報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「寄り道からの帰り」

2023-02-22 15:25:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日16時00分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 京王高尾山温泉]

 風呂上がり後、食事処で飲み物と甘味を楽しむ私達。
 リサは何か食事をしたかったようだが、それは止めておいた。
 クリームあんみつとオレンジジュースで宥めておく。

 リサ「先生、今度わたしのオッパイで背中洗ってあげるねぇ?」
 愛原「何で知ってるんだ!?」
 リサ「わたしの蟲が……」

 リサの口の中から、百足型の寄生虫が顔を出して……。

 寄生虫(百足型)「ヨッ!」
 高橋「蟲にスパイさせんな!」
 愛原「いつの間に!?」

 スルスルとリサの体内に戻って行く蟲。

 愛原「段々とオマエ、人間離れしていってないか?」
 高橋「化け物の道、まっしぐらですな」
 リサ「でも、役に立つんだよ、このコ達!この前なんか、ピッキングしてみせたんだから!」
 高橋「自慢できることじゃねぇ!」
 愛原「いや、待て。アンブレラの施設を探索する際に、鍵が無いと開かないドアを開けたいのに鍵が無い場合は、役に立つかもしれんな」
 リサ「エヘヘ……そうでしょ?」
 高橋「都合よくまたそんな仕事、来ますかね?」
 愛原「ははっ(笑)、もう無いか?」

 私にとっては、居眠りした本人の代わりに宿題を片付けたその能力の方が凄いと思う。

 愛原「検査の時に、寄生虫なんかも調べられたんだろ?」
 リサ「うん。1種類ずつ取られたよ」
 愛原「1種類ずつ?」
 リサ「今の百足型でしょ?芋虫型でしょ?蜘蛛型でしょ?他にもゴキブリ型や蜂型もあるよ」
 愛原「全種類コンプリートする気か!」

 私は2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件を思い出した。
 そこはベイカー農場という農場やその近辺の湿地帯などが舞台だったが、農場経営者の奥さんもまた特異菌の感染者で、彼女は蟲を駆使した攻撃をイーサン・ウィンターズ氏に繰り出していたと聞いた。
 リサのその異能もそれと似たようなものだとすると……。

 愛原「なあ。もしかしてその蟲達、特異菌も影響してないか?」
 リサ「うん。研究員達も言ってた。どの蟲からも、TウィルスとGウィルス、そして特異菌の反応があったんだって」
 愛原「アメリカのベイカー農場事件だって、特異菌オンリーだったのに、オマエはそれにプラスしてTとGウィルスか」
 高橋「歩く生物兵器っスね」
 愛原「何を今さら……」

 で、海外ではこういう場合、すぐさま暴走して、周辺にウィルスや特異菌をばら撒いて、ゾンビだらけにするのがオチだが、リサはこうやって制御できている。
 はっきり言って、奇跡以外の何物でもないそうだ。
 それは偏に、私という存在が大きいからだとされる。
 もちろん、リサ自身が化け物だという自覚があるというのもあるが(BSAAに追い回される化け物達の中には、自分がそうだという自覚が無い者もいる)。

[同日17時00分 天候:晴 同地区 京王電鉄高尾山口駅→京王高尾線7506電車先頭車内]

 温泉で体の疲れを癒やした後、私達は再び駅に戻った。

 

 愛原「チケットレスサービスだから、紙の特急券は要らないよ。乗車券だけICカードでいい」
 高橋「八王子行きと同じっスね」
 愛原「そういうこと」

 

 さすがに夕方ということもあり、駅は帰りの行楽客で賑わっている。
 元々この駅始発だから、並んでいれば座って帰れるのだが、もう1度今度は上りの“京王ライナー”に乗ってみたいというのがあった。
 もちろんこれは、私の趣味なので、自分のポケットマネーである。

 

 とはいうものの、3人並んで座れる席と言ったら、連結器横の席だけということになるが。
 座席は背もたれが高く、ヘッドレストも付いているとはいえ、横向き席はあまり人気が無いもよう。
 それでも、充電コンセントは付いている。
 尚、ライナー以外での運用に当たる場合は優先席であるが、ライナーとして運転する場合は優先席ではなくなる。
 クロスシートの方が旅情はあるのだが、足の長い高橋にとっては、足が伸ばせる横向き席の方が良いのかもしれない。
 私達が座る向かい側の席は車椅子スペースになっていて座席が無い為、広々としている。
 で、発車前に“京王ライナーのテーマ”が流れているところは、新宿発の下り列車と一緒。

〔ご案内致します。この電車は、“Mt.TAKAO”号、新宿行きです。途中、高尾、めじろ台、北野、高幡不動、聖蹟桜ヶ丘、分倍河原、府中、明大前に止まります。この電車は、全車指定席です。予め座席指定券をお買い求めの上、指定された席をご利用ください〕

 リサ「それで先生、夕食は?」

 連結器横の座席に座るリサが、真ん中に座る私の方を向いて言った。

 高橋「食う事ばっかだな」
 愛原「人を食い殺すよりはマシさ。菊川に着いたら何か食おう」
 リサ「菊川ね……」
 愛原「新宿駅に着いたら、今度は新宿始発の都営新宿線に乗り換えできるんだ。それでスムーズに、帰宅できるんだよ」
 リサ「で、何を食べるの?」
 愛原「リサが食べたいものでいいよ」
 リサ「じゃあ、肉」
 愛原「だろうな。また、ジョナサンでいいか?」
 リサ「いいよ」

 これで決まった。

[同日17時15分 天候:晴 京王電鉄高尾線7506電車先頭車内]

 ピンポーンピンポーンとJR東海の普通列車と同じ音色のドアチャイムが鳴り、車両のドアが閉まった。
 高尾山口駅にはホームドアが無い為、電車のドアが閉まると、運転室から発車合図のブザーの音が微かに聞こえてくる。
 私鉄や地下鉄ではこれが当たり前で、それが省略されているJRの方が特殊なのかもしれない(新幹線や気動車を除く)。
 それから電車が、ゆっくりと走り出した。
 高尾駅までは単線であり、本線に入る為にポイント通過がある関係で、速度制限が掛かるからだ。
 チーン!と運転室からチンベルの音が聞こえてくる。
 信号が切り替わる際に鳴る合図だ。
 車両によっては、御仏壇の鈴の音にも似ている。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。京王をご利用くださいまして、ありがとうございます。“Mt.TAKAO”、新宿行きです。途中、高尾、めじろ台、北野、高幡不動、聖蹟桜ヶ丘、分倍河原、府中、明大前に止まります。次は、高尾です。高尾の次は、めじろ台に止まります〕

 山中を走るからか、トンネルも通過する。
 JR中央本線も高尾駅を出ると山の中に向かって行くが、そちらは登るという感覚は無い。
 恐らく蒸気機関車の時代に開通したことから、急な上り坂の線路は引けなかったのだろう。
 対して京王高尾線は、ぐんぐん登って、まるで登山電車のようである。
 こちらは最初から、馬力のある電車を運行する前提で開通したからであろう。
 今は逆方向だから、下り坂を下りて行くといった感じだ。
 それでもJRと接する高尾駅では、京王線ホームの方がやや高い位置にある。
 夕食だが、私としては一瞬、居酒屋のような所で一杯引っかけて……と思ったのだが、リサのような若いコはファミレスの方が良いようだ。
 ま、そこでもビールは飲める。
 私達は東京都の西部から、東部へと歩を進めた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「寄り... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「京王... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事