[3月28日19:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
日帰り温泉旅行からの帰り、私達は東京駅構内にあるキッチンストリートにて夕食を取った。
私は天ぷらが食べたかったので、そこの店に入った。
高橋:「サーセン、先生。俺、天ぷらは作れなくて……」
愛原:「いや、いいんだよ」
だから天ぷらは、高橋が近所のスーパーで売っているお惣菜を買って来る。
しかし作り置きされているものだと、なかなかサクサク感が無い。
出来立てを食べるには、やはり店でないとダメなのだ。
夕食を楽しんでいると、リサが言った。
リサ:「サイトーからのLINE。どうしても歯が痛くてガマンできないから、急患で市外の歯医者まで行くって」
高橋:「けっ、軟弱者めが」
愛原:「こらこら、高橋。痛いもんは痛いだろ。空手で鍛えられた精神力でもってさえ痛みに耐えられないなんて、虫歯も進行すると凄いよな」
高橋:「そうなんですよ。俺も少年刑務所時代、虫歯になったことがあるんですが、申請してもなかなか診てもらえなくて大変でしたよ」
愛原:「そうなのか」
高橋:「少年院だった頃はまだマシなんですけどね」
恐らくこれは少年院は『懲罰』よりも『更生』に重きを置いているが故であり、少年刑務所はどちらかというと『懲罰』に重きを置いているからかもしれない。
少年刑務所ではないが、実際に収監中の記録を書いた安部譲二氏の『塀の中の懲りない面々』で、受刑者が治療を申請してもなかなか看てもらえない描写がある。
愛原:「ふむふむ」
高橋:「そういった意味では、シャバの方が全然マシですよ」
愛原:「そりゃそうだろう」
高橋:「俺は先生に拾って頂けて幸せ者です」
リサ:「あ、それは私も」
愛原:「そうなのか。それは嬉しいな。それなら、保護司でもやるか」
高橋:「あ、それはダメです。俺以外のヤツの面倒なんて看てもらっては困ります」
リサ:「私以外のBOWなんか見ないで!」
愛原:「……頭痛ェ」
なんてやりとりのあったのが、先ほどの夕食会。
それが終わった後、私達は駅の外に移動してバスを待っている。
丸の内北口バス停でバスを待っていると、藤野の時とは違い、大型の路線バスがやってきた。
というか、都営バスで大型車以外のバスを見たことがない。
バス会社や乗る場所で、まず前から乗るのか後ろから乗るのかが違うという所が面白い。
同じバス会社でも、都区内なのか都下なのかでも乗り方や運賃体系が違ったりする。
まあ、多くの路線バスが後ろから乗って前から降り、運賃は距離制で後払いってのが多数だろうから、この東京都区内方式が珍しいのかもしれない。
バスに乗り込んで、私は中扉後ろの1人席に座り、リサと高橋がその後ろの2人席に座った。
〔「19時ちょうど発、東20系統、菊川駅前経由、錦糸町駅行き、発車致します」〕
発車の時間になって、バスが走り出した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは日本橋、門前仲町、東京都現代美術館前経由、錦糸町駅行きでございます。次は呉服橋、呉服橋でございます。東京駅日本橋口へおいでのお客様は、こちらが便利です。次は、呉服橋でございます〕
リサ:「ねえ、先生。これ……」
愛原:「ん?」
2人席の窓側に座っているリサが、スマホを前に座っている私の所に突き出してきた。
私が振り向くと……。
リサ:「サイトーが向かった歯医者さん、『白井歯科医院』って言うらしいよ」
愛原:「白井……偶然だな。まあ、白井っていう名字もそんなに珍しくはないからな」
多分、アメリカ人辺りにいる色系の名字の人。
○○・ホワイトさんとかなど、日本の名字にすると、まんま『白井さん』になるんだろうな。
リサ:「サイトーに、『その歯医者さんに、白井伝三郎って知ってるか聞いて』って返信しておくね」
愛原:「そんな余裕あるかなぁ……。明日まで我慢できない痛みの状態でさ」
リサ:「無くても聞かせる。サイトーは私の言う事、何でも聞くから」
愛原:「!」
私はリサのドSぶりに口をあんぐり上げた。
マスクをしているせいで、その様子は周りには見えなかっただろうか。
高橋:「先生、こいつ本当に単独で高校に行かせて大丈夫っスかね?世が世なら、リアル『スケ番刑事』ですよ?」
愛原:「若いのに『スケ番刑事』よく知ってるなぁと思ったらお前、俺と会う前、『CRびっくりぱちんこスケバン刑事』で有り金全部取られたんだって?」
高橋:「そーなんスよ。それでムカついて台ぶん殴ってやったら、いきなりサツが来やがりましてねぇ……」
愛原:「今時負けたくらいで、台ぶん殴るヤツなんてそうそういねーだろ。店員に八つ当たりするヤツはいてもさ」
店員さん、いつも御苦労様です。
昭和時代から平成初期の頃なら、逆に店員に店の裏に連れ込まれて【お察しください】。
愛原:「とにかく、俺の許可無しに1人でパチは禁止。分かったか?」
高橋:「はい。先生やパールと一緒に行きます」
愛原:「霧崎さんもパチンコやるのかよ……」
高橋:「はい。あ、さすがにメイド服ではやらないですよ」
愛原:「当たり前だ!シュール過ぎるわ!」
[同日19:31.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前バス停]
〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営地下鉄新宿線、都営バス、とうきょうスカイツリー、築地方面はお乗り換えでございます。次は、菊川駅前でございます〕
私は降車ボタンを押した。
〔次、止まります。バスが止まるまで、そのままお待ちください〕
〔「お待たせ致しました。菊川駅前です」〕
バスが停留所に停車し、中扉が開いた。
外国のバスだと、中扉もグライドスライドドアであることが多いが、日本のバスだと引き戸が多い。
前扉も最近になって、グライドスライドドアから従来の折り戸に戻る車種が出て来た。
バスを降りてから、まずは実際に地下鉄の出入口のある交差点の方に向かって歩く。
そして交差点に着くと、リサがまたスマホを見て言った。
リサ:「サイトーからのLINE。『白井伝三郎を知っている』って」
愛原:「はあ!?」
高橋:「マジか!?」
リサ:「歯医者さんの名前は白井伝二郎。伝三郎は歯医者さんの弟さんだって」
愛原:「何だそりゃ!?だ、大丈夫なのか、その歯医者さん?」
リサ:「一生懸命治療してくれたらしいけど……」
愛原:「すぐに善場主任に報告だ!一旦、事務所に行くぞ!」
高橋:「はい!」
私達はマンションに帰らず、一旦事務所に行くことにした。
日帰り温泉旅行からの帰り、私達は東京駅構内にあるキッチンストリートにて夕食を取った。
私は天ぷらが食べたかったので、そこの店に入った。
高橋:「サーセン、先生。俺、天ぷらは作れなくて……」
愛原:「いや、いいんだよ」
だから天ぷらは、高橋が近所のスーパーで売っているお惣菜を買って来る。
しかし作り置きされているものだと、なかなかサクサク感が無い。
出来立てを食べるには、やはり店でないとダメなのだ。
夕食を楽しんでいると、リサが言った。
リサ:「サイトーからのLINE。どうしても歯が痛くてガマンできないから、急患で市外の歯医者まで行くって」
高橋:「けっ、軟弱者めが」
愛原:「こらこら、高橋。痛いもんは痛いだろ。空手で鍛えられた精神力でもってさえ痛みに耐えられないなんて、虫歯も進行すると凄いよな」
高橋:「そうなんですよ。俺も少年刑務所時代、虫歯になったことがあるんですが、申請してもなかなか診てもらえなくて大変でしたよ」
愛原:「そうなのか」
高橋:「少年院だった頃はまだマシなんですけどね」
恐らくこれは少年院は『懲罰』よりも『更生』に重きを置いているが故であり、少年刑務所はどちらかというと『懲罰』に重きを置いているからかもしれない。
少年刑務所ではないが、実際に収監中の記録を書いた安部譲二氏の『塀の中の懲りない面々』で、受刑者が治療を申請してもなかなか看てもらえない描写がある。
愛原:「ふむふむ」
高橋:「そういった意味では、シャバの方が全然マシですよ」
愛原:「そりゃそうだろう」
高橋:「俺は先生に拾って頂けて幸せ者です」
リサ:「あ、それは私も」
愛原:「そうなのか。それは嬉しいな。それなら、保護司でもやるか」
高橋:「あ、それはダメです。俺以外のヤツの面倒なんて看てもらっては困ります」
リサ:「私以外のBOWなんか見ないで!」
愛原:「……頭痛ェ」
なんてやりとりのあったのが、先ほどの夕食会。
それが終わった後、私達は駅の外に移動してバスを待っている。
丸の内北口バス停でバスを待っていると、藤野の時とは違い、大型の路線バスがやってきた。
というか、都営バスで大型車以外のバスを見たことがない。
バス会社や乗る場所で、まず前から乗るのか後ろから乗るのかが違うという所が面白い。
同じバス会社でも、都区内なのか都下なのかでも乗り方や運賃体系が違ったりする。
まあ、多くの路線バスが後ろから乗って前から降り、運賃は距離制で後払いってのが多数だろうから、この東京都区内方式が珍しいのかもしれない。
バスに乗り込んで、私は中扉後ろの1人席に座り、リサと高橋がその後ろの2人席に座った。
〔「19時ちょうど発、東20系統、菊川駅前経由、錦糸町駅行き、発車致します」〕
発車の時間になって、バスが走り出した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは日本橋、門前仲町、東京都現代美術館前経由、錦糸町駅行きでございます。次は呉服橋、呉服橋でございます。東京駅日本橋口へおいでのお客様は、こちらが便利です。次は、呉服橋でございます〕
リサ:「ねえ、先生。これ……」
愛原:「ん?」
2人席の窓側に座っているリサが、スマホを前に座っている私の所に突き出してきた。
私が振り向くと……。
リサ:「サイトーが向かった歯医者さん、『白井歯科医院』って言うらしいよ」
愛原:「白井……偶然だな。まあ、白井っていう名字もそんなに珍しくはないからな」
多分、アメリカ人辺りにいる色系の名字の人。
○○・ホワイトさんとかなど、日本の名字にすると、まんま『白井さん』になるんだろうな。
リサ:「サイトーに、『その歯医者さんに、白井伝三郎って知ってるか聞いて』って返信しておくね」
愛原:「そんな余裕あるかなぁ……。明日まで我慢できない痛みの状態でさ」
リサ:「無くても聞かせる。サイトーは私の言う事、何でも聞くから」
愛原:「!」
私はリサのドSぶりに口をあんぐり上げた。
マスクをしているせいで、その様子は周りには見えなかっただろうか。
高橋:「先生、こいつ本当に単独で高校に行かせて大丈夫っスかね?世が世なら、リアル『スケ番刑事』ですよ?」
愛原:「若いのに『スケ番刑事』よく知ってるなぁと思ったらお前、俺と会う前、『CRびっくりぱちんこスケバン刑事』で有り金全部取られたんだって?」
高橋:「そーなんスよ。それでムカついて台ぶん殴ってやったら、いきなりサツが来やがりましてねぇ……」
愛原:「今時負けたくらいで、台ぶん殴るヤツなんてそうそういねーだろ。店員に八つ当たりするヤツはいてもさ」
店員さん、いつも御苦労様です。
昭和時代から平成初期の頃なら、逆に店員に店の裏に連れ込まれて【お察しください】。
愛原:「とにかく、俺の許可無しに1人でパチは禁止。分かったか?」
高橋:「はい。先生やパールと一緒に行きます」
愛原:「霧崎さんもパチンコやるのかよ……」
高橋:「はい。あ、さすがにメイド服ではやらないですよ」
愛原:「当たり前だ!シュール過ぎるわ!」
[同日19:31.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前バス停]
〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営地下鉄新宿線、都営バス、とうきょうスカイツリー、築地方面はお乗り換えでございます。次は、菊川駅前でございます〕
私は降車ボタンを押した。
〔次、止まります。バスが止まるまで、そのままお待ちください〕
〔「お待たせ致しました。菊川駅前です」〕
バスが停留所に停車し、中扉が開いた。
外国のバスだと、中扉もグライドスライドドアであることが多いが、日本のバスだと引き戸が多い。
前扉も最近になって、グライドスライドドアから従来の折り戸に戻る車種が出て来た。
バスを降りてから、まずは実際に地下鉄の出入口のある交差点の方に向かって歩く。
そして交差点に着くと、リサがまたスマホを見て言った。
リサ:「サイトーからのLINE。『白井伝三郎を知っている』って」
愛原:「はあ!?」
高橋:「マジか!?」
リサ:「歯医者さんの名前は白井伝二郎。伝三郎は歯医者さんの弟さんだって」
愛原:「何だそりゃ!?だ、大丈夫なのか、その歯医者さん?」
リサ:「一生懸命治療してくれたらしいけど……」
愛原:「すぐに善場主任に報告だ!一旦、事務所に行くぞ!」
高橋:「はい!」
私達はマンションに帰らず、一旦事務所に行くことにした。