報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「『魔王様の肖像画』制作開始前」

2022-12-12 15:53:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月3日14:00.天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 愛原は善場と話をしている。
 その間、リサはヒマだった。
 お昼は弁当が出たので、それだけが唯一の楽しみだった。
 事務所内のWi-Fiを借りて、『魔王軍』やその他の知り合いとLINEをしたり、Twitterをしたりして過ごした。
 その中で話題になったのが……。

 リサ:「今日明日も取り掛かるの?台風来るから、学校行けないよ?」

 尚、普通の会話のようだが、これはLINEでの会話である。

 桜谷:「来月の絵画コンクールに出したいんです!私からリサ先輩の家に行くから、お願いします!」

 因みにリサの全体像をモデルに描くから、サイズはA0版くらいある。
 リサは絵画のことなど全く分からないが、キャンバスのサイズを見た時に、「デカッ!」と、思ったものだ。
 もちろん、キャンバスにはキャンバスのサイズの規格があって、一応リサはそれを聞いたのだが、全く分からなかった。
 ただ、かなり大きなサイズで、美術部にあるイーゼルでも、最大の物を貸与されたとか言っていた。

 リサ:「いや、そんな大きなサイズ、家に持って来られてもねぇ……」
 桜谷:「サイズ的に、平日の放課後だけやってるんじゃ間に合わないんです!」

 ということだった。

 リサ:(『魔王様の肖像画』って、こんなに面倒なのか……)

 リサはRPGでしか見たことなかったので……。

 リサ:「わたしの保護者に聞いてみるから、ちょっと待ってて」

 と、返事は保留にしておいた。
 すると、リサが待機している応接室に、愛原と善場がやってきた。

 愛原:「リサ、話が終わった。帰るぞ」
 リサ:「あ、はーい」
 善場:「マンションまで、車でお送りします」
 愛原:「ありがとうございます」

 今度は善場は付いてこなかった。
 善場の部下の運転手だけである。
 リサと愛原は、病院から出た時のように、リアシートに座った。

 運転手:「それでは出発します」
 愛原:「お願いします」

 風が強まっている中、リサ達を乗せた車が出発した。

 愛原:「今日明日は安静だな。まあ、土日で良かった」
 リサ:「先生。お兄ちゃんは、どのくらいで退院できるの?」
 愛原:「一応、順調に治療が続けば、来週には退院できるらしいな。ちょうど俺、頭のホッチキスを抜くのが来週だから、そのタイミングで迎えに行けるかもしれない」
 リサ:「わたしも行っていい!?」
 愛原:「だけどオマエ、学校だろ?金曜日の話だ」
 リサ:「あー……そうか……」

 リサは残念そうに項垂れた。

 愛原:「俺は来週、病院には朝一で行く。その後で高橋の迎えだとすると……。まあ、昼には完結するだろう。そういうことだ」
 リサ:「分かった……。その代わり、先生に1つお願いがある」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「美術部の後輩が、わたしをモデルに絵を描きたいんだって」
 愛原:「そうなのか。オリジナルのリサ・トレヴァーも、ステンドグラスに描かれていたっていうし、それはいいんじゃないか」
 リサ:「かなり大きいサイズで、それなのに制作期間1ヶ月なんだって」
 愛原:「……美術のことは、俺はよく知らないが、それってかなりの無茶ぶりってことか?」
 リサ:「そうみたい。だから、平日の放課後にちょこちょこやってたんじゃ、間に合わないんだって」
 愛原:「部活動の一環なら、それでできるものを描けばいいだろう?」
 リサ:「わたしのはコンクールに出すんだって」
 愛原:「そ、そうなのか?」
 リサ:「それに間に合わせたいんだって」
 愛原:「おいおい。困っているのは分かるが、探偵の俺にできそうなことは無さそうだぞ?」
 リサ:「そのコ、今日明日家に来て描きたいんだって」
 愛原:「ええっ!?だって、台風来てるぞ!?」
 リサ:「台風さえ来なかったら、わたしとそのコ、学校に行けばいいだけの話。台風でそれが無理だから、そのコが家に来るんだって」
 愛原:「そのコ、家の近所なのか?」
 リサ:「ううん。中目黒」
 愛原:「マジか!いい所住んでるな!」
 リサ:「うん。日比谷線1本で通学できるから便利!」
 愛原:「いや、通学の利便性もそうだけど、場所的にもね……」
 リサ:「わたし達と同じ、マンション住まいだって」
 愛原:「いや、まあ、あそこ、一戸建てが建っているようなイメージは無いなぁ……。すると、菊川に行くには……」
 リサ:「六本木で降りて、そこから都営大江戸線で森下駅まで行くって言ってた」
 愛原:「なるほど。森下か。確かに、俺達の住んでる菊川1丁目なら、森下駅からも徒歩アクセス可能だな」

 菊川駅よりは歩くが。
 台風が来る中、なるべく地上での徒歩連絡は可能な限り、避けた方が良いと思われるが……。

 リサ:「どう、先生?」
 愛原:「泊まるのは、この土日だけなんだな?」
 リサ:「そう言ってた」
 愛原:「分かったよ。まあ、絵描きなら、そんなにうるさくもならないだろう」
 リサ:「もちろん。先生の療養の邪魔はさせない」
 愛原:「そういうことならいいよ」
 リサ:「ありがとう!」

 リサはスマホを取り出し、早速、桜谷にLINEした。
 ただ単に来訪の許可を与えるだけなのだが、何故かリサは長めにLINEをした。
 それこそ、愛原のマンションに到着する直前まで……。

[同日16:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 夏場のこの時間帯など、まだまだ昼間の明るさである。
 ところが、今は台風の雲が上空に迫って来て、冬場のこの時間帯といった薄暗さを見せていた。

 桜谷:「こんにちは!」

 そして、大きなキャリーバッグを持った桜谷がやってきた。
 それこそ、海外旅行に行くのかと思うくらいの大きなキャリーバッグである。

 リサ:「おっ、来たか。入れ」
 桜谷:「お邪魔します!」

 桜谷はTシャツにジーンズといった格好をしていた。
 リサと同じくらいのおかっぱ頭だが、リサがウェーブが掛かっているのに対し、こちらは直毛。
 ただ、上野凛と違って、こちらは栗色の髪であった。
 因みにリサの髪、色が抜けてしまったが、また黒に戻っている。
 但し、毛先1~2cm部分だけは色が抜けたままになっていた。

 リサ:「サクラヤ、まずは愛原先生に御挨拶」
 桜谷:「ど、どうも。今日は厚かましいお願いを、ありがとうございます!」
 愛原:「いいよ。今夜、泊まって行くんだろ?ベッドは簡易的なものになるけど、いいかな?」
 桜谷:「は、はい!大丈夫です!……あの、早速、セッティングの方を……」
 リサ:「分かった。わたしの部屋に案内する。……あ、先生」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「今日の夕食は?」
 愛原:「今のうちにピザ予約しておいた。桜谷さんも、それでいいかな?」
 桜谷:「あ、はい。私は何でも……」

 恐らく学内では小柄な体型になるのだろうが、それでもまだ中学生に間違われるリサと比べれば、高校生に見える桜谷である。

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