報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「中央線の旅」 2

2022-06-13 17:51:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月29日16:40.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅プラットホーム]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。3番線に停車中の列車は、16時47分発、普通、大月行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、相模湖に停車致します〕

 10両編成の中央快速線から、今度は6両編成の中央本線に乗り換える。
 前者はバリバリの通勤電車だったが、後者は文句無しの中距離電車である。
 但し、中央本線の場合、普通列車でも松本まで行ったりするので、中距離とは言えない電車も存在する。
 私達が乗るのは、大月止まりであったが。
 前回電車に乗った時はオールロングシートであったが、今度はボックスシートが付いた電車であった。
 恐らく、旧国鉄時代に製造された車両であろう。
 211系というのだが、ちょうど国鉄民営化の直前に製造が始まった車両ということもあり、JRになってからも製造されている。
 私が聞いた話、前者と後者の違いは、ボックスシート付きかそうでないかということらしいが……。
 もっと分かりやすいのは、運転室と客室との境の窓が小さい方は旧国鉄型、大きい方はJR型だとも聞いたことがある。
 但し、旧国鉄型であっても、後に改造された車両もあったりするそうで、何だかややこしい。
 登場時は殆どステンレス製の新型電車と持てはやされただろうが、現在となってはレトロ感が否めない。
 BOWの少女達は緑色のボックスシートに向かい合って座り、私と高橋はドア横の2人席に腰かけた。

〔「ご案内致します。この電車は16時47分発、中央本線、普通列車の大月行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 凛:「先輩、ジュース買ってきます。何がいいですか?」
 リサ:「オレンジジュース。先生は……」
 愛原:「いや、俺はいいよ。向こうに着いてからで」
 高橋:「同じく」

 凛さんは一度ホームに降りて、そこにある自販機でジュースを買って来た。
 窓の桟に飲み物を置いて旅ができるのも、ボックスシート車の醍醐味か。
 JR東日本では、希少になりつつある。
 横須賀線・総武快速線に投入された新型車両、普通車でのボックスシートは全廃された。
 景色を見ながら乗れるのは、特別料金の掛かるグリーン車のみということになる。

[同日16:47.天候:晴 JR中央本線1463M列車先頭車内]

〔「お待たせ致しました。16時47分発、中央本線普通列車、大月行き、まもなく発車致します」〕

 ホームから発車メロディが流れてくる。

〔3番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 大きなエアー音を立てて、電車のドアが閉まる。
 高尾駅にもホームドアは無い為、電車のドアが閉まり切ると、すぐに電車は発車した。
 加速は東京行きの電車と比べて、やや遅い。

〔「本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。16時47分発、中央本線普通列車、大月行きです。これから先、相模湖、藤野、上野原、四方津、梁川、鳥沢、猿橋、終点大月の順に止まります。終点、大月には17時24分の到着です。【中略】次は相模湖、相模湖です」〕

 高尾駅までは都会やその近郊といった雰囲気の沿線風景であったが、高尾駅を出ると、周囲の景色は一気に変わる。
 仙台出身の私は、この沿線風景をJR仙山線の愛子駅以西だと思い、栃木県出身の上野姉妹はJR日光線のようだという。
 それほどまでに山間の寂しい所を走る。
 また、それまでトンネルなど無かったのだが、ここへ来て断続的にトンネル区間となる。
 高尾駅の1番線ホームには、第2次大戦中に襲来してきた米軍戦闘機P51による機銃掃射の跡が残されている。
 そこから逃げようとした中央本線の列車は、米軍機に捕捉され、機銃掃射の餌食になってしまった。
 トンネルに入って米軍機をやり過ごそうとした列車であったが、トンネルに入り切れず、『頭隠して尻隠さず』状態になり、入り切れなかった部分が餌食になったという。
 当然、そこに乗っていた乗員乗客に多大な被害が出た。
 米軍側の言い分としては、『軍用列車だと聞いていたので襲撃した』とのこと。
 しかし、実際は避難民を多く乗せていたので、米軍側の戦争犯罪だろう。
 もちろん、敗戦国がそれを裁けるわけがない。
 ウクライナのゼレンスキー大統領やロシアのプーチン大統領が必死になっているのは、とにかく敗戦国にだけはなりたくないという気持ちの現れだというのが分かる。
 尚、90年代のオカルトブームの時は、このトンネルでの惨劇をモデルにした怪談話が語られることも多々あった。
 そのけん引役となった霊能者達や新興宗教団体の末路は、【お察しください】。
 引き金となったのは、多分に日蓮正宗による創価学会の破門ではないかと思う。
 怪奇現象は単なる副産物に過ぎなかったと思うが、作者は90年代のオカルトブームの火付け役は日蓮正宗と創価学会ではないかと見ている。

 愛原:「リサ、何かトンネルの中に見えるか?」
 リサ:「? 別に」
 愛原:「そうか」

 件のトンネルを通過したが、科学的に怪奇現象を引き起こす側となったリサには何も感じなかったようだ。
 もちろん、そんなBOWから生まれた2人の半鬼姉妹も、別に霊感があるわけではない(姉の方は、新興宗教団体から巫女と持てはやされているのだが)。

[同日17:00.天候:曇 神奈川県相模原市緑区小渕 JR藤野駅]

〔「まもなく藤野、藤野です。お出口は、右側です。電車のドアは、自動で開きます。ドア付近にお立ちのお客様は、開くドアにご注意ください」〕

 高尾以西は半自動ドア扱い区間となるが、コロナウィルス対策による換気促進の為、自動開閉に変わっている。
 それにしても、トンネルに入ると、開いている窓から風がブワッと入って来る。
 電車ならそれだけで済むのだが、これが蒸気機関車だと、確かに煙が入って来てしょうがなかっただろう。
 その為、蒸気機関車が運転されている線区の駅のホームには洗面所が備え付けられていた(顔や手に付いた煤を洗い落とす為)。
 今でも、まだリニューアルされていない古い駅に行けばあるかもしれない。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます〕

 私達は電車を降りた。

 愛原:「……暗いな?」

 もうすぐ5月になるのだから、だいぶ日が長くなっているはずである。
 にも関わらず、案外外は暗く鳴っていた。
 それもそのはず。
 空には、どんよりとした空を覆っていたからだ。
 都内は晴れだったはずだが、山を越えるだけでこんなにも違うのか。

 高橋:「先生、ここでタバコは?」
 愛原:「待て待て。タクシーを予約してあるから、センターに着いてからにしてくれ」

 藤野駅にもタクシー乗り場はあるが、どうもいつも客待ちをしているとは限らないようだ。
 そこで私は、高尾駅でタクシー会社に電話し、予約することにした。
 ジャンボタクシーにでも乗ればいいのだが、それは無いとのことなので、普通車2台を予約することにした。

 愛原:「どうせ車で行けばすぐなんだからさ」
 高橋:「……分かりました」

 因みに藤野駅には喫煙所があるかどうかは、【お察しください】。

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