報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「漁港で過ごす」

2021-01-28 14:30:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月2日16:00.天候:晴 宮城県石巻鮎川浜南 鮎川港]

 鮎川港で突如、リサ・トレヴァーに襲われた私達。
 しかし、うちのリサの活躍でそいつは倒された。

 愛原:「『何番』だ、そいつは!?」

 うちのリサがリサ・トレヴァーの仮面を剥ぐ。

 愛原:「うっ……!」

 その下は人間の顔では無かった。
 複眼が不規則にあって、開いた口の全てが牙のように尖っている。
 その歯の数も多過ぎた。
 明らかに失敗作だろう。
 リサはそいつの上着を捲り上げた。
 セーラー服の下にはキャミソールを着けている。
 そして左腋の下には、『220』と書かれていた。

 愛原:「『220』!?何だこれ!?」
 高橋:「『13番』とかじゃないんスね!?」

 リサ・トレヴァーが量産化されている!?
 しかし、その割には弱過ぎるが……。
 いや、うちのリサが強いだけか。

 愛原:「え?それなに!?『13』~『220』がいるってこと!?少なくとも!」

 そんなこと五十嵐元社長のデータには無かったぞ?
 いや、書いてなかっただけであって、全くそんなことないというわけではないのかもしれないが……。
 それにしてもなぁ……。
 私は『220』の写真を撮った。
 すると、そいつの死体が溶け出していく。
 他のクリーチャーにもまま見られる現象だ。
 生命活動を停止すると、死体すら残さずに消える。

 愛原:「これも添付しておこう」
 高橋:「善場の姉ちゃん、びっくりするでしょうね」
 愛原:「なー」
 佐々木:「愛原さん。新手が来る前に、ここを離れましょう」
 愛原:「それもそうですね」

 さっきのリサ・トレヴァーは、単なる鉄砲玉かもしれない。
 目的は恐らく、目撃者の抹殺。
 佐々木博士を抹殺する為に、送られて来たのかもしれない。

 リサ:「都合良く、リサ・トレヴァーが待ち構えてるなんてことないよ」

 と、リサが言った。

 リサ:「もちろんこいつは命令されて来たんだと思う。どうして命令されたんだと思う?」
 愛原:「そりゃあ、佐々木先生がここに来ることをどこかで掴んで、先回りして待ち伏せしてたんじゃないかと……」

 そこまで言って、いやいやと私は首を振った。

 愛原:「今夜も実は船が出るのかもしれない。露払いの為にこいつが来たとしたら?」

 私は佐々木博士に聞いた。

 愛原:「先生。あの偽遊漁船の船着き場の近くに、車が何台か止まってませんでしたか?」
 佐々木:「確か、止まってたような気がします。ただ、それは地元民の車かもしれないし、本来私が乗るはずだった本物の遊漁船に乗り合わせる他の客の車だったのかもしれません」
 愛原:「遊漁船に乗る釣り客は、車で来られます?」
 佐々木:「当たり前ですよ。この地区は、路線バスしか通っていませんし、それだってそんな朝早くから出ているわけじゃありませんからね」
 愛原:「そうですか。その止まっている車の中に、他県ナンバーはいましたか?」
 佐々木:「いやー……」

 佐々木博士は首を傾げた。

 佐々木:「まさかあんなことになるとは思ってもみなかったので、いちいち覚えてませんよ。ただ……」
 愛原:「ただ?」
 佐々木:「人間、いつもと違うものを見聞きすると、結構何年も経っても覚えていたりするでしょう?この港から出る遊漁船に乗るのは石巻市在住者、あるいはその周辺の町や村に住んでいる人達が殆どです。つまり、私の車もそうですが、宮城ナンバーが多いんですね。今ならそこに、仙台ナンバーも少し含まれるでしょうか」

 宮城ナンバーは従来からあるが、仙台ナンバーはご当地ナンバーである。

 佐々木:「つまり、普段はいない他県ナンバーが止まっていたら、印象に残ると思うのです。それが無いということは……」
 愛原:「他県ナンバーはいなかった可能性が高いということですね」

 すると、偽遊漁船に乗り込んだ乗客風の人達はどこから来たのだろう?

 佐々木:「! そうだ」

 佐々木博士が何かに気づいた。

 佐々木:「稀に遠方から来る人も確かにいるんです。そういう人は、この近くの民宿に泊まって、次の日の早朝に釣りに行くんです。そして、釣った魚をまた民宿で調理してもらって食べるという……。そういう人も中にはいます。で、そういう人達は車を漁港には留めません。民宿の駐車場に留めるのです」
 愛原:「それだ!この辺りの民宿を当たってみよう!」
 高橋:「それで思い出したんスけど、今日の泊まりはどうするんですか?」
 愛原:「えーと……。いっそのこと、民宿に泊まっちゃうか?」
 高橋:「正月からやってるんスかね?」
 佐々木:「私の知り合いの所なら、春以外は無休で営業してますよ」
 愛原:「春以外?」
 佐々木:「本業が漁師の男ですからね。海洋調査で、その知り合いの漁船に何度か乗せてもらったものです。春は漁が忙しいので、この時は休業だそうですが。何なら聞いてみましょうか」
 愛原:「は、はあ。恐れ入ります」

 佐々木博士は自分のケータイを取り出した。

 佐々木:「……つーわけで、飛び込みの客候補、3人ばかしいるんだけっどしゃ、無理だべか?」

 私達の前では標準語で話していた佐々木博士も、知り合いの電話では方言に変わる。
 佐々木博士も、どうせ無理だろうと思っていたらしい。
 いわゆる、ダメ元で掛けてみたといったところか。
 そしたら……。

 佐々木:「えっ、いいの!?いきなし3人だど!?……ほー、キャンセル出たの?……はー、んだが~……。いや、もう近くの港にいるど。……うん。んだば、これから連れて行くからや。よろしく頼むど?……はいはい。はーい」

 佐々木博士は電話を切った。
 博士自身も驚いた様子だった。

 佐々木:「いや、何かいいみたいです。むしろ大歓迎らしくて……」
 愛原:「何か、キャンセルが出たって言ってましたね?」
 佐々木:「ええ。ちょうど3人、その宿に泊まるはずだったんですが、急にキャンセルの電話が来たらしいんですわ」
 愛原:「ドタキャンか……」
 高橋:「GoToトラベルは中止になってるはずっスけどね?」

 もしやついに、新型コロナの緊急事態宣言が出されたか?
 GoToトラベルが中止になった途端、対象の宿泊施設にはキャンセルの連絡が殺到したらしい。

 愛原:「でも、とにかく助かりました。この近くなんですか?」
 佐々木:「もう車で1~2分の距離ですよ。そこまで乗せて行きますよ」
 愛原:「何から何まですいません」
 佐々木:「いやいや。もう行きますか?気掛かりなことがあるのなら、今のうちに……」
 愛原:「いえ。取りあえず、宿に行こうと思います」
 佐々木:「分かりました」

 私達は佐々木博士の車に乗り込んだ。
 そして、博士の知り合いが経営しているという民宿に向かった。

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