報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「帰宅した探偵達」

2024-05-15 15:53:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月1日14時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 車は無事に事務所の前に到着した。
 2トントラックが1台通れれば良いくらいの道幅で、一方通行である。

 高橋「ちょっと待っててくれ。今、シャッター開けて来る」
 佐元「うっス」

 高橋は助手席から降りると、シャッター横の玄関を開けて中に入り、そこからガレージに移動した。
 そして、中から電動シャッターを開ける。

 愛原「いいよ、入って」
 佐元「お邪魔しまーす」

 佐元君はバックで、車をガレージの中に入れた。

 佐元「はい、到着っス」
 愛原「ありがとう」
 リサ「わたし、荷物降ろすね」

 先にリサが車を降りた。
 高橋はエレベーターを呼んでくれていて、リサがハッチを開けて自分のキャリーケースを降ろしている。

 愛原「今日、休みだったの?」
 佐元「今日は休みです」
 愛原「休みだったのに申し訳ないね」
 佐元「大丈夫っス。ちょうど車、ガソリン入れるところだったんで」
 愛原「そうだつたのか。これ、少ないけど、チップとして」
 佐元「あざーっス!」
 愛原「結局、往復乗せてもらって悪いねぇ……」

 私は佐元氏に1000円札を1枚渡した。

 佐元「マサの頼みなんで、問題無いっス。それじゃまた、工事の御用命は佐元工務店へヨロシクお願いします」
 愛原「ああ、了解」
 高橋「あっ、先生。俺、サムと話があるんで、先に上がっててもらえますか?」
 愛原「そうか?じゃあ、お先に」
 高橋「はい!」

 私とリサはエレベーターに乗り込んだ。
 ドアが閉まると、ドアの窓から高橋が佐元氏に何か話し掛けて行くのが見えた。

 愛原「まずは洗濯物を出さないとな」
 リサ「一応、洗濯ならしたよ」
 愛原「そうなのか?あのコインランドリーで?」
 リサ「善場さんが洗濯しなさいってうるさくて……」
 愛原「そういうことか」
 リサ「ゴメンねぇ。美少女BOW女子高生の使用済み下着、あげられなくて……」
 愛原「いや、いいんだよ。こういうのは脱ぎたての方がいい……」
 リサ「えっ?!」
 愛原「えっ?」
 リサ「今、何て言ったの!?」
 愛原「な、何でもないよ」
 リサ「ねぇ!今何て言ったの!?」
 愛原「さあ、エレベーターが着くぞ」
 リサ「もう!」

 出す洗濯物は無いということで、3階ではなく、4階まで上った。

 愛原「リサ、先にできたてホヤホヤのシャワーから見るか?」
 リサ「そうだね。ちょっと見てみたい」
 愛原「こっちだよ」

 4階の奥、階段側のすぐ近くだ。
 元々は6畳間があった所を、最初の住人が半分潰して、3畳分をトイレと洗面所に造り換えた。
 本当は残りの3畳分もシャワールームにしたかったそうなのだが、予算の都合で頓挫し、ただの納戸になってしまっていた。
 しかし倉庫や収納は他にもあるので、せいぜい掃除用具入れ程度の用途しかなく、殆どデッドスペースになっていた。
 それをようやく予算が確保できた現在の住人である私が、満を持して増設に漕ぎ付けたという次第だ。

 愛原「こんな感じかな」
 リサ「ほおほお」

 シャワーブースが1畳分、脱衣スペースを1畳分として、残りの1畳分については、脱衣カゴなど置く棚を半畳分、もう半畳分を掃除用具入れとした。
 もちろん、スペース配分を分かりやすく説明するのに畳の広さを例えにしただけで、本当にピッタリ畳1枚分がそのままシャワーブースなどというわけではないので念の為。
 照明は暖色のLED電球が1つ、その隣に小さな換気扇がある。
 出入口の扉は折り戸になっていて、中はシャワーが1つと壁に固定されている扇形の椅子があった。

 リサ「……何か、藤野の施設のシャワーブースみたいだね」
 愛原「あっ、やっぱりそう思うか?」

 業務用のボイラーからお湯が供給されると思われる施設のシャワーブースには、個別の温度設定調節のパネルが無い。
 しかし、ここは家庭用。
 3階のキッチンや風呂と同様、ここもボイラーの電源ボタンや温度設定を調節するパネルが付いていた。
 それはまあ、前からあった洗面所でお湯を出す時に使用していたが。

 愛原「いつでも使っていいからな?」
 リサ「分かった。でも、今日は湯船に浸かりたい」
 愛原「分かったよ。温泉の素もあるから、それで温泉気分を味わってくれ」
 リサ「わーい」
 愛原「それじゃ、俺は下にいるから、ちゃんと荷物整理しろよ?」
 リサ「ちょっと待って」
 愛原「何だ?」

 リサは私の手を掴んだ。

 リサ「わたしの部屋から、先生の匂いがするんだけど、わたしの部屋に入った?」
 愛原「入ったというか、無理やり入れられたというか……。鼻が鋭いな?換気してファブリーズしたのに……」
 リサ「そんなことしなくていいのに……」
 愛原「オマエの部屋から、寄生虫が変化した手のお化けが出て来たんだ」
 リサ「手のオバケ???」

 リサは首を傾げた。

 愛原「やっぱ知らないか。お前の分身とも言うべき感じでさ、手を握ってみたら、オマエと握手しているのと同じ感覚だったよ」
 リサ「こんな感じ?」

 リサは私の手を握って来た。
 柔らかい手の感触がゾワゾワと伝わって来る。
 鬼型BOWらしく、爪は長くて尖っているが、今は殺気は無い。

 愛原「そうそう。オマエは知らないんだ?」
 リサ「うーん……知らないねぇ……。でも、夢には出て来たよ」
 愛原「そうなのか!?」

 リサ、部屋の中に入ると、自分のベッドにダイブする。
 残念ながらスカートではないので、それでスカートが捲れて……ということはない。

 リサ「……うん、先生の匂いが僅かにする。わたしのベッドで寝たんだぁ?
 愛原「オマエの分身達が、ここで寝ろってうるさくて!ほら、証拠!」

 私は手達が書いたメモを渡した。
 よく見たら、リサの字とそっくりである。

 リサ「はー、なるほど……。で、その手達は?」
 愛原「それが、いつの間にかいなくなってたんだ。一組は家で留守番してもらってたんだけど……」
 リサ「仕事をサボるなんて、困ったもんだねぇ……。まあ、いいや。で、布団洗ったんだ?」
 愛原「オッサンの臭い付きなんて嫌だろ?」
 リサ「先生の匂いだったら、別にいいのにぃ…… そうだ!今度はわたしが、先生のベッドで寝て、わたしの匂い、付けてあげるねぇ……」
 愛原「いや、ちゃんと自分の部屋で寝るんだ」
 リサ「えー……」

 と、そこへ私のスマホにLINEの着信があった。

 愛原「おっと!LINEだ!……なになに?高橋からだな。……夕食の買い出しに行ってきますだってよ」
 リサ「もー!」
 愛原「じゃ、俺は下にいるから」

 私はリサの部屋をあとにすると、階段で3階に向かった。
 エレベーターにしなかったのは、途中で私の部屋に寄ることで、扉の施錠を確認する為であった。

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