報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「東京へ戻る」

2023-08-24 15:18:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月9日10時00分 天候:晴 静岡県富士宮市下条 民宿さのや]

 愛原公一「ほれ、これが『例のブツ』じゃ。ちゃんと目的地まで届けるのじゃぞ?途中で強奪されたら、向こうさんの計画はパー。お前も信用ガタ落ちぢゃ」
 愛原学「分かってますよ。ありがとうございます」
 伯母「ホントに気をつけてね。仙台の御両親によろしく」
 学「分かってますよ。お世話になりました」
 高橋「先生、タクシーが来ました」
 愛原「おー」

 私は伯父さんから、『サンプル』の入った断熱バッグを預かった。
 そして、タクシーに乗り込んだ。

 愛原「パール、また助手席よろしく」
 パール「かしこまりました」

 タクシー車種にはあまり見かけないプレミオのタクシーが来た。
 塗装はタクシー会社の塗装なのだが……。

 高橋「先生、このまま東京っスか?」

 高橋の期待を裏切り、私は……。

 愛原「西富士宮駅までお願いします」
 運転手「はい、ありがとうございます」

 運転手に行先を告げた。

 高橋「西富士宮……?」

 タクシーは民宿の前を出ると、狭い県道に出た。
 乗用車同士ならともかく、大型車同士のすれ違いはキツいだろう。
 だから、この県道を通るバスも中型車である。

 高橋「西富士宮駅って……そこで待ち合わせっスか?」
 愛原「何言ってるんだ。荷物をデイライトさんまで届けるんだろうが。電車に乗るに決まってるよ」
 高橋「ええっ?」

 高橋は信じられないといった顔をした。
 そりゃそうだろう。
 本来なら、こんな重要な物、ヘリコプター辺りで輸送するのがセオリーだ。
 それなのにこのタクシーの行先は、ヘリポートでもなければ警察署でもない。
 かといって、自衛隊の富士演習場なんかでもない。
 まあ、この近くにヘリポートがあるのかどうかは不明だが。

 高橋「大事な物をこれから、電車で運ぶんですか?」
 愛原「そうだよ」
 高橋「ええ~……」

 高橋は信じられないといった顔をした。
 しかし、これもデイライトさんからの指示だ。
 私はそう言った。
 それでも高橋は納得できないという顔だった。

 愛原「もう1つ教えてやろう。来る時はバスだったわけだが、帰りは取りあえず駅まではタクシーだ。その理由は、バスの便が悪いからだよ。休日ダイヤなんて、1日に2本しかない。とんでもない田舎のバスだよ」

 それでいて、フリー乗降性とかはやってないんじゃなかったかな……。

[同日10時15分 天候:晴 同県富士宮市貴船町 JR西富士宮駅→身延線3544G列車先頭車内]

 およそ15分ほどで、タクシーは西富士宮駅に到着する。
 それでも、二千数百円ほどの料金が掛かった。
 もちろん、領収証は取っておく。
 駅は平屋建ての地方の駅そのものだった。
 藤野駅に雰囲気が似ている気がするのは、駅の規模が正にそれくらいだからだろう。
 但し、藤野駅は業務委託駅(JR東日本の関連会社に駅業務を委託)なのに対し、西富士宮駅はJR東海の駅員が配置されている。
 改札口はあるが、ブースに駅員はおらず、簡易的なICカード読取機があるだけだった。

 愛原「トイレは改札入って右。自販機は待合室か、ホームのどちらかだな」
 高橋「次の電車、10時42分だそうです」
 愛原「まあ、折り返しの始発電車だな。この駅から北に行く列車は、本数が少ないんだ。これでも、南方面は本数が多い方なんだよ」
 高橋「こんなゆっくりしてていいんですか?」
 愛原「デイライトさんがそうしろと言ってるんだからいいんだよ」
 高橋「で、富士駅から新富士駅に移動し……」
 愛原「しないよ」
 高橋「えっ?」
 愛原「このままずーっと在来線での旅だ」
 高橋「ええーっ!?」
 愛原「安心しろ。熱海から先は、グリーン車に乗せてやる」
 高橋「はあ……でも……」

 キップ売り場に券売機はあるが、これは近距離用だけである。
 長距離キップは、有人窓口で購入する必要があった。

 愛原「すいません。ここから東京の新橋駅まで、大人4枚ください」
 駅員「乗車券だけでよろしいですか?」
 愛原「はい。乗車券だけでいいです」
 駅員「かしこまりました」

 私はここで新橋駅までのキップを購入した。
 窓口で購入したからか、水色の乗車券が発行された。
 これの購入費用についても、領収証を発行してもらう。

 愛原「キップは1人ずつ持とう」
 高橋「ありがとうございます……」
 リサ「ありがとう」
 パール「ありがとうございます」
 愛原「それじゃ、ホームに行くか」

 私達は駅員に改札印を押してもらうと、ホームに向かった。
 昔ながらの改札挟というのは、地方ローカル鉄道に行けばまだ見ることはできるが、スタンプ式の改札印というのも、なかなか見られなくなった。
 車掌が持つのは青いインクだが、駅員のは赤いインクというのもまた共通している。
 駅舎とホームは繋がっておらず、跨線橋を渡る必要がある。
 これも藤野駅と共通していた。
 かつては構内踏切でもあったのかもしれないが、安全の観点からすれば、跨線橋はやむ無しか。
 但し、バリアフリー対策として、エレベーターは設置されている。

 

 リサ「ジュース、ジュース」

 ホームに降りると、リサはホームの自販機でジュースを買い求めた。
 まだ、上りホームに電車は入っていない。
 私も温かい缶コーヒーを買った。
 すると、ホームを3両編成の特急“ふじかわ”号が通過していった。
 かつては急行列車であり、その時はこの西富士宮駅にも停車していたが、創価学会破門後、利用者数のガタ落ちにより特急化後は通過駅となってしまった。
 尚、最高速度はたったの時速85kmである。
 そんなことを思い出しながら、私はベンチに座って電車を待った。
 多分、特急の通過を待ってから入線してくるのではないかと思ったが、どうやらビンゴだったようである。
 しばらくして、ようやく2両編成の普通列車が留置線からやってきて、1番線ホームに到着した。
 ワンマン運転ということもあり、半自動ドアである。
 2両編成なので、どちらに乗っても良いのだが、乗り込んだのは前の車両だった。
 4人用ボックスシートに座ってみたが、少々狭い。
 まあ、乗車時間は20分ちょっとだけなので、少しくらいはいいだろう。
 窓が大きいので、富士山を見ながら帰京することにしよう。

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