報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「土曜日の仕事」 2

2023-12-18 20:19:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月4日11時30分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所→某ラーメン店]

 愛原「もしもし、伯母さん?何度もゴメン。地下室に行くエレベーターのメーカーってどこ?……分からない?いや、ボタンの所とか、ドアの横とかに書いてないかな?……うん」

 私はスマホを少し離した。

 愛原「今、伯母さんが見に行ってます」
 善場「お手数お掛けします」

 しかし善場主任は腕組みをしたまま、少し眉を潜めたままだ。

 愛原「……あ、ゴメンね。何だって?……え?どっち?三菱なの?日立なの?」
 伯母「だから、三菱と日立、両方書いてあるんだって!」
 愛原「ええ~……」

 私は伯母さんに礼を言って電話を切った。

 愛原「善場主任。例の地下室に行くエレベーターは、三菱か日立だそうです。何か、2つのメーカーの名前が書いてあるんですって」
 善場「それは家庭用のホームエレベーターですか?」
 愛原「そうですね」
 善場「それなら納得ですよ。実はエレベーターメーカーである三菱電機と日立製作所は、ホームエレベーター部門を統合させて、1つの企業として独立させたのです。名前をそのまま、三菱日立ホームエレベーターと言います。恐らく、それですね」
 愛原「そうだったんですか。なまじ、防災センターの警備員を長くやってると、却って分かりませんね」
 善場「そうですね」
 リサ「埼玉にあった、エレンの家のエレベーターかなぁ?」
 愛原「あー……どうだろう……」
 善場「所長の事務所にあるエレベーターのメーカーは、どこですか?」
 愛原「東芝ですね。東芝では現在製造中止になっている、4人乗りの小型エレベーターです」
 善場「すると、メーカーが違うので、鍵は合いませんね」
 愛原「すいません」
 善場「いえいえ。メーカーから鍵を取り寄せて、それで行くしか無いようです。というか、鍵は本当に公一氏しか持っていないのですか?」
 愛原「そのようです。そもそもエレベーターを設置したのも、公一伯父さんだったようで、管理者も伯父さんになっていました。だから、伯母さんは鍵の場所が分からないそうです」

 民宿は地上2階建て。
 バリアフリーの為と称して設置されたエレベーターなので、2階にも行くことができる。
 1階と2階の行き来は無条件でできるが、伯父さんが寝泊まりしていた地下室には、鍵が無いと下りれないようになっている。
 ちょうど私の事務所のエレベーター、居住区の3階と4階に行くのには、鍵が無いと操作できないのと同じだ。

 善場「かしこまりました。やはり、メーカーから鍵を取り寄せる必要がありそうです。色々手続きがありますので、少し時間が掛かりそうですね」
 愛原「お役に立てなくて、申し訳ありません」
 善場「いえいえ。ここまででも、十分ですよ。また何かありましたら、御協力お願いします」
 愛原「それはもう、是非」

 こうして私達は、事務所をあとにした。

 高橋「マジで大事ですね」
 愛原「そりゃそうだろう。何せ、BOWを造り出してしまったんだからな。BSAAから見れば、『うおおおお!あの日本が憎きバイオテロのBOWを造りやがったぞーっ!』ってなる」
 高橋「うわ……」
 愛原「世界の警察を標榜していて、尚且つバイオテロ発祥の地であるアメリカ様に、『日本をバイオテロ支援国家に指定する!』なんてことになったら……」
 高橋「日本オワタですね」
 愛原「そういうことだよ。ただでさえ、リサを生かしていることに対しても、批判があるというのに……」
 リサ「う……」
 愛原「『人間に戻れるから、ちょっと待ってくれ。現に戻れた人間がいるだろう?』ってことで、リサの殺処分は保留なんだから」
 高橋「その代わり、四六時中の監視付きってことで」
 愛原「そういうことだよ」
 リサ「それより先生、帰る前にお昼食べて行こうよ?」
 愛原「少なくとも、こうであるうちは心配無い」
 高橋「普通の人間の飯が食える時点では、そうですね」
 愛原「ああ、分かった。お昼食べてから帰ろう」
 リサ「おー!」
 愛原「ちょっとお昼前だが、その方が空いてるだろう」
 高橋「何にします?」
 愛原「こういう寒い時期は、やっぱラーメンだろうな」
 高橋「ですね」
 リサ「おー!ラーメン!」

 私達は近くのラーメン屋に入った。

 店員「らっしゃいせー!」
 愛原「ここは食券方式みたいだな。何にする?」
 リサ「チャーシューメンと唐揚げ」
 愛原「肉が一杯だな。まあ、俺もチャーシューメンにするか。高橋は?」
 高橋「俺は担々麺にします」
 リサ「辛いの行くねー!」
 高橋「当たり前だ」
 愛原「俺が出すよ」
 高橋「あざっス!」
 リサ「あざっス!」

 食券を買って、テーブル席に座る。
 ラーメンや唐揚げを待っている間、どんどん客が入って来たので、良いタイミングだったのだろう。

 高橋「そういやエレベーターの件なんスけど……」
 愛原「うん」
 高橋「さっきリサが、埼玉の家のエレベーターと同じって言ってたじゃないスか?」
 愛原「そうだな」
 リサ「まだ分かんないよ。もしかしたら、そうじゃないかって思っただけ」
 愛原「まあまあ。それで?」
 高橋「で、少し前、先生、こう言ってましたよね?『実はエレベーターの鍵って、メーカーが同じであれば、どこも共通』って」
 愛原「あー、そういえば言ったかも。例えばうちの事務所のエレベーターは東芝だが、他のビルの東芝エレベーターの鍵を持って来ても、うちのエレベーターは操作できるということさ。家の鍵と違って、バラバラってことは無いんだな」
 高橋「やっぱりそうですか。家庭用エレベーターもですかね?」
 愛原「多分……。それがどうかしたのか?」
 高橋「いえ。もし埼玉の家のエレベーターと、あの民宿のエレベーターが同じメーカーだったら、鍵も同じなんだろうなって。で、パールは元その家のメイドっスから……」
 愛原「! そうか!メイドなら、エレベーターの鍵を持ってるかもしれないな!?」
 高橋「ちょっと、パールにLINE送って聞いてみます」
 愛原「頼むよ」

 高橋がパールにLINEを送ったところ、すぐに返信が来た。
 すると、確かに埼玉の斉藤家のエレベーターは、三菱日立エレベーターだという。
 その鍵を持っているかどうかについてだが……。

 高橋「うーん……。残念ながら、パールは持ってないみたいです」
 愛原「そうかぁ……」
 高橋「他のメイド仲間に聞いてみるとのことでした」
 愛原「頼むよ」
 高橋「任せてください」

 そうしているうちに、ラーメンや唐揚げが運ばれてくる。

 リサ「まずはお昼を食べてからだね!」
 愛原「まあ、そうだな」

 取りあえず私達は、ラーメンを食べることにしたのだった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「土曜... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「土曜... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事