報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「意外な人物との再会」

2023-12-31 20:56:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月9日17時55分 天候:曇 静岡県富士市 JR新富士駅→ASTY新富士]

 JR富士駅から新富士駅までは、路線バスで向かった。
 地元のバス会社が運行しているもので、車種も中型バスが運用されていた。
 行先は地元のイオンモールになっていたが、新富士駅にも止まるということなので、それに乗った次第。

 愛原「ここまで来れば、もう安心だろう」
 高橋「そうですね。ここで飯食いますか?」
 愛原「そうだな。そうしよう」

 この駅でも駅弁は売っているようだが、行きが駅弁だったこともあり、帰りはここで食べてからにすることにした。
 その前に……。

 愛原「リサに土産を買って行ってやろう。約束だからな」
 高橋「あー、そういえば何かありましたね……」
 愛原「お前はパールにでも買って行ってあげたら?」
 高橋「そうします」

 私達は駅構内の土産物店に立ち寄った。
 駅弁もここで買えるようだ。
 やはりリサへの土産と言ったら、食べ物だろうな。
 肉系統はおつまみのビーフジャーキーくらいしか無いので、お菓子系を買うことになるか。

 愛原「パールへの土産は酒かい」
 高橋「あいつ、ああ見えて飲むんスよ」
 愛原「だろうな」

 私はリサへのお土産に、富士山サブレーを購入した。
 鋭い歯でバリボリ咀嚼するリサの姿が思い浮かんだからだ。
 高橋はやはり酒にしたらしい。
 まあ、好き好きである。
 この後は、キップ売り場に向かった。
 自動券売機で、東京までの自由席のキップを2枚購入する。
 何の成果も上げられずに帰京するのだから、贅沢はできなかった。
 それから駅ビルに向かう。

 

 愛原「せっかくだから、居酒屋系に行きたいな」
 高橋「いいっスね」

 飲食店が主に入居している2階建ての駅ビルだった。
 階段で2階に上がり、飲食店に入る。
 そこそこ賑わっていて、私と高橋はカウンター席に横並びに座った。

 愛原「取りあえず、ビールでいいか?」
 高橋「そうっスね」

 それから焼き物や揚げ物などを適当に注文する。
 それで高橋と抜きつ差しつしていると……。

 高野芽衣子「お隣、宜しいですか?」

 私の隣に、女性が座って来た。

 愛原「どうぞ……って、あれ!?」

 そこにいたのは……。

 愛原「高野君!?」
 高橋「アネゴ!?」

 私達がビックリしている中、高野君は何食わぬ顔でビールを注文した。

 愛原「い……生きてたのか、キミ……」
 高野「逆に聞きますが、あの程度で死ぬとでも?」
 高橋「まあ、フツーの人間なら死んでるな」
 愛原「キミは普通の人間じゃない。だから、ヘリの墜落くらいじゃ死なない」
 高野「その通りです。それより、今回は大変でしたね」
 愛原「知ってるんかい」
 高野「先に注文しちゃいましたけど、御馳走になっても?」
 愛原「ああ、いいよいいよ。再会の記念だ」
 高野「ありがとうございます」
 愛原「それより、どうして俺達が骨折り損のくたびれ儲けだったと知ってるんだ?」
 高野「私達が先客でしたからね」
 愛原「先客?……ああ、先に富士宮市に来ていたということか?」
 高野「もちろんそうです。あの民宿は、富士宮市にありますからね。……焼き鳥の盛り合わせ、いいですか?」
 愛原「いいよ」

 高野君は運ばれてきたビールのジョッキを手に取った後、今度は焼き鳥を頼んだ。

 高橋「もしかしてアネゴ、あの民宿に泊まってたのか?」
 高野「さすがはマサね」
 愛原「……俺達より先に?」
 高野「はい!」
 愛原「……ま、まさか、ガスボンベを爆発させたのは……」
 高野「もちろん、私達じゃないですよ。でも、『じゃあ誰が?』って聞かれても困るんですが……」
 愛原「高野君は、あのガス爆発は、伯母さん……女将さんの過失じゃないと言いたいのかい?」
 高野「直接は見ていませんから何とも言えませんけど、私は疑うつもりは無いですね。何せ、仲間の話ですと、ボンベそのものが直接爆発したそうなので」
 愛原「ボンベそのものが!?」
 高野「はい。仲間のヘリが上空で見守っていたんですけど、爆発したのが建物外だったんですよ。これがその証拠映像です」

 高野君はタブレットを取り出した。
 その動画は、上空を飛ぶヘリから撮影されたものだった。
 一際大きな建物は、民宿さのやだとすぐに分かる。
 そして、爆発の瞬間を私は見た。
 確かに建物の中からではなく、外側が爆発したように見える。
 建物の間取りからして……。

 愛原「確かに、ここにプロパンガスのボンベがあったかもしれない……」
 高野「そして、これを見てください」

 高野君は爆発する直前まで巻き戻した。
 豆粒のような小さな物だが、人だというのが分かる。
 その人らしき物が民宿の裏から走って来ると、民宿の駐車場に止めてあった軽トラに乗り込み、走り去って行った。
 その直後、大爆発を起こす。

 高野「何か怪しいと思いません?まるで、ガスボンベに細工をしていったかのようですね」
 愛原「た、確かに!誰なんだ、こいつは!?」
 高野「分かりません。私達の組織でも追うことにしてるんですけどね」
 愛原「でも、そうだとしたら、伯母さんの潔白が証明される!今、伯母さんは失火の疑いで警察に拘束されてるんだ!」
 高野「それはお気の毒ですね。でも、この動画は差し上げられませんわ」
 愛原「な、何故だ!?」
 高野「さすがに、国家機関から敵視されている組織たる私達の動画を提出したりしたら、先生のお立場が悪くなりますよ?」
 愛原「し、しかし……」
 高野「それに、御心配には及びません。犯人を捕まえられるかどうかは分かりませんが、先生の伯母さんの容疑は近いうちに晴らされると思います」
 愛原「どういうことだ?」
 高野「動画の続きを御覧ください」

 因みに音声はミュートになっている。
 怪しい軽トラが走り去った後、どうも慌てていたのか、対向車と接触する瞬間が映し出されていた。
 しかし、軽トラは当て逃げしてしまう。
 当て逃げされた車の運転手が降りた瞬間、民宿が大爆発を起こした。

 高野「もしもこの車の運転手が警察に証言する際、間違いなく民宿から出て来たと証言するでしょう。この車の位置から民宿は見えますから」
 愛原「確かに……」

 民宿の前の県道は直線になっていて、道は狭いものの、見通しは悪くない。
 怪しい軽トラが接触事故を起こした場所は、正にそんな直線区間に入った所であり、民宿の駐車場は陰になっている為、そこから軽トラがいきなり出て来たのなら、確かに当て逃げされた方は、『相手の車は民宿の駐車場から出て来た』と証言するだろう。
 伯母さんはスーパーへの買い物は車で行くから、駐車場には連泊する宿泊客の車以外は止まっていないはずなのだ。

 愛原「それで、高野君は俺達より先に民宿に泊まって、何をしていたんだ?」
 高野「フフッ。気になりますよね?」
 愛原「当たり前だよ。まあ、うちの伯父さん絡みか?」
 高野「そういうことです」

 高野君は民宿のエレベーターの鍵を取り出した。
 高野君は高野君で、鍵を手に入れていたようだ。

 高野「そしてこれが、私が地下室に潜入した時の動画です。これはお渡しできますよ?」
 愛原「くれるってことは、これをデイライトに提出してもいいってことなんだな?」
 高野「はい。まあ、あの女は顔中怒筋だらけにするでしょうねぇ……」

 善場主任は高野君の事が嫌いらしい。
 高野君はそれは十分知っていて、煽りたがる。
 女のケンカか……。
 まあいい。

 愛原「その前に、動画を確認させてくれ」
 高野「どうぞ」
 愛原「因みに、報酬は?」
 高野「ここの食事代を御馳走して下さったら、それで結構ですよ」

 高野君は笑って答えた。
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“私立探偵 愛原学” 「さよなら富士宮」

2023-12-31 17:15:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月9日17時00分 天候:雪 静岡県富士宮市 富士宮駅バスプール→JR富士宮駅]

 警察署に連れて行かれ、事情聴取を受けていた私。
 警察がマークしていた公一伯父さんのアジトに行こうとしていたことが怪しまれ、そこを追及されていたが、何故か突然解放された。
 何でも、クライアントから直接電話が掛かってきたらしい。
 クライアントというのは、もちろんデイライトのことだ。
 途中連絡が無くなった上、GPSで調べてみたところ、私達が警察署にいることが分かり、それで連絡したそうなのだ。
 それで警察が対応したところ、私のクライアントであると証言し、直ちに釈放するよう働きかけたそうである。
 但し、その対象は私と高橋だけ。
 さすがに伯母さんは対象外で、今夜は警察に泊まることになるかもしれない。
 私は伯母さんの息子さん、つまり従兄弟に連絡した。
 従兄弟は今、名古屋で働いている。
 電話を入れると驚いた様子で、静岡まで来るという。
 私は後の事は従兄弟達に任せることにし、この町を離れることにした。

 高橋「それにしても俺達、何しに来たんでしょうね」
 愛原「全くだな」

 私は溜め息をついた。
 善場主任からは、もう帰京して良いという話だったので、帰ることにした。
 警察署前からバスに乗り、富士宮駅で降りる。
 そこから、JR富士宮駅に向かった。
 さすがに今はもう、ダイヤも復旧しているようである。

[同日17時19分 天候:雪 JR富士宮駅→身延線3572M列車先頭車内]

〔ピンポーン♪ まもなく、上り列車が参ります。危険ですから、黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください。まもなく、列車が参ります。ご注意ください〕

 バスを降りた辺りから、雪が降り始めた。

 愛原「どうも冷えると思ったら、雪が降って来やがった。そういえば民宿の辺りも、雪が積もってたな」
 高橋「確かに」

 民宿のある下条地区などは郊外の高台にある。
 その為、場所によっては、市街地の夜景がきれいに見えるのだとか。

〔「2番線、ご注意ください。普通列車の富士行きが到着致します」〕

 2両編成の電車が入線してきた。
 普段はワンマン運転を行っているが、朝夕のラッシュ時は車掌が乗務するらしい。
 隣の西富士宮駅が始発ということもあり、車内は空いている。
 この駅から先が賑わうようだ。
 電車に乗り込むと、私と高橋は空いているボックスシートに腰かけた。
 さすがに夕方ラッシュともなると、貸切で使えることはなく、隣の席にも他の乗客が座る。
 普通列車のボックスシートだからそんなに広いわけでもなく、長身の高橋には窮屈そうであった。
 ドア付近のロングシートでも良かったのだが、ドアのすぐ横だと寒いと思ったのである。
 申し訳ないが高橋には、富士駅まで辛抱してもらうしかない。

〔「17時20分発、普通列車の富士行きです。まもなく発車致します」〕

 電車の車外スピーカーから、発車メロディが流れる。

〔「2番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 後ろの車両から、車掌が笛を鳴らす音が聞こえた。
 そして、ドアが閉まる。
 ドアチャイムは甲高い2点チャイムが2回鳴る。
 東京だと京王電車のドアチャイムと同じだ。
 ドアが閉まると、電車はすぐに発車した。
 こういう時、ワンマンよりツーマンの方が早い。

〔「ご乗車ありがとうございます。この電車は、普通列車、富士行きです。終点の富士まで、各駅に止まります。終点、富士には17時39分の到着です。次は源道寺、源道寺です」〕

 もうすっかり外は暗くなり、雪が舞っているのが分かる。
 天気予報では、積もると言っていなかったので、すぐに止むのだろう。
 因みにスマホには、リサからのLINEが大量に来ていた。
 どうやら民宿のガス爆発事故がニュースとなり、それがリサの目や耳に入ることとなったのかもしれない。
 それで心配になって、安否確認のLINEをしてきたというわけだ。
 しかし、警察からの取り調べを受けていて、返信どころではなく、それで最終的にはパールからもLINEがあり、リサが現地に向かうみたいな事を言っていたらしい。
 パールや善場主任で止めたらしいが。
 それで主任が気になって私の居場所をGPSで調べたところ、富士宮警察署にいることが分かり、私のスマホに掛けたが、目下取調べ中の私が出られるわけがなく、そこで何かを察した主任が、警察署に直接電話を掛けたらしい。
 おかげで、晴れて自由の身となったわけである。
 大石寺を総本山とする宗派を信仰していた栗原蓮華が鬼型BOWに変化し、そして民宿さのやも無くなった今、再びこの町を訪れる機会はあるのだろうか?

[同日17時39分 天候:曇 静岡県富士市 JR身延線3572M列車先頭車内→富士駅]

 列車内の混雑具合はあまり変わらなかった。
 途中駅での乗降数が、だいたい同じだからである。
 座席は全て埋まり、ドア付近やロングシート部分に立つ乗客がいるほど。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、富士、富士に到着致します。お出口は、右側です。富士より、東海道本線へのお乗り換えのご案内です。沼津行きの普通列車は、4番線から17時46分。浜松行きの普通列車は、お急ぎになりますと、5番線から17時41分。その後、同じく5番線から17時54分です。どなた様もお忘れ物の無いよう、ご確認の上、お降りください。本日もJR身延線をご利用頂き、ありがとうございました」〕

 愛原「うーん……」
 高橋「どうしました、先生?」
 愛原「何か、腹空かないか?」
 高橋「そうっスか?……あー、まあ確かに」

 昼が早かった上、警察で色々聞かれたこともあって、思わずエネルギーを使い込んでしまったのかもしれない。

 高橋「何か食いますか?」
 愛原「そうだな……。新富士駅に移動してから考えよう」
 高橋「分かりました」

 そして、電車は富士駅に到着した。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、富士、終点、富士です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います。東海道本線ご利用のお客様は……」〕

 愛原「ここからバスで、新富士駅に行けるらしい。もう雪は降ってないみたいだが、寒い中、歩かずに済みそうだ」
 高橋「そうっスね。そうしましょう」

 冷える駅構内を歩き、私達は南口のバス乗り場に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「容疑」

2023-12-31 11:55:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月9日15時30分 天候:曇 静岡県富士宮市下条 大石寺入口バス停→下条交差点付近]

 バスは市道や国道を迂回して、ようやく下車するバス停に到着した。
 そしてバスを降りると、私達は国道と県道の交差点に向かった。
 案の定、こちら側もパトカーが県道を封鎖して、警察官が県道に入ろうとする車を阻止している。

 警察官A「はい、危ないのですで、この辺に立ち止まらないでくださーい!」

 こちら側からの方が民宿に近い為、ここから消防車などが見えるし、火災で発生していると思われる煙も見える。
 風向きによっては、焦げ臭い臭いも漂って来るほどだ。

 高橋「せ、先生……」
 愛原「何たるちゃあ……」

 私は頭を抱えた。
 本当に民宿でガス爆発があったのだとしたら、無事では済まないだろうなと……。

 愛原「ちょっと聞いてくる……」

 私は信号が青になると横断報道を渡り、県道を封鎖している警察官に尋ねた。
 すると、返って来た答えは……。

 警察官A「ケガは無く、無事とのことです」
 愛原「おおっ!?」

 ただ、火元となった建物のオーナーということもあり、今は近くの駐在所で事情を聴かれているとのこと。

 愛原「急げ!駐在所だ!」

[同日15時45分 天候:曇 同市下条 富士宮警察署下条駐在所]

 伯母「学!来てくれたのね!」
 愛原「伯母さん!無事で良かったよ!それにしても、ビックリしたよ!ガス爆発だなんて……」
 警察官B「身内の方ですか?」
 愛原「はい。甥の愛原学と申します。東京で探偵事務所をやっているものです。こちらはうちの従業員で、助手の高橋と申します」
 高橋「高橋っス」
 警察官B「失礼ですが、愛原学さん達はどうしてここへ?」
 愛原「伯母さんの民宿に、今日宿泊するはずだったんです。ガス爆発のことを知ったのは、ここへ来るバスの中です。富士宮駅から、上条行きのバスの中です」
 警察官B「そうですか。どうして今日、宿泊されるのですか?」

 この時、私は答えに詰まった。
 地下室を研究室兼居室にしている伯父さんのことを調べに来たと話して良いものか……。
 だが、そこで私はハッとした。

 警察官B「愛原さん?」
 愛原「クライアントから仕事の依頼です」
 警察官B「は?」
 高橋「先生!?」
 伯母「まあ!仕事だったの!?」

 高橋が驚いていたのは、私が正直に答えたのが意外だったからだろう。

 愛原「ちょっとこの仕事にも守秘義務があるので、クライアントがどこの誰かまではお話しできません。ただ、民宿に泊まって何をするつもりだったのかはお話しできます」
 高橋「いいんスか、先生?」
 愛原「あれだけの大騒ぎです。伯母さんには申し訳無いが、建物は全壊・全焼しているでしょう。当然、火災が鎮火したら、警察や消防は現場を調べますよね?その時にどうせ分かることです」
 警察官B「して、その仕事内容とは?」
 愛原「愛原公一のことは御存知ですよね?今、警察の方でマークされていると思いますが」
 警察官B「ええ。その居住地がガス爆発したということで、大変な騒ぎになります」
 愛原「彼は民宿の地下室で寝泊まりしていました。今は行方不明ですが、その間にその地下室を調べるよう、依頼を受けたのです」
 警察官B「それはどこですか?」
 愛原「ですから、それはお答えできません。ただ、1つ言えるのは、それはけして反社組織などではないということです。もちろん、私共もそのような所からの仕事の依頼は断ります」

 まあ、情報取集や捜査協力の依頼をすることはあるがな。

 警察官B「地下室を調べて、どうなさるおつもりだったのですか?」
 愛原「……私達は、地下室の様子を調べて来るように言われただけですので。ですので、写真とか動画は撮るつもりでしたよ」

 私はそう言って、動画も撮れるデジカメを取り出した。

 伯母「鍵は手に入れたのかい?エレベーターの鍵」
 愛原「もちろんだよ」

 だが、ガス爆発のせいで、鍵を手に入れた苦労も水の泡だ。

 警察官B「エレベーターの鍵?」
 愛原「あの民宿には、エレベーターが設置されていたんですよ。表向きはバリアフリー化の為であり、実際は地下室の出入りの為でしたが。で、地下室に行く為には、鍵が必要だったのです。ところがエレベーターの鍵は、愛原公一しか持っていなかったんですよ。そこで、同じメーカーのエレベーターを導入している所から鍵を借りまして、それを持ってやってきたというわけです」
 警察官B「……そういうことでしたか」
 愛原「因みに愛原公一の甥でもあります」
 警察官B「……分かりました。まもなく、本署からパトカーが来ます。皆さんには、本署まで行ってもらいます」
 高橋「ん?俺も!?」
 警察官B「あなたは探偵事務所の従業員とのことですが、一応事情を聴きたいので」
 愛原「伯母さんは火元となった建物の実施的なオーナーだから仕方が無いでしょうが、我々も富士宮警察署に行くのは何故ですか?」
 警察官B「今、愛原公一はバイオテロに加担した容疑や薬事法違反などの容疑が掛かっています。今、愛原学さんの話を聞いて、もしかしたら、隠蔽に来られたのかなと思いまして」
 愛原「隠蔽!?」
 高橋「おい、フザけんな!」
 警察官B「だってそうでしょう?どこの誰に頼まれたか言えない。それは愛原公一容疑者かもしれないじゃないですか」
 愛原「あー……そういうことか!」

 正直に話したことが裏目に出てしまったか!
 或いは、駐在所に行く前に善場主任に報告しとおけば良かった!

 愛原「すいません。やっぱり、クライアントさんに連絡しても?」

 と、そこへパトカーがやってきた。

 警察官B「まずは本署まで行ってください」
 愛原「うへー……」

 マズったな、こりゃ。
 取りあえず私達は、覆面パトカーのリアシートに3人で乗り込んだ。
 パトカーが走り出す。

 伯母「学、悪い事したね……。私が『泊まりに来て』なんて強く言ったばっかりに……」
 愛原「いや、伯母さんは悪くないよ。でも、どうしてガス爆発なんか?で、よく助かったねぇ……」

 それもまた、伯母さんが疑われる理由になったのだろう。
 民宿内における人的被害はゼロ。
 宿泊客がチェックアウトした後、清掃に入るが、そのバイトスタッフは14時で帰宅した。
 あとは今日チェックインする私達の為の夕食の準備とかは伯母さんがするのだが、その補助スタッフ達は15時に出勤する。
 要は、バイト達が誰もいない時間帯にちょうどガス爆発が起きたのだ。
 で、伯母さんは伯母さんで、近くのスーパーで夕食と朝食の買い出しに行っていた。
 爆風でそのスーパーの外側部分にも、少なからず被害があったらしいが、伯母さん自身は建物の中にいたおかげで無事だったとのことだった。
 そして、不可解なのは爆発の原因。
 この辺りはプロパンガスが主で、民宿もプロパンガスを使用している。
 要はそのガスボンベが爆発したようなのだが、当時はガスなど使用していなかったという。
 伯母さんが買い物に出ている間、建物内は無人というわけだ。
 チェックインは15時からなので、私達もそれに合わせてバスに乗ったというわけである。
 しかし、いくら当時はガスを使用していなかったとはいえ、例えば元栓の締め忘れとか、ガス器具の不具合によるガス漏れとかも考えられる。
 そこは警察や消防で、徹底的に調べられるであろう。
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