報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「深夜の帰宅路」

2024-03-04 11:20:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日23時00分 天候:晴 東京都板橋区高島平 板橋トラックターミナル]

 都営地下鉄三田線西高島平駅の近くにあるトラックターミナル。
 そこに進入した大型トラックの上に、栗原蓮華がいた。

 栗原蓮華「うっ……くっ……!」

 電車に跳ねられたことで体はグチャグチャになり、しかも跳ねられた衝撃で、線路下の国道に落ちてしまった。
 しかし、そこを通過中の大型トラックのコンテナの上に落ちたことで、戦線離脱することになったのである。
 持ち前の回復力で、体の方は回復していく。

 蓮華「さ……さすがは愛原先生。霧生市を生き延びただけのことはある……うっ!」

 蓮華に襲い掛かる激しい頭痛。
 人間としての記憶が失われていく中、霧生市に住んでいた頃の記憶が一瞬蘇った。

 蓮華「今のは一体……」

 そして、トラックが荷捌き場のホームに到着する。
 どうやらここで、荷物の積み下ろしをするようだ。

 蓮華「…………」

 蓮華はトラックから飛び下りた。
 そして……。

 蓮華「静岡行き……か」

 荷物を積み込み中の別のトラックの中に、『静岡』と書かれたカゴ台車を見つけた。

 蓮華「これでいい」

 蓮華はそうほくそ笑むと、荷物に紛れてトラックに乗り込んだ。

 蓮華(愛原先生は必ず私が手に入れる)

[3月7日01時30分 天候:晴 東京都板橋区前野町 志村パーキングエリア]

 善場「連絡のやり取りなどがありますので、一旦ここで休憩を」
 リサ「ん……」

 深夜の首都高速。
 そこのパーキングエリアに車は止まる。
 車は病院を出た後、高島平の入口から首都高に入り、そこから都心をまずは目指している。
 リサの隣に愛原は座っていて、打撲した所に湿布などを貼っている有様だった。

 愛原「まあこんなの、BSAAの回復薬や救急スプレーでも使えば完治するレベルさ」

 とのこと。

 リサ「トイレ……」
 愛原「ああ、行ってこい」

 リサは車を降りて、建物の中に向かった。
 眠い目を擦っている。
 先に降りた高橋は、外の自販機で缶コーヒーを買っていた。
 建物の中は休憩スペースとトイレ、自販機コーナーがある。
 外にあった喫煙所も、中に移設されたようだ。
 リサは真っ直ぐトイレに向かった。
 トイレの中は明るく、しかも全部洋式だったので、リサは安心して用が足せた。

 リサ「んー……」

 ビデを使って性器を洗っていると、突然、スマホが一瞬『警報』を鳴らした。

 リサ「うっ!?」

 びっくりして立ち上がってしまった為……。

 リサ「うわっ!?」

 お湯が足にも掛かってしまった。

 リサ「あー、もうっ!」

 リサはビデを止めた。
 急いで、濡れた部分をトイレットペーパーで拭く。
 そうこうしているうちに、『警報』は『注意報』に切り替わった。

 リサ「んん?」

 BSAAが作ったアプリ。
 BOWなどが接近してくると、通知してくれる機能がある。
 何とかトイレから出たリサは、スマホの画面を確認した。
 しかし、もう警報も注意報も解除されていた。

 リサ「何だったんだろう?」

 リサはお湯が掛かって湿ったショートパンツを気にしながら、休憩所に戻った。

 リサ「先生、今のは?」

 愛原もまたスマホを持っていた。
 どうやら、愛原のアプリも通知したようである。

 愛原「分からん。かなり強力なBOWが接近してくるという警報が鳴った後、注意報に格下げされて、それから解除されたな」
 高橋「もしかしてさっき、高速を通過してったんじゃないっスか?」
 愛原「なにっ!?」
 高橋「今の通知の仕方、それっぽくないっスか?」
 愛原「あ、なるほど」

 ここはパーキングエリアである。
 ここに寄らずに本線を通過して行った車にBOWが乗っていたのであれば、そういう反応にもなるだろう。
 だがあいにくと、このアプリではどんなBOWが接近し、そして遠ざかって行ったのかまでは分からない。

 善場「皆さん!」

 そこへ善場が入って来る。

 愛原「善場主任、どうなさいました?」
 善場「今のアプリの通知、確認されたかと思います」
 愛原「はい。どうやら今は遠ざかったようですが……」
 善場「どうやら、そこの高速を車で通過した可能性があります」
 愛原「やはりそうですか」

 しかし真夜中とはいえ、そこは平日の首都高速。
 昼間より空いているというだけで、けしてガラガラというわけではない。
 深夜営業のタクシーも走っているし、高速バスも走行しているし、何より、トラックが1番多く走っている。
 どの車に、BOWが乗っていたのかまでは分からないのだ。

 善場「もしも方向が都心方面だとしたら、今すぐ出発すると鉢合わせになる恐れがあります。しばらくここで待機した後、菊川に向かおうと思いますが、如何でしょうか?」
 愛原「そうですね。そうしましょう」
 リサ「学校は……?」
 愛原「さすがにその様子じゃ、明日……いや、もう日付変わったか。今日は無理だろう。今日はゆっくり休め」
 リサ「分かった……」

 さすがに深夜ということもあり、休憩所は空いている。
 中・大型車は駐車できないので、それもあるだろう。

 リサ「夜食食べていい?」
 愛原「いいよ」

 自販機コーナーには飲み物の他に、軽食も自販機で販売している。
 リサは愛原に、紙コップの自販機からココアを買ってもらい、それから軽食の自販機からはスナック菓子とサンドイッチを買ってもらった。
 愛原や高橋はコーヒーとパンを購入する。

 善場「私は車に戻って連絡してきます。出発の時はお知らせしますので、ここで休んでいてください」
 愛原「分かりました」

 喫煙所移設に伴い、減設された丸テーブルと丸椅子に座り、ここでリサ達は出発まで軽い夜食を取ったのだった。

 愛原「蓮華は……電車に轢かれたくらいじゃ死なんよ」

 愛原がコーヒーを啜りながら、呟くように言った。

 高橋「ですよね」
 リサ「イトーエンは?死んだの?」
 高橋「あいつはな。BSAAの奴ら、容赦無ェよ」
 愛原「……だろうな」

 休憩所内は特にBGMは掛かっていない。
 外から聞こえて来る車の走行音と、空調や自販機のモーター音だけがBGMである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “愛原リサの日常” 「鬼との... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「一夜... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事