[2月4日09時23分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線965K電車最後尾車内]
朝食を食べ終わった後、パールを除く私達は、最寄りの地下鉄駅にいた。
実は朝食後、善場主任から連絡があり、事情聴取の続きはデイライトの事務所で行いたいのだという。
それで、これから新橋に向かうところだ。
菊川から新橋へは、都営バスが乗り換え無しで行けるものの、少し遠回りな上、路線バスはダイヤの正確性があやふやということもあり、往路は地下鉄で行くことにした。
都営地下鉄だけでも、乗り換えは1回だけで済む。
〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。馬喰横山で、急行、京王多摩センター行きに、お乗り換えできます〕
私はスーツを着ていたが、高橋とリサは私服。
リサは黒いプリーツスカートを穿き、上にはグレーのパーカーを羽織っていた。
そして、パーカーのフードを被っている。
トンネルの向こうから、京王線に帰る途中の京王電車がやってくる。
リサの黒いスカートの裾が、電車が入線する時の風で少し捲れ上がる。
丈は短いものであったが、スカートの中が見えるほどではない。
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕
電車に乗り込む。
土曜日ということもあり、車内はそんなに混んでいない。
すぐに短いメロディが流れる。
〔1番線、ドアが閉まります〕
ピンポーンピンポーンとドアチャイムが鳴って、ドアが閉まる。
JR東海の在来線電車と同じチャイムである。
車両のドアとホームドアが閉まり切ると、車掌が発車合図のブザーを鳴らす。
すると、エアーの抜ける音がして、インバータの音色と共に電車が動き出した。
車両の京王電車であるが、乗務員は東京都交通局の職員である。
リサは電車に乗るまでの間、終始俯き加減であった。
急にデイライトの事務所に呼ばれたのは、昨夜、暴走しかけたからだと思っているらしい。
私はそんなことないと思うとは言ったのだが、呼ばれた理由がよく分からないので、満更そうかもしれないと思い、それ以上は否定しなかった。
[同日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
馬喰横山駅で下車し、そこから地下道を通って東日本橋駅に移動する。
駅名は違うものの、同じ都営地下鉄ということもあり、同一駅扱いである。
そこから都営浅草線に乗り換え、新橋を目指した。
乗った電車は成田空港からやってきた京成電車ということもあり、車内には外国人が……そんなに多いわけでもなかった。
恐らく、行き先がマイナーな西馬込行きで、外国人観光客に人気である浅草や東銀座で降りて行ったのだろう。
で、約束の10時には事務所に着いたというわけである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/e8/a2fc5627141174af48a25aa0ea1e71a9.jpg)
善場「本日は御足労ありがとうございます」
愛原「いえいえ。とんでもないです」
善場「BSAAが出動しようとしたと聞いて、驚きましたよ」
愛原「お騒がせ致しました。申し訳ありません」
高橋「頭撃ち抜けと命令してくれたら、俺がコイツを殺るぜ?」
善場「あいにく、銃器程度では、リサは退治できませんね。価値の無い命令を出すつもりはありません。どうぞ、お掛けください」
高橋「チッ」
愛原「残念だったな。失礼します」
私は高橋を少し窘めると、会議室の椅子に座った。
善場「愛原所長の防御力の高さには、目を見張ります。1度、BSAAで戦闘訓練を受けてみてはいかがでしょう?」
愛原「だいぶ昔、射撃訓練だけは受けたことがありますね。高橋と一緒に」
高橋「軍事教練みたいなことやれってか。ネンショーや少刑でさんざんっぱらやらされたぜ」
善場「それとはまた別なんですがね。まあ、いいでしょう。それでは昨夜の続きですが、栗原蓮華は岩を投げる技を繰り出して来たのですね?」
愛原「はい。小さな物は野球のボールくらい。大きい物では、バレーボールくらいのサイズでした。それを全て素手で投げてきたのです」
高橋「バレーボールの大きさの石っつったら、漬物石くらいだ。それを片手でぶん投げて、アネゴのヘリを墜落させたんだぜ?」
善場「今のところ、攻撃手段はそれだけですか。銃弾を素手で掴むといい、今のところはリサは同等の強さのようですね」
愛原「かつては鬼斬りの剣士が、今では岩をぶん投げる、女ギガンテスですよ」
リサ「人を何人か食べて、あの強さかぁ……」
リサはボソッと呟いた。
リサ「もっと食べたら、わたしより強くなるかもね」
善場「だからといって、リサの食人行為は許可しかねます」
リサ「はぁい……」
愛原「このままでは、蓮華はまた人食いをしてしまいますよ」
善場「もちろん、BSAAでは現在全力で捜索に当たっています。ところで愛原所長」
愛原「何ですか?」
善場「今現在、愛原公一氏とは連絡が取れますか?」
愛原「公一伯父さんと?」
善場「はい。例の『化学肥料』について、話を伺いたいと私が言っていると伝えて頂けませんか?」
愛原「今ですか?」
善場「今です」
愛原「……分かりました」
私は自分のスマホを取った。
それで、公一伯父さんに掛けてみる。
だが、繋がらない。
愛原「繋がりませんね」
善場「では、今お世話になっているという民宿の方はどうですか?」
愛原「ちょっとお待ちください」
私は今度は民宿“さのや”に掛けてみた。
伯母「もしもし。民宿“さのや”です」
愛原「あっ、もしもし。愛原学ですけど……」
伯母「あっ、学?どうしたの?また、うちの民宿、使ってくれるの?」
愛原「そうしたいんだけど、今日は違うんだ。公一伯父さん、そっちにいる?」
伯母「あー、あのヤドロクねぇ……。何か、急に『旅に出ます』って書き置き残して出て行ったのよ」
愛原「ええっ?」
伯母「で、その後、うちの前にパトカーが何台もやってきて、警察がドカドカ入って来てねぇ……」
愛原「ええーっ!?」
伯母「また何か変な薬作って、警察に追われてるのかい?ホントに困った人だねぇ……」
愛原「スピード違反で捕まる高橋みたいなこと言わないでよ……」
高橋「な、何スか?」
すると、善場主任がホワイトボードに、何かを書き込んだ。
そして、それを指さす。
愛原「えーと……。『もしも』伯父さんの『居場所が分かったら、連絡を下さい』?」
伯母「ああ、分かったよ。あんた達も、たまにはうちの民宿に泊まりに来てね」
愛原「分かりました。地下室は、警察に見せたの?」
伯母「エレベーターの鍵、あの人が持ってるから、行けないよ。それに、警察は警察で、特に令状?とかは無かったから、うちの奥に来ることは無かったし」
愛原「そうか。分かった。ありがとう」
私は電話を切った。
愛原「……ということです」
善場「警察の動きを察知して、逃走を図ったということですね。分かりました。ところで、地下室って何ですか?」
愛原「ああ……」
私は善場主任に、民宿の秘密の地下室について話した。
朝食を食べ終わった後、パールを除く私達は、最寄りの地下鉄駅にいた。
実は朝食後、善場主任から連絡があり、事情聴取の続きはデイライトの事務所で行いたいのだという。
それで、これから新橋に向かうところだ。
菊川から新橋へは、都営バスが乗り換え無しで行けるものの、少し遠回りな上、路線バスはダイヤの正確性があやふやということもあり、往路は地下鉄で行くことにした。
都営地下鉄だけでも、乗り換えは1回だけで済む。
〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。馬喰横山で、急行、京王多摩センター行きに、お乗り換えできます〕
私はスーツを着ていたが、高橋とリサは私服。
リサは黒いプリーツスカートを穿き、上にはグレーのパーカーを羽織っていた。
そして、パーカーのフードを被っている。
トンネルの向こうから、京王線に帰る途中の京王電車がやってくる。
リサの黒いスカートの裾が、電車が入線する時の風で少し捲れ上がる。
丈は短いものであったが、スカートの中が見えるほどではない。
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕
電車に乗り込む。
土曜日ということもあり、車内はそんなに混んでいない。
すぐに短いメロディが流れる。
〔1番線、ドアが閉まります〕
ピンポーンピンポーンとドアチャイムが鳴って、ドアが閉まる。
JR東海の在来線電車と同じチャイムである。
車両のドアとホームドアが閉まり切ると、車掌が発車合図のブザーを鳴らす。
すると、エアーの抜ける音がして、インバータの音色と共に電車が動き出した。
車両の京王電車であるが、乗務員は東京都交通局の職員である。
リサは電車に乗るまでの間、終始俯き加減であった。
急にデイライトの事務所に呼ばれたのは、昨夜、暴走しかけたからだと思っているらしい。
私はそんなことないと思うとは言ったのだが、呼ばれた理由がよく分からないので、満更そうかもしれないと思い、それ以上は否定しなかった。
[同日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
馬喰横山駅で下車し、そこから地下道を通って東日本橋駅に移動する。
駅名は違うものの、同じ都営地下鉄ということもあり、同一駅扱いである。
そこから都営浅草線に乗り換え、新橋を目指した。
乗った電車は成田空港からやってきた京成電車ということもあり、車内には外国人が……そんなに多いわけでもなかった。
恐らく、行き先がマイナーな西馬込行きで、外国人観光客に人気である浅草や東銀座で降りて行ったのだろう。
で、約束の10時には事務所に着いたというわけである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/e8/a2fc5627141174af48a25aa0ea1e71a9.jpg)
善場「本日は御足労ありがとうございます」
愛原「いえいえ。とんでもないです」
善場「BSAAが出動しようとしたと聞いて、驚きましたよ」
愛原「お騒がせ致しました。申し訳ありません」
高橋「頭撃ち抜けと命令してくれたら、俺がコイツを殺るぜ?」
善場「あいにく、銃器程度では、リサは退治できませんね。価値の無い命令を出すつもりはありません。どうぞ、お掛けください」
高橋「チッ」
愛原「残念だったな。失礼します」
私は高橋を少し窘めると、会議室の椅子に座った。
善場「愛原所長の防御力の高さには、目を見張ります。1度、BSAAで戦闘訓練を受けてみてはいかがでしょう?」
愛原「だいぶ昔、射撃訓練だけは受けたことがありますね。高橋と一緒に」
高橋「軍事教練みたいなことやれってか。ネンショーや少刑でさんざんっぱらやらされたぜ」
善場「それとはまた別なんですがね。まあ、いいでしょう。それでは昨夜の続きですが、栗原蓮華は岩を投げる技を繰り出して来たのですね?」
愛原「はい。小さな物は野球のボールくらい。大きい物では、バレーボールくらいのサイズでした。それを全て素手で投げてきたのです」
高橋「バレーボールの大きさの石っつったら、漬物石くらいだ。それを片手でぶん投げて、アネゴのヘリを墜落させたんだぜ?」
善場「今のところ、攻撃手段はそれだけですか。銃弾を素手で掴むといい、今のところはリサは同等の強さのようですね」
愛原「かつては鬼斬りの剣士が、今では岩をぶん投げる、女ギガンテスですよ」
リサ「人を何人か食べて、あの強さかぁ……」
リサはボソッと呟いた。
リサ「もっと食べたら、わたしより強くなるかもね」
善場「だからといって、リサの食人行為は許可しかねます」
リサ「はぁい……」
愛原「このままでは、蓮華はまた人食いをしてしまいますよ」
善場「もちろん、BSAAでは現在全力で捜索に当たっています。ところで愛原所長」
愛原「何ですか?」
善場「今現在、愛原公一氏とは連絡が取れますか?」
愛原「公一伯父さんと?」
善場「はい。例の『化学肥料』について、話を伺いたいと私が言っていると伝えて頂けませんか?」
愛原「今ですか?」
善場「今です」
愛原「……分かりました」
私は自分のスマホを取った。
それで、公一伯父さんに掛けてみる。
だが、繋がらない。
愛原「繋がりませんね」
善場「では、今お世話になっているという民宿の方はどうですか?」
愛原「ちょっとお待ちください」
私は今度は民宿“さのや”に掛けてみた。
伯母「もしもし。民宿“さのや”です」
愛原「あっ、もしもし。愛原学ですけど……」
伯母「あっ、学?どうしたの?また、うちの民宿、使ってくれるの?」
愛原「そうしたいんだけど、今日は違うんだ。公一伯父さん、そっちにいる?」
伯母「あー、あのヤドロクねぇ……。何か、急に『旅に出ます』って書き置き残して出て行ったのよ」
愛原「ええっ?」
伯母「で、その後、うちの前にパトカーが何台もやってきて、警察がドカドカ入って来てねぇ……」
愛原「ええーっ!?」
伯母「また何か変な薬作って、警察に追われてるのかい?ホントに困った人だねぇ……」
愛原「スピード違反で捕まる高橋みたいなこと言わないでよ……」
高橋「な、何スか?」
すると、善場主任がホワイトボードに、何かを書き込んだ。
そして、それを指さす。
愛原「えーと……。『もしも』伯父さんの『居場所が分かったら、連絡を下さい』?」
伯母「ああ、分かったよ。あんた達も、たまにはうちの民宿に泊まりに来てね」
愛原「分かりました。地下室は、警察に見せたの?」
伯母「エレベーターの鍵、あの人が持ってるから、行けないよ。それに、警察は警察で、特に令状?とかは無かったから、うちの奥に来ることは無かったし」
愛原「そうか。分かった。ありがとう」
私は電話を切った。
愛原「……ということです」
善場「警察の動きを察知して、逃走を図ったということですね。分かりました。ところで、地下室って何ですか?」
愛原「ああ……」
私は善場主任に、民宿の秘密の地下室について話した。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます