[4月3日12:30.天候:晴 秋田県大館市某所 スーパーラーメンショップ]
見た限り、厨房にいる店長は30代半ばに見える。
特に変なところは無い。
ラーメン作りに情熱を燃やしている店長といった感じ。
店長:「はい、チャーシュー麺のお客様」
店長が厨房カウンターから直にラーメンを出してくる。
愛原:「はい」
店長:「こちらが味玉トッピングの方です」
リサ:「はい!」
店長:「こちらが辛味噌タンメンですね。お待ちどう様でした」
愛原:「大館の街から大分離れてるのに、大繁盛だね」
店長:「おかげさまで」
愛原:「あえて町中に店を作らず、そこから随分離れた場所に店を構えたこだわりってあるの?」
店長:「いえっ、ちょうど資金面と条件が合ってたんで、たまたまここです。ちょっと不安はありましたけどね、でもお陰様で好評です」
愛原:「そりゃ良かった。じゃあ頂くよ」
私は早速ラーメンに箸をつけた。
確かに味は素晴らしい。
だが、どことなく不思議な味だ。
何か隠し味でも使っていると見た。
愛原:「美味いな。この味なら流行って当然だね」
店長:「ありがとうございます」
愛原:「何か隠し味を使ってそうな感じだけど、何か秘密が?」
店長:「ああ……っと、それは企業秘密です」
愛原:「やっぱりか。スープの味がどことなく独特だよね?」
店長:「さすがですね。ラーメン通の方ですか?」
愛原:「通ではないけど、ラーメンは好きだから。でも、惜しいね。このラーメン食べる為に、わざわざ町から出て来ないとダメなんでしょ?町中に造ったら、行列できるんじゃない?」
店長:「まあ、町中にオープンできれば良かったんですけどねぇ……」
愛原:「この土地や建物も店長がオーナーなの?」
店長:「いえ、違いますけど、どうしてですか?」
愛原:「いや、なかなかこういう所の土地って売ってないだろうなぁと思って」
店長:「まあ、確かに私はオーナーから土地を借りて営業してるんですけども……」
愛原:「あ、やっぱりそうなの。そのオーナーは……」
その時、厨房にいる女性店員がやってきた。
20代半ばくらいで、リサみたいに肩の所で切ったボブヘアだったが、毛先の部分だけ茶色に染まっていた。
女性店員:「お客様、すいません!ちょっと店長は、調理の方に回らないといけなくて……」
愛原:「あ、ああ!そうだったね。ごめん。忙しい時に」
リサ:「……!?」
店長:「申し訳ないです。どうぞごゆっくり」
店長は申し訳無さそうに言うと、厨房の奥に引っ込んでしまった。
高橋:「! リサ、おい!?」
リサはパーカーのフードを被ると、右耳だけ第1形態に戻った。
どうやら、聞き耳を立てているようだ。
リサの耳には、店長達の声が聞こえたらしい。
女性店員:「ちょっとあんた!ベラベラ喋るんじゃないよ!」
店長:「しょうがないだろう。お客さんに話し掛けられちゃ……」
女性店員:「サツのイヌかもしれないんだから、気を付けなよ!」
店長:「分かってるって……」
そして、リサは気づいた。
リサ:「先生、あのね……。あの女の人から、BOWの臭いがする。体臭は誤魔化してるみたいだけど、人食いの臭いがした」
愛原:「何だって!?」
高橋:「リサ・トレヴァーなのか!?」
リサ:「分かんないけど、多分そう」
恐らくはリサの亜種か何かだろう。
しかし、どういうことだ?
他のリサ・トレヴァーは今まで、私達に襲って来る前提でやってきていた。
それがここにいるそいつは、一応はラーメン屋の店員として働いている。
しかも、どうやら裏では店長よりも立場が上のようだ。
やはりこのラーメン屋、何かある。
愛原:「さっさと食べて出よう。後で作戦会議だ」
高橋:「はい」
私達はラーメンを食べ終わると、店を出た。
会計は最初に現れたバイト店員で、あとは店長達が現れることはなかった。
愛原:「やはり秘密が隠されていたラーメン屋だったか」
車に戻る。
高橋:「どうしますか?」
愛原:「多分この土地の名義は、未だ白井兄弟の誰かで間違い無いんだろう。それを店長がラーメン屋を始めるに当たって、この土地を借りたということだ。多分、店舗の建物とかは自分の資金で建てたんだろう。問題は、どうしてこの土地だったのかだ。確かに国道沿いのラーメン屋も流行る時は流行るが、ここまで町から離れた場所というのはリスクが大きいだろう。だったらまだドライブインとしての営業の方がいいわけだ」
もっとも、そのドライブインも廃れて行き、何とか営業している所でもコンビニに商売替えしたりしている。
愛原:「あの店の閉店時間は20時だな。閉店後にもう1度行ってみよう。営業中はラーメン屋の顔をしているだろうが、閉店後は分からんぞ」
高橋:「なるほど」
愛原:「取りあえず、善場主任に報告しておこう」
私は携帯電話を取り出すと、善場主任にメールした。
愛原:「よし。移動しよう。いつまでもここにいたら怪しまれる」
高橋:「分かりました。どこに移動します?」
愛原:「この先に道の駅がある。そこに移動しよう」
高橋:「分かりました」
高橋はエンジンを掛けると、車を走らせた。
そして、駐車場から出た。
リサ:「! 怪しまれてる……」
車が駐車場から出る時、リサは店の方を見た。
プライバシーガラスとなっているリアウィンドウ越しだったから、向こうから見えたかは分からない。
だが、リサは気づいた。
店の方からこちらを見据えている女性店員の姿を。
愛原:「因みにリサ、他の店員達はどうだった?」
車が国道7号線の下り線に出てから私はリサに聞いた。
リサ:「それは多分、普通の人間。先生が話してた店長も」
愛原:「一体、何が目的だ?いくら大繁盛とはいえ、金儲けが目的じゃないだろ、ラーメン屋で」
リサ:「ラーメン屋さんを隠れ蓑にして、白井伝三郎が何かやってる?」
愛原:「なるほど。いい推理だ。実際、俺があの土地のオーナーについて聞こうとしたら邪魔されたわけだしな」
私達は青森県との県境付近にある道の駅“やたて峠”に向かった。
道の駅なら、長時間休憩していても特に怪しまれないからな。
見た限り、厨房にいる店長は30代半ばに見える。
特に変なところは無い。
ラーメン作りに情熱を燃やしている店長といった感じ。
店長:「はい、チャーシュー麺のお客様」
店長が厨房カウンターから直にラーメンを出してくる。
愛原:「はい」
店長:「こちらが味玉トッピングの方です」
リサ:「はい!」
店長:「こちらが辛味噌タンメンですね。お待ちどう様でした」
愛原:「大館の街から大分離れてるのに、大繁盛だね」
店長:「おかげさまで」
愛原:「あえて町中に店を作らず、そこから随分離れた場所に店を構えたこだわりってあるの?」
店長:「いえっ、ちょうど資金面と条件が合ってたんで、たまたまここです。ちょっと不安はありましたけどね、でもお陰様で好評です」
愛原:「そりゃ良かった。じゃあ頂くよ」
私は早速ラーメンに箸をつけた。
確かに味は素晴らしい。
だが、どことなく不思議な味だ。
何か隠し味でも使っていると見た。
愛原:「美味いな。この味なら流行って当然だね」
店長:「ありがとうございます」
愛原:「何か隠し味を使ってそうな感じだけど、何か秘密が?」
店長:「ああ……っと、それは企業秘密です」
愛原:「やっぱりか。スープの味がどことなく独特だよね?」
店長:「さすがですね。ラーメン通の方ですか?」
愛原:「通ではないけど、ラーメンは好きだから。でも、惜しいね。このラーメン食べる為に、わざわざ町から出て来ないとダメなんでしょ?町中に造ったら、行列できるんじゃない?」
店長:「まあ、町中にオープンできれば良かったんですけどねぇ……」
愛原:「この土地や建物も店長がオーナーなの?」
店長:「いえ、違いますけど、どうしてですか?」
愛原:「いや、なかなかこういう所の土地って売ってないだろうなぁと思って」
店長:「まあ、確かに私はオーナーから土地を借りて営業してるんですけども……」
愛原:「あ、やっぱりそうなの。そのオーナーは……」
その時、厨房にいる女性店員がやってきた。
20代半ばくらいで、リサみたいに肩の所で切ったボブヘアだったが、毛先の部分だけ茶色に染まっていた。
女性店員:「お客様、すいません!ちょっと店長は、調理の方に回らないといけなくて……」
愛原:「あ、ああ!そうだったね。ごめん。忙しい時に」
リサ:「……!?」
店長:「申し訳ないです。どうぞごゆっくり」
店長は申し訳無さそうに言うと、厨房の奥に引っ込んでしまった。
高橋:「! リサ、おい!?」
リサはパーカーのフードを被ると、右耳だけ第1形態に戻った。
どうやら、聞き耳を立てているようだ。
リサの耳には、店長達の声が聞こえたらしい。
女性店員:「ちょっとあんた!ベラベラ喋るんじゃないよ!」
店長:「しょうがないだろう。お客さんに話し掛けられちゃ……」
女性店員:「サツのイヌかもしれないんだから、気を付けなよ!」
店長:「分かってるって……」
そして、リサは気づいた。
リサ:「先生、あのね……。あの女の人から、BOWの臭いがする。体臭は誤魔化してるみたいだけど、人食いの臭いがした」
愛原:「何だって!?」
高橋:「リサ・トレヴァーなのか!?」
リサ:「分かんないけど、多分そう」
恐らくはリサの亜種か何かだろう。
しかし、どういうことだ?
他のリサ・トレヴァーは今まで、私達に襲って来る前提でやってきていた。
それがここにいるそいつは、一応はラーメン屋の店員として働いている。
しかも、どうやら裏では店長よりも立場が上のようだ。
やはりこのラーメン屋、何かある。
愛原:「さっさと食べて出よう。後で作戦会議だ」
高橋:「はい」
私達はラーメンを食べ終わると、店を出た。
会計は最初に現れたバイト店員で、あとは店長達が現れることはなかった。
愛原:「やはり秘密が隠されていたラーメン屋だったか」
車に戻る。
高橋:「どうしますか?」
愛原:「多分この土地の名義は、未だ白井兄弟の誰かで間違い無いんだろう。それを店長がラーメン屋を始めるに当たって、この土地を借りたということだ。多分、店舗の建物とかは自分の資金で建てたんだろう。問題は、どうしてこの土地だったのかだ。確かに国道沿いのラーメン屋も流行る時は流行るが、ここまで町から離れた場所というのはリスクが大きいだろう。だったらまだドライブインとしての営業の方がいいわけだ」
もっとも、そのドライブインも廃れて行き、何とか営業している所でもコンビニに商売替えしたりしている。
愛原:「あの店の閉店時間は20時だな。閉店後にもう1度行ってみよう。営業中はラーメン屋の顔をしているだろうが、閉店後は分からんぞ」
高橋:「なるほど」
愛原:「取りあえず、善場主任に報告しておこう」
私は携帯電話を取り出すと、善場主任にメールした。
愛原:「よし。移動しよう。いつまでもここにいたら怪しまれる」
高橋:「分かりました。どこに移動します?」
愛原:「この先に道の駅がある。そこに移動しよう」
高橋:「分かりました」
高橋はエンジンを掛けると、車を走らせた。
そして、駐車場から出た。
リサ:「! 怪しまれてる……」
車が駐車場から出る時、リサは店の方を見た。
プライバシーガラスとなっているリアウィンドウ越しだったから、向こうから見えたかは分からない。
だが、リサは気づいた。
店の方からこちらを見据えている女性店員の姿を。
愛原:「因みにリサ、他の店員達はどうだった?」
車が国道7号線の下り線に出てから私はリサに聞いた。
リサ:「それは多分、普通の人間。先生が話してた店長も」
愛原:「一体、何が目的だ?いくら大繁盛とはいえ、金儲けが目的じゃないだろ、ラーメン屋で」
リサ:「ラーメン屋さんを隠れ蓑にして、白井伝三郎が何かやってる?」
愛原:「なるほど。いい推理だ。実際、俺があの土地のオーナーについて聞こうとしたら邪魔されたわけだしな」
私達は青森県との県境付近にある道の駅“やたて峠”に向かった。
道の駅なら、長時間休憩していても特に怪しまれないからな。