報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京」

2023-12-12 20:25:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月3日06時56分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR東北新幹線254B列車11号車内]

 “なすの”254号が大宮駅を定刻に発車する。
 大宮駅からも乗車があったようだ。
 但し、グリーン車に乗り込んで来る乗客は皆無だったが。
 ドアが閉まると同時に、私のスマホが震える。
 画面を見ると、善場主任からだった。

 愛原「悪い。善場主任からだ」
 高橋「は、はい」

 私はすぐ後ろの席に座る高橋に言って、デッキに向かった。
 軽い朝食を食べたリサは、深く倒れるリクライニングシートを倒して寝ている。
 副線の線路が合流してくる中、揺れる車内を歩く。

 愛原「はい、もしもし?」

 デッキに出た私は、そこで電話に出た。

 善場「愛原所長、お疲れさまです。善場です」
 愛原「お疲れ様です。今、大宮駅を出たところです」
 善場「順調ですね。リサに変化はありましたか?」
 愛原「今のところは何もありません。車内で軽く朝食を食べた後、今は少し眠っています」
 善場「かしこまりました。リサを浜町のクリニックに送った後、新橋の当事務所に来て頂くことは可能ですか?」
 愛原「リサを置いて、ですか?リサからは事情を聞かないのですか?」
 善場「もちろん、リサには後で事情を聞きます。愛原所長方と合流するまでの間、何があったかを詳しく聞きたいですから。ですが、まずは愛原所長方から話を伺いたいのです」
 愛原「承知しました」
 善場「タクシーを使って頂いて構いませんので」

 当然、私達が移動している間にも、デイライトの方ではBSAAと連携して情報収集に当たっているのだろう。
 しかし、当事者たる私達の報告が一刻でも早く欲しいようである。

[当日07時20分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 愛原「リサ、起きろ。もうすぐ東京駅だぞ」

 私はリサを揺り動かした。

 リサ「うーん……」

 制服姿の女子高生と新幹線は修学旅行感があるのだが、それがグリーン車というのは些かミスマッチである。
 富裕層の子弟が通う私学ですら、修学旅行での新幹線はグリーン車を使うことはないだろう。

 愛原「どうだ、調子は?」
 リサ「……まだ頭が少し重い」
 愛原「そうか」

 とにかく、今日はリサ、学校は休みだ。
 後で学校に連絡を入れておくことにしよう。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは21番線、お出口は右側です。お降りの際、お忘れ物の無いよう、もう1度よくお確かめください。今日もJR東日本、東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 列車は定刻通り、東京駅に到着した。

〔「おはようございます。ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物、落とし物にご注意ください。21番線に到着の電車は、折り返し、7時32分発、“はやぶさ”“こまち”5号、新青森行きと秋田行きになります。……」〕

 私達は列車を降りた。

 高橋「先生、ちょっと一服してもいいですか?」
 愛原「いいよ」

 高橋はホーム北側の喫煙所に向かった。
 ここは多くの喫煙者で賑わっている。
 私とリサは喫煙所の外側で待った。

 愛原「俺達は何か飲みながら待つか」
 リサ「うん」

 私は近くの自販機でお茶を買い求めた。
 コーヒーは既に缶コーヒーを何度か飲んでいる為、お茶はカフェインの無い物を選んだ。
 ほうじ茶はその製法上、カフェインやカテキンが壊れている為、飲みやすい。

 愛原「悪いが、今日は学校は休んでもらう」
 リサ「うん。ちょっと……調子があまり良くないからね」
 愛原「まだ、ふらつくか?」
 リサ「ちょっとだけ」
 愛原「するともしかしたら、浜町で療養することになるかのしれない……」
 リサ「そうなの?」
 愛原「俺達、善場主任に呼ばれてるんだよ。リサが浜町のクリニックで検査している間、新橋の事務所に来いってさ」
 リサ「で、わたしは?」
 愛原「その間に検査をしてて、もしかしたら、療養することになるんじゃないかな?ほら、あのクリニック、隠し部屋にベッドとかあるだろ?」
 リサ「う、うん。そうだねぇ……。そうかぁ……」
 愛原「指示があるだろうから、俺達はそれに従うしか無いわけだ。いいかな?」
 リサ「先生には迷惑掛けられないから……」
 愛原「悪いな。ありがとう」

 私はそう言って、リサの肩をポンポン叩いた。
 思ったよりも小さな肩だった。

 愛原「多分、善場主任が聞きたいのは、栗原蓮華のことじゃないか?」
 リサ「あいつか……」

 『鬼斬りセンパイ』から『あいつ』に二人称が変わったリサ。
 まあ、悪堕ちしたのだからしょうがないか。

 愛原「鬼の名前は何だ?」
 リサ「いや、そのまんま蓮華でいいんじゃない?」
 愛原「そ、そうか?」
 リサ「○滅○刃じゃないんだから……」
 愛原「いや、お前だって人間だった頃の名前が……」
 リサ「その記憶が無いんだからしょうがないでしょ」

 恐らくこれがリサの人間だった頃の名前ではないかというものはあったが、確証は無かった。
 なので今でも、BOWの名前、リサ・トレヴァーから名前を拝借している。
 そんなことを話しているうちに、吸い溜めの終わった高橋が喫煙所から出て来た。

 高橋「お待たせしました」
 愛原「よし。それじゃ、浜町に向かうぞ」
 高橋「電車で行くんスか?」
 愛原「いや、ここからはタクシーで行こう。朝ラッシュで混んでるだろうからな」
 高橋「た、確かに……」

 到着した上り列車からは旅行客はもちろんのこと、新幹線通勤客もぞろぞろと降りている。
 これでは、在来線や地下鉄も混雑しているだろう。
 私達は改札口に向かうと、八重洲側のタクシー乗り場に向かった。
コメント
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