報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「静岡出張」 3

2023-12-29 20:39:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月9日12時31分 天候:晴 静岡県富士市川成島 JR新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム「AMBITIOUS JAPAN!」)♪♪。まもなく、新富士です。お出口は、左側です。新富士を出ますと、次は、静岡に止まります〕

 私達を乗せた“こだま”号は、小田原駅と三島駅で“のぞみ”や“ひかり”の通過待ちをした。
 熱海駅には待避線が無い為、そこはすぐに発車する。
 京都に行きたいという外国人達も、小田原駅で私達を追い越したはずである。
 そして、下車駅の新富士駅においても通過列車の待ち合わせを行う。
 “こだま”がのんびりしているのは、この為である。

〔「まもなく新富士、新富士です。お出口は、左側です。新富士では、6分ほど停車致します。発車は12時37分です。発車まで、しばらくお待ちください。ホーム進入の際、ポイント通過の為、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、ご注意ください」〕

 列車は下り副線ホームに進入した。
 因みにこの駅には、ホームドア(可動式安全柵)が無い。

 

〔しんふじ、新富士です。しんふじ、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 ドアが開いてホームに降りると、もう通過列車が轟音を立てて下り本線を通過していった。
 もちろん、6分も停車するのだから、通過列車はこれだけではない。

 愛原「リサがさ、『お土産買ってきてー』だって」
 高橋「あのアホ!遊びで行ってるんじゃないってこと、分かってるんスかねぇ?」
 愛原「子供が出張の父親に、お土産せがむのと同じ感覚だろ。何か買って行ってやろう」
 高橋「はあ……」

 
(改札口から見たコンコース。おや?大石寺の広告が……)

 ホームからコンコースに下りる。
 “こだま”しか停車しない小さな駅なので、コンコースもそんなに広いものではない。
 東京駅ではホームにある喫煙所も、新富士駅ではコンコース内にある。

 高橋「先生。また吸い溜めしていいっスか?」
 愛原「いいよ。俺もトイレ行ってくるから」
 高橋「了解です」

 高橋は喫煙所に行き、私はトイレに向かった。

[同日12時45分 天候:晴 新富士駅バス停→富士急静岡バスS7系統]

 新富士駅は北口に出た。
 案内上は富士山口というらしい。
 そこはバスプールとタクシー乗り場がある。

 愛原「12時45分発、富士宮駅経由、静岡県富士山世界遺産センター行き。これに乗ろう」
 高橋「電車には乗らないんスね」
 愛原「乗り換えが面倒だからな」
 高橋「レンタカーは?俺、運転しますよ」
 愛原「経費節減でカットだ」

 そんなことを話しているうちに、件のバスがやってきた。
 都営バスでも見かける、ごく普通の大型路線バスだった。
 但し、地方の路線バスの法則通り、後ろから乗るタイプである。
 新富士駅から発車する便は本数が少なく、その為、乗車したのは私と高橋だけであった。
 終点近くまで乗る為、1番後ろの座席に座る。
 ノンステップバスだと、1番後ろの座席はかなり高い。

〔「12時45分発、吉原中央駅、富士宮駅経由、富士山世界遺産センター行き、発車致します」〕

 バスは発車時間になると中扉を閉め、バスプールを発車した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 本日も富士急静岡バスにご乗車頂き、ありがとうございます。このバスは、ロゼシアター前、吉原中央駅、富士宮駅経由、静岡県富士山世界遺産センター行きです。【中略】次は塔の木、塔の木です。……〕

 高橋「先生。富士宮に着くのは、何時頃ですか?」
 愛原「だいたい、今から40分くらいだな」
 高橋「マジっスか」

 学校では昼休みに入ったのか、リサがまたLINEを送って来る。

 リサ「今どこ?」

 というので、私はバス車内がガラガラなのを良いことに、バス車内の写真と、車窓の写真を撮影してリサに送り付けた。

 愛原「今、新幹線の新富士駅から、民宿のある富士宮市に向かっているところ。今日は電車じゃなく、あえてバスで行く」

 と、返信しておいた。
 そしたらリサが、変な返信をしてきた。

 リサ「やっぱり先生も知ってたんだ」
 愛原「どういうことだ?バスの路線くらい、ちょっと調べたら分かるぞ?」
 リサ「そうじゃなくて、今、その富士宮市を走る電車が事故で止まってるみたい」

 と、リサは運行情報をスクリーンショットにした画像を私に送信した。
 改めて自分のスマホで運行情報を確認したところ、確かにJR身延線は今、どこかの踏切で事故があったらしく、全区間で運転を見合わせているという。
 踏切事故ということは、これは復旧に相当な時間が掛かるぞ。
 もしも身延線という選択をしていたなら、富士駅で立ち往生していたわけだ。
 危ない危ない。

 愛原「そうなのか。そこは路線バスだから、大丈夫だぞ」

 と、返しておいた。
 富士駅を経由するのなら、振替客がドカドカ乗って来るかもしれないと思ったが、この路線は富士駅を経由しないようであるので、あまり振替利用には使われないのかもしれない。

[同日13時25分 天候:晴 静岡県富士宮市 富士宮駅バスプール]

 とはいうものの、全く利用が無いわけではなかった。
 鉄道の通っていない所では、富士宮方面に行く利用者には一定の需要があるのか、吉原中央駅からは何人か纏まって乗って来た。
 因みに駅と名乗っているが、実態はバスステーションである。
 ここから電車が発車しているわけではない。
 あと、まだ事故処理に時間が掛かっていることもあり、身延線は復旧していない。
 その為、このバスが僅かにJR身延線の近くを走る時、恐らくその振替客(実際に振替乗車制度で乗ってきたかは不明)と思しき乗客が何人か乗って来た。

〔「お待たせ致しました。まもなく富士宮駅、富士宮駅です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください」〕

 バスは富士宮駅の北側にあるバスプールに入線した。
 降りる時は、手持ちのSuicaで運賃を支払う。

 愛原「何だか大変なことになってるみたいだな」

 富士宮駅は県道を挟んだ向かいにあるが、もうこの時点でも、駅の構内放送が聞こえるくらいだ。
 駅員が肉声放送で、今の運行状況や復旧状況を何度も繰り返し放送しているといった感じ。
 バスプールには、僅かでも身延線の駅の近くまで行くバスに乗ろうとする利用者達が列を作っていた。
 あとは、タクシー乗り場もである。
 私達は次の乗り換え先のバスの乗り場を確認した。

 愛原「今から1時間後だな」
 高橋「マジっスか」
 愛原「どこかで時間を潰そう。多分、イオンまで行かないと無いんじゃないかな」

 ここから徒歩圏内に、イオンモールがある。
 イオンモールというと、ロードサイドというイメージがあるが、たまにレールサイドの店舗も存在する。

 高橋「分かりました。行きましょう」

 私達はイオンモールに向かった。
コメント
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“私立探偵 愛原学” 「静岡出張」 2

2023-12-29 16:23:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月9日11時12分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅→東海道新幹線721A列車14号車内]

 

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ まもなく17番線に、“ひかり”642号が入線致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この後、11時27分発、“こだま”721号、名古屋行きとなります。車内の整備が終わるまで、お待ちください〕

 高橋がホームの喫煙所で、煙草を吸い溜めしている間、私は乗車口で列車を待っていた。
 今回はリサがいない為、特に先頭車や最後尾という乗車車両指定は無い。
 なので今回は、あえて中間車に乗ることにした。

〔「17番線、お下がりください。“ひかり”642号が入ります。折り返しは11時27分発、“こだま”721号、名古屋行きです。到着後、車内整備・清掃の為、お客様のすぐの御乗車はできません。しばらくの間、ホームでお待ちください」〕

 N700Aと呼ばれる車両が入線してきた。
 フルカラーLEDの表示器には、赤地に白抜きで“ひかり”と書かれている。
 東海道新幹線ではどの種別の列車でも、車両は共通運用となっている。
 だから、この車両も“のぞみ”としての運用に就くことも当たり前にあるわけだ。

〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました。……〕

 ホームドア(JR東海では可動式安全柵と言う)が開く時、“乙女の祈り”のメロディが流れる。
 ドアが開くと、そこから大量の乗客達が吐き出された。
 “のぞみ”より空いているとはいえ、これも優等列車。
 利用客は多い。
 表示が“ひかり”から、青地に白抜きの“こだま”の表示に変わる。
 乗客達が降りると、JR東海関連会社の清掃員達が「ヨシ!」と指さし確認して、車内に入って行った。
 それにしても、東海道新幹線ホームはJR東日本新幹線のホームよりもやかましいような気がする。
 それは列車本数がずば抜けて多い上、全ての列車がフル編成の16両というのも去ることながら……。

〔「6号車付近のお客様!まだご乗車になれません!ホームでお待ちください!ホームでお待ちください!まだご乗車になれません!」〕

 ずば抜けて新幹線利用に不慣れな外国人旅行客も多いからだろう。

 外国人「For Kyoto?」
 愛原「No.That train.」

 迷ったら、並んでいる先客に聞くというのも1つの手という法則通りだな。
 私も聞かれた。
 私が乗ろうとしている列車が京都まで行くか白人観光客に聞かれたので、違うと否定した上、隣の16番線を指さした。
 16番線から発車するのは“のぞみ”29号、博多行きであり、こちらは余裕で京都に停車する。

 愛原「ふーむ……」

 私よりもずば抜けて背の高い白人のカップルだったが、女性の方が、留学生のレイチェルと同様、金髪をポニーテールにした髪型をしていた。
 最近は見かけないが、特にリサと絡むことは無いのだろうか?

[同日11時27分 天候:晴 JR東海道新幹線721A列車14号車内]

〔「お待たせ致しました。11時27分発、“こだま”721号、名古屋行き、まもなく発車致します」〕

 私と高橋は列車に乗り込み、進行方向右側の2人席に座っていた。
 暖房がよく効いているので、コートは脱いで畳み、網棚の上に置いている。
 そして、早めの昼食を取る為、駅弁に箸を付けていた。
 私は“深川めし”である。
 JR東日本側にも同じ名前の駅弁があるが、内容が多少異なる。

 
(JR東海パッセンジャーズが出している“深川めし”)

 ただ、私の記憶が定かなら、こちらの内容の駅弁、かつてはJR東日本側で出されていたような気がするのだが……。
 箸を付けていると、ホームから発車メロディが聞こえて来た。
 JR東日本のホームだとベルだが、東海ではかつて“のぞみ”の車内チャイムで使用されていた発車メロディが流れる。

〔17番線、“こだま”721号、名古屋行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側まで、お下がりください〕
〔「17番線、お下がりください。“こだま”721号、名古屋行きが発車致しまーす。ITVよーし!……乗降……終了!ドアが閉まりまーす!ご注意ください!」〕

 在来線よりは落ち着いた感じのドアチャイムが微かに聞こえ、ドアが閉まる。
 そして、列車はスーッと走り出した。
 “のぞみ”や“ひかり”と比べ、“こだま”は空いていると言われているが、東京発車の時点では、実は大差無い。
 もちろん、1号車とか2号車とか、先頭車付近まで行けば空いているのかもしれない。
 だが、中間車など、階段付近の車両はそれなりの乗車率であった。

〔♪♪(車内チャイム“AMBITIOUS JAPAN!”♪♪。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に停車致します。次は、品川です〕

 私は食べる前に駅弁の写真を撮り、それをリサのLINEに送信していた。
 肉が好きなリサにとって、魚系はそんなに魅力的ではないかなと思っていたが、休み時間になって、スマホが弄れるようになったのだろう。
 返信が来た。
 その内容は、『わたしも食べたーい!』であった。
 栗原家から入手した旅行券で東北方面へ行こうなんて言ったが、それとは別に温泉旅行券があるので、それはそれで……という気はする。
 あとはメールで善場主任に、予定の新幹線に乗ったという報告。
 その返信は、『未だに“青いアンブレラ”が沈黙しています。けして、油断されぬよう、どうかお気をつけて』というものだった。
 デイライトは“青いアンブレラ”を敵視しているようだが、どうも高野君がいるせいか、私は敵には見えない。
 サスペンスものでよくいる、敵か味方か分からないキャラクターや組織。
 私にとっては、正にそれであった。
 私達を都合良く利用しようとしているのは分かるが、それはデイライトも同じこと。
 ただ、デイライトはちゃんと報酬を払ってくれるからなぁ……。

 高橋「今のところは順調な滑り出しですね?」
 愛原「今のところはな」
 高橋「……何かありますかね?」
 愛原「東北新幹線とかと違って、事件発生率がそれより高い東海道新幹線だ。まずは、そういうのに注意しろ」
 高橋「わ、分かりました。それじゃあ、煙草は控えといた方がいいっスね」
 愛原「……オマエ、さっきホームで吸ってなかったか?」

 高橋のヘビースモーカーぶりには困ったものだ。
 ……と、パールもか。
 ただ、パールは電子タバコに切り替えたみたいだからなぁ……って、そういう問題ではないか。
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