[3月25日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
リサ達の卒業旅行が終わってから、特に私達の周囲では何も無かった。
しかし、どうやら今日、何か進展があるようだ。
何故なら、これから善場主任が来ることになっているからである。
私の方がNPO法人デイライトさんから仕事を貰っている側なのだから、本来なら私の方が出向かなければならないところだ。
しかし、今回にあっては善場主任の方から出向くということだった。
そういう場合は、何か事が進展したということが多い。
善場:「おはようございます」
約束のおよそ5分前に到着した善場主任。
いつものスーツに、ブリーフケースを持っていた。
愛原:「これはこれは、ようこそお越し頂きました。どうぞ、こちらへ」
私は善場主任を出迎えると、すぐに応接室に御案内した。
大企業の応接室にあるような立派なソファとは劣るものの、それでも一応ソファと言えるものは置いてある。
愛原:「どうぞ、お掛けになってください」
善場:「ありがとうございます。失礼します」
善場主任がソファに座ると、すぐに高橋がお茶を持って来た。
本来これは高野君がやってくれていたが、今は高橋がやっている。
善場:「この前のご旅行、お疲れさまでした」
愛原:「いえいえ。おかげさまで、無事に報酬を頂けることができました」
善場:「私が余計な提案をしたばかりに、旅行計画に支障を来させてしまいまして、申し訳ございませんでした」
愛原:「いえ、これは結果論ですから。リサや栗原さん、そして主任の勇猛さに改めて目を見張らせて頂きました」
善場:「皆さんにお怪我が無くて何よりです。これだけは不幸中の幸いでした」
愛原:「主任がハンターを使ったあの爆弾、何て言うんですか?」
善場:「BOWデコイという爆弾です。BSAAが開発したもので、主に知能の低いクリーチャーを一網打尽にする為に開発されました。時限式手榴弾を改造したものなのですが、スイッチを入れると特殊なアラーム音と信号を発します。知能の低いクリーチャーはそれに誘き寄せられ、粗方集まったところで爆発するというものです。2005年のヴェルトロ事件の際、初めて使用されました」
愛原:「確か、クイーンゼノビアとかいう豪華客船を舞台にした事件でしたね」
善場:「そうです。この時はまだハンターには効かないものでしたが、それから改良され、今ではハンターも誘き寄せることができるようになりました」
愛原:「なるほど。でも、リサは誘き寄せられませんでしたね」
善場:「リサ・トレヴァーなど、人間並みの知能を持つBOWには効かないですね。動物程度の知能までです。ただ、手榴弾の規格のものを改造するに留まってしまった為、詰める火薬量が減ってしまったのです。その為、今でしたらゾンビくらいなら本当に一網打尽にできますが、ハンタークラスとなると、それだけでは倒し切れないのが実情です。ですので、あくまでもサブウェポンとしての用途ですね。私の場合、ショットガンを車から出す時間的間合いが欲しかったので使用しました」
なるほど。
確かに爆発に巻き込まれたハンターは、一応それなりの大きなダメージは受けていた。
だが、完全に殺し切れなかった。
その為、後でとどめを刺す必要があった。
愛原:「そうでしたか。でも、便利な爆弾があったものですね。今でもBSAAで使用されてるんですか?」
善場:「恐らくは……。ただ、あまり最近は聞かないですね。リモコン爆弾の使用例はよく聞きますが……」
まあ、予め爆弾を仕掛けておき、そこにクリーチャー達を誘き寄せて爆発させた方が効果的か。
愛原:「それで、ハンター達をあそこに放った犯人は分かりましたか?」
善場:「未だに謎です。が、さすがに“青いアンブレラ”ではありません。聞き込みによりますと、確かにヘリコプターが飛んでいたそうです。そして、そこから何かを落下させたという目撃証言も多数ありました」
愛原:「その何かというのは、ハンターの入っていた檻ですね」
善場:「と、思われます。問題はそのヘリがどこのヘリなのかが分からないということです」
愛原:「ああいうヘリだって、飛行許可とかを取らないといけないわけでしょう?それを取り扱う機関への問い合わせは?」
善場:「しましたが、確認できませんでした。つまり、無許可の飛行です」
愛原:「そんなのすぐにバレるんじゃ?」
善場:「なので、かなり低空で飛んでいたようです。それだとレーダーに引っ掛かりませんから。ただ、いつまでも低空飛行するわけにはいきませんから、あの檻を投下した後で上昇したようですね」
愛原:「その後は?」
善場:「行方不明です。恐らく、どこかに着陸したのだと思われますが」
愛原:「ハンターを搭載していたヘリだから、大きさもそれなりですよね?それでも見つからないと?」
善場:「着陸した後で解体したとも言われています」
愛原:「ええっ?」
善場:「私達はヴェルトロの関係者ではないかと見ています」
愛原:「その2005年にBSAAにケンカ売ったテロ組織……」
善場:「はい。そして今は、白井と組んでいると思われる組織です」
愛原:「目的は、やはりデイライトさんの施設を狙ったものですか」
善場:「それ以外には考えられません。仮に実は愛原所長達の行動を知ってて、それを狙ったものであれば、ハンターしか送らないなんてことは無いはずですから。リサがいますから、タイラントでも対応できないことくらいは知っているはずなので」
日本のタイラントは日本のリサ・トレヴァーの命令を聞くよう、設定されている。
そしてそれを一番使いこなしていたのは『2番』、つまりうちのリサだ。
善場:「いずれにせよ、私達はヘリの正体を追及します。もしかすると、所長に協力をお願いすることもあるかと思いますので、その時は何卒よろしくお願い致します」
愛原:「全幅の信頼、ありがとうございます。その機会がありましたら、是非とも全力でお応えさせて頂きます」
善場:「それで、次の話に移りたいのですが、先般の旅行の件です。私の余計な提案のせいで、結果的に所長方の旅行計画を台無しにしてしまったのは事実です。何でも本来の計画ですと、温泉に行かれる予定だったとか……」
愛原:「まあ、あくまでも漠然とした計画ですが……。実際どこの温泉に行くかまでは決めてなかったのです」
善場:「そうなのですか。しかし、行かれる予定はあったのですね」
愛原:「まあ、一応……」
善場:「分かりました。さすがにもう一度静岡県富士宮というわけには参りませんが、私のツテでよろしければ、1つ御紹介させて頂きたいと存じます」
愛原:「と、仰いますと?」
善場:「日帰り入浴専用なのですが、ちゃんとした温泉施設を1つ知っていまして、私の顔で所長方をご招待できる所がございます。お詫びに、こちらを御紹介させて頂こうかと……これがむしろ今回の大きな用件です」
愛原:「そうだったのですか」
私はとしては全く気にしていない、むしろ無事に帰れたことが大きかった。
しかし善場主任がわざわざこうしてここまで来てくれたのに、硬く固辞して帰ってもらうのも却って申し訳ない気がする。
愛原:「私としては特にその件に関して、大きく気にしていることはないのですが……」
善場:「恐らく、そちらのリサの方がむしろ大きく気にしているのではないでしょうか」
愛原:「うーん……。そんな感じはしないですけどねぇ……」
善場:「私も同じリサ・トレヴァーだった者ですから、何となく分かるのですよ」
愛原:「そうですかね。まあ、せっかくこうしておいで下さったのにお断りするのも何ですから、その温泉施設についてお話を聞かせてください」
善場:「かしこまりました」
善場主任はブリーフケースの中から、1枚のパンフレットを取り出した。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
リサ達の卒業旅行が終わってから、特に私達の周囲では何も無かった。
しかし、どうやら今日、何か進展があるようだ。
何故なら、これから善場主任が来ることになっているからである。
私の方がNPO法人デイライトさんから仕事を貰っている側なのだから、本来なら私の方が出向かなければならないところだ。
しかし、今回にあっては善場主任の方から出向くということだった。
そういう場合は、何か事が進展したということが多い。
善場:「おはようございます」
約束のおよそ5分前に到着した善場主任。
いつものスーツに、ブリーフケースを持っていた。
愛原:「これはこれは、ようこそお越し頂きました。どうぞ、こちらへ」
私は善場主任を出迎えると、すぐに応接室に御案内した。
大企業の応接室にあるような立派なソファとは劣るものの、それでも一応ソファと言えるものは置いてある。
愛原:「どうぞ、お掛けになってください」
善場:「ありがとうございます。失礼します」
善場主任がソファに座ると、すぐに高橋がお茶を持って来た。
本来これは高野君がやってくれていたが、今は高橋がやっている。
善場:「この前のご旅行、お疲れさまでした」
愛原:「いえいえ。おかげさまで、無事に報酬を頂けることができました」
善場:「私が余計な提案をしたばかりに、旅行計画に支障を来させてしまいまして、申し訳ございませんでした」
愛原:「いえ、これは結果論ですから。リサや栗原さん、そして主任の勇猛さに改めて目を見張らせて頂きました」
善場:「皆さんにお怪我が無くて何よりです。これだけは不幸中の幸いでした」
愛原:「主任がハンターを使ったあの爆弾、何て言うんですか?」
善場:「BOWデコイという爆弾です。BSAAが開発したもので、主に知能の低いクリーチャーを一網打尽にする為に開発されました。時限式手榴弾を改造したものなのですが、スイッチを入れると特殊なアラーム音と信号を発します。知能の低いクリーチャーはそれに誘き寄せられ、粗方集まったところで爆発するというものです。2005年のヴェルトロ事件の際、初めて使用されました」
愛原:「確か、クイーンゼノビアとかいう豪華客船を舞台にした事件でしたね」
善場:「そうです。この時はまだハンターには効かないものでしたが、それから改良され、今ではハンターも誘き寄せることができるようになりました」
愛原:「なるほど。でも、リサは誘き寄せられませんでしたね」
善場:「リサ・トレヴァーなど、人間並みの知能を持つBOWには効かないですね。動物程度の知能までです。ただ、手榴弾の規格のものを改造するに留まってしまった為、詰める火薬量が減ってしまったのです。その為、今でしたらゾンビくらいなら本当に一網打尽にできますが、ハンタークラスとなると、それだけでは倒し切れないのが実情です。ですので、あくまでもサブウェポンとしての用途ですね。私の場合、ショットガンを車から出す時間的間合いが欲しかったので使用しました」
なるほど。
確かに爆発に巻き込まれたハンターは、一応それなりの大きなダメージは受けていた。
だが、完全に殺し切れなかった。
その為、後でとどめを刺す必要があった。
愛原:「そうでしたか。でも、便利な爆弾があったものですね。今でもBSAAで使用されてるんですか?」
善場:「恐らくは……。ただ、あまり最近は聞かないですね。リモコン爆弾の使用例はよく聞きますが……」
まあ、予め爆弾を仕掛けておき、そこにクリーチャー達を誘き寄せて爆発させた方が効果的か。
愛原:「それで、ハンター達をあそこに放った犯人は分かりましたか?」
善場:「未だに謎です。が、さすがに“青いアンブレラ”ではありません。聞き込みによりますと、確かにヘリコプターが飛んでいたそうです。そして、そこから何かを落下させたという目撃証言も多数ありました」
愛原:「その何かというのは、ハンターの入っていた檻ですね」
善場:「と、思われます。問題はそのヘリがどこのヘリなのかが分からないということです」
愛原:「ああいうヘリだって、飛行許可とかを取らないといけないわけでしょう?それを取り扱う機関への問い合わせは?」
善場:「しましたが、確認できませんでした。つまり、無許可の飛行です」
愛原:「そんなのすぐにバレるんじゃ?」
善場:「なので、かなり低空で飛んでいたようです。それだとレーダーに引っ掛かりませんから。ただ、いつまでも低空飛行するわけにはいきませんから、あの檻を投下した後で上昇したようですね」
愛原:「その後は?」
善場:「行方不明です。恐らく、どこかに着陸したのだと思われますが」
愛原:「ハンターを搭載していたヘリだから、大きさもそれなりですよね?それでも見つからないと?」
善場:「着陸した後で解体したとも言われています」
愛原:「ええっ?」
善場:「私達はヴェルトロの関係者ではないかと見ています」
愛原:「その2005年にBSAAにケンカ売ったテロ組織……」
善場:「はい。そして今は、白井と組んでいると思われる組織です」
愛原:「目的は、やはりデイライトさんの施設を狙ったものですか」
善場:「それ以外には考えられません。仮に実は愛原所長達の行動を知ってて、それを狙ったものであれば、ハンターしか送らないなんてことは無いはずですから。リサがいますから、タイラントでも対応できないことくらいは知っているはずなので」
日本のタイラントは日本のリサ・トレヴァーの命令を聞くよう、設定されている。
そしてそれを一番使いこなしていたのは『2番』、つまりうちのリサだ。
善場:「いずれにせよ、私達はヘリの正体を追及します。もしかすると、所長に協力をお願いすることもあるかと思いますので、その時は何卒よろしくお願い致します」
愛原:「全幅の信頼、ありがとうございます。その機会がありましたら、是非とも全力でお応えさせて頂きます」
善場:「それで、次の話に移りたいのですが、先般の旅行の件です。私の余計な提案のせいで、結果的に所長方の旅行計画を台無しにしてしまったのは事実です。何でも本来の計画ですと、温泉に行かれる予定だったとか……」
愛原:「まあ、あくまでも漠然とした計画ですが……。実際どこの温泉に行くかまでは決めてなかったのです」
善場:「そうなのですか。しかし、行かれる予定はあったのですね」
愛原:「まあ、一応……」
善場:「分かりました。さすがにもう一度静岡県富士宮というわけには参りませんが、私のツテでよろしければ、1つ御紹介させて頂きたいと存じます」
愛原:「と、仰いますと?」
善場:「日帰り入浴専用なのですが、ちゃんとした温泉施設を1つ知っていまして、私の顔で所長方をご招待できる所がございます。お詫びに、こちらを御紹介させて頂こうかと……これがむしろ今回の大きな用件です」
愛原:「そうだったのですか」
私はとしては全く気にしていない、むしろ無事に帰れたことが大きかった。
しかし善場主任がわざわざこうしてここまで来てくれたのに、硬く固辞して帰ってもらうのも却って申し訳ない気がする。
愛原:「私としては特にその件に関して、大きく気にしていることはないのですが……」
善場:「恐らく、そちらのリサの方がむしろ大きく気にしているのではないでしょうか」
愛原:「うーん……。そんな感じはしないですけどねぇ……」
善場:「私も同じリサ・トレヴァーだった者ですから、何となく分かるのですよ」
愛原:「そうですかね。まあ、せっかくこうしておいで下さったのにお断りするのも何ですから、その温泉施設についてお話を聞かせてください」
善場:「かしこまりました」
善場主任はブリーフケースの中から、1枚のパンフレットを取り出した。