報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「鬼との戦いの後」

2024-03-03 21:16:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日23時00分 天候:晴 東京都板橋区赤塚新町 東武鉄道東上線と国道17号線(新大宮バイパス)交点]

 リサ「はぁ……はぁ……せんせぇーっ!!」

 リサもまた鬼形態に変化し、人外的な速さ、そして跳躍力で愛原達を追い掛けた。

 リサ「! あれは……!?」

 東武東上線の線路に、電車が停車している。
 駅ではなく、途中でだ。
 しかも、上りの池袋行き電車からは血の匂いした。
 それも、人間の血の匂いではない。

 リサ「この臭いは……蓮華の……?電車に……轢かれた……?」

 上り電車のフロントガラスには、蜘蛛の巣状のヒビが出来ている。
 運転士が電車から降りてきて、電車の周りを確認しているが、どうやら鬼が見当たらないらしい。
 ただ、これはリサにも言えることだが、恐らく蓮華なら電車に轢かれたくらいでは死ぬまい。
 とはいえ、かなりの大ダメージを受けたのは確かだろう。
 だとしたら、どこに?

 リサ「!?」

 血の臭いが線路の外に続いている。
 それを辿ると……。

 リサ「えぇえ!?」

 その下は幹線道路になっていた。
 深夜帯だが多くの車、特に大型トラックが行き交っている。
 蓮華はここから道路に落ちたのだろうか?

 リサ「! それより、、先生は!?」

 リサはヒョイと電車の屋根の上にジャンプした。
 架線に触れないように気を付ける。
 この架線には直流1500ボルトの電流が流れていると、愛原に教わった。
 人間なら一瞬で黒焦げだが、リサは違う。
 とはいえ、食らったらしばらく動けなくなるのは事実なので、慎重に進む。

 リサ「先生!愛原先生ーっ!」

 リサは愛原に呼び掛けた。
 BSAAのヘリが電車を追い掛けていたというし、実際蓮華の血の匂いがしたから、この止まっている電車に飛び乗ったのだと思っていたのだが……。

 リサ「! まさか、蓮華と飛び下りた!?」

 リサはさっきの地点に戻った。
 ここで蓮華の血の匂いは途切れている。
 多くの車が行き交っているが、特に道路の方は事故が起きたわけではないようだ。
 だとしたら、2人はどこへ?

 リサ「せっかく追い付いたのに……こんなの無いよーっ!わあああああ!!」

 鬼の姿のままリサは慟哭した。
 そこへ、リサのスマホが鳴り響く。
 普通の着信音だった。

 リサ「…………」

 画面を見ると、善場からだった。
 電話に出ると……。

 善場「リサ!線路の上から下りなさい!」
 リサ「先生が見つからないの……蓮華も……」

 すると、上空に再びBSAAのヘリが飛んで来た。

 善場「今、あなたの上空を飛んでるんだけどね!あなたの下を通っている道路は、国道17号線の新大宮バイパス。その脇に側道があるんだけど……」

 パトカーや救急車のサイレンが近づいてくる。

 善場「多分、その側道で倒れている人がいるんだけど、それ、愛原所長じゃない?」
 リサ「ええっ!?」

 リサは言われて、新大宮バイパスの側道を見た。
 今までは本線しか見ていなかったのだ。
 1車線しか無い側道を塞ぐように大の字で倒れている男がおり、それで渋滞している車列の後ろにパトカーや救急車が止まって、バタバタと駆け付けて行った。

 リサ「先生!」
 善場「あなたがそのまま下りて行ったら大騒ぎになるから、まずはそのまま池袋方向へ向かいなさい。途中に踏切があるから、そこから線路から出て」
 リサ「分かった……」

 リサは電話を切った。
 そして、バッと今度は池袋方向へと走ったのだった。

 リサ「あった!踏切!」

 リサは踏切からようやく線路外に出られた。

 善場「線路の外に出ましたか」
 リサ「出た!」
 善場「それから今度は、線路沿いの道を池袋方向に向かってください。すると、東武練馬駅があります。そこで待っていてください」
 リサ「んん?分かった。先生は?」
 善場「所長は今、救急車に乗せられたようです。あなたのその姿では乗れないので、取りあえず東武練馬駅で合流しましょう」
 リサ「分かった……」

 リサは電話を切った。
 そして、東武練馬駅に向かった。
 深夜だというのに、線路沿いの道は歩く人が多かった。
 どうやら、運転再開の目途が立たないので、歩いているらしい。
 轢いたはずの者が行方不明とあっては、なかなか運転再開できないのかもしれない。

[3月7日00時00分 天候:晴 東京都練馬区徳丸2丁目 東武練馬駅]

 リサ「着いた!東武練馬駅!」

 北口に着いた。
 しかし、北口の駅前はロータリーが無いほどに狭い。
 当然、バス停もタクシー乗り場も無いくらいだ。
 下りホームには後続の急行電車が臨時停車していたが、上りホームには電車がいなかった。
 踏切は開いているので、南口には簡単に行ける。

 善場「迎えの車が行きますので、しばらくそこで待っててください」

 と、言われた。
 リサは仕方が無いので、駅前の自販機でジュースでも飲みながら待つことにした。
 そして、しばらくすると、見覚えのある黒塗りのセレナがやってくる。

 高橋「リサ、乗れ!」

 スライドドアを開けて、高橋が手招きする。
 リサはすぐに車に乗り込んだ。
 助手席後ろの席に乗り込み、スライドドアが閉まるか否かのタイミングで、車が走り出す。

 リサ「先生は!?」
 高橋「この近くの病院に運ばれたって聞いた。俺達も行くぞ!」
 リサ「分かった!」

 車はその病院に進路を取った。

[同日01時00分 天候:晴 東京都板橋区高島平3丁目 板橋区医師会病院]

 愛原が搬送された病院に行くと、いつの間にか善場が先に到着していた。

 リサ「先生は!?先生は大丈夫なの!?」
 善場「お静かに。もう真夜中ですよ」
 リサ「あっ……!」
 善場「愛原所長は無事です。多少、打撲は負っていますが、大きなケガはされておりません」
 リサ「良かった……」
 善場「入院の必要は無いようなので、手当てを受けたらこのまま帰宅という形になるでしょう」
 リサ「はぁぁ……」

 リサはへなへなと力なく崩れ落ちた。

 高橋「おい、大丈夫か?」
 リサ「えへへ……何か疲れちゃった……」

 リサはホッとしたように言った。

 善場「車に戻って休んでいたらどうですか?」
 リサ「う、うん……そうする」
 善場「私は手続きがあるので、高橋助手はリサを車に戻してあげてください」
 高橋「わーったよ。ほら、立て!」

 高橋はリサに肩を貸してやった。
 夜間・救急入口の外のすぐ隣に、コインパーキングがあり、車はそこに止まっていた。
 運転席には、善場の部下の運転手が待機している。

 高橋「おーい、開けてくでー」

 高橋が窓をコンコン叩くと、善場の部下は振り向いてドアを開けた。

 部下「もうお戻りですか?」
 高橋「こいつが疲れたから、先に車に戻しとけとよ」
 部下「そうでしたか……」

 リサは高橋により、運転席の後ろの席に押し込められた。

 高橋「もうすぐで戻るから、もう少し待っててくれってさ」
 部下「了解しました」

 高橋は車を降りると、再び病院に戻って行った。

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