[4月3日09:20.天候:晴 東京都大田区羽田空港 全日本空輸719便機内]
私達はいよいよ機上の人となった。
自動改札機を通る所は、鉄道の駅と変わらない。
便名と座席番号だけ書かれた半券だけを手に、機内への通路を渡った。
通路の窓から見える機体は当然ジェット機ではあったが、地方のローカル空港に向かうということもあって、あまり大きな機体ではなかった。
間違い無く200人は乗れないだろう。
実際に乗り込んでみると、通路が中央に1つあり、その両側にエコノミークラスは一部を除いて3人席が並んでいるだけの大きさだった。
比較的後ろの方の、進行方向左側の席が3人並んで確保されていた。
いくらコロナ禍とはいえ、在校生はまだ春休みだろうに、あまり飛行機が賑わっていないのは気になった。
リサの学校では、在校生の始業式は5日だそうである。
当然入学生のリサ達は始業式には参加せず、その日は入学オリエンテーションがあるらしい。
本格的な授業は6日からということかな。
愛原:「リサは窓側な」
リサ:「はーい」
リサは喜んでホイホイと窓側に座った。
まだ15歳のリサは喜んで座るだろうが、これも善場主任引いてはBSAAからの通達。
乗り物はなるべく窓側に座らせるようにとのことだ。
恐らく、外から狙撃しやすいようにする為だろう。
座席も『窓側』が無い通勤電車みたいなロングシートは除くし、船舶も座席ではない場合は除くのだろう。
八丈島に行った時みたいに。
私は真ん中の席に座り、高橋は通路側に座った。
高橋:「ぶっちゃけ狭いっスね」
愛原:「エコノミーなんだからしょうがない」
それにしても、旧国鉄特急の普通車910mmよりも狭い。
基本的に国内線のエコノミークラスのシートピッチは、790mmらしい(航空会社や機材によってそれ以上の場合もあり。あくまでも最低基準)。
恐らく、貸切観光バスのシートピッチもそれくらいではなかろうか。
因みに最新の新幹線車両の普通車で1040mm、旧型は980mmである。
東京近郊を走る中距離電車のグリーン車で970mm。
航空機材だとエコノミークラスの1つ上のプレミアムエコノミーで、ようやく中距離電車のグリーン車或いは在来線特急の普通車並みであるという。
……私はカネが無いうちは、飛行機に乗れそうに無い。
高橋:「片道どのくらいですか?」
愛原:「1時間10分だってさ」
高橋:「まじっスか」
長身180cmの高橋には、エコノミーは窮屈だろうな。
もっとも、足元は空いているので、そこに足を通すことはできるが。
リサは座席の網ポケットにあるヘッドホンを取り出すと、それで音楽を聴き始めた。
リサ:「このヘッドホン、持ち帰りできるの?」
愛原:「いや、それはダメだ」
リサはあまり音楽を聴かないようなイメージだが、学校に通うようになってから変わったのかもしれない。
愛原:「おっと。シートベルトを締めなきゃな」
私は腰ベルト式のシートベルトを締めた。
リサも締めようとするが、私は気づいてしまった。
リサのお腹が少しポッコリしていることを。
愛原:「リサ、少し太ったんじゃないか?お腹ポッコリだぞ?」
私はポッコリしている所を指で突いて言った。
リサがビクンと反応した。
リサ:「きゃはっ♪……ちょ、ちょっとここ最近は変化してなかったからだよぉ……。変化したら、またスリムになるよぅ……」
愛原:「本当か?最近また食う量が増えてるからな」
リサ:「春休みで太るコとか他にもいるみたいだよ。また学校が始まったら大丈夫だよ」
リサは少し慌てた様子で答えた。
どうやら脂肪がついたことは、リサも気づいてはいたらしい。
そういえばここ最近、リサは家でも変化していなかった。
本来はあえて人間に化けている第0形態より、第1形態でいる方が落ち着くので、家ではその形態でいた。
しかし、『人間に戻る訓練』と称して、リサは家でもあえて第0形態のままでいた。
こっちの方が精神力は使うが、しかし体力は使わないので、その分エネルギーの消費量が少ないのだ。
リサ:「今夜、ちょっとだけ戻ってみるね。この程度なら、元の姿に戻るだけでエネルギーは使うはず」
愛原:「ああ、分かったよ」
CA達がハットラックのハッチが閉まっているかどうかを確認する。
そして、各乗客のシートベルト使用状況も確認した。
高橋:「スッチー、大変ですよね。離着陸の時、逆向きに座るんですよ」
愛原:「ああ、そうだな。こういうのにも慣れる訓練を積むんだろう」
ようやく飛行機が動き出した。
機内にはBGMが流れている。
チャンネルを合わせれば、そのBGMをヘッドホンからも聴ける。
リサが何のチャンネルを聴いているかは分からない。
私だったら、大空へ飛ぶというイメージで、壮大なクラシックでも聴きたいところだ。
しかしそこへ放送が入ったりすると、BGMは遮断されてしまう。
また、当たり前と言えば当たり前なのだが、滑走路に向かうまでの間、機内で安全講習ビデオが流れる。
もちろんその際もBGMは遮断され、それが流れるのである。
愛原:「おっと、スマホを機内モードにしないとな」
私はスマホを取り出して、機内モードにした。
高橋:「機内モードにしちゃうと、知り合いからのLINEが届かなくなります」
愛原:「しょうがないだろ。どっちみち、飛行機ん中じゃ何もできないし。今現在はまだ回答は来ていないんだな?」
高橋:「そうなんです。着いてみて、まだ来てなかったら煽りますンで」
愛原:「煽らなくてもいいけど、ちょっと確認はして欲しいな」
高橋:「了解です」
そして飛行機は大きなエンジンを立てると共に、急加速した。
愛原:「この重圧、たまらんね!」
高橋:「車じゃ体験できないっス!」
愛原:「そりゃそうだ!」
そして離陸。
愛原:「飛行機に乗り慣れてないと、手に汗握るな」
高橋:「自分で運転してる分にはいいんでしょうがね」
愛原:「そりゃそうだ」
リサ:(≧▽≦)/
しばらくして重圧が無くなり、飛行機は水平飛行に入ったようだ。
ポーン♪とチャイムが鳴り、シートベルト着用サインが消灯する。
愛原:「一気に上がったっぽいな」
高橋:「そうですね」
因みに機内のモニターには、機外カメラの映像が映し出されていて、それで離陸するまでの様子を観ることができる。
但し、それで機内安全講習ビデオが流されるので、その間は観ることはできない。
離陸した後は、これからの航路を紹介する映像に変わった。
そして、CA達が飲み物を配り始める。
尚、プレミアムクラスでは機内食が出るらしいが、それはリサには内緒。
絶対、自分も食べたがるだろう。
スッチーCA:「失礼します。お飲み物は何になさいますか?」
愛原:「おっ、ありがたい。私はホットコーヒーで」
高橋:「じゃあ、俺も」
愛原:「リサは?」
リサ:「アップルジュース」
ビーフコンソメスープもあるので、それにするかなと思ったが、意外だった。
CA:「ごゆっくりどうぞ」
私はCAからコーヒーを受け取ると、早速シュガーを入れた。
愛原:「意外だな。リサはビーフコンソメスープにするかと思ったのに」
リサ:「たまにはこういうサッパリ系にしないと、さすがにお腹がもたれるよ」
肉食一辺倒のBOWも、胃のもたれとかはあるんだな。
モニタには現地の天気予報が流れた。
向こうも基本的には晴天らしい。
ただ、所によっては雨が降るかもしれないとのこと。
山の方かもしれないな。
私はコーヒーをテーブルの上に置くと、網ポケットから読み物を取り出した。
私達はいよいよ機上の人となった。
自動改札機を通る所は、鉄道の駅と変わらない。
便名と座席番号だけ書かれた半券だけを手に、機内への通路を渡った。
通路の窓から見える機体は当然ジェット機ではあったが、地方のローカル空港に向かうということもあって、あまり大きな機体ではなかった。
間違い無く200人は乗れないだろう。
実際に乗り込んでみると、通路が中央に1つあり、その両側にエコノミークラスは一部を除いて3人席が並んでいるだけの大きさだった。
比較的後ろの方の、進行方向左側の席が3人並んで確保されていた。
いくらコロナ禍とはいえ、在校生はまだ春休みだろうに、あまり飛行機が賑わっていないのは気になった。
リサの学校では、在校生の始業式は5日だそうである。
当然入学生のリサ達は始業式には参加せず、その日は入学オリエンテーションがあるらしい。
本格的な授業は6日からということかな。
愛原:「リサは窓側な」
リサ:「はーい」
リサは喜んでホイホイと窓側に座った。
まだ15歳のリサは喜んで座るだろうが、これも善場主任引いてはBSAAからの通達。
乗り物はなるべく窓側に座らせるようにとのことだ。
恐らく、外から狙撃しやすいようにする為だろう。
座席も『窓側』が無い通勤電車みたいなロングシートは除くし、船舶も座席ではない場合は除くのだろう。
八丈島に行った時みたいに。
私は真ん中の席に座り、高橋は通路側に座った。
高橋:「ぶっちゃけ狭いっスね」
愛原:「エコノミーなんだからしょうがない」
それにしても、旧国鉄特急の普通車910mmよりも狭い。
基本的に国内線のエコノミークラスのシートピッチは、790mmらしい(航空会社や機材によってそれ以上の場合もあり。あくまでも最低基準)。
恐らく、貸切観光バスのシートピッチもそれくらいではなかろうか。
因みに最新の新幹線車両の普通車で1040mm、旧型は980mmである。
東京近郊を走る中距離電車のグリーン車で970mm。
航空機材だとエコノミークラスの1つ上のプレミアムエコノミーで、ようやく中距離電車のグリーン車或いは在来線特急の普通車並みであるという。
……私はカネが無いうちは、飛行機に乗れそうに無い。
高橋:「片道どのくらいですか?」
愛原:「1時間10分だってさ」
高橋:「まじっスか」
長身180cmの高橋には、エコノミーは窮屈だろうな。
もっとも、足元は空いているので、そこに足を通すことはできるが。
リサは座席の網ポケットにあるヘッドホンを取り出すと、それで音楽を聴き始めた。
リサ:「このヘッドホン、持ち帰りできるの?」
愛原:「いや、それはダメだ」
リサはあまり音楽を聴かないようなイメージだが、学校に通うようになってから変わったのかもしれない。
愛原:「おっと。シートベルトを締めなきゃな」
私は腰ベルト式のシートベルトを締めた。
リサも締めようとするが、私は気づいてしまった。
リサのお腹が少しポッコリしていることを。
愛原:「リサ、少し太ったんじゃないか?お腹ポッコリだぞ?」
私はポッコリしている所を指で突いて言った。
リサがビクンと反応した。
リサ:「きゃはっ♪……ちょ、ちょっとここ最近は変化してなかったからだよぉ……。変化したら、またスリムになるよぅ……」
愛原:「本当か?最近また食う量が増えてるからな」
リサ:「春休みで太るコとか他にもいるみたいだよ。また学校が始まったら大丈夫だよ」
リサは少し慌てた様子で答えた。
どうやら脂肪がついたことは、リサも気づいてはいたらしい。
そういえばここ最近、リサは家でも変化していなかった。
本来はあえて人間に化けている第0形態より、第1形態でいる方が落ち着くので、家ではその形態でいた。
しかし、『人間に戻る訓練』と称して、リサは家でもあえて第0形態のままでいた。
こっちの方が精神力は使うが、しかし体力は使わないので、その分エネルギーの消費量が少ないのだ。
リサ:「今夜、ちょっとだけ戻ってみるね。この程度なら、元の姿に戻るだけでエネルギーは使うはず」
愛原:「ああ、分かったよ」
CA達がハットラックのハッチが閉まっているかどうかを確認する。
そして、各乗客のシートベルト使用状況も確認した。
高橋:「スッチー、大変ですよね。離着陸の時、逆向きに座るんですよ」
愛原:「ああ、そうだな。こういうのにも慣れる訓練を積むんだろう」
ようやく飛行機が動き出した。
機内にはBGMが流れている。
チャンネルを合わせれば、そのBGMをヘッドホンからも聴ける。
リサが何のチャンネルを聴いているかは分からない。
私だったら、大空へ飛ぶというイメージで、壮大なクラシックでも聴きたいところだ。
しかしそこへ放送が入ったりすると、BGMは遮断されてしまう。
また、当たり前と言えば当たり前なのだが、滑走路に向かうまでの間、機内で安全講習ビデオが流れる。
もちろんその際もBGMは遮断され、それが流れるのである。
愛原:「おっと、スマホを機内モードにしないとな」
私はスマホを取り出して、機内モードにした。
高橋:「機内モードにしちゃうと、知り合いからのLINEが届かなくなります」
愛原:「しょうがないだろ。どっちみち、飛行機ん中じゃ何もできないし。今現在はまだ回答は来ていないんだな?」
高橋:「そうなんです。着いてみて、まだ来てなかったら煽りますンで」
愛原:「煽らなくてもいいけど、ちょっと確認はして欲しいな」
高橋:「了解です」
そして飛行機は大きなエンジンを立てると共に、急加速した。
愛原:「この重圧、たまらんね!」
高橋:「車じゃ体験できないっス!」
愛原:「そりゃそうだ!」
そして離陸。
愛原:「飛行機に乗り慣れてないと、手に汗握るな」
高橋:「自分で運転してる分にはいいんでしょうがね」
愛原:「そりゃそうだ」
リサ:(≧▽≦)/
しばらくして重圧が無くなり、飛行機は水平飛行に入ったようだ。
ポーン♪とチャイムが鳴り、シートベルト着用サインが消灯する。
愛原:「一気に上がったっぽいな」
高橋:「そうですね」
因みに機内のモニターには、機外カメラの映像が映し出されていて、それで離陸するまでの様子を観ることができる。
但し、それで機内安全講習ビデオが流されるので、その間は観ることはできない。
離陸した後は、これからの航路を紹介する映像に変わった。
そして、CA達が飲み物を配り始める。
尚、プレミアムクラスでは機内食が出るらしいが、それはリサには内緒。
絶対、自分も食べたがるだろう。
愛原:「おっ、ありがたい。私はホットコーヒーで」
高橋:「じゃあ、俺も」
愛原:「リサは?」
リサ:「アップルジュース」
ビーフコンソメスープもあるので、それにするかなと思ったが、意外だった。
CA:「ごゆっくりどうぞ」
私はCAからコーヒーを受け取ると、早速シュガーを入れた。
愛原:「意外だな。リサはビーフコンソメスープにするかと思ったのに」
リサ:「たまにはこういうサッパリ系にしないと、さすがにお腹がもたれるよ」
肉食一辺倒のBOWも、胃のもたれとかはあるんだな。
モニタには現地の天気予報が流れた。
向こうも基本的には晴天らしい。
ただ、所によっては雨が降るかもしれないとのこと。
山の方かもしれないな。
私はコーヒーをテーブルの上に置くと、網ポケットから読み物を取り出した。