報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「国道7号線のラーメン屋さん」 2

2021-04-20 20:10:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月3日12:30.天候:晴 秋田県大館市某所 スーパーラーメンショップ]

 見た限り、厨房にいる店長は30代半ばに見える。
 特に変なところは無い。
 ラーメン作りに情熱を燃やしている店長といった感じ。

 店長:「はい、チャーシュー麺のお客様」

 店長が厨房カウンターから直にラーメンを出してくる。

 愛原:「はい」
 店長:「こちらが味玉トッピングの方です」
 リサ:「はい!」
 店長:「こちらが辛味噌タンメンですね。お待ちどう様でした」
 愛原:「大館の街から大分離れてるのに、大繁盛だね」
 店長:「おかげさまで」
 愛原:「あえて町中に店を作らず、そこから随分離れた場所に店を構えたこだわりってあるの?」
 店長:「いえっ、ちょうど資金面と条件が合ってたんで、たまたまここです。ちょっと不安はありましたけどね、でもお陰様で好評です」
 愛原:「そりゃ良かった。じゃあ頂くよ」

 私は早速ラーメンに箸をつけた。
 確かに味は素晴らしい。
 だが、どことなく不思議な味だ。
 何か隠し味でも使っていると見た。

 愛原:「美味いな。この味なら流行って当然だね」
 店長:「ありがとうございます」
 愛原:「何か隠し味を使ってそうな感じだけど、何か秘密が?」
 店長:「ああ……っと、それは企業秘密です」
 愛原:「やっぱりか。スープの味がどことなく独特だよね?」
 店長:「さすがですね。ラーメン通の方ですか?」
 愛原:「通ではないけど、ラーメンは好きだから。でも、惜しいね。このラーメン食べる為に、わざわざ町から出て来ないとダメなんでしょ?町中に造ったら、行列できるんじゃない?」
 店長:「まあ、町中にオープンできれば良かったんですけどねぇ……」
 愛原:「この土地や建物も店長がオーナーなの?」
 店長:「いえ、違いますけど、どうしてですか?」
 愛原:「いや、なかなかこういう所の土地って売ってないだろうなぁと思って」
 店長:「まあ、確かに私はオーナーから土地を借りて営業してるんですけども……」
 愛原:「あ、やっぱりそうなの。そのオーナーは……」

 その時、厨房にいる女性店員がやってきた。
 20代半ばくらいで、リサみたいに肩の所で切ったボブヘアだったが、毛先の部分だけ茶色に染まっていた。

 女性店員:「お客様、すいません!ちょっと店長は、調理の方に回らないといけなくて……」
 愛原:「あ、ああ!そうだったね。ごめん。忙しい時に」
 リサ:「……!?」
 店長:「申し訳ないです。どうぞごゆっくり」

 店長は申し訳無さそうに言うと、厨房の奥に引っ込んでしまった。

 高橋:「! リサ、おい!?」

 リサはパーカーのフードを被ると、右耳だけ第1形態に戻った。
 どうやら、聞き耳を立てているようだ。
 リサの耳には、店長達の声が聞こえたらしい。

 女性店員:「ちょっとあんた!ベラベラ喋るんじゃないよ!」
 店長:「しょうがないだろう。お客さんに話し掛けられちゃ……」
 女性店員:「サツのイヌかもしれないんだから、気を付けなよ!」
 店長:「分かってるって……」

 そして、リサは気づいた。

 リサ:「先生、あのね……。あの女の人から、BOWの臭いがする。体臭は誤魔化してるみたいだけど、人食いの臭いがした」
 愛原:「何だって!?」
 高橋:「リサ・トレヴァーなのか!?」
 リサ:「分かんないけど、多分そう」

 恐らくはリサの亜種か何かだろう。
 しかし、どういうことだ?
 他のリサ・トレヴァーは今まで、私達に襲って来る前提でやってきていた。
 それがここにいるそいつは、一応はラーメン屋の店員として働いている。
 しかも、どうやら裏では店長よりも立場が上のようだ。
 やはりこのラーメン屋、何かある。

 愛原:「さっさと食べて出よう。後で作戦会議だ」
 高橋:「はい」

 私達はラーメンを食べ終わると、店を出た。
 会計は最初に現れたバイト店員で、あとは店長達が現れることはなかった。

 愛原:「やはり秘密が隠されていたラーメン屋だったか」

 車に戻る。

 高橋:「どうしますか?」
 愛原:「多分この土地の名義は、未だ白井兄弟の誰かで間違い無いんだろう。それを店長がラーメン屋を始めるに当たって、この土地を借りたということだ。多分、店舗の建物とかは自分の資金で建てたんだろう。問題は、どうしてこの土地だったのかだ。確かに国道沿いのラーメン屋も流行る時は流行るが、ここまで町から離れた場所というのはリスクが大きいだろう。だったらまだドライブインとしての営業の方がいいわけだ」

 もっとも、そのドライブインも廃れて行き、何とか営業している所でもコンビニに商売替えしたりしている。

 愛原:「あの店の閉店時間は20時だな。閉店後にもう1度行ってみよう。営業中はラーメン屋の顔をしているだろうが、閉店後は分からんぞ」
 高橋:「なるほど」
 愛原:「取りあえず、善場主任に報告しておこう」

 私は携帯電話を取り出すと、善場主任にメールした。

 愛原:「よし。移動しよう。いつまでもここにいたら怪しまれる」
 高橋:「分かりました。どこに移動します?」
 愛原:「この先に道の駅がある。そこに移動しよう」
 高橋:「分かりました」

 高橋はエンジンを掛けると、車を走らせた。
 そして、駐車場から出た。

 リサ:「! 怪しまれてる……」

 車が駐車場から出る時、リサは店の方を見た。
 プライバシーガラスとなっているリアウィンドウ越しだったから、向こうから見えたかは分からない。
 だが、リサは気づいた。
 店の方からこちらを見据えている女性店員の姿を。

 愛原:「因みにリサ、他の店員達はどうだった?」

 車が国道7号線の下り線に出てから私はリサに聞いた。

 リサ:「それは多分、普通の人間。先生が話してた店長も」
 愛原:「一体、何が目的だ?いくら大繁盛とはいえ、金儲けが目的じゃないだろ、ラーメン屋で」
 リサ:「ラーメン屋さんを隠れ蓑にして、白井伝三郎が何かやってる?」
 愛原:「なるほど。いい推理だ。実際、俺があの土地のオーナーについて聞こうとしたら邪魔されたわけだしな」

 私達は青森県との県境付近にある道の駅“やたて峠”に向かった。
 道の駅なら、長時間休憩していても特に怪しまれないからな。

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