報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「温泉に到着」

2024-07-03 20:51:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月15日16時14分 千葉県成田市花崎町 京成電鉄東成田線1681電車・先頭車内]

 

 発車の時間になり、ホームから発車ベルが聞こえて来る。
 JRだとワンマン列車では発車ベルを鳴らさないことも多々あるが、京成ではワンマンでも発車ベルを鳴らすようである。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 古い電車だから、ワンマン運転用の設備は後付けのものだろう。
 しかし、ドアチャイムは無く、昔ながらのエアーで開閉するドアが閉まった。
 駆け込み乗車は無く、再開閉は無い。
 それから運転室からハンドルを操作する音が聞こえたかと思うと、電車が動き出した。
 インバータ制御の滑らかな走り出しではなく、アナログ制御のガクンガクンした揺れで発車する。
 これぞ、昭和の電車といった感じだ。

〔京成電鉄をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、普通、芝山千代田行きです。この電車は、ワンマン電車です。次は東成田、東成田です〕

 本線の電車で流れていたものと同じ声優、同じ言い回しの自動放送が流れて来る。
 電車は空いていて、先頭車両には、私達の他に5~6人しか乗客が乗っていない。
 次の東成田駅は成田空港の敷地内にあり、かつてはそこが『成田空港』駅であった。
 成田空港駅時代は、さすがに成田空港の利用者で賑わったらしいが、今は空港第2ビルや現・成田空港駅の方にほぼ全ての利用者が行ってしまい、支線化された旧・本線は、空港関係者くらいしか利用者がいなくなった。
 一応、東成田駅から空港第2ビル駅に繋がる徒歩連絡通路があるが、500メートルもある為、わざわざそこを通ってまで利用する人はいないという。
 また、東成田駅自体が成田空港の施設内にある為、駅から外に出ようとすると、民間の警備会社が警備する検問所を通らなくてはならないという異質さ。
 私は東成田駅が成田空港駅だった頃を知らないが、やや不便な場所にはあり、ここに到着した乗客達は、駅前のロータリーにある専用バスに乗り換えてターミナルに向かっていたとのこと。
 検問はそのバスごと行っていたようである。
 今はそのバスも無くなり、検問も民間の警備会社に委託され、警備員がそこを通る個人を検問しているとのこと。
 電車は途中までは、成田空港行き電車同じ線路を走る。
 そして、成田空港の敷地の手前、駒井野信号場という所で、分岐する。
 進行方向真っ直ぐか、左に曲がるかの分岐である。

 
(東成田線、芝山千代田行き電車から見た駒井野信号場の分岐点。直線が本線で左が支線のように見えるが、実は本線は左方向。直進は支線の東成田線。これは東成田線がかつての本線で、今の本線が後から開業したからである。その際、特に線形の変更などはしなかったという)

 道路であれば、バイパスが開通すると、旧道はわざと曲げられて出入りしにくくされたりするものだが、京成ではそれはしなかったようだ。
 写真の通り、直進するとトンネルに入る。
 空港の地下に向かうわけである。

 高橋「良かった。電車ん中では、検問は無いみたいっスね」
 愛原「さすがに電車は検問しないよ?国際列車じゃあるまいし。何で?」
 高橋「いや……おまわりに俺のデザートイーグル見つかったらマズいかなと……」
 パール「私のアーミーナイフもです」
 愛原「いや、オマエ達のは許可があるからいいんだよ。そしたら、俺のショットガンはどうなる?」
 高橋「それもそうっスね」

 その時、連結器のドアを開けて、制服姿の警備員が歩いて来た。
 空港の敷地内を走行し、芝山鉄道線も空港敷地の横を通るということもあり、警乗が行われている。
 かつては警察官が警乗していたらしいが、今は民間の警備員が行っている。

 愛原「しっ、静かに!」
 高橋「うス!」

 警備員は私達の前を通り過ぎると、運転室の前で折り返し、再び隣の車両へと戻って行った。

 愛原「はい、終了!」
 高橋「ぷはーっ!」
 愛原「いや、別に息止める必要は無いんだよ?」
 高橋「それもそうでした」
 父親「お前達、何でそんな物騒な物もってるの?」
 愛原「仕事で使うんだ」
 高橋「同じく」
 パール「同じく」
 父親「はあ?」

[同日16時24分 天候:晴 千葉県山武郡芝山町香山新田 芝山鉄道線1681電車・先頭車内→芝山千代田駅]

 電車は地下にある東成田駅に到着する。
 そこでほんの僅かの乗降客があった。
 本当に、この辺りで働いている関係者であろう。
 一口に関係者といっても、その職種はバラバラで、勤務時間もバラバラだ。
 ホームは薄暗く、とてもかつてのターミナル駅だと思えない。
 そして芝山鉄道の開通により、終点駅から棒線駅へと変化したこともあり、停車時間も僅かである。
 その駅を出発すると、やはりしばらくは地下を走行する。
 元々都営浅草線にも乗り入れていたことのある電車なだけに、まるで地下鉄ような雰囲気である。
 しかし、軽やかに走行していた電車も、一部だけ急カーブで減速する箇所がある。
 それは成田市木の根という地区で、ここには成田闘争の団結小屋(通称、木の根ペンション)が今も残っており、鉄道はそれを避ける形で敷設されたからである。
 また、並行する県道も同様、その地区だけは不自然に曲がって建設されている。
 電車が地上に出るのは、空港の敷地の外に出てから。

〔まもなく終点、芝山千代田、芝山千代田です。お忘れ物、落とし物をなさいませんよう、お手回り品を今一度ご確認ください〕

 『日本一短い鉄道会社』と謳っている芝山鉄道。
 東成田~芝山鉄道間は2.2kmである。
 現在はその距離であるが、延伸計画はあるという。
 終点の芝山千代田駅は、芝山町に入ってすぐの所にある。
 まずはその中心街に伸ばし、その先の町まで伸ばす計画があるのだとか。
 今は実現できていないので、代わりに路線バスが運行されている。
 そして、電車は1面1線の単式ホームへと入線した。

 

 尚、運転士は京成電鉄の社員で、運転業務は京成電鉄に委託されているのだという。
 また、東成田駅に関しても、京成電鉄の保有である。
 その為、生粋の芝山鉄道の社員はこの芝山千代田駅にしかいない。

 
(芝山鉄道線並びに京成東成田線を走行する電車。所有は京成電鉄で、芝山鉄道にレンタルされている形)

 愛原「さあ、着いた。上野から1時間半掛かったな」
 父親「全くだ。あとは温泉でゆっくりしたいね」
 愛原「もちろん」

 地上駅ということもあり、東成田駅ほど薄暗いことはない。
 また、利用者数もその駅よりは多いのだろう。
 それでも、地方ローカル駅のような静かさであった。

 愛原「この通り、自動改札機にはICカードの読取機は無い」
 高橋「本当ですね」

 なので、芝山千代田駅で乗り降りする際には、キップが必須である。

 愛原「じゃ、あとはここから徒歩数分だから」

 ここまで来れば、着いたも同然である。

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