報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「大空へ飛ぶ」 

2021-04-18 20:51:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日09:20.天候:晴 東京都大田区羽田空港 全日本空輸719便機内]

 私達はいよいよ機上の人となった。
 自動改札機を通る所は、鉄道の駅と変わらない。
 便名と座席番号だけ書かれた半券だけを手に、機内への通路を渡った。
 通路の窓から見える機体は当然ジェット機ではあったが、地方のローカル空港に向かうということもあって、あまり大きな機体ではなかった。
 間違い無く200人は乗れないだろう。
 実際に乗り込んでみると、通路が中央に1つあり、その両側にエコノミークラスは一部を除いて3人席が並んでいるだけの大きさだった。
 比較的後ろの方の、進行方向左側の席が3人並んで確保されていた。
 いくらコロナ禍とはいえ、在校生はまだ春休みだろうに、あまり飛行機が賑わっていないのは気になった。
 リサの学校では、在校生の始業式は5日だそうである。
 当然入学生のリサ達は始業式には参加せず、その日は入学オリエンテーションがあるらしい。
 本格的な授業は6日からということかな。

 愛原:「リサは窓側な」
 リサ:「はーい」

 リサは喜んでホイホイと窓側に座った。
 まだ15歳のリサは喜んで座るだろうが、これも善場主任引いてはBSAAからの通達。
 乗り物はなるべく窓側に座らせるようにとのことだ。
 恐らく、外から狙撃しやすいようにする為だろう。
 座席も『窓側』が無い通勤電車みたいなロングシートは除くし、船舶も座席ではない場合は除くのだろう。
 八丈島に行った時みたいに。
 私は真ん中の席に座り、高橋は通路側に座った。

 高橋:「ぶっちゃけ狭いっスね」
 愛原:「エコノミーなんだからしょうがない」

 それにしても、旧国鉄特急の普通車910mmよりも狭い。
 基本的に国内線のエコノミークラスのシートピッチは、790mmらしい(航空会社や機材によってそれ以上の場合もあり。あくまでも最低基準)。
 恐らく、貸切観光バスのシートピッチもそれくらいではなかろうか。
 因みに最新の新幹線車両の普通車で1040mm、旧型は980mmである。
 東京近郊を走る中距離電車のグリーン車で970mm。
 航空機材だとエコノミークラスの1つ上のプレミアムエコノミーで、ようやく中距離電車のグリーン車或いは在来線特急の普通車並みであるという。
 ……私はカネが無いうちは、飛行機に乗れそうに無い。

 高橋:「片道どのくらいですか?」
 愛原:「1時間10分だってさ」
 高橋:「まじっスか」

 長身180cmの高橋には、エコノミーは窮屈だろうな。
 もっとも、足元は空いているので、そこに足を通すことはできるが。
 リサは座席の網ポケットにあるヘッドホンを取り出すと、それで音楽を聴き始めた。

 リサ:「このヘッドホン、持ち帰りできるの?」
 愛原:「いや、それはダメだ」

 リサはあまり音楽を聴かないようなイメージだが、学校に通うようになってから変わったのかもしれない。

 愛原:「おっと。シートベルトを締めなきゃな」

 私は腰ベルト式のシートベルトを締めた。
 リサも締めようとするが、私は気づいてしまった。
 リサのお腹が少しポッコリしていることを。

 愛原:「リサ、少し太ったんじゃないか?お腹ポッコリだぞ?」

 私はポッコリしている所を指で突いて言った。
 リサがビクンと反応した。

 リサ:「きゃはっ♪……ちょ、ちょっとここ最近は変化してなかったからだよぉ……。変化したら、またスリムになるよぅ……」
 愛原:「本当か?最近また食う量が増えてるからな」
 リサ:「春休みで太るコとか他にもいるみたいだよ。また学校が始まったら大丈夫だよ」

 リサは少し慌てた様子で答えた。
 どうやら脂肪がついたことは、リサも気づいてはいたらしい。
 そういえばここ最近、リサは家でも変化していなかった。
 本来はあえて人間に化けている第0形態より、第1形態でいる方が落ち着くので、家ではその形態でいた。
 しかし、『人間に戻る訓練』と称して、リサは家でもあえて第0形態のままでいた。
 こっちの方が精神力は使うが、しかし体力は使わないので、その分エネルギーの消費量が少ないのだ。

 リサ:「今夜、ちょっとだけ戻ってみるね。この程度なら、元の姿に戻るだけでエネルギーは使うはず」
 愛原:「ああ、分かったよ」

 CA達がハットラックのハッチが閉まっているかどうかを確認する。
 そして、各乗客のシートベルト使用状況も確認した。

 高橋:「スッチー、大変ですよね。離着陸の時、逆向きに座るんですよ」
 愛原:「ああ、そうだな。こういうのにも慣れる訓練を積むんだろう」

 ようやく飛行機が動き出した。
 機内にはBGMが流れている。
 チャンネルを合わせれば、そのBGMをヘッドホンからも聴ける。
 リサが何のチャンネルを聴いているかは分からない。
 私だったら、大空へ飛ぶというイメージで、壮大なクラシックでも聴きたいところだ。
 しかしそこへ放送が入ったりすると、BGMは遮断されてしまう。
 また、当たり前と言えば当たり前なのだが、滑走路に向かうまでの間、機内で安全講習ビデオが流れる。
 もちろんその際もBGMは遮断され、それが流れるのである。

 愛原:「おっと、スマホを機内モードにしないとな」

 私はスマホを取り出して、機内モードにした。

 高橋:「機内モードにしちゃうと、知り合いからのLINEが届かなくなります」
 愛原:「しょうがないだろ。どっちみち、飛行機ん中じゃ何もできないし。今現在はまだ回答は来ていないんだな?」
 高橋:「そうなんです。着いてみて、まだ来てなかったら煽りますンで」
 愛原:「煽らなくてもいいけど、ちょっと確認はして欲しいな」
 高橋:「了解です」

 そして飛行機は大きなエンジンを立てると共に、急加速した。

 愛原:「この重圧、たまらんね!」
 高橋:「車じゃ体験できないっス!」
 愛原:「そりゃそうだ!」

 そして離陸。

 愛原:「飛行機に乗り慣れてないと、手に汗握るな」
 高橋:「自分で運転してる分にはいいんでしょうがね」
 愛原:「そりゃそうだ」
 リサ:(≧▽≦)/

 しばらくして重圧が無くなり、飛行機は水平飛行に入ったようだ。
 ポーン♪とチャイムが鳴り、シートベルト着用サインが消灯する。

 愛原:「一気に上がったっぽいな」
 高橋:「そうですね」

 因みに機内のモニターには、機外カメラの映像が映し出されていて、それで離陸するまでの様子を観ることができる。
 但し、それで機内安全講習ビデオが流されるので、その間は観ることはできない。
 離陸した後は、これからの航路を紹介する映像に変わった。
 そして、CA達が飲み物を配り始める。
 尚、プレミアムクラスでは機内食が出るらしいが、それはリサには内緒。
 絶対、自分も食べたがるだろう。

 スッチーCA:「失礼します。お飲み物は何になさいますか?」
 愛原:「おっ、ありがたい。私はホットコーヒーで」
 高橋:「じゃあ、俺も」
 愛原:「リサは?」
 リサ:「アップルジュース」

 ビーフコンソメスープもあるので、それにするかなと思ったが、意外だった。

 CA:「ごゆっくりどうぞ」

 私はCAからコーヒーを受け取ると、早速シュガーを入れた。

 愛原:「意外だな。リサはビーフコンソメスープにするかと思ったのに」
 リサ:「たまにはこういうサッパリ系にしないと、さすがにお腹がもたれるよ」

 肉食一辺倒のBOWも、胃のもたれとかはあるんだな。
 モニタには現地の天気予報が流れた。
 向こうも基本的には晴天らしい。
 ただ、所によっては雨が降るかもしれないとのこと。
 山の方かもしれないな。
 私はコーヒーをテーブルの上に置くと、網ポケットから読み物を取り出した。
コメント
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