報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原家のクリスマス」 3

2021-12-26 15:52:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日09:00.天候:晴 東京都中央区日本橋大伝馬町 東横イン東京日本橋]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 いや、参った。
 昨夜は大変だった。
 楽しみにしていたクリスマスケーキを踏み潰された上、足蹴にされたリサがブチギレ。
 一気に第2形態まで変化して、侵入者2人を追いかけた。
 エレベーター内で戦闘になるものの、たかが泥棒が持っていたハンドガン程度でリサが倒れるはずがなく、泥棒達は血みどろの意識不明の重体に追い込まれた。
 さすがにそれがやり過ぎだということで、今、ホテルに隔離されているのである。
 警察権は及ばない。
 もはや、BSAAとか政府機関直轄法人デイライトの管轄になり、私や高橋も責任取らされてついでに隔離されているわけである。

 愛原:「あーあ……。このまま東京湾に沈められるのかなぁ……」
 高橋:「ええっ!?」

 朝食はデイライトの人と思われる黒スーツのいかつい人達が、部屋食として持ってきてくれたが……。

 愛原:「!?」

 と、その時、部屋がノックされた。

 愛原:「は、はい!?」

 私が部屋のドアを開けると、いかつい黒服の人がいた。

 黒服A:「出発の時間です」
 愛原:「出発!?どこに!?」
 高橋:「東京湾?それとも、甲州の山まで片道ドライブ……」
 黒服A:「デイライトの事務所です。もう車を用意してあるので、速やかにお願いします」
 リサ:「ヤダヤダ!行きたくない!」
 黒服B:「こら!暴れるな!!」

 リサは第2形態まで変化して服が破れたので、代わりに黒いジャージを着ていた。

 愛原:「リサ、いいから。一緒に行こう」
 リサ:「うぅう……。先生とお別れしたくない……」
 高橋:「オメェが暴れたからだろうが!先生のことは俺に任せて、オメェはとっとと死刑にでもなりやがれ!」
 愛原:「高橋、静かにしろ。ホテルの中だぞ」

 私は高橋を黙らせた。
 取りあえず、手荷物を持ち、エレベーターに乗って1階のロビーへ向かう。
 そして、1階に着くと、ロビーには善場主任がいた。

 善場:「おはようございます。愛原所長」
 愛原:「お、おはようございます」

 無表情でポーカーフェイスの善場主任からは、その真意が読みかねた。

 善場:「では、事務所に向かいましょう」

 ホテルの真ん前には、黒塗りのミニバンが止まっていた。
 素直にそれに乗り込む。

 善場:「事務所まで」
 部下:「はっ」

 運転席には、既に他の黒服と同じ黒スーツを着た運転手がいた。
 黒服Aが助手席に座り、黒服Bが助手席の後ろに座る。
 善場主任は運転席の後ろに座り、私達は1番後ろの席に3人並んで乗る形となった。
 車が走り出してから、主任は言った。

 善場:「取りあえず、リサの殺処分は無くなりました」
 愛原:「ほ、本当ですか!?」
 善場:「はい。幸い被疑者2人の意識が戻ったそうですので、今後、死亡することはないでしょう。ただ、ケガの状態が酷く、それ故弁護士の反対もあって、逮捕状は請求できても、まだ逮捕できない状態ではありますが……」
 愛原:「すると、これからは……」
 善場:「今後の事をお話しする為に、事務所へ向かうわけです」
 愛原:「良かったな、リサ。殺処分は無いってよ」
 リサ:「おー!」
 善場:「因みに斉藤社長からは、侵入者への厳しい撃退に対し、感謝の言葉と、弁護士の紹介が打診されています」

 オートロックが施されているマンションに、どうやって侵入したのかは不明だが、どうやらどこかでカードキーを偽造したらしい。
 侵入者2人の所持品からは、偽造されたカードキーが出て来たそうだ。
 侵入者2人の確定容疑は住居侵入、窃盗と銃刀法違反である。
 あいにくとリサは人間ではない為、殺人未遂罪は成立できないだろうとのこと。
 どうしてもというのであれば、動物愛護法違反などは問えるかもとのことだが……。

 愛原:「そうですか」

 尚、リサが壊したエレベーターについては、侵入者2人の拳銃の暴発によるものとされた。
 それにしては、もうカゴやドアごと交換しなければならないほどの壊れ具合だったが……。

[同日12:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場:「……今後は分別の付いた行動をするように。分かった?」
 リサ:「はい。すいませんでした」

 最後に再び主任からキツく注意されて、取りあえず話は終わった。
 リサのやり過ぎはともかく、窃盗犯を捕まえたことに対しては、褒められるものだっただろう。

 善場:「私からのクリスマスプレゼントがまだだったね。本当はそれはスルーしようと思ってたんだけど、まあ、犯罪者を捕まえたという功績は認めましょう。その御褒美に、ダメになったケーキをプレゼントするから、後で先生達と食べなさい」
 リサ:「! おー!」
 善場:「私も同じこと(クリスマスケーキを踏み潰された上、足蹴にされた)をされたら、確かに拳銃1発撃つかもしれないからね」
 愛原:「おい、高橋、聞いたか?善場主任がケーキを持っている時は要注意だぞ?頭が無くなるぞ?」
 高橋:「うス!気をつけます!」
 善場:「私は人間に戻れましたが、まだリサ・トレヴァーだった頃の名残があるもので……」

 ケーキは夕食に合わせ、届くようにしてくれるという。
 イブには食べれなかったが、そもそも今日がクリスマス本番なのだから、この方が良い。

 愛原:「じゃあ皆、取りあえず帰ろうか」
 高橋:「はい」
 リサ:「はーい!」

 私達が事務所を出ようとした時だった。

 善場:「愛原所長は、この冬休みに、どこかお出かけされる予定はあるんですか?」

 主任が、そう話し掛けて来た。

 愛原:「ええ。何でも来年度、リサの高校に上野凛さんが入学するかもしれないそうじゃないですか」
 善場:「さすが所長。情報が早いのですね」
 愛原:「一度、また天長園に泊まってみたいと思います。宗教団体は、年末年始の行事で忙しいかもしれませんが」
 善場:「入信だけはしないようにお願いしますよ」
 愛原:「分かってますって」

 私はそう言って、事務所をあとにした。

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