[4月24日16時45分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
リサは愛原と共にデイライトの事務所にいる。
善場「学習塾は『山手学苑』。その名の通り、渋谷に本部があります。オーソドックスな学習塾で、集団授業を主に行っています。クラスも学力別に分ける方式ですね」
愛原「“ベタな学習塾の法則”ですね」
善場「このパンフレットは、ゴールデンウィークに行われる受験対策の合宿を募集したものです」
愛原「ゴールデンウィーク。珍しいですね。私も学生時代には、親に塾に通わされたもので、そこでも夏合宿の募集はしていましたけど、ゴールデンウィークは無かったですよ」
リサ「先生も塾の合宿に行ったの!?」
リサはいかにも羨ましいといった感じで愛原を見た。
愛原「いや、俺は行かなかったよ。どっちかっていうと、他の大手学習塾との共同合宿って感じだったからね」
善場「中小規模の学習塾ですと、夏合宿はいくつか共同でという所がありますね」
愛原「それよりは、塾自体で行われる夏期講習の方に参加してましたよ。あれもあれで、私みたいな正規の塾生の他に、夏期講習だけ参加の講習生もいたりして、それはそれで刺激的なものでした」
善場「塾そのもので行う夏期講習に力を入れるか、合宿に力を入れるかで、その学習塾の特色が現れるものです」
愛原「そのパンフレットからして、山手学苑の方は合宿に力を入れるタイプのようですね?」
善場「そのようです。恐らく、モールデッド化した城ヶ崎君は、この合宿に参加しようとしていたのではないでしょうか」
愛原「それはいいですけど、どうしてそれをあんな金庫の中に?」
善場「それは不明です。例えばTウィルスのゾンビなどは生前の記憶が残っており、その記憶に基づいて、生前の習慣を踏襲しようとするわけですが……」
ゾンビが生前、自分が関係していた場所を徘徊していたり、ドアの開閉はできるのは、生前の記憶が残っているからだ。
リサ「モールデッドは、多分それ無理だよ?」
善場「ですよね……」
愛原「その山手学苑、本当に何も関係無いんですか?」
善場「はい。ザッと調べてみましたが、特にキナ臭い情報などは出て来ませんでした。日本アンブレラとの資本関係も一切ありません。塾業界では比較的老舗の所で、1都3県に渡って本部と支部を持つ大手学習塾ですので、もしかしたら、かつて、日本アンブレラの子弟が通っていたことはあったかもしれません。ですが、そこまで疑ってしまうと、全ての学習塾・予備校を調査しないといけなくなりますので……」
愛原「そうですよね」
リサ「何だったら、わたしが直接潜り込んでみようか?わたしなら、現役生だからできるでしょ?」
善場「しかし、あなたはBOWです。部活動への所属が認められていないのと同様、学習塾や予備校に通うのも、上の許可を取らなければなりません」
愛原「学習塾や予備校の合宿って、参加費用も高いんだぞ?どこにそんな予算がある?」
リサ「うう……」
善場「その山手学苑に、何か黒い噂でもあれば、その調査の為と称して上手く上に説明できるのですが、現状何も無いですから」
愛原「ですよね……。あ、そうだ」
善場「はい?」
愛原「その、城ヶ崎君は山手学苑に通っていたそうですが、どこの支部に通っていたか分かりますか?」
善場「このパンフレットを見てください。右下に小さく、『日暮里支部』とありますでしょう?グーグルマップで調べてみたところ、日暮里駅前に山手学苑の支部があります」
日暮里支部のみで合宿を行うというわけではなく、あくまでこのパンフレットの配布元が日暮里支部ということだ。
パンフレットそのものは本部で発注され、発行されたものが各支部に配布されたのだろう。
リサ「もしも城ヶ崎がこの合宿に参加する予定だったんであれば、何かその合宿であるのかもしれないけどね」
愛原「いや、そうとも言えんぞ」
リサ「えっ?」
愛原「これはあくまで、募集のパンフレットだろ?もし本当に城ヶ崎君が参加する予定だったのであれば、時期的に既に申し込みしているはずだ。だったら手元にあるのは、こういう募集のパンフレットじゃなく、申込用紙の控えとか、あとは参加に当たっての注意事項とかが書かれた栞とかなんじゃないかな?オマエがゴールデンウィーク明けに参加する修学旅行の栞みたいなもんだよ」
リサ「あー……そっかぁ……。残念」
愛原「残念?」
リサ「あ、いや、何でも無い」
愛原「塾や予備校の合宿なんて、勉強漬けらしいぞ?」
善場「もちろん、塾や予備校にもよりますけどね。中にはレクリエーション活動も入っている所もあるそうですよ」
愛原「そうなんですか?」
善場「はい。これは小中学生向けの学習塾の話ですが、山の合宿所ですとか、ホテルに宿泊して、夜はキャンプファイヤーとか、最終日には観光地に立ち寄るなんてこともあるそうです」
愛原「そういうゆとりがあるのはいいことですな」
善場「中学・高校受験は、大学受験ほど複雑ではないからでしょう」
リサ「むー……」
愛原「リサの成績なら、塾とか通わなくても大丈夫だよ」
リサは本当に地頭が良い。
これは父親とされる者が医師だからだろう。
善場「どうしてもというのでしたら、夏合宿に参加したいと本人が言っていると上に申請してあげますよ」
リサ「! おー!」
善場「それでは、学習塾の話はここまでにして……。今度はリサが見たという夢の話を聞かせてもらいましょうか?」
リサ「あー……うん」
リサは仮面の者に電撃を食らってしまい、気絶した時に見た夢の内容について話した。
善場「そう……ですか。斉藤……いえ、我那覇絵恋がねぇ……」
リサ「びっくりしたけど、でも、夢の中だからね」
善場「リサは夢の内容について、何か心当たりはありますか?」
リサ「数人の男女が天井に磔にされているという話、あれは学校の七不思議に出て来る内容だよ。“トイレの花子さん”の」
善場「そうなんですか」
リサ「ただ、旧校舎が3階建てというのは……」
善場「そこは本当に2階だったのでしょうか?」
リサ「えっ?」
善場「リサが夢の中でスタートした女子トイレは、2階ではなく、1階だったのかもしれませんよ?」
リサ「えー、そうかなぁ……?まあ、夢の話だからね」
善場「さて、問題なのは、唐突な我那覇絵恋さんの登場です。リサはこれにはビックリしたそうですね?」
リサ「そりゃそうだよ。フツー出てくるわけないもん」
善場「ところが、そうでもないのです」
リサ「えっ?」
善場「まず、“トイレの花子さん”と思しき者は、斉藤早苗と名乗って沖縄中央学園に出入りしていました。そしてその時、我那覇絵恋と接点を持ったわけです。そして、夢に出て来た我那覇絵恋は、リサのGウィルスまたは偽性特異菌が見せたものかもしれません」
リサ「えー……」
善場「今から、我那覇絵恋に連絡が取れますか?」
リサ「ちょっと待って」
リサは自分のスマホを取り出すと、それで絵恋にLINEを送った。
すぐに既読が付いて、返信があった。
リサ「『どうかしたの?』だって。何て答えればいい?」
善場「最近、斉藤早苗と会ったかどうか聞いてみてください」
リサ「うん」
リサがその内容を入力している時だった。
送信する前に、絵恋の方からまた何か送信されたらしい。
リサ「『これから塾だから、また後でね』だって。そういえばエレン、塾に通ってるんだった」
善場「……試しにその塾の名前、聞いてもらえませんか?」
リサ「うん。……『山手学苑』だって」
愛原「んん!?」
善場「ほお……」
山手学苑は1都3県しか営業していないのではなかったか?
これはどういうことなのだろう?
リサは愛原と共にデイライトの事務所にいる。
善場「学習塾は『山手学苑』。その名の通り、渋谷に本部があります。オーソドックスな学習塾で、集団授業を主に行っています。クラスも学力別に分ける方式ですね」
愛原「“ベタな学習塾の法則”ですね」
善場「このパンフレットは、ゴールデンウィークに行われる受験対策の合宿を募集したものです」
愛原「ゴールデンウィーク。珍しいですね。私も学生時代には、親に塾に通わされたもので、そこでも夏合宿の募集はしていましたけど、ゴールデンウィークは無かったですよ」
リサ「先生も塾の合宿に行ったの!?」
リサはいかにも羨ましいといった感じで愛原を見た。
愛原「いや、俺は行かなかったよ。どっちかっていうと、他の大手学習塾との共同合宿って感じだったからね」
善場「中小規模の学習塾ですと、夏合宿はいくつか共同でという所がありますね」
愛原「それよりは、塾自体で行われる夏期講習の方に参加してましたよ。あれもあれで、私みたいな正規の塾生の他に、夏期講習だけ参加の講習生もいたりして、それはそれで刺激的なものでした」
善場「塾そのもので行う夏期講習に力を入れるか、合宿に力を入れるかで、その学習塾の特色が現れるものです」
愛原「そのパンフレットからして、山手学苑の方は合宿に力を入れるタイプのようですね?」
善場「そのようです。恐らく、モールデッド化した城ヶ崎君は、この合宿に参加しようとしていたのではないでしょうか」
愛原「それはいいですけど、どうしてそれをあんな金庫の中に?」
善場「それは不明です。例えばTウィルスのゾンビなどは生前の記憶が残っており、その記憶に基づいて、生前の習慣を踏襲しようとするわけですが……」
ゾンビが生前、自分が関係していた場所を徘徊していたり、ドアの開閉はできるのは、生前の記憶が残っているからだ。
リサ「モールデッドは、多分それ無理だよ?」
善場「ですよね……」
愛原「その山手学苑、本当に何も関係無いんですか?」
善場「はい。ザッと調べてみましたが、特にキナ臭い情報などは出て来ませんでした。日本アンブレラとの資本関係も一切ありません。塾業界では比較的老舗の所で、1都3県に渡って本部と支部を持つ大手学習塾ですので、もしかしたら、かつて、日本アンブレラの子弟が通っていたことはあったかもしれません。ですが、そこまで疑ってしまうと、全ての学習塾・予備校を調査しないといけなくなりますので……」
愛原「そうですよね」
リサ「何だったら、わたしが直接潜り込んでみようか?わたしなら、現役生だからできるでしょ?」
善場「しかし、あなたはBOWです。部活動への所属が認められていないのと同様、学習塾や予備校に通うのも、上の許可を取らなければなりません」
愛原「学習塾や予備校の合宿って、参加費用も高いんだぞ?どこにそんな予算がある?」
リサ「うう……」
善場「その山手学苑に、何か黒い噂でもあれば、その調査の為と称して上手く上に説明できるのですが、現状何も無いですから」
愛原「ですよね……。あ、そうだ」
善場「はい?」
愛原「その、城ヶ崎君は山手学苑に通っていたそうですが、どこの支部に通っていたか分かりますか?」
善場「このパンフレットを見てください。右下に小さく、『日暮里支部』とありますでしょう?グーグルマップで調べてみたところ、日暮里駅前に山手学苑の支部があります」
日暮里支部のみで合宿を行うというわけではなく、あくまでこのパンフレットの配布元が日暮里支部ということだ。
パンフレットそのものは本部で発注され、発行されたものが各支部に配布されたのだろう。
リサ「もしも城ヶ崎がこの合宿に参加する予定だったんであれば、何かその合宿であるのかもしれないけどね」
愛原「いや、そうとも言えんぞ」
リサ「えっ?」
愛原「これはあくまで、募集のパンフレットだろ?もし本当に城ヶ崎君が参加する予定だったのであれば、時期的に既に申し込みしているはずだ。だったら手元にあるのは、こういう募集のパンフレットじゃなく、申込用紙の控えとか、あとは参加に当たっての注意事項とかが書かれた栞とかなんじゃないかな?オマエがゴールデンウィーク明けに参加する修学旅行の栞みたいなもんだよ」
リサ「あー……そっかぁ……。残念」
愛原「残念?」
リサ「あ、いや、何でも無い」
愛原「塾や予備校の合宿なんて、勉強漬けらしいぞ?」
善場「もちろん、塾や予備校にもよりますけどね。中にはレクリエーション活動も入っている所もあるそうですよ」
愛原「そうなんですか?」
善場「はい。これは小中学生向けの学習塾の話ですが、山の合宿所ですとか、ホテルに宿泊して、夜はキャンプファイヤーとか、最終日には観光地に立ち寄るなんてこともあるそうです」
愛原「そういうゆとりがあるのはいいことですな」
善場「中学・高校受験は、大学受験ほど複雑ではないからでしょう」
リサ「むー……」
愛原「リサの成績なら、塾とか通わなくても大丈夫だよ」
リサは本当に地頭が良い。
これは父親とされる者が医師だからだろう。
善場「どうしてもというのでしたら、夏合宿に参加したいと本人が言っていると上に申請してあげますよ」
リサ「! おー!」
善場「それでは、学習塾の話はここまでにして……。今度はリサが見たという夢の話を聞かせてもらいましょうか?」
リサ「あー……うん」
リサは仮面の者に電撃を食らってしまい、気絶した時に見た夢の内容について話した。
善場「そう……ですか。斉藤……いえ、我那覇絵恋がねぇ……」
リサ「びっくりしたけど、でも、夢の中だからね」
善場「リサは夢の内容について、何か心当たりはありますか?」
リサ「数人の男女が天井に磔にされているという話、あれは学校の七不思議に出て来る内容だよ。“トイレの花子さん”の」
善場「そうなんですか」
リサ「ただ、旧校舎が3階建てというのは……」
善場「そこは本当に2階だったのでしょうか?」
リサ「えっ?」
善場「リサが夢の中でスタートした女子トイレは、2階ではなく、1階だったのかもしれませんよ?」
リサ「えー、そうかなぁ……?まあ、夢の話だからね」
善場「さて、問題なのは、唐突な我那覇絵恋さんの登場です。リサはこれにはビックリしたそうですね?」
リサ「そりゃそうだよ。フツー出てくるわけないもん」
善場「ところが、そうでもないのです」
リサ「えっ?」
善場「まず、“トイレの花子さん”と思しき者は、斉藤早苗と名乗って沖縄中央学園に出入りしていました。そしてその時、我那覇絵恋と接点を持ったわけです。そして、夢に出て来た我那覇絵恋は、リサのGウィルスまたは偽性特異菌が見せたものかもしれません」
リサ「えー……」
善場「今から、我那覇絵恋に連絡が取れますか?」
リサ「ちょっと待って」
リサは自分のスマホを取り出すと、それで絵恋にLINEを送った。
すぐに既読が付いて、返信があった。
リサ「『どうかしたの?』だって。何て答えればいい?」
善場「最近、斉藤早苗と会ったかどうか聞いてみてください」
リサ「うん」
リサがその内容を入力している時だった。
送信する前に、絵恋の方からまた何か送信されたらしい。
リサ「『これから塾だから、また後でね』だって。そういえばエレン、塾に通ってるんだった」
善場「……試しにその塾の名前、聞いてもらえませんか?」
リサ「うん。……『山手学苑』だって」
愛原「んん!?」
善場「ほお……」
山手学苑は1都3県しか営業していないのではなかったか?
これはどういうことなのだろう?
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