報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「事務所へ帰所」

2023-12-14 20:22:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月3月11時30分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場「ありがとうございました。それでは車を出しますので、まずは浜町まで参りましょう」
 愛原「えっ?いいんですか?」
 善場「はい。リサの様子も見ておきたいですし」
 愛原「分かりました」
 善場「お昼になる前に、迎えに行きましょう」
 愛原「はい。ありがとうございます」
 善場「因みに、お二方が持ち出された品物につきましては、証拠品としてまずは預からせて頂きます」
 高橋「インゴットは、証拠品じゃねーだろ?」
 善場「分かりませんよ。証拠品としての価値が無い場合は、栗原家に返納と致します」
 愛原「……はい」
 高橋「くっそー!やっぱネコババしときゃ良かった!」
 善場「では、しばらくの間、留置場と拘置所で生活して頂くことになりますが、宜しいでしょうか?」
 愛原「高橋。黙ってろ」
 高橋「くっそー。国家のメス犬が」
 善場「はい、国家公務員ですよ」

 私達が手に入るように仕向けられたものではあるが、それについてどのような意味があったのか、栗原家に問い質すつもりなのだろう。
 だが、あの屋敷にいた人間の殆どが栗原蓮華に食い殺されたか、或いはそれで特異菌に感染してモールデッドになったり、それに殺されたりして、ほぼ全滅状態であった。
 尚、高野君の死体は見つかっていなかったから、ヘリコプターが墜落する前に脱出したのだろう。
 エイダ・ウォンはフックショットの使い手だったらしいが、高野君もそうなのだろうか。
 事務所の前に止められた黒いセレナに乗り込む。
 既に主任の部下が運転席に座っていて、電動スライドドアを開けてくれた。
 主任は助手席に乗り込み、私と高橋はリアシートに乗り込む。

 善場「浜町の例のビルまで」
 部下「はっ」

 主任の黒スーツの男は車を走らせた。
 さすがにもう朝のラッシュが終わっていることもあり、道路はそこまで混んでいない。
 新橋から浜町まで、10分ほどで到着する見込みである。

 高橋「インゴットさえありゃ……札束さえありゃ……」
 愛原「温泉旅行券……JTB旅行券……ブルマ3色セット……」
 善場「証拠品としての価値が無いと判断され、栗原家に返還を打診しますが、栗原家が譲渡の意思を示したり、所有権の放棄を明示した場合は、愛原所長達の物になりますよ」
 愛原「因みに主任、この仕事の報酬は……?」
 善場「後ほどまずは概算額を提示させて頂きます。……そうですね。リサから事情を聴取した後になるでしょうから、来週には御提示できるかと思います。それまでの間、所長は今回の調査業務に掛かった諸経費の計上をお願いします」
 愛原「分かりました」

 調査どころか、もう戦闘だったな。
 よくケガしないで済んだものだ。
 さすがに個人の私有地とあらば、『武器商人』とかが商売に来ることは無かったが。

[同日11時45分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 某クリニック]

 車はビルの地下駐車場に入った。
 駐車場は関係者専用のようだが、デイライトは関係者扱いなのだろうか。
 駐車券は取らず、何かパスのような物を入れてゲートを開けていたので。
 駐車スペースに車を止めて、そこからエレベーターでクリニックのあるフロアに上がる。
 午前中の診察の受付が終わった後なのか、待合室に患者は少ない。
 奥の健診センター側には、殆ど人がいなかった。

 愛原「リサー、迎えに来たぞー」
 リサ「!」

 リサは検査着から制服に着替えていた。
 秘密の処置室から、健診センターの待合所の椅子に座っていた。
 リサは私の姿を見かけると、バッと飛び掛かるようにやってきて、ハグしてきた。

 愛原「お、おい!」

 しばらくリサは抱き着いていたかと思うと、スッと離れた。

 リサ「……電撃も静電気も出なくなっちゃった」
 愛原「な、なに!?」
 高橋「オメー、先生に電撃かますつもりだったのか!?」
 リサ「愛情表現だよぉ」
 善場「取りあえず、元気にはなったようですね。それは何よりです。私は今回の件での精算手続きをして参りますので、少しお待ちください」
 高橋「時間が掛かるんなら、一服させてもらうぜ?」
 善場「それは構いません」
 愛原「俺もトイレ行ってこよう」
 リサ「わたしは喉乾いた」
 愛原「リフレッシュコーナーに自販機があるから、それでジュースでも飲んでろ」
 リサ「分かった」

 善場主任は受付の会計窓口に向かい、私達はクリニックの外に出た。
 クリニック内にもトイレはあるが、午前の部が終了したことで、何だか早く出ないといけない雰囲気だった。
 ので、ビル内にある共用トイレに行くことにする。
 そこで小用を足してからリフレッシュルームに行くと、リサがリフレッシュコーナーで立ち往生していた。

 愛原「どうした?」
 リサ「この自販機、現金しか使えない」
 愛原「ええっ!?」

 学校帰りに攫われたこともあり、リサは電子マネーしか持っていなかったのだ。

 愛原「分かった分かった。買ってやるよ」
 リサ「わぁい」
 愛原「何にする?」
 リサ「オレンジジュースで」
 愛原「はいはい」

 私は財布から小銭を取り出すと、それでリサにジュースを買ってやった。

 愛原「貧血は大丈夫だったのか?」
 リサ「うん、まあね」

 何でも点滴が終わった後、改めて採血をされたのだという。
 こんなことは普通、有り得ない。
 リサだから、されたのだろう。

 リサ「それでね、先生。チラッと聞いたんだけど……」
 愛原「何だ?」

 リサがそっと耳打ち。

 リサ「このクリニック、元はアンブレラの診療所だったみたいだよ」
 愛原「え!?」
 リサ「アンブレラが潰れて、クビになった研究員とかが、お医者さんとかで雇われてるんだって。研究員の中には、薬剤師や医師免許を持ってる人もいたから」

 アンブレラは悪の製薬企業ではあるが、光の部分もある。
 つまり、表向きの部分だな。
 闇の部分で働いていた社員達はバイオハザードに巻き込まれて感染したり、感染者に殺されたり、生き延びてもBSAAに捕縛されたりしたわけだが、表向きの部分で働いていた者は、例え警察に逮捕されても処分保留で釈放されたり、送検されても不起訴になったり、起訴されても無罪判決が出たりしている。
 医師不足の世の中、そういった者達は医療スタッフとして再雇用されているのが、このクリニックのようらしい。
 さすがに執行猶予でも有罪判決が出た者は医師免許などを剥奪されているので、それは再雇用されない。

 リサ「でも、さすがにわたしのことは知らないみたいだけどね」
 愛原「そりゃそうだろうな」

 リサの存在はサッキリ言って、日本アンブレラにとっては闇過ぎる部分だ。
 リサの存在を噂レベルでも知り得る立場にあった者達は、どんなに軽くても執行猶予付きの有罪判決を受けている。
 つまり、ここで働けるスタッフ達は、アンブレラにいても、リサのことなど噂ですら聞くことができない立場にいた者達だ。

 リサ「でもわたしがアンブレラの研究所にいたと知ったら、それは納得してたけどね」
 愛原「ふーん……」

 リサそのものの存在を噂レベルでも知ることはできなかったが、研究所ではヤバいことをやっているようだという噂くらいは知っていたか。

 善場「お待たせしました。一息つきましたら、今度は愛原所長の事務所へ行きましょう」

 そこへ善場主任がやってきた。

 リサ「お腹空いた」
 善場「お昼を食べてからでいいので、事情を聞かせてください」
 高橋「ねーちゃん、さすがに俺達はもういいよな?徹夜の仕事だったから、眠くてしょーがねーぜ」
 善場「ええ、結構ですよ。今度はリサに話を聞くだけなので」
 愛原「まあ、さすがに疲れたな」

 もうすぐ昼食の時間ということもあり、空腹も多少はあったが、確かに眠気の波は凄かった。

 善場「とにかく、所長の事務所までお送りします。駐車場ほ向かいましょう」

 私達はエレベーターホールに向かうと、再びエレベーターに乗り、地下駐車場へと向かった。
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