[3月21日11:00.天候:晴 静岡県富士宮市某所 NPO法人デイライト秘密施設]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は善場主任の誘いで、市内にあるデイライトが管理しているという施設にやってきた。
外観は廃業した町工場のような佇まいだ。
しかしそれは偽装である。
廃業している割には、電気は生きている。
通用口のような所から中に入ると、そこはまだ廃工場のままだった。
善場主任曰く、元々は本当に民間の工場だったのが廃業し、しばらく放置されていたものを、デイライトが買い取ったものらしい。
善場:「薄暗いですから気をつけて」
善場主任は外から差し込む陽の光を頼りに、工場の奥に進む。
栗原愛里:「何か出そう……」
そして突き当りまで行くと、エレベーターがあった。
荷物用のエレベーターだった。
扉は手動式で、フェンスを折り畳んで開閉するタイプだった。
善場主任が電源を入れると、ランプが点いた。
善場:「これで地下まで行きます」
リサ:「……!」
リサはその時、エレベーターの横に置かれている大型のゲージを見逃さなかった。
人1人が入れるほどの大きさのゲージ。
日本アンブレラでは、正しくその大きさのBOWを入れて運ぶのに使用していた。
しかし、ここはデイライトの施設であって、アンブレラの施設ではないはずだ。
善場:「では、行きます」
善場主任は全員が乗ると、手動でフェンスを閉め、ボタンを押した。
荷物用のエレベーターなので、下りる速度はゆっくりである。
愛原:「この下は一体どうなっているんですか?」
善場:「リサ・トレヴァーの先輩から、後輩への激励をしようというのですよ」
愛原:「えっ?」
しばらくして、エレベーターが地下階に到着する。
そこは地上の廃工場と違って、いきなり近代的な造りになっていた。
雰囲気的には研究所と変わらない。
それをリサも感じ取ったのだろう。
自分にとっては嫌な思い出しか無い研究所のような雰囲気の場所に、顔色が悪くなっていった。
愛原:「まるで研究所のような造りですね?」
善場:「そう思いますか?でもまあ、似たようなものです。ここは表向きには医療施設になっているのですよ」
愛原:「医療施設。何のですか?」
善場:「日本版リサ・トレヴァーのです」
高橋:「他にもリサ・トレヴァーがいるのか!?」
善場:「もしかしたら、ね。でも、今は捕獲している個体はいません」
愛原:「なるほど。今の主任の言葉で分かりました。これは、あれですね。もしもデイライトさんやBSAA辺りがリサ・トレヴァーを生け捕りにしたら、ここに収容する為の施設なんですね?」
善場:「概ね正解です。お気づきだと思いますが、私やそこのリサ以外のリサ・トレヴァーは、既に食人していました。なので、殺処分せざるを得ませんでした。そして、確認できる限り、リサ・トレヴァー本種は私やそこのリサを除いて全て殺処分しています。もし今後現れるとしたら、それは所詮亜種に過ぎません」
高橋:「『220番』だか何だかが宮城にいたが、それのことか」
善場:「はい。もしも食人はまだしておらず、しかし今後その危険性が高い個体を確保できたら、そうならないよう改造する施設なのです」
愛原:「『牙を抜く』施設ですか……」
善場:「そうです。だからもし、そこのリサが暴走し、食人はまだしていない状態で確保できたら、ここに収容するわけです」
高橋:「だけど姉ちゃん、この施設はもうすぐ閉鎖するんだろ?確かに今のリサは先生の言う事聞いてるが、何かの拍子に暴走する可能性が無いわけじゃねェ。本当に潰していいのか?」
善場:「さすがにここは東京から遠いですから、もっと近くにあってもいいのではないと思います。正直、あの藤野の施設を利用してもいいと思っています」
愛原:「あ、なるほど。他にあるのか」
善場:「はい」
施設内を色々見せてもらったが、大きな印象としては精神病棟のように見えた。
精神病棟を、もっと刑務所寄りにしたような感じ……という表現が合っているのかどうか分からないが。
中にはまるで、健康診断でもするのかというような設備まであった。
愛原:「何か健康診断するみたい」
善場:「そうですね。身体検査とかすることもありますので、その設備はあります」
因みにスタッフは非常勤である為、実際にここにリサ・トレヴァーまたは似たようなBOWが収容されないと来ないとのこと。
他には手術台みたいなものもあったが、BOWから人間に戻す逆改造もここで行われるのだろうか。
リサ:「気持ち悪い……。もう出たい……」
リサは私の腕に掴まってそう言った。
善場:「そう。こんな所、来たくないでしょう?こんな所に入れられたくなかったら、愛原所長や高橋助手の言う事はちゃんと聞くのよ?」
リサ:「分かった。分かったから……」
高橋:「それが言いたかっただけかよ」
善場:「口で言うのは簡単だからね。実際にここに入った私が、実際の場所に連れて来て話した方が説得力もあると思ったのよ」
愛原:「え?善場主任、ここに入ったことがあるんですか?」
善場:「もっとも私の場合は、人間に戻る治療の為ですけどね。私の場合は荒療治もいい所でして、本当にトラウマものですよ。だけど私は、人間に戻れて良かったと思います」
愛原:「それじゃリサが今は人間に戻れないというのは……?」
善場:「技術的に言えばウソになります。私と同じ苦痛を伴うもので良ければ、すぐにでもできます。でも、私はオススメしません。私は一刻も早く人間に戻りたかったというのもありますし、リサ・トレヴァー『12番』に改造されてから日も浅かったので、その方法を受け入れました。そこのリサはリサ・トレヴァーになってから何年も経って、体内のウィルスは私の時より深く体に馴染んだでしょう。日が浅かった私でさえ、体内にGウィルスが残ってしまって、それが形を変えて体に馴染んでしまいました。リサの場合、慌てて今改造手術をすると、却って大変なことになると私は思うのです。必ずそこのリサに合った人間に戻れる方法があるはずです。それが見つかるまでは、まだそれをしない方がいいと思います」
愛原:「なるほど……」
高橋:「ぶっちゃけ、白井をブッ殺すまでは、BOWの力は残しといた方がいいかもな」
蓮華:「私は……人を襲わなければいいと思う。ただ、気をつけて。私の一族の中には、私よりもっと過激な思想を持つ人がいるから、その人には見つからないように」
BSAAや“青いアンブレラ”の他に、個人レベルでBOWを倒す人達がいるということだ。
もっとも、この場合、たまたまリサが鬼の姿をするものだから、それで狙われるということでもあるか。
善場:「では、そろそろ戻りましょう」
愛原:「設備的にはまだまだ使えそうなものばかりなのに、何だか勿体ないですね」
善場:「あ、もちろん、他で使えそうなものがあったら、それを搬出してからですよ」
愛原:「あ、何だ」
私達は再びエレベーターに戻った。
途中、火災報知器を模した非常ボタンが至る所にあったが、多分これはリサがこの施設内で暴走した時に押すものなんだろうなと思った。
押したらどうなるのかはまでは聞かなかった。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は善場主任の誘いで、市内にあるデイライトが管理しているという施設にやってきた。
外観は廃業した町工場のような佇まいだ。
しかしそれは偽装である。
廃業している割には、電気は生きている。
通用口のような所から中に入ると、そこはまだ廃工場のままだった。
善場主任曰く、元々は本当に民間の工場だったのが廃業し、しばらく放置されていたものを、デイライトが買い取ったものらしい。
善場:「薄暗いですから気をつけて」
善場主任は外から差し込む陽の光を頼りに、工場の奥に進む。
栗原愛里:「何か出そう……」
そして突き当りまで行くと、エレベーターがあった。
荷物用のエレベーターだった。
扉は手動式で、フェンスを折り畳んで開閉するタイプだった。
善場主任が電源を入れると、ランプが点いた。
善場:「これで地下まで行きます」
リサ:「……!」
リサはその時、エレベーターの横に置かれている大型のゲージを見逃さなかった。
人1人が入れるほどの大きさのゲージ。
日本アンブレラでは、正しくその大きさのBOWを入れて運ぶのに使用していた。
しかし、ここはデイライトの施設であって、アンブレラの施設ではないはずだ。
善場:「では、行きます」
善場主任は全員が乗ると、手動でフェンスを閉め、ボタンを押した。
荷物用のエレベーターなので、下りる速度はゆっくりである。
愛原:「この下は一体どうなっているんですか?」
善場:「リサ・トレヴァーの先輩から、後輩への激励をしようというのですよ」
愛原:「えっ?」
しばらくして、エレベーターが地下階に到着する。
そこは地上の廃工場と違って、いきなり近代的な造りになっていた。
雰囲気的には研究所と変わらない。
それをリサも感じ取ったのだろう。
自分にとっては嫌な思い出しか無い研究所のような雰囲気の場所に、顔色が悪くなっていった。
愛原:「まるで研究所のような造りですね?」
善場:「そう思いますか?でもまあ、似たようなものです。ここは表向きには医療施設になっているのですよ」
愛原:「医療施設。何のですか?」
善場:「日本版リサ・トレヴァーのです」
高橋:「他にもリサ・トレヴァーがいるのか!?」
善場:「もしかしたら、ね。でも、今は捕獲している個体はいません」
愛原:「なるほど。今の主任の言葉で分かりました。これは、あれですね。もしもデイライトさんやBSAA辺りがリサ・トレヴァーを生け捕りにしたら、ここに収容する為の施設なんですね?」
善場:「概ね正解です。お気づきだと思いますが、私やそこのリサ以外のリサ・トレヴァーは、既に食人していました。なので、殺処分せざるを得ませんでした。そして、確認できる限り、リサ・トレヴァー本種は私やそこのリサを除いて全て殺処分しています。もし今後現れるとしたら、それは所詮亜種に過ぎません」
高橋:「『220番』だか何だかが宮城にいたが、それのことか」
善場:「はい。もしも食人はまだしておらず、しかし今後その危険性が高い個体を確保できたら、そうならないよう改造する施設なのです」
愛原:「『牙を抜く』施設ですか……」
善場:「そうです。だからもし、そこのリサが暴走し、食人はまだしていない状態で確保できたら、ここに収容するわけです」
高橋:「だけど姉ちゃん、この施設はもうすぐ閉鎖するんだろ?確かに今のリサは先生の言う事聞いてるが、何かの拍子に暴走する可能性が無いわけじゃねェ。本当に潰していいのか?」
善場:「さすがにここは東京から遠いですから、もっと近くにあってもいいのではないと思います。正直、あの藤野の施設を利用してもいいと思っています」
愛原:「あ、なるほど。他にあるのか」
善場:「はい」
施設内を色々見せてもらったが、大きな印象としては精神病棟のように見えた。
精神病棟を、もっと刑務所寄りにしたような感じ……という表現が合っているのかどうか分からないが。
中にはまるで、健康診断でもするのかというような設備まであった。
愛原:「何か健康診断するみたい」
善場:「そうですね。身体検査とかすることもありますので、その設備はあります」
因みにスタッフは非常勤である為、実際にここにリサ・トレヴァーまたは似たようなBOWが収容されないと来ないとのこと。
他には手術台みたいなものもあったが、BOWから人間に戻す逆改造もここで行われるのだろうか。
リサ:「気持ち悪い……。もう出たい……」
リサは私の腕に掴まってそう言った。
善場:「そう。こんな所、来たくないでしょう?こんな所に入れられたくなかったら、愛原所長や高橋助手の言う事はちゃんと聞くのよ?」
リサ:「分かった。分かったから……」
高橋:「それが言いたかっただけかよ」
善場:「口で言うのは簡単だからね。実際にここに入った私が、実際の場所に連れて来て話した方が説得力もあると思ったのよ」
愛原:「え?善場主任、ここに入ったことがあるんですか?」
善場:「もっとも私の場合は、人間に戻る治療の為ですけどね。私の場合は荒療治もいい所でして、本当にトラウマものですよ。だけど私は、人間に戻れて良かったと思います」
愛原:「それじゃリサが今は人間に戻れないというのは……?」
善場:「技術的に言えばウソになります。私と同じ苦痛を伴うもので良ければ、すぐにでもできます。でも、私はオススメしません。私は一刻も早く人間に戻りたかったというのもありますし、リサ・トレヴァー『12番』に改造されてから日も浅かったので、その方法を受け入れました。そこのリサはリサ・トレヴァーになってから何年も経って、体内のウィルスは私の時より深く体に馴染んだでしょう。日が浅かった私でさえ、体内にGウィルスが残ってしまって、それが形を変えて体に馴染んでしまいました。リサの場合、慌てて今改造手術をすると、却って大変なことになると私は思うのです。必ずそこのリサに合った人間に戻れる方法があるはずです。それが見つかるまでは、まだそれをしない方がいいと思います」
愛原:「なるほど……」
高橋:「ぶっちゃけ、白井をブッ殺すまでは、BOWの力は残しといた方がいいかもな」
蓮華:「私は……人を襲わなければいいと思う。ただ、気をつけて。私の一族の中には、私よりもっと過激な思想を持つ人がいるから、その人には見つからないように」
BSAAや“青いアンブレラ”の他に、個人レベルでBOWを倒す人達がいるということだ。
もっとも、この場合、たまたまリサが鬼の姿をするものだから、それで狙われるということでもあるか。
善場:「では、そろそろ戻りましょう」
愛原:「設備的にはまだまだ使えそうなものばかりなのに、何だか勿体ないですね」
善場:「あ、もちろん、他で使えそうなものがあったら、それを搬出してからですよ」
愛原:「あ、何だ」
私達は再びエレベーターに戻った。
途中、火災報知器を模した非常ボタンが至る所にあったが、多分これはリサがこの施設内で暴走した時に押すものなんだろうなと思った。
押したらどうなるのかはまでは聞かなかった。