[5月11日時刻不明 天候:雨 宮城県仙台市青葉区→山形県東根市 旧・関山トンネル]
(稲生の一人称です)
今、バスはどこを走っているのだろう?
車体や窓ガラスを叩く雨の音がするから、地上のどこかを走っているのは間違い無いと思うけど。
車内はまるで回送のように、照明が灯っていない。
だから、車内に入る光と言えば街灯や他の車のヘッドライトくらいだ。
それでも僕は慌てる気持ちは起きなかったし、他の2人も全く落ち着いていた。
その理由は分からない。
ただ、僕の場合は……。
僕の場合は、マリアさんに膝枕してもらっているからなのかも。
マリアさんは黒いストッキングをはいているから、生足の感触は味わえないけど、だからこそマリアさんはしてくれたのかもしれない。
僕は、このままこのバスがもっとしばらく走っていて欲しいとさえ思った。
それにしても、マリアさんも変わった。
今でも僕以外の男性には触れられたくないらしいけど、最初は当然ながら僕もその対象だった。
それがやっと手を繫げるようになり、今ではこうして膝枕(ストッキング越しだけど)。
欧米の人に、こういう習慣があるのかは分からない。
だけど、もし無かったとしたら、もしかしたら威吹が教えてくれたのかも。
今、僕達はバスの1番後ろの長い席にいる。
僕は、座席の上に完全に横になっている状態だ。
威吹は邪魔をしない為か、それとも何か警戒のつもりか、1番前の席に座っている。
……しばらく眠ってしまったようだ。
目が覚めた時、車内は静かだった。
いや、エンジン音はしていたんだけど。
稲生:「ん……?」
僕は目を開けた。
マリアさんは僕の方を見ず、バスの進行方向を見ている。
静かな理由はすぐに分かった。
まずは、規則正しく車体に当たっていた雨の音が聞こえなくなっていたこと。
そして、そもそも今は停車しているからだった。
稲生:「マリアさん……?ここは……?」
マリア:「ああ、起きたの」
バスの車内は今は照明が灯っていた。
もっとも、古いバスだ。
今のノンステップバスとかはだいぶ車内も明るいけど、床が木張りの頃のバスは照明の数が少なかったのだろう。
確かに点灯はしていたが、今のバスと比べると心許ない明かりだった。
昔の東武8000系とかもそうだったな。
蛍光灯の数が少ないタイプがあって、あれに夜乗ると結構薄暗かったのを覚えている。
あのタイプは、まだ野田線辺りで走っているのだろうか?
マリア:「何か知らんが、トンネルに入った所でバスが止まった」
稲生:「トンネル!?」
それで雨の音がしなかったのか。
それにしても、真っ暗なトンネルだ。
バスはヘッドライトを点灯させているが、それでも反対側が見えない。
威吹:「ユタ、起きたか」
威吹の声を合図にするかのように僕は起き上がった。
稲生:「威吹?どうしてバスは止まってるの?」
威吹:「いや、何かよく分からないんだ」
威吹は首を傾げながら後ろの席にやってきた。
相変わらず、車内に他の乗客の姿は見えない。
と、その時、エアーの音がしてバスの前扉が開いた。
威吹:「!?」
威吹が驚いて後ろを振り返る。
そこから乗って来た乗客は1人。
有紗:「…………」
稲生:「あ、有紗!?」
と、バスが走り出し、そのままトンネルの中を突き進んだ。
それにしても、何だか周りの様子がおかしい。
マリアさんの話では、バスはずっと国道48号線を走って来たという。
車窓に『ROUTE 48』と書かれた標識が何個も出て来たからそれは間違いないらしい。
それが突然藪の中に入ったかと思うと、トンネルが現れたという。
僕はその話を聞いて、思い出した。
このトンネルは、閉鎖された旧・関山トンネルではないかと。
確か、トンネル自体は確かに今も残ってはいるものの、両側からバリケードがされていて入れなくなっていると聞いたが……。
有紗:「私の骨を見つけてくれたんだね……。ありがとう……」
稲生:「う、うん。見つけたことは見つけたんだけど、思わぬ邪魔が入って、供養まではできていないんだ。今度、落ち着いたらやっておくから……」
有紗:「いいの。勇太君が見つけてくれただけで……それでいいの……」
稲生:「そ、そうか。それで、このバスに乗って成仏しに行くんだね。僕達は後で降りるから、有紗は……」
すると有紗は悲しそうに俯いた。
有紗:「そんなこと言わないで……」
そして、悲しそうに言った。
有紗:「そんなこと言わないで……」
威吹:「有紗殿。気持ちは分かるが、そなたは亡者。そして、ユタは生者でござる。まあ、本来なら生者たる我々がこのような乗り物に乗ってはいけないのでござるが……。途中までは同乗し、後で見送りはさせて頂く故、どうか……」
有紗:「そんなの嫌!勇太君も私と一緒に行くのよ!」
マリア:「黙れ!」
威吹は有紗を諭すように語り掛け、マリアさんはそれでも食い下がる有紗にだいぶ苛立っているようだ。
そんな時、僕はふと気づいた。
はて?このトンネル、こんなに長かったかな?と……。
確かに、宮城県と山形県の県境に掘られたトンネルで、長いものはある。
山形自動車道に掘られた笹谷トンネルがそれで、全長3キロ強ほどだ。
でも、関山トンネルは数百メートルしか無かったはずだ。
だから、こうして威吹やマリアさん達が押し問答をしている間に、トンネルを出てもおかしくはないはずなのだ。
有紗:「勇太君のことは私が最初に好きになったの。あなたは横恋慕してきただけ!」
マリア:「死んで勇太を悲しませたのはどこのどいつだ!?」
威吹:「落ち着くでござるよ。こうなったら、某が一思いに楽にしてしんぜよう。それでいかがかな?有紗殿」
有紗:「冗談じゃないわ!私を殺したヤツの仲間になんか、楽にしてもらいたくない!」
このままでは埒が明かない。
僕はどうしたらいいんだ?
僕は……?
1:威吹の対応に期待する。
2:僕が有紗を説得する。
3:マリアさんが有紗を倒すことを期待する。
4:運転手にバスを止めるように言う。
※バッドエンドがあります。ご注意ください。
(稲生の一人称です)
今、バスはどこを走っているのだろう?
車体や窓ガラスを叩く雨の音がするから、地上のどこかを走っているのは間違い無いと思うけど。
車内はまるで回送のように、照明が灯っていない。
だから、車内に入る光と言えば街灯や他の車のヘッドライトくらいだ。
それでも僕は慌てる気持ちは起きなかったし、他の2人も全く落ち着いていた。
その理由は分からない。
ただ、僕の場合は……。
僕の場合は、マリアさんに膝枕してもらっているからなのかも。
マリアさんは黒いストッキングをはいているから、生足の感触は味わえないけど、だからこそマリアさんはしてくれたのかもしれない。
僕は、このままこのバスがもっとしばらく走っていて欲しいとさえ思った。
それにしても、マリアさんも変わった。
今でも僕以外の男性には触れられたくないらしいけど、最初は当然ながら僕もその対象だった。
それがやっと手を繫げるようになり、今ではこうして膝枕(ストッキング越しだけど)。
欧米の人に、こういう習慣があるのかは分からない。
だけど、もし無かったとしたら、もしかしたら威吹が教えてくれたのかも。
今、僕達はバスの1番後ろの長い席にいる。
僕は、座席の上に完全に横になっている状態だ。
威吹は邪魔をしない為か、それとも何か警戒のつもりか、1番前の席に座っている。
……しばらく眠ってしまったようだ。
目が覚めた時、車内は静かだった。
いや、エンジン音はしていたんだけど。
稲生:「ん……?」
僕は目を開けた。
マリアさんは僕の方を見ず、バスの進行方向を見ている。
静かな理由はすぐに分かった。
まずは、規則正しく車体に当たっていた雨の音が聞こえなくなっていたこと。
そして、そもそも今は停車しているからだった。
稲生:「マリアさん……?ここは……?」
マリア:「ああ、起きたの」
バスの車内は今は照明が灯っていた。
もっとも、古いバスだ。
今のノンステップバスとかはだいぶ車内も明るいけど、床が木張りの頃のバスは照明の数が少なかったのだろう。
確かに点灯はしていたが、今のバスと比べると心許ない明かりだった。
昔の東武8000系とかもそうだったな。
蛍光灯の数が少ないタイプがあって、あれに夜乗ると結構薄暗かったのを覚えている。
あのタイプは、まだ野田線辺りで走っているのだろうか?
マリア:「何か知らんが、トンネルに入った所でバスが止まった」
稲生:「トンネル!?」
それで雨の音がしなかったのか。
それにしても、真っ暗なトンネルだ。
バスはヘッドライトを点灯させているが、それでも反対側が見えない。
威吹:「ユタ、起きたか」
威吹の声を合図にするかのように僕は起き上がった。
稲生:「威吹?どうしてバスは止まってるの?」
威吹:「いや、何かよく分からないんだ」
威吹は首を傾げながら後ろの席にやってきた。
相変わらず、車内に他の乗客の姿は見えない。
と、その時、エアーの音がしてバスの前扉が開いた。
威吹:「!?」
威吹が驚いて後ろを振り返る。
そこから乗って来た乗客は1人。
有紗:「…………」
稲生:「あ、有紗!?」
と、バスが走り出し、そのままトンネルの中を突き進んだ。
それにしても、何だか周りの様子がおかしい。
マリアさんの話では、バスはずっと国道48号線を走って来たという。
車窓に『ROUTE 48』と書かれた標識が何個も出て来たからそれは間違いないらしい。
それが突然藪の中に入ったかと思うと、トンネルが現れたという。
僕はその話を聞いて、思い出した。
このトンネルは、閉鎖された旧・関山トンネルではないかと。
確か、トンネル自体は確かに今も残ってはいるものの、両側からバリケードがされていて入れなくなっていると聞いたが……。
有紗:「私の骨を見つけてくれたんだね……。ありがとう……」
稲生:「う、うん。見つけたことは見つけたんだけど、思わぬ邪魔が入って、供養まではできていないんだ。今度、落ち着いたらやっておくから……」
有紗:「いいの。勇太君が見つけてくれただけで……それでいいの……」
稲生:「そ、そうか。それで、このバスに乗って成仏しに行くんだね。僕達は後で降りるから、有紗は……」
すると有紗は悲しそうに俯いた。
有紗:「そんなこと言わないで……」
そして、悲しそうに言った。
有紗:「そんなこと言わないで……」
威吹:「有紗殿。気持ちは分かるが、そなたは亡者。そして、ユタは生者でござる。まあ、本来なら生者たる我々がこのような乗り物に乗ってはいけないのでござるが……。途中までは同乗し、後で見送りはさせて頂く故、どうか……」
有紗:「そんなの嫌!勇太君も私と一緒に行くのよ!」
マリア:「黙れ!」
威吹は有紗を諭すように語り掛け、マリアさんはそれでも食い下がる有紗にだいぶ苛立っているようだ。
そんな時、僕はふと気づいた。
はて?このトンネル、こんなに長かったかな?と……。
確かに、宮城県と山形県の県境に掘られたトンネルで、長いものはある。
山形自動車道に掘られた笹谷トンネルがそれで、全長3キロ強ほどだ。
でも、関山トンネルは数百メートルしか無かったはずだ。
だから、こうして威吹やマリアさん達が押し問答をしている間に、トンネルを出てもおかしくはないはずなのだ。
有紗:「勇太君のことは私が最初に好きになったの。あなたは横恋慕してきただけ!」
マリア:「死んで勇太を悲しませたのはどこのどいつだ!?」
威吹:「落ち着くでござるよ。こうなったら、某が一思いに楽にしてしんぜよう。それでいかがかな?有紗殿」
有紗:「冗談じゃないわ!私を殺したヤツの仲間になんか、楽にしてもらいたくない!」
このままでは埒が明かない。
僕はどうしたらいいんだ?
僕は……?
1:威吹の対応に期待する。
2:僕が有紗を説得する。
3:マリアさんが有紗を倒すことを期待する。
4:運転手にバスを止めるように言う。
※バッドエンドがあります。ご注意ください。