報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「温泉へ行こう」 3

2021-04-09 21:21:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日10:40.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 神奈川中央交通西・藤野駅前バス停→野11系統車内]

 駅前のバス停でバスを待っていると、中型の路線バスがやってきた。
 研修センターの近くを通るバスとは塗装が違う。
 つまり、バス会社が違うのだ。
 前者は神奈川中央交通西、後者は富士急バスである。
 小田急グループのバスと富士急グループのバスがここから発着しているのだ。
 私達はバスに乗り込むと、1番後ろの座席に座った。
 車種は特に当たり障りのない、全国的に見られるものである。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ お待たせ致しました。毎度ご乗車ありがとうございます。この車は藤野11系統、藤野芸術の家経由、やまなみ温泉行きでございます。お降りの方は、お近くのチャイムでお知らせ願います。お知らせが無ければ、通過させて頂きます。【以下略】〕
〔「お待たせ致しました。10時40分発、やまなみ温泉行き、発車致します」〕

 バスにエンジンが掛かり、乗車口の中扉が閉まる。
 因みに放送は発車前から流れていた。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 次は日連大橋、日連大橋でございます〕

 バスは駅前の広場を出ると、丁字路に差し掛かった。
 そこで赤信号で止まる。
 国道20号線(甲州街道)の交差点だ。
 信号が青になり、バスは左に曲がる。
 有名な国道であり、所有も管理も全て国土交通省が行っている最高等級の国道であるのだが、この辺りはどうも線形が悪い。
 道幅は2車線あるのだが、国道だからか、大型トラックなども多く通行する。
 如何にこちらは中型バスとはいえ、すれ違うのにやや苦労させれるのである。
 そこを少し東に走ると、県道76号線に右折して入った。
 こちらは国道とは逆に線形が良いが、大橋という名前の橋があるからだろう。
 どういうことかと言うと、『大橋』という名前は、それまであった旧橋に対して、新橋に付けられることが多い。
 これは旧橋と比べると、道幅も長さも大きくなる為、そういう名前になるのだという。
 つまり、この日連大橋は新橋で、当然前後の道路も新道であり、それで比較的線形が良くなったのだろう。

 愛原:「おお、相模川だ」
 リサ:「おー!」

 リサは自分のスマホを取り出すと、それで車窓の写真を取った。
 コロナ対策で車内の窓は少し開けられており、そこから入って来る風が心なしか気持ち良い。

[同日10:55.天候:晴 同区牧野 やまなみ温泉入口バス停→藤野やまなみ温泉]

 名倉入口というバス停を出ると、道路は一気に狭くなった。
 それまで2車線あった道が、1.5車線くらいになり、センターラインも無くなった。
 さすがにそんな狭い道に大型車は入って来ず、対向車は殆ど乗用車ばかりであったが、それでもすれ違う場所によってはバスの方が一時停止しなくてはならなかった。
 また、途中からフリー乗降区間となった辺り、ローカルなバス路線であるということを感じさせてくれる。

〔「ご乗車ありがとうございました。やまなみ温泉入口です」〕

 窓側に座っているリサに降車ボタンを押してもらい、バス停に止まった所で席を立つ。
 終点のバス停はこれの次なので、恐らく温泉街の中心部としてはこの先なのだろう。
 バス停のポールは私達が降りた側には無く、反対側にあった。
 運転手に聞くと、帰りはそのポール前にバスが止まるという。
 バスを降りたのは、私達3人だけだった。
 前の方の座席に地元民と思しき老人達が乗っていたのだが、彼らは終点まで乗るということだ。
 バスを降りると、バス停の名前の通り、温泉施設の入口であった。
 正確には建物の入口ではなく、駐車場の入口。
 そこへ向かう前に、反対側にあるバス停のポールに向かって、帰りの時刻を確認した。
 どうやらこの先にあるやまなみ温泉バス停は、折り返し場らしい。
 確かにこの道路の狭さからして、普通車ならまだしも、バスは中型サイズであっても、切り返しは難しいだろう。
 また、折り返し場はミニバスターミナルみたいな感じになっており、待合室の他、トイレもあるとのこと。
 そこから折り返してくるそうである。
 それを確認すると、私達は今度こそ温泉施設に向かった。

 愛原:「やっと着いたな」
 高橋:「よくこういう所、知ってるもんですねぇ、あの姉ちゃんは」
 愛原:「だが、あの研修センターと同じ区内だ。情報を握っててもおかしくない」
 高橋:「いや、でもですよ。回数券を融通してくるなんて、絶対常連ですよ」
 愛原:「ま、確かにこの辺は怪しい」

 しかも何故か回数券は3時間券であった。
 1日券ではない。

 愛原:「すいません、3時間過ぎるとどうるなんですか?」
 従業員:「延長料金は1時間につき100円です。3時間を過ぎると、時間に関係無く300円が追加されます」

 すると延長3時間越えで、実質的な1日料金となるわけだ。
 最初から1日券を売らないのは、コロナ対策による人数制限の為らしい。
 つまり回転を良くして、実質的な人数制限をしようということだろう。
 ただ、延長が認められるということは、【お察しください】。

 愛原:「それじゃリサ、またな」
 リサ:「混浴は無いの?」
 愛原:「無い無い」
 高橋:「さあ、先生。行きましょう」

 私達は男湯の脱衣場に入った。

 愛原:「うん、今度こそ本物の温泉だ」

 私は脱衣場内にある温泉の効能を見て頷いた。

 愛原:「塩化物・硫酸塩泉か。いいねぇ」
 高橋:「黄色く濁ってて異様な臭いのする温泉ですか?」
 愛原:「硫黄泉じゃないぞ。てか、黄色く濁ってんの?」

 確かに硫黄を固形化すると黄色いらしいが……。
 とにかく、私達は大浴場に入った。
 露天風呂もあり、そこが狙い目だ。
 だがその前に、体を洗わなくてはならない。

 高橋:「先生!この不肖高橋が、先生のお背中を流してご覧に入れます!」 

 高橋がナチス式敬礼をしながら私に言った。
 私はアドルフ・ヒトラーか。

 愛原:「分かった。頼むよ」

 私は固辞せず、素直に頼むことにした。
 ヘタに断ったら、今度はどんな頼み方してくるか分からん。
 そしてそれは、周囲に失笑をもたらすものなのだ。
コメント (2)
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