報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「土曜日の仕事」 1

2023-12-18 17:11:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月4日09時23分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線965K電車最後尾車内]

 朝食を食べ終わった後、パールを除く私達は、最寄りの地下鉄駅にいた。
 実は朝食後、善場主任から連絡があり、事情聴取の続きはデイライトの事務所で行いたいのだという。
 それで、これから新橋に向かうところだ。
 菊川から新橋へは、都営バスが乗り換え無しで行けるものの、少し遠回りな上、路線バスはダイヤの正確性があやふやということもあり、往路は地下鉄で行くことにした。
 都営地下鉄だけでも、乗り換えは1回だけで済む。

〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。馬喰横山で、急行、京王多摩センター行きに、お乗り換えできます〕

 私はスーツを着ていたが、高橋とリサは私服。
 リサは黒いプリーツスカートを穿き、上にはグレーのパーカーを羽織っていた。
 そして、パーカーのフードを被っている。
 トンネルの向こうから、京王線に帰る途中の京王電車がやってくる。
 リサの黒いスカートの裾が、電車が入線する時の風で少し捲れ上がる。
 丈は短いものであったが、スカートの中が見えるほどではない。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕

 電車に乗り込む。
 土曜日ということもあり、車内はそんなに混んでいない。
 すぐに短いメロディが流れる。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ピンポーンピンポーンとドアチャイムが鳴って、ドアが閉まる。
 JR東海の在来線電車と同じチャイムである。
 車両のドアとホームドアが閉まり切ると、車掌が発車合図のブザーを鳴らす。
 すると、エアーの抜ける音がして、インバータの音色と共に電車が動き出した。
 車両の京王電車であるが、乗務員は東京都交通局の職員である。
 リサは電車に乗るまでの間、終始俯き加減であった。
 急にデイライトの事務所に呼ばれたのは、昨夜、暴走しかけたからだと思っているらしい。
 私はそんなことないと思うとは言ったのだが、呼ばれた理由がよく分からないので、満更そうかもしれないと思い、それ以上は否定しなかった。

[同日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 馬喰横山駅で下車し、そこから地下道を通って東日本橋駅に移動する。
 駅名は違うものの、同じ都営地下鉄ということもあり、同一駅扱いである。
 そこから都営浅草線に乗り換え、新橋を目指した。
 乗った電車は成田空港からやってきた京成電車ということもあり、車内には外国人が……そんなに多いわけでもなかった。
 恐らく、行き先がマイナーな西馬込行きで、外国人観光客に人気である浅草や東銀座で降りて行ったのだろう。
 で、約束の10時には事務所に着いたというわけである。

 

 善場「本日は御足労ありがとうございます」
 愛原「いえいえ。とんでもないです」
 善場「BSAAが出動しようとしたと聞いて、驚きましたよ」
 愛原「お騒がせ致しました。申し訳ありません」
 高橋「頭撃ち抜けと命令してくれたら、俺がコイツを殺るぜ?」
 善場「あいにく、銃器程度では、リサは退治できませんね。価値の無い命令を出すつもりはありません。どうぞ、お掛けください」
 高橋「チッ」
 愛原「残念だったな。失礼します」

 私は高橋を少し窘めると、会議室の椅子に座った。

 善場「愛原所長の防御力の高さには、目を見張ります。1度、BSAAで戦闘訓練を受けてみてはいかがでしょう?」
 愛原「だいぶ昔、射撃訓練だけは受けたことがありますね。高橋と一緒に」
 高橋「軍事教練みたいなことやれってか。ネンショーや少刑でさんざんっぱらやらされたぜ」
 善場「それとはまた別なんですがね。まあ、いいでしょう。それでは昨夜の続きですが、栗原蓮華は岩を投げる技を繰り出して来たのですね?」
 愛原「はい。小さな物は野球のボールくらい。大きい物では、バレーボールくらいのサイズでした。それを全て素手で投げてきたのです」
 高橋「バレーボールの大きさの石っつったら、漬物石くらいだ。それを片手でぶん投げて、アネゴのヘリを墜落させたんだぜ?」
 善場「今のところ、攻撃手段はそれだけですか。銃弾を素手で掴むといい、今のところはリサは同等の強さのようですね」
 愛原「かつては鬼斬りの剣士が、今では岩をぶん投げる、女ギガンテスですよ」
 リサ「人を何人か食べて、あの強さかぁ……」

 リサはボソッと呟いた。

 リサ「もっと食べたら、わたしより強くなるかもね」
 善場「だからといって、リサの食人行為は許可しかねます」
 リサ「はぁい……」
 愛原「このままでは、蓮華はまた人食いをしてしまいますよ」
 善場「もちろん、BSAAでは現在全力で捜索に当たっています。ところで愛原所長」
 愛原「何ですか?」
 善場「今現在、愛原公一氏とは連絡が取れますか?」
 愛原「公一伯父さんと?」
 善場「はい。例の『化学肥料』について、話を伺いたいと私が言っていると伝えて頂けませんか?」
 愛原「今ですか?」
 善場「今です」
 愛原「……分かりました」

 私は自分のスマホを取った。
 それで、公一伯父さんに掛けてみる。
 だが、繋がらない。

 愛原「繋がりませんね」
 善場「では、今お世話になっているという民宿の方はどうですか?」
 愛原「ちょっとお待ちください」

 私は今度は民宿“さのや”に掛けてみた。

 伯母「もしもし。民宿“さのや”です」
 愛原「あっ、もしもし。愛原学ですけど……」
 伯母「あっ、学?どうしたの?また、うちの民宿、使ってくれるの?」
 愛原「そうしたいんだけど、今日は違うんだ。公一伯父さん、そっちにいる?」
 伯母「あー、あのヤドロクねぇ……。何か、急に『旅に出ます』って書き置き残して出て行ったのよ」
 愛原「ええっ?」
 伯母「で、その後、うちの前にパトカーが何台もやってきて、警察がドカドカ入って来てねぇ……」
 愛原「ええーっ!?」
 伯母「また何か変な薬作って、警察に追われてるのかい?ホントに困った人だねぇ……」
 愛原「スピード違反で捕まる高橋みたいなこと言わないでよ……」
 高橋「な、何スか?」

 すると、善場主任がホワイトボードに、何かを書き込んだ。
 そして、それを指さす。

 愛原「えーと……。『もしも』伯父さんの『居場所が分かったら、連絡を下さい』?」
 伯母「ああ、分かったよ。あんた達も、たまにはうちの民宿に泊まりに来てね」
 愛原「分かりました。地下室は、警察に見せたの?」
 伯母「エレベーターの鍵、あの人が持ってるから、行けないよ。それに、警察は警察で、特に令状?とかは無かったから、うちの奥に来ることは無かったし」
 愛原「そうか。分かった。ありがとう」

 私は電話を切った。

 愛原「……ということです」
 善場「警察の動きを察知して、逃走を図ったということですね。分かりました。ところで、地下室って何ですか?」
 愛原「ああ……」

 私は善場主任に、民宿の秘密の地下室について話した。

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