報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「病院内で」

2018-07-23 10:25:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月10日08:15.天候:晴 宮城県仙台市内某所 とある大病院]

 私と高橋君は、別の病室に入院しているリサを訪ねて行った。
 どういうわけだか、病室の入口の名札には『匿名希望』と書かれていた。
 こういうことは、たまにあることだ。
 例えば、患者がヤクザ関係者で、抗争のケガで入院した場合とか……。
 リサの場合は、多分本名が明らかではないからだろう。
 リサ・トレヴァーというのは、アンブレラ・コーポレーションが全盛期だった頃、強制的に被験者にされたアメリカ人の少女のことを言う。
 日本でも彼女と似た運命を辿ったコがいて、今正に私達がこれから入る病室の中に彼女がいる。
 アメリカ人のリサは最終的には研究所の爆発に巻き込まれて死亡したとされるが、こちら、日本人のリサはちゃんと生きている。
 前者はウィルスの力を半ば制御できずに暴走したが、私が見ている限り、こっちのリサはほぼ制御できているようだ。

 愛原:「おはよう」

 私はガラガラとドアを開けると、そこにいたのは……。

 リサ:「先生、おはよう!」

 仮面を外し、上半身裸で着替え中のリサだった。
 膨らみかけの胸が視界に飛び込んでくる。

 高橋:「オマエ、何やってるんだ!胸を隠せ!」
 リサ:「ええ〜?」

 もしかして、そういう恥じらいを知らないまま過ごしたのか?
 それともウィルスの影響だろうか?

 高橋:「先生も中坊ガキの裸くらいで赤くならないでください!」
 愛原:「いや、そりゃビックリするだろ!」
 リサ:「先生達も元気で良かったね!」

 取りあえず掛布団で胸を隠しているリサ。

 高橋:「いいからオマエは服を着ろ!先生が目のやり場に困ってるだろ!」

 高橋君は布団の上に置かれた服をリサに手渡した。
 何だか高橋君が頼もしいなぁ。

 愛原:「高橋君、面倒見がいいな」

 リサがようやく寝巻を持たない入院患者用のそれを着始めると、ようやく私は顔を元に戻した。

 高橋:「妹がいましたのでね、よく俺が面倒を見させられたものです」
 愛原:「へえ……って、お前、妹さんがいたんだ?」

 すると高橋君はハッとなった。

 高橋:「まあ、一応は……」

 ん?どうやら、あまり深入りした質問はしない方が良さそうだぞ?

 リサ:「先生達はいつ退院するの?」
 愛原:「予定だと明日だよ。やっと東京に帰れるな」
 高橋:「きっと帰る頃には、仕事の依頼が山ほど来ていますよ」
 愛原:「……だといいんだけどねぇ……」

 私は遠い目をして答えた。

 愛原:「リサはどうなるんだ?また、政府直轄の研究施設にでも戻るのか?」
 リサ:「あ……うん……」

 どうも反応が悪い。
 やはり、戻る事になるのかな?
 と、そこへドアがノックされた。

 愛原:「はい?」

 ガラガラとドアが開けられると、先ほどの黒服の男が入ってきた。

 男:「失礼ですが、面会はこの辺で。まもなく検査室へ向かう時間ですので」
 愛原:「あ、はい。俺達も9時からだっていうし、そろそろ戻るか」
 高橋:「ええ」
 愛原:「じゃあな。時間があったら、また来るから」
 リサ:「うん!」

 私はリサの右肩をポンポンと叩いた。
 昨夜、研究施設で変化した時とは打って変わり、ちゃんとした人間の感触である。
 アメリカのリサ・トレヴァーは暴走して変化したということだが、こちらのリサは変化も自在にできるのだろうか。

 愛原:「9時から何をやるんだ?」
 高橋:「別の実験でしょう」
 愛原:「実験かよ。検査だろ?」
 高橋:「どうせ霧生市の生き残りは、全員が被験体みたいなものですよ」
 愛原:「全く。いいモルモットだな。キミの場合は、ケガの治療もあるだろ」
 高橋:「まあ、そうなんですけどね」

 自分達の病室に戻りがてら、そんなことを話す。

 愛原:「それにしても、素顔は可愛いコだったな。おかっぱ頭がよく似合う」
 高橋:「先生は、ああいうのがタイプなんですか?アネゴだって、似たような髪型ですよ?」
 愛原:「高野君のはちゃんとセットされたショートだろうが。しかし、ああいうナチュラルな感じが通用するのも、10代ならではだろう。きっと将来は美人になるぞ」
 高橋:「将来……ですか。本当に、あいつにそれがあるんですかねぇ……」
 愛原:「おいおい。何か不吉な予言をするんじゃないだろうな?」
 高橋:「いえ……失礼しました」

[同日12:00.天候:晴 愛原と高橋の病室]

 昼食が運ばれてくる。
 何の食事制限も食らっていない私達には、普通の給食が出る。

 愛原:「普通に採血をしたり、CTスキャン取ったりと、何だか人間ドック受けてるみたいだな」
 高橋:「まあ、検査というなら、こんなものでしょう。抗体があるかどうかなんて、昨夜、処置室に入った時にやったことで十分分かるでしょうし」
 愛原:「そうだな」

 そこへ誰かが入ってきた。
 黒いスーツの男であるが、リサの部屋の前で警備をしている者とはまた違う者であった。
 リサの部屋の者と違って、サングラスは掛けていない。

 BSAA職員:「お食事中失礼します。私はBSAAの者です。昼食後は事情聴取を行いますので、このままこの部屋で待機していてください」
 愛原:「食べてすぐかい?」
 BSAA職員:「もちろん、食後の一服の後でで結構です。昨夜のことを詳しく伺いたいので」
 愛原:「ああ、なるほど。いいですよ」

 まあ、BSAAから見れば、私達は不審者だからな。
 因みに昨夜、既に病院で待ち受けていた別のBSAA職員には私の名刺を渡し、霧生市のバイオハザードの生き残りであることは伝えていたのだが……。

 BSAA職員:「それではよろしくお願いします」

 職員はそう言うと、病室を出て行った。

 愛原:「あの特殊部隊の隊長さんと比べて、比較的柔らかい態度だったな」
 高橋:「昨夜ここに収容されてから、少し時間が経ちましたからね。先生が名刺を渡されたことが、功を奏したのでしょう。先生のことを調べているうちに、俺達が不審者ではないということくらいは分かったのかもしれません」
 愛原:「なるほどな」

 私は頷いて食を進めた。

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