。何かの偶然でしょうか?」
 全て文字は英語で書かれていたが、一応カンジは訳できるようである。
「さあね」
 イリーナは肩を竦めた。
「他に気づいたことはある?」
「えー……」
 すると威吹は、ある人物に目が留まった。
「こ、これは……!」

 その人物とは……。
 
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