[10月24日07時00分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センターC棟3階313号室]
枕元のスマホがアラームを鳴らす。
今度のは、ただの目覚まし時計だ。
私は音を止めて、起床した。
愛原「おい、高橋。起きろ」
高橋「……うっス」
2段ベッドの上段に高橋が寝ており、私はカーテンを開けて高橋を起こした。
私は洗面道具を手に、洗面所に向かう。
高橋「朝飯、何時から食えるんスかね?」
愛原「もうこの時間から、BSAAの軍人さん達は食べているらしいぞ。だから、俺達は後でゆっくり行くといいらしい」
高橋「分かりました」
高橋は一服しに、部屋を出て行った。
[同日08時00分 天候:晴 同センターA棟1階食堂]
朝の支度を終えると、私と高橋は本館A棟の食堂に向かった。
目論見通り、BSAAの朝食は終わっていて、食堂は私達の貸し切りとなっていた。
朝食はサバの塩焼きをメインとした、和定食である。
愛原「リサはちゃんと食事、もらえてるのかな?」
高橋「どうっスかね……。まあ、ハンターみたいな化け物にも餌をやってたくらいですから、リサにもやってるんじゃないスか」
愛原「だといいけど……」
高橋「リサだって、豚一匹で十分スからね」
愛原「こらこら」
私達が朝食を取っていると、善場主任もやってきた。
善場「おはようございます。私もご相伴にお預かりしても、よろしいですか?」
愛原「ど、どうぞ!失礼!善場主任もまだでしたか!つい、先に頂いちゃってました!」
善場「いえいえ。構いませんよ」
つい、BSAAの隊員達と一緒に食べたのかと思っていた。
愛原「私がよそおいましょう!」
私は御ひつの中から、茶碗にご飯をよそおった。
善場「いえいえ、お構いなく」
高橋「それよりねーちゃん、事故処理はいつ終わるんだ?俺達も仕事があるんだぜ?」
善場「それは申し訳ありません」
愛原「リサの学校については、体調不良ということで伝えてあります」
善場「ありがとうございます。一両日中には終わるのではないかと思われます」
愛原「係員の死亡については、どうされるのですか?」
善場「それは、こちらにお任せください。……逆に、忘れてください」
高橋「おっ、お得意の隠蔽かぁ!?俺の免停も隠蔽してほしいもんだぜ!」
善場「ですから、そう申し上げてるじゃないですか」
高橋「あっ……!」
愛原「高橋!黙ってろ!」
高橋「さ、サーセン……」
愛原「すいません。後でよく言っておきますから」
善場「愛原所長にお任せします」
愛原「それで、今日は私達は何をすれば宜しいのでしょう?」
善場「リサへの面会をお願いします」
愛原「分かりました。また、レセプションにて、リモート面会ですね?」
善場「そう、ですね……」
愛原「ん?」
何か、主任の返事が曖昧だ。
善場「9時になりましたら、また研究施設に向かいましょう」
愛原「? はい」
まさか、面会できないかもしれないのだろうか。
私は理解できても、リサが理解できないかもしれないぞ。
[同日09時15分 天候:晴 同センター地下研究施設]
朝食を終えると、C棟のエレベーターからまた研究施設へと下りた。
レセプションの端末ではなく、普通の電話機で主任は中の関係者と話をしていた。
善場「……なるほど、そうですか。それでは、それで参りましょう」
主任は電話を切ると、私達の方を向いた。
善場「10時から面会が可能です。但し、面会室での対面が可能とのことです」
愛原「えっ、そうなんですか?」
善場「リサの暴走が確認できない以上は、もう少し人道的な扱いでも良いということになったようです」
その割には、まだこの地下研究所暮らしをさせられているが……。
私達は施設内の使用されていない会議室で待機した後、面会室へ向かった。
愛原「これは……」
そこは、まるで刑務所か拘置所の面会室のような造りになっていた。
違うのは、壁一面にゴムシートが貼られていること、防護板にも透明の絶縁フィルムが貼られていることだった。
こうすることで、少しでもリサの放電による感電を防ごうという魂胆なのだろう。
しばらくして、防護服に身を包んだ研究員やBSAA隊員に連れられ、リサが入室してきた。
リサもまたゴムのウェットスーツを着せられている。
リサ「先生!」
リサが防護板に張り付いてきた。
リサ「先生!そっちに行きたいーっ!」
愛原「事故処理と、お前の調査が終わるまではダメらしいな。それにしても、昨夜は上手くやったな。ハンターを感電させたんだって?」
リサ「いきなり入って来やがったから、『何だ、お前らーっ!』って、手を伸ばしたら、電気がビリビリーってね」
愛原「そんなことができるのか。制御はできるのか?」
リサ「何となく……。こうすると、電気が出るなぁって感じ」
寄生虫の時みたいに、自分で制御できるようになれば、ここから出ても安心なんじゃないのかと思う。
因みに今回の面会時間は、1時間に延長されていた。
リサの活躍と本人自体は、特に反抗的でもないし、暴走していないからという判断なのかもしれない。
[同日11時00分 天候:不明 地下研究施設カンファレンスルーム]
リサには着替えやお菓子やジュースを差し入れしておいた。
一応、食事は普通の定食が出されているという。
また、安全の確保の為、リサは研究室からの出歩きを許可されていないが、必要な物は研究員に頼めば購入してくれるとのこと。
それから私と高橋は、カンファレンスルームに移動し、リサの現況についての説明を受けた。
善場「リサの放電体質の原因については、未だに不明です。ただ、『アイコール』投与後に変化したことから、それによる副作用である可能性が指摘されています」
愛原「やっぱりなぁ……」
高橋「ねーちゃん、他にも電気放つBOWとかいなかったのかよ?」
善場「一例だけあります」
愛原「えっ!?」
善場「2013年、香港で起きたバイオハザード事件でのことです。そこもBSAAが対応に当たったのですが、北米支部のクリス・レッドフィード氏が隊長として、副隊長としてピアーズ・ニヴァンス氏がネオ・アンブレラのアジトに潜入しました」
愛原「確か、海底に造られた油田の発掘施設に偽装されていたということでしたね?」
善場「そうです。しかし、そこでピアーズ氏は瀕死の重傷を負ってしまいます。そこであろうことか、ピアーズ氏は自分にCウィルスを投与してしまったのです。しかしながら彼は、体の半分がBOWと化しながらも、不屈の精神で自我を保ち続け、クリス氏の脱出に最後まで尽力したと言われています」
愛原「BSAAの資料にもありますね」
善場「その半分BOW化したピアーズ氏は、そこから電撃を放ち、敵を倒したとのことです」
愛原「やっぱり他にもいたんだ!」
高橋「いやいや、待て待て、ねーちゃん。Cウィルス、どっから出てきた?今、リサが持っているのはGウィルスと特異菌だろ?」
愛原「確かに……」
善場「今のところ、調査中としか申し上げられません。リサから採血したりしているのですが、それでもCウィルスは見つかっていません」
愛原「他に分かっていることはありますか?」
善場「リサの寄生虫が殆ど無くなっています」
愛原「ほお?」
善場「体質の変化と帯電に伴い、死滅したものと思われます」
高橋「それだけは良かったっスね。キモい蟲を見なくて済む」
愛原「うん」
それにしても、帯電体質について分からない事には、ここから出られないのではと思った。
枕元のスマホがアラームを鳴らす。
今度のは、ただの目覚まし時計だ。
私は音を止めて、起床した。
愛原「おい、高橋。起きろ」
高橋「……うっス」
2段ベッドの上段に高橋が寝ており、私はカーテンを開けて高橋を起こした。
私は洗面道具を手に、洗面所に向かう。
高橋「朝飯、何時から食えるんスかね?」
愛原「もうこの時間から、BSAAの軍人さん達は食べているらしいぞ。だから、俺達は後でゆっくり行くといいらしい」
高橋「分かりました」
高橋は一服しに、部屋を出て行った。
[同日08時00分 天候:晴 同センターA棟1階食堂]
朝の支度を終えると、私と高橋は本館A棟の食堂に向かった。
目論見通り、BSAAの朝食は終わっていて、食堂は私達の貸し切りとなっていた。
朝食はサバの塩焼きをメインとした、和定食である。
愛原「リサはちゃんと食事、もらえてるのかな?」
高橋「どうっスかね……。まあ、ハンターみたいな化け物にも餌をやってたくらいですから、リサにもやってるんじゃないスか」
愛原「だといいけど……」
高橋「リサだって、豚一匹で十分スからね」
愛原「こらこら」
私達が朝食を取っていると、善場主任もやってきた。
善場「おはようございます。私もご相伴にお預かりしても、よろしいですか?」
愛原「ど、どうぞ!失礼!善場主任もまだでしたか!つい、先に頂いちゃってました!」
善場「いえいえ。構いませんよ」
つい、BSAAの隊員達と一緒に食べたのかと思っていた。
愛原「私がよそおいましょう!」
私は御ひつの中から、茶碗にご飯をよそおった。
善場「いえいえ、お構いなく」
高橋「それよりねーちゃん、事故処理はいつ終わるんだ?俺達も仕事があるんだぜ?」
善場「それは申し訳ありません」
愛原「リサの学校については、体調不良ということで伝えてあります」
善場「ありがとうございます。一両日中には終わるのではないかと思われます」
愛原「係員の死亡については、どうされるのですか?」
善場「それは、こちらにお任せください。……逆に、忘れてください」
高橋「おっ、お得意の隠蔽かぁ!?俺の免停も隠蔽してほしいもんだぜ!」
善場「ですから、そう申し上げてるじゃないですか」
高橋「あっ……!」
愛原「高橋!黙ってろ!」
高橋「さ、サーセン……」
愛原「すいません。後でよく言っておきますから」
善場「愛原所長にお任せします」
愛原「それで、今日は私達は何をすれば宜しいのでしょう?」
善場「リサへの面会をお願いします」
愛原「分かりました。また、レセプションにて、リモート面会ですね?」
善場「そう、ですね……」
愛原「ん?」
何か、主任の返事が曖昧だ。
善場「9時になりましたら、また研究施設に向かいましょう」
愛原「? はい」
まさか、面会できないかもしれないのだろうか。
私は理解できても、リサが理解できないかもしれないぞ。
[同日09時15分 天候:晴 同センター地下研究施設]
朝食を終えると、C棟のエレベーターからまた研究施設へと下りた。
レセプションの端末ではなく、普通の電話機で主任は中の関係者と話をしていた。
善場「……なるほど、そうですか。それでは、それで参りましょう」
主任は電話を切ると、私達の方を向いた。
善場「10時から面会が可能です。但し、面会室での対面が可能とのことです」
愛原「えっ、そうなんですか?」
善場「リサの暴走が確認できない以上は、もう少し人道的な扱いでも良いということになったようです」
その割には、まだこの地下研究所暮らしをさせられているが……。
私達は施設内の使用されていない会議室で待機した後、面会室へ向かった。
愛原「これは……」
そこは、まるで刑務所か拘置所の面会室のような造りになっていた。
違うのは、壁一面にゴムシートが貼られていること、防護板にも透明の絶縁フィルムが貼られていることだった。
こうすることで、少しでもリサの放電による感電を防ごうという魂胆なのだろう。
しばらくして、防護服に身を包んだ研究員やBSAA隊員に連れられ、リサが入室してきた。
リサもまたゴムのウェットスーツを着せられている。
リサ「先生!」
リサが防護板に張り付いてきた。
リサ「先生!そっちに行きたいーっ!」
愛原「事故処理と、お前の調査が終わるまではダメらしいな。それにしても、昨夜は上手くやったな。ハンターを感電させたんだって?」
リサ「いきなり入って来やがったから、『何だ、お前らーっ!』って、手を伸ばしたら、電気がビリビリーってね」
愛原「そんなことができるのか。制御はできるのか?」
リサ「何となく……。こうすると、電気が出るなぁって感じ」
寄生虫の時みたいに、自分で制御できるようになれば、ここから出ても安心なんじゃないのかと思う。
因みに今回の面会時間は、1時間に延長されていた。
リサの活躍と本人自体は、特に反抗的でもないし、暴走していないからという判断なのかもしれない。
[同日11時00分 天候:不明 地下研究施設カンファレンスルーム]
リサには着替えやお菓子やジュースを差し入れしておいた。
一応、食事は普通の定食が出されているという。
また、安全の確保の為、リサは研究室からの出歩きを許可されていないが、必要な物は研究員に頼めば購入してくれるとのこと。
それから私と高橋は、カンファレンスルームに移動し、リサの現況についての説明を受けた。
善場「リサの放電体質の原因については、未だに不明です。ただ、『アイコール』投与後に変化したことから、それによる副作用である可能性が指摘されています」
愛原「やっぱりなぁ……」
高橋「ねーちゃん、他にも電気放つBOWとかいなかったのかよ?」
善場「一例だけあります」
愛原「えっ!?」
善場「2013年、香港で起きたバイオハザード事件でのことです。そこもBSAAが対応に当たったのですが、北米支部のクリス・レッドフィード氏が隊長として、副隊長としてピアーズ・ニヴァンス氏がネオ・アンブレラのアジトに潜入しました」
愛原「確か、海底に造られた油田の発掘施設に偽装されていたということでしたね?」
善場「そうです。しかし、そこでピアーズ氏は瀕死の重傷を負ってしまいます。そこであろうことか、ピアーズ氏は自分にCウィルスを投与してしまったのです。しかしながら彼は、体の半分がBOWと化しながらも、不屈の精神で自我を保ち続け、クリス氏の脱出に最後まで尽力したと言われています」
愛原「BSAAの資料にもありますね」
善場「その半分BOW化したピアーズ氏は、そこから電撃を放ち、敵を倒したとのことです」
愛原「やっぱり他にもいたんだ!」
高橋「いやいや、待て待て、ねーちゃん。Cウィルス、どっから出てきた?今、リサが持っているのはGウィルスと特異菌だろ?」
愛原「確かに……」
善場「今のところ、調査中としか申し上げられません。リサから採血したりしているのですが、それでもCウィルスは見つかっていません」
愛原「他に分かっていることはありますか?」
善場「リサの寄生虫が殆ど無くなっています」
愛原「ほお?」
善場「体質の変化と帯電に伴い、死滅したものと思われます」
高橋「それだけは良かったっスね。キモい蟲を見なくて済む」
愛原「うん」
それにしても、帯電体質について分からない事には、ここから出られないのではと思った。
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