報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「Stay Home週間」 2

2020-04-26 11:31:16 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月25日09:50.天候:晴 長野県長野市 JR長野駅新幹線乗り場→北陸新幹線556E列車]

 屋敷のある白馬村から県内移動の特急バスで長野駅までやってきた魔道士達。
 駅前も閑散としている。

 稲生:「思っていたよりも、随分寂しくなったものです」
 イリーナ:「厳戒態勢ね。もっとも、ロシアのそれと比べたら随分とユルユルだけど」
 マリア:「それは言えてます」

 マリアも一瞬、『元・共産主義国と一緒にしてやらないでください』と言いたかったが、イギリスよりも緩い態勢なので言わないでおいた。

 マリア:「店も閉まってる」
 稲生:「NEWDAYSは辛うじて開いてますね。因みに情報では、車内販売も一斉休業中です」
 ミク人形:「ファッ!?」
 ハク人形:「ファッ!?」
 稲生:「もしアイス食べたかったら、今のうちにNEWDAYSで買っておいた方がいいですよ」
 マリア:「その方が良さそうだ」
 稲生:「飲み物くらいなら、ホームの自販機くらい稼働しているでしょうけどねぇ……」
 マリア:「飲み物も確保しておいた方が良さそうだ」
 稲生:「……ですね」
 イリーナ:「♪」
 マリア:「師匠、昼間っから酒はダメですよ!」
 イリーナ:「ええ~?」

 イリーナ、ミニサイズのワインを手に取っていた。

 マリア:「だいたい、いつも寝てるじゃないですか?」
 イリーナ:「さっきバスの中で寝たから、少し眠気が覚めたのよ」
 マリア:「だからって、酒は……」
 ポテンヒット:「はい、外人の姉ちゃん達、ちょっとゴメンよ~、ヒック。やっぱ旅のお供には酒だよなぁ、あぁ?ビールにワンカップに“鬼殺し”っと……ヒック」
 イリーナ:☞
 マリア:「あ、あれは日本人ですから!」
 稲生:「マリアさん、そろそろ急がないと列車が出てしまいます」
 マリア:「あー、もう!自己責任でお願いしますよ!」
 イリーナ:「やった!」

 飲み物やら食べ物やら購入して、それから新幹線ホームに向かった。

〔13番線に9時55分発、“かがやき”506号、東京行きが12両編成で参ります。この電車は大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは12号車、グリーン車は11号車、自由席は……〕

 ホームに出ると、上り副線には“はくたか”が停車していた。
 稲生達が乗るのは、こちらの方である。
 バスの遅延などを懸念して、少し余裕を持たせたのであるが、杞憂であったようだ。

 稲生:「それでは先生はグリーン車へどうぞ」
 イリーナ:「はいよ。一人寂しくやってるよ。いつもの通り、大宮で降りるのね」
 稲生:「いえ、違います。上野です」
 イリーナ:「あ……」
 マリア:「師匠。勇太の御両親は都内で仮住まいだって言ってたじゃないですか」
 イリーナ:「そうだったわね」
 稲生:「乗車券が『東京都区内』ですから」

 長距離キップの時、東京都区部のJR駅ならどこで最終的な出場をしても良いという乗車券。
 中距離だと『東京山手線内』になり、山手線とその内側にある中央線の駅ならどこで出場しても良い。

 マリア:「あっちもガラガラだ」

 上り本線にやってきた速達列車。
 新幹線は速達列車ほど混雑する傾向があるが、それでさえ車内を見ると数えるほどの乗客しかいなかった。
 最速達の“かがやき”でさえその有様なのだから、それより遅い“はくたか”にあっては……。

 稲生:「本当にグリーン車誰もいない……」
 イリーナ:「寝るには静かでいいかもねぇ……」

 その隣の普通車に乗る稲生とマリアは……。

 稲生:「2人……いや、3人……かな」
 マリア:「ルーシーに、『新幹線、ほぼ貸し切りなう』って水晶玉でツイートしておくか」
 稲生:「『ユーロスター、完全貸し切りなう』って返されますよ、きっと」
 マリア:「そもそも今、運行してるの、あれ?」
 稲生:「分かりません」

 2人は指定された2人席に腰かけた。
 人形達の入ったバッグは荷棚に置く。
 バッグの中に入れてても人形達は勝手に中から出て来て、直接荷棚の上に寝そべったり、座り込んだりするのだ。

[同日09:59.天候:晴 JR北陸新幹線556E列車10号車内(イリーナは11号車)]

〔14番線から、“はくたか”556号、東京行きが発車致します。次は、上田に止まります。黄色い線の内側まで、お下がりください〕

 発車メロディとして、長野県民歌“信濃の国”が流れる。
 それから客終合図の甲高いブザーが鳴って、車両のドアが閉まった。
 因みに長野駅新幹線ホームには、ホームドアが無い。
 仙台駅と同じ、全列車が停車するという理由で設置されていないそうだ。

 稲生:「取りあえず、母さんに無事に列車に乗ったというメールだけしておきます」
 マリア:「うん」

 マリアは頷きながら紅茶の入ったペットボトルの蓋を開けた。
 列車が走り出すと同時に、稲生はスマホを操作する。

 ミク人形:「アイス美味しー」
 ハク人形:「アイス美味しー」

 今やシンカンセンカタイアイスは希少物か。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も北陸新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、“はくたか”号、東京行きです。次は、上田に止まります。……〕
〔Ladies & Gentlemen.Welcome aboard the Hokuriku Shinkansen.This is the Hakutaka superexpress bound for Tokyo...〕

 稲生:「それにしても、こんなガラガラの光景は珍しいですよ」
 マリア:「今のうちかもね」
 稲生:「今回の旅行の目的、何もうちの両親の見舞いと再建中の実家の視察だけじゃないんでしょう?」
 マリア:「ワンスターホテルへの宿泊を許可したということは、だ。魔界に行って、何か『クエスト』でもして来いってことだろ」
 稲生:「クエスト。達成できるかなぁ?」
 マリア:「できなかったら、『追試』か『補習』かな」
 稲生:「何とか頑張ります」

 稲生は大きく頷いた。

 マリア:「まあ、魔界に行っていきなり『クエスト達成しろ』なんてことはないだろう。アナスタシア組じゃあるまいし。その辺はのんびりできるところが、うちの組のいい所かな」
 稲生:「助かります」

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2020-04-26 12:49:21
 タイトルにもある通り、『Stay Home週間』です。
 普通の人間の我々は、家にいましょう。
 今現在登場している人物達は魔道士なので、特別なのです。
 この話はあくまでも、主要登場人物達が人外同然の存在であることから成り立つものです。
 けして、『Stay Home週間』に反発するものではありません。
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