報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「リサの謎」

2022-02-13 22:00:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月23日13:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私は助手の高橋を伴って、大口クライアントたるデイライトさんの東京事務所へ向かった。
 そこの担当となっているのが、善場主任である。

 愛原:「お待たせ致しました。報告書をお持ち致しましたので、御精査のほど、よろしくお願い致します」
 善場:「ありがとうございます。もし宜しかったら、今後の事をお話ししたいと思うのですが、お時間はございますか?」
 愛原:「はい、大丈夫です。私の方も、主任にお伺いしたいことがございますので」
 善場:「そうですか。では、どうぞ、こちらへ」

 私達は応接会議室へと通された。
 そこで、善場主任と向かい合って座る。

 善場:「まず、上野凛さんのことですが、合格という形になりました」
 愛原:「そうですか。それは良かった」
 善場:「まずは無事に中学校を卒業してもらい、それから上京して頂くという形になりますね」
 愛原:「ですね」

 3月1日くらいか?中学校の卒業式は……。
 そして、春休みに上京して、入寮する形となるか。
 その時に、再び母親と面会しに行くということだな。
 母親も、娘の高校進学が決定すれば喜ばしいことだろう。

 愛原:「凛さんも、私共の方で監視業務をということでしょうか?」
 善場:「そうですね。ただ、彼女の場合は半分人間です。しかも、愛原リサと違って、戸籍も最初からイジられているわけではありません。愛原リサよりも、人権への配慮は必要です。従いまして、愛原リサは常時監視ですが、上野さんにあってはそこまで監視しなくても結構です」
 高橋:「……って油断したら、リサより先に人間食ったりしてな?」
 善場:「その時はその時です。警察が対応することになりましょう」
 高橋:「警察ぅ?BSAAじゃなくて?」
 善場:「もう一度言いますが、上野凛さんは愛原リサと違い、BSAAからBOW認定はされていません
 高橋:「はあ!?」
 愛原:「ほう……」
 善場:「理由はアンブレラやトライセルなどのバイオテロ組織に認定された組織から、直接造られたことが確認されておらず、しかもしっかりと戸籍を最初から持っているからです。また、BSAAは直接、凛さんの形態変化を現認しておりません」
 愛原:「なるほど。うちのリサとは、別物扱いというわけですか」
 善場:「はい。あくまでも上野さんを監視対象としたのは、私共だけです」

 BOWが暴れれば、もちろん警察の手には負えないので、BSAAが出動する。
 しかし、半分人間の凛さんの場合、まだ警察の手には終えるかもしれないということで、最初からBSAAが出動するわけではないようだ。

 愛原:「分かりました」
 善場:「満月の夜などは監視をお願いするかもしれません」
 愛原:「あっ、そうだ」

 リサよりも厄介なのは、暴走する条件が却って分かっていることだ。
 分かっているから最初から回避可能な分、回避に失敗したら、【お察しください】。
 この辺りは特に条件が決まってはいないから常に危険ではあるものの、本人も頑張れば抑え込むことができるリサよりも厄介かもしれない(強いて言えば、人の血の臭いに当てられれば暴走しやすくなるという点か)。

 愛原:「満月の夜に人の血肉を欲するなんて、吸血鬼みたいですね」
 高橋:「狼男じゃないスか?」
 善場:「どちらも正解です。BOWから生まれ、人間の血が半分入った者はどのような作用があるのか、まだ研究中なのです。場合によっては、リサよりも強い者となるかもしれません」
 愛原:「そうなんですか。で、私からも聞きたいというのは……」
 善場:「何でしょうか?」
 愛原:「リサは人間の血肉を欲する割には、普通の人間の食事もできるわけです。むしろそのおかげで、暴走を抑えられていると言ってもいいでしょう。マンガやアニメなどで、人間を捕食をするような化け物は、普通の食事ができないと言います。どうしてうちのリサは、普通の食事ができるのでしょうか?」
 善場:「それもまだ研究段階ですので、はっきりとした事は言えません。が、あくまでも仮説レベルで宜しければ……」
 愛原:「お願いします」
 善場:「白井伝三郎の、日本版リサ・トレヴァーの造り方は独特です。捕まえた少女を、何年かコールドスリープさせるのです。この中で、『2番』のリサは何故か何十年もコールド・スリープさせられました。それと何か関係があるのかもしれません」
 愛原:「なるほど……」

 尚、善場主任はコールド・スリープさせられてから、たった2~3日で救出された。
 すぐに解毒剤やワクチンを投与され、完全に化け物になる前に人間に戻れている。
 ……が、やはりその後、何年かは後遺症に悩まされ、その間は大学を休学せざるを得なかったという(食人衝動こそ発生しなかったものの、他人の血を見て『美味しそう』と思ったり、爪の伸びが異様に早かったり、牙が生えたりといった感じ。牙は歯科で抜歯しても、しばしば再発した)。

 愛原:「コールド・スリープが長ければ長いほど、より完全体になれるかもしれないと?」
 善場:「あくまでも、仮説です。今の『2番』のリサも、他のリサ・トレヴァーと比べれば、かなり完全体と言えるでしょう。それとも、もっと長くすれば、より完璧な存在となれたのかもしれませんし。そこは、白井伝三郎に聞かないと分かりませんね」
 愛原:「なるほど……」
 善場:「何ぶん、まだ研究段階ですので、この程度のことしかお話しできないのです。申し訳ありません」
 愛原:「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。うちのリサの次に、比較的完全だった『1番』も、コールド・スリープは長かったのでしょうか?」
 善場:「それはまだ分かりません」
 愛原:「そうですか」
 善場:「まだ、分からないんですよ。私も、今後どうなるのか……」
 愛原:「あっ」

 善場主任もまた不安そうな顔をしていた。
 政府機関のエージェントとはいえ、彼女もまた『監視対象』の1人なのである。
 表向きは人間に戻れたことになっているが、それにしては常人離れした身体能力は残っている。
 それが今後どうなるのか、本人にも分からないことから、不安でしょうがないのだろう。
 見た目の後遺症と言えば、体の成長が遅くなったということだろうか。
 善場主任の年齢は私より10歳くらい下だと思われるが、見た目は高橋よりも下に見える。
 ぶっちゃけ、女子大生だと言っても信じてもらえるくらいの見た目だ。
 見た目が若いのは大いに結構だが、さすがに実年齢との乖離がヒドイと弊害も発生することだろう。

 愛原:「ワクチンでは無効化しきれなかったGウィルスの残りが、形を変えて体の中に溶け込んでしまった。そして、そうなった以上は、今の医療技術ではどうすることもできないんでしたね?」
 善場:「そうです」
 愛原:「うちのリサも、例え人間に戻れたとしても、そうなってしまうわけですか?」
 善場:「それも分かりません。……正直、本当に人間に戻れるのか、疑問な所もあります」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「も、もちろん、白井伝三郎に聞く必要はありますよ。だからこそ、早いとこ彼を逮捕しませんと」
 愛原:「そうですね」

 その後、私達は今後の事を話し合った。
 白井のことは全国指名手配になっているので、警察の捜査を待ち、私達の方でも何か有力な情報を手にしたら、それを善場主任に提供するということで決まった。
 どう見ても、国外にまでは逃亡しているとは思えないので、国際指名手配まではされていない。
 このまま白井は動かないつもりだろうか?
 それとも、もうどこかで死んでいるのでは?
 そんなことまで思った。

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