報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「入院中の迷探偵」 2

2018-07-23 19:11:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月10日15:00.天候:晴 宮城県仙台市内某所 とある大病院]

 BSAA職員からの事情聴取は、およそ2時間に渡って行われた。
 そこで、私が高橋君と別れてからの行動も明らかになった。
 高橋君達はトラップにはまって地下に落ちたが、すぐにあの部屋に入ったわけではないらしい。
 研究施設内の他のトラップ、センサーに引っ掛かると天井に仕掛けられたマシンガンが発砲してくるというものに攻撃された。
 映画などではよくある仕掛けだが、まさか研究施設にも仕掛けられているとは……。
 佐藤君と共に逃げ回り、あの部屋に飛び込んだはいいが、今度はハンターに襲われた。
 それで佐藤君はハンターの即死攻撃『首狩り』に遭って死亡、高橋君は室内にあったハンドガンを拾い、それでハンターを倒した。
 高橋君の持っていたハンドガンはマグナムだった為、ハンターでも簡単に倒せる殺傷能力を持ち合わせていたらしい。
 それからしばらくして、リサの仲間だった『4番』が現れた。
 マグナムを撃ち込んでも、彼女は倒れなかったらしいな。
 うん、そうだそうだ。
 よくよく思い出してみると、確かにあの発砲音は『ドゴン』という重い音だった。

 BSAA職員:「ふむ……。派遣隊の証言と食い違う所は無いな」
 愛原:「ウソをついてもしょうがないでしょう。ヘタすりゃ、私達が逮捕されるんですから」

 私は肩を竦めた。

 愛原:「でも、実際どうなんですか?銃を手に入れてバンバンやっていたから、逮捕ですか?」
 BSAA職員:「いえ、BSAAはあくまでバイオテロの予防、鎮静、そしてその関係者に対する逮捕権はありますが、それ以外の捜査権はありませんので。派遣隊が、あなた達が銃を持っていたことは現認しましたが、それを警察に通報する義務は無いのです」

 さすがBSAAだ。
 国連直轄機関である彼らの活動は、国内法に縛られることはないという噂は本当のようだ。

 BSAA職員:「もしもあったところで、霧生市の英雄さん達をどうこうするつもりはありませんがね」
 高橋:「さすがだな」
 愛原:「大したことはないですよ。たまたま私達は生き残っただけのことで。……因みに今回の事件、BSAAはどのように処理するつもりですか?」
 BSAA職員:「ヘタに隠すようなことはしません。素直に旧アンブレラ日本支部の秘密研究所に隠されていたウィルスが漏れ出し、近隣の人間に感染してゾンビ化させた。その犯人たる『リサ・トレヴァー4号』はBSAAが始末したと発表します」
 高橋:「幸い、街の方は大丈夫だったんですね」
 BSAA職員:「ええ。幸いなことです」

 BSAA職員は大きく頷いた。

 愛原:「あれだけBSAAが捜査したのに、まだ秘密研究所の全てを見つけられていなかったとは……」
 BSAA職員:「どうも、日本支部とて全てを知っていたわけではないようですな」
 愛原:「ええっ?」
 BSAA職員:「旧アンブレラが表の顔と裏の顔とを使い分けていたことは御存知ですね?」
 愛原:「ええ。『世界の人々を病の雨から守る傘でありたい』という正義の製薬会社としての顔と、その実、『生物兵器を開発して他国政府やテロ組織に売り捌いてウハウハの生活』という悪の製薬会社と……」
 BSAA職員:「日本支部は表の顔を出す為に設立されたそうです。そういう場合は現地法人として設立する場合が殆どでした」
 愛原:「アンブレラ・コーポレーション・ジャパンでしたね。にも関わらず、秘密の研究所が造られた理由は?」
 BSAA職員:「もちろん、アメリカ本部が使う為ですよ。現地への業務指導という体裁でね」
 愛原:「怖い怖い」
 BSAA職員:「とにかく、捜査協力に感謝します。この病院の入院費用などは全てBSAAで持たせて頂きますので……」
 高橋:「そりゃ当然だろ」
 愛原:「高橋君。……リサはどうなりますか?あの、『2番』の方です。彼女は悪いコでは無いようですが……」
 BSAA職員:「日本政府が目を付けているようですね。恐らく、将来はエージェントにでもするんじゃないでしょうか。残念です。もしも彼女が備え付けられた力を完璧に制御できるというのなら、むしろBSAAで働いてもらいたいものですが……」
 高橋:「ヒャハハハッ!化け物を倒すのが仕事のBSAA様が、化け物を味方にすんのかよ!」
 愛原:「高橋君、やめなさい。それじゃ、退院したらまたお別れかな。まだ年齢的には12〜13歳くらいだってのに、住む所とかどうするんだろ?」
 高橋:「また研究所で暮らすんじゃないですか」
 愛原:「日本政府としては研究自体は終わったんだろう?」
 高橋:「俺達には知ったこっちゃないですよ」
 BSAA職員:「…………」

 BSAAの事情聴取が終わると、主治医の先生の回診があった。
 検査結果には問題無いということで、予定通り、明日には退院できるだろうとのこと。
 もっとも、これでいきなりゾンビ化しようものなら、一体どうなることやら。

 この後は夕食までヒマなので、私達は再びリサの所に行くことにした。
 個室ではあったが、あえて病棟内のホールまで行き、そこで話すことにした。

 愛原:「コーヒーでも飲むか」
 高橋:「ゴチです!」
 リサ:「ゴチです」
 愛原:「高橋君、リサがマネするから言葉遣いには気を付けなさい」
 高橋:「さ、サーセン!……いや、すいません」

 紙コップの自販機なので、1人1人入れることになる。

 リサ:「私、オレンジジュースがいいです」
 愛原:「分かった」
 高橋:「キサマ……!先生はコーヒーを奢って下さると仰っているというのに、それを否定するとは……!」
 リサ:「でも、オレンジジュースの方が安いよ、お兄ちゃん?」
 高橋:「う……それなら許す」

 ほお、珍しい。
 あの高橋君が言い負かされるとは……。
 彼を言い負かすことができるのは、高野君だけだと思っていたのに。
 もっとも、10代前半とはいえ、この頃の女の子は結構しっかりしてるからな。

 愛原:「リサの方も何とも無いみたいだな。俺達は明日には退院できるみたいだ」
 リサ:「私はどうなるのかなぁ……?」
 愛原:「日本政府がキミをエージェントとして雇いたいらしいぞ?それでなくても、BSAAで働いてもらいたいみたいな話もある。だから君の将来については、何も心配しなくても大丈夫だぞ」
 リサ:「私も、先生みたいに探偵のお仕事やってみたいなぁ……」
 高橋:「ガキにゃ無理だよ」
 愛原:「まあまあ。まだキミは中学生くらいだからね、取りあえずは勉強してからってことになるかな」

 リサには恐らく普通の少女だった頃があったはずだ。
 だが、その記憶を消されてしまっているらしい。
 彼女の記憶にあるのは、自分がBOWとして造られたというもの。
 だが、霧生市で私達が手に入れた情報とは、少し違う。
 そのことには触れず、私達はリサに外の世界の話をしてやり、リサは将来のことを話した。
 そんなことをしているうちに夕食の時間が迫って来たので、私達はまた部屋に戻ることにした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「病院... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「まあ... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事