報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「デイライトの施設」

2021-04-02 20:28:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月21日11:00.天候:晴 静岡県富士宮市某所 NPO法人デイライト秘密施設]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は善場主任の誘いで、市内にあるデイライトが管理しているという施設にやってきた。
 外観は廃業した町工場のような佇まいだ。
 しかしそれは偽装である。
 廃業している割には、電気は生きている。
 通用口のような所から中に入ると、そこはまだ廃工場のままだった。
 善場主任曰く、元々は本当に民間の工場だったのが廃業し、しばらく放置されていたものを、デイライトが買い取ったものらしい。

 善場:「薄暗いですから気をつけて」

 善場主任は外から差し込む陽の光を頼りに、工場の奥に進む。

 栗原愛里:「何か出そう……」

 そして突き当りまで行くと、エレベーターがあった。
 荷物用のエレベーターだった。
 扉は手動式で、フェンスを折り畳んで開閉するタイプだった。
 善場主任が電源を入れると、ランプが点いた。

 善場:「これで地下まで行きます」
 リサ:「……!」

 リサはその時、エレベーターの横に置かれている大型のゲージを見逃さなかった。
 人1人が入れるほどの大きさのゲージ。
 日本アンブレラでは、正しくその大きさのBOWを入れて運ぶのに使用していた。
 しかし、ここはデイライトの施設であって、アンブレラの施設ではないはずだ。

 善場:「では、行きます」

 善場主任は全員が乗ると、手動でフェンスを閉め、ボタンを押した。
 荷物用のエレベーターなので、下りる速度はゆっくりである。

 愛原:「この下は一体どうなっているんですか?」
 善場:「リサ・トレヴァーの先輩から、後輩への激励をしようというのですよ」
 愛原:「えっ?」

 しばらくして、エレベーターが地下階に到着する。
 そこは地上の廃工場と違って、いきなり近代的な造りになっていた。
 雰囲気的には研究所と変わらない。
 それをリサも感じ取ったのだろう。
 自分にとっては嫌な思い出しか無い研究所のような雰囲気の場所に、顔色が悪くなっていった。

 愛原:「まるで研究所のような造りですね?」
 善場:「そう思いますか?でもまあ、似たようなものです。ここは表向きには医療施設になっているのですよ」
 愛原:「医療施設。何のですか?」
 善場:「日本版リサ・トレヴァーのです」
 高橋:「他にもリサ・トレヴァーがいるのか!?」
 善場:「もしかしたら、ね。でも、今は捕獲している個体はいません」
 愛原:「なるほど。今の主任の言葉で分かりました。これは、あれですね。もしもデイライトさんやBSAA辺りがリサ・トレヴァーを生け捕りにしたら、ここに収容する為の施設なんですね?」
 善場:「概ね正解です。お気づきだと思いますが、私やそこのリサ以外のリサ・トレヴァーは、既に食人していました。なので、殺処分せざるを得ませんでした。そして、確認できる限り、リサ・トレヴァー本種は私やそこのリサを除いて全て殺処分しています。もし今後現れるとしたら、それは所詮亜種に過ぎません」
 高橋:「『220番』だか何だかが宮城にいたが、それのことか」
 善場:「はい。もしも食人はまだしておらず、しかし今後その危険性が高い個体を確保できたら、そうならないよう改造する施設なのです」
 愛原:「『牙を抜く』施設ですか……」
 善場:「そうです。だからもし、そこのリサが暴走し、食人はまだしていない状態で確保できたら、ここに収容するわけです」
 高橋:「だけど姉ちゃん、この施設はもうすぐ閉鎖するんだろ?確かに今のリサは先生の言う事聞いてるが、何かの拍子に暴走する可能性が無いわけじゃねェ。本当に潰していいのか?」
 善場:「さすがにここは東京から遠いですから、もっと近くにあってもいいのではないと思います。正直、あの藤野の施設を利用してもいいと思っています」
 愛原:「あ、なるほど。他にあるのか」
 善場:「はい」

 施設内を色々見せてもらったが、大きな印象としては精神病棟のように見えた。
 精神病棟を、もっと刑務所寄りにしたような感じ……という表現が合っているのかどうか分からないが。
 中にはまるで、健康診断でもするのかというような設備まであった。

 愛原:「何か健康診断するみたい」
 善場:「そうですね。身体検査とかすることもありますので、その設備はあります」

 因みにスタッフは非常勤である為、実際にここにリサ・トレヴァーまたは似たようなBOWが収容されないと来ないとのこと。
 他には手術台みたいなものもあったが、BOWから人間に戻す逆改造もここで行われるのだろうか。

 リサ:「気持ち悪い……。もう出たい……」

 リサは私の腕に掴まってそう言った。

 善場:「そう。こんな所、来たくないでしょう?こんな所に入れられたくなかったら、愛原所長や高橋助手の言う事はちゃんと聞くのよ?」
 リサ:「分かった。分かったから……」
 高橋:「それが言いたかっただけかよ」
 善場:「口で言うのは簡単だからね。実際にここに入った私が、実際の場所に連れて来て話した方が説得力もあると思ったのよ」
 愛原:「え?善場主任、ここに入ったことがあるんですか?」
 善場:「もっとも私の場合は、人間に戻る治療の為ですけどね。私の場合は荒療治もいい所でして、本当にトラウマものですよ。だけど私は、人間に戻れて良かったと思います」
 愛原:「それじゃリサが今は人間に戻れないというのは……?」
 善場:「技術的に言えばウソになります。私と同じ苦痛を伴うもので良ければ、すぐにでもできます。でも、私はオススメしません。私は一刻も早く人間に戻りたかったというのもありますし、リサ・トレヴァー『12番』に改造されてから日も浅かったので、その方法を受け入れました。そこのリサはリサ・トレヴァーになってから何年も経って、体内のウィルスは私の時より深く体に馴染んだでしょう。日が浅かった私でさえ、体内にGウィルスが残ってしまって、それが形を変えて体に馴染んでしまいました。リサの場合、慌てて今改造手術をすると、却って大変なことになると私は思うのです。必ずそこのリサに合った人間に戻れる方法があるはずです。それが見つかるまでは、まだそれをしない方がいいと思います」
 愛原:「なるほど……」
 高橋:「ぶっちゃけ、白井をブッ殺すまでは、BOWの力は残しといた方がいいかもな」
 蓮華:「私は……人を襲わなければいいと思う。ただ、気をつけて。私の一族の中には、私よりもっと過激な思想を持つ人がいるから、その人には見つからないように」

 BSAAや“青いアンブレラ”の他に、個人レベルでBOWを倒す人達がいるということだ。
 もっとも、この場合、たまたまリサが鬼の姿をするものだから、それで狙われるということでもあるか。

 善場:「では、そろそろ戻りましょう」
 愛原:「設備的にはまだまだ使えそうなものばかりなのに、何だか勿体ないですね」
 善場:「あ、もちろん、他で使えそうなものがあったら、それを搬出してからですよ」
 愛原:「あ、何だ」

 私達は再びエレベーターに戻った。
 途中、火災報知器を模した非常ボタンが至る所にあったが、多分これはリサがこの施設内で暴走した時に押すものなんだろうなと思った。
 押したらどうなるのかはまでは聞かなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「旅行2日目」

2021-04-02 16:13:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月21日08:00.天候:晴 静岡県富士宮市 かめや旅館]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今朝は7時に起きると、朝風呂に入りに行った。
 今日は天気が良く、やっと富士山の頂上が見えている。

 高橋:「先生、昨日の東北の地震、御実家は大丈夫でしたか?」

 再び高橋に背中を流してもらっていると、高橋がそんなことを言ってきた。

 愛原:「ああ。うちは大丈夫らしいよ。公一伯父さんの所もだ」
 高橋:「それは良かったですね」
 愛原:「まあ確かに、ここ最近、東北地方の地震が多いような気がする」
 高橋:「ですね」
 愛原:「今回の旅行先、東北って候補もあったんだが、東海にして良かったな。栗原さんのおかげだ」
 高橋:「ああ、この旅行、あの剣道JKのネタでしたか」
 愛原:「実はそうなんだ。まあ、この旅館は斉藤社長から優待券をもらったものなんだけどね」

 そんなことを話しながら、もう風呂場で歯磨きやら髭剃りやらを行う。
 部屋には洗面所が無いので、風呂場でやるのが王道だ。
 風呂から出ると、今度は朝食。
 昨夜の夕食会場に行く。
 すると同じ席に、再び『愛原様』という札が掛かっていた。

 愛原:「ここだここだ」

 朝食はアジの開きを焼いた定食だったが、ここでもリサはその魚をバリボリと骨ごと食べている。
 まあ、カルシウムの摂取には事欠かないか。

 愛原:「今朝のリサはよく食うなぁ……」
 栗原蓮華:「何でも昨夜、鬼に変化したらしいですよ」
 愛原:「なに、そうなのか?」
 リサ:「ちょっとね」

 リサはあえて武勇伝を語ろうとはしなかった。

 愛原:「今日は善場主任が迎えに来てくれます。市内にあるデイライトさんの施設を見学させて頂く予定です」

 私は今日の予定を皆に話した。

 愛原:「10時に出発するので、それまでに準備をしておいてください」
 リサ:「はーい」

[同日10:00.同市内 同旅館→デイライト施設]

 10時にチェックアウトを済ませると、善場主任が迎えに来た。

 善場:「おはようございます。それでは約束通り、施設へご案内します。どうぞ、乗ってください」

 旅館の外には黒塗りのアルファードが止まっていた。
 運転は善場主任の部下である男性職員である。
 日曜日だというのに、2人ともスーツを着ていた。
 国家公務員で事務職ではないのだから、土日とかは関係の無い仕事だというのは分かる。
 私も民間ながら探偵業者で、依頼内容によっては土日祝日を潰すことだって多々ある。
 現に、今がそうだ。

 愛原:「ありがとうございます」

 大きな荷物を後ろに乗せ、私達は車に乗り込んだ。

 善場:「それでは出発します」

 主任が合図をすると、部下の職員は頷いて車を走らせた。
 車のナンバーが『品川』になっているところを見ると、東京から車で来たのだろうか。

 愛原:「現場はここから近いんですか?」
 善場:「そうですね。そんなに町から離れているというわけではないです」

 車は国道139号線に出る。
 町一番の幹線道路ということもあり、道は多くの車が行き交っていた。

 善場:「所長方は、この辺りを覚えてらっしゃいますか?」
 愛原:「ああ。確か、この辺でハンターとかを乗せたトラックが事故を起こして、乗っていたハンターが脱走して大暴れしたんじゃなかったでしたっけ」
 善場:「正解です。しかしその事故は、故意に起こされたものでした。もちろん、関係者からの証言を得られたわけではありませんが、それを裏付ける場所があるのです」

 車は突然路地に入った。
 信号も無いような細い道である。
 一方通行というわけではなく、当然ながら路地から国道へ出ようとすると、『止まれ』の標識があった。
 そこを少し行くと、古びた町工場があった。
 まるで廃業したかのような佇まいである。
 しかし門は固く閉ざされており、『私有地につき、立入禁止』と書かれていた。
 しかも、善場主任がリモコンを取り出すと、その門が電動で開いたのである。
 車が門の中に入ると、門扉はまた自動で閉まった。

 愛原:「何ですか、ここは?」
 善場:「まもなく閉鎖されるデイライトの施設です」
 高橋:「ただの廃工場だろうが」
 善場:「もちろん、これはただの目くらましです」

 廃工場だから、当然建物の見た目は朽ちている。
 だが、よくよく見ると不自然な所もあった。
 本当の廃墟なら窓ガラスが割れていたり、シャッターが壊れていたりするものだが、それらは全く壊れていない。
 しかも、車を降りて近づいてみると、ガラスやシャッターは古そうに見えて、わざとそういう風に見える工夫を凝らしただけの比較的新しいものだというのが分かった。
 シャッターが錆びているように見えるのも、そういう塗装なのである。
 よく見ると防犯カメラも付いていて、しっかり稼働中のランプも点いていた。

 善場:「ここに気づいたハンターが一匹侵入しまして、暴れてくれましてね。侵入を試みようとしたのか、窓ガラスやシャッターが壊されました。すぐにBSAAが来てそのハンターは射殺してくれたのですが、修理するまでの間、隠蔽工作が大変でしたよ。でも、“青いアンブレラ”には気づかれなかったようで良かったです」
 愛原:「そうか。あの時、“青いアンブレラ”もいましたね」

 表向きにはBSAAの応援依頼で駆け付けた民間軍事会社として。
 活動内容も、あくまで民間業者として、国連機関であるBSAAの後方支援任務に当たるだけという触れ込みであった。
 具体的には民間人の被害状況の報告や避難誘導、ハンターなどのBOWを発見次第BSAAに通報すること、それが間に合わず民間に被害が出そうな時は特別に攻撃が許されていた。
 人命最優先の観点からすれば、それは致し方無いと思う。
 日本の地方警察では、国連軍の一派が出動するような事態には対処できないだろう。

 善場:「しかし実際には、デイライトの施設を探るという裏任務も帯びていたというのが私達の見解です」
 高橋:「……先生。あの場には、アネゴはいませんでしたよね?」
 愛原:「うう……」
 善場:「民間軍事会社というのは、何も戦争のお手伝いというだけでなく、諜報のお手伝いもすることがあるのです。高野芽衣子は、むしろそっちの部門に所属していたものと見られています」
 愛原:「それで、私達には中を見せてくれるんですよね?」
 善場:「ええ。所長達にお見せした後、この施設は閉鎖されます。そして、来年度からはデイライトの書類からこの施設が消えることになります」
 愛原:「一体、何があるのでしょうか?」
 善場:「それは入ってからのお楽しみです。あえてヒントを言いますと、リサ・トレヴァーに関連するものです」
 愛原:「リサに?」

 私はリサを見た。
 リサはきょとんしていた。
 そして善場主任はカードキーを取り出すと、通用口らしきドアの横にある古びたボックスを開け、しかしその中にある機械は新しい見た目であるが、そこにカードキーを読み取らせた。
 そしてドアロックが解除される音がすると、古びたドアを開けた。

 善場:「どうぞ、こちらです」
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