ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“大魔道師の弟子” 「旧・関山隧道は怪奇スポットであるが、新・関山トンネルも出るらしい」

2018-05-21 19:00:09 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日時刻不明 天候:雨 宮城県仙台市青葉区→山形県東根市 旧・関山トンネル]
(稲生の一人称です)

 今、バスはどこを走っているのだろう?
 車体や窓ガラスを叩く雨の音がするから、地上のどこかを走っているのは間違い無いと思うけど。
 車内はまるで回送のように、照明が灯っていない。
 だから、車内に入る光と言えば街灯や他の車のヘッドライトくらいだ。
 それでも僕は慌てる気持ちは起きなかったし、他の2人も全く落ち着いていた。
 その理由は分からない。
 ただ、僕の場合は……。
 僕の場合は、マリアさんに膝枕してもらっているからなのかも。
 マリアさんは黒いストッキングをはいているから、生足の感触は味わえないけど、だからこそマリアさんはしてくれたのかもしれない。
 僕は、このままこのバスがもっとしばらく走っていて欲しいとさえ思った。
 それにしても、マリアさんも変わった。
 今でも僕以外の男性には触れられたくないらしいけど、最初は当然ながら僕もその対象だった。
 それがやっと手を繫げるようになり、今ではこうして膝枕(ストッキング越しだけど)。
 欧米の人に、こういう習慣があるのかは分からない。
 だけど、もし無かったとしたら、もしかしたら威吹が教えてくれたのかも。
 今、僕達はバスの1番後ろの長い席にいる。
 僕は、座席の上に完全に横になっている状態だ。
 威吹は邪魔をしない為か、それとも何か警戒のつもりか、1番前の席に座っている。

 ……しばらく眠ってしまったようだ。
 目が覚めた時、車内は静かだった。
 いや、エンジン音はしていたんだけど。

 稲生:「ん……?」

 僕は目を開けた。
 マリアさんは僕の方を見ず、バスの進行方向を見ている。
 静かな理由はすぐに分かった。
 まずは、規則正しく車体に当たっていた雨の音が聞こえなくなっていたこと。
 そして、そもそも今は停車しているからだった。

 稲生:「マリアさん……?ここは……?」
 マリア:「ああ、起きたの」

 バスの車内は今は照明が灯っていた。
 もっとも、古いバスだ。
 今のノンステップバスとかはだいぶ車内も明るいけど、床が木張りの頃のバスは照明の数が少なかったのだろう。
 確かに点灯はしていたが、今のバスと比べると心許ない明かりだった。
 昔の東武8000系とかもそうだったな。
 蛍光灯の数が少ないタイプがあって、あれに夜乗ると結構薄暗かったのを覚えている。
 あのタイプは、まだ野田線辺りで走っているのだろうか?

 マリア:「何か知らんが、トンネルに入った所でバスが止まった」
 稲生:「トンネル!?」

 それで雨の音がしなかったのか。
 それにしても、真っ暗なトンネルだ。
 バスはヘッドライトを点灯させているが、それでも反対側が見えない。

 威吹:「ユタ、起きたか」

 威吹の声を合図にするかのように僕は起き上がった。

 稲生:「威吹?どうしてバスは止まってるの?」
 威吹:「いや、何かよく分からないんだ」

 威吹は首を傾げながら後ろの席にやってきた。
 相変わらず、車内に他の乗客の姿は見えない。
 と、その時、エアーの音がしてバスの前扉が開いた。

 威吹:「!?」

 威吹が驚いて後ろを振り返る。
 そこから乗って来た乗客は1人。

 有紗:「…………」
 稲生:「あ、有紗!?」

 と、バスが走り出し、そのままトンネルの中を突き進んだ。
 それにしても、何だか周りの様子がおかしい。
 マリアさんの話では、バスはずっと国道48号線を走って来たという。
 車窓に『ROUTE 48』と書かれた標識が何個も出て来たからそれは間違いないらしい。
 それが突然藪の中に入ったかと思うと、トンネルが現れたという。
 僕はその話を聞いて、思い出した。
 このトンネルは、閉鎖された旧・関山トンネルではないかと。
 確か、トンネル自体は確かに今も残ってはいるものの、両側からバリケードがされていて入れなくなっていると聞いたが……。

 有紗:「私の骨を見つけてくれたんだね……。ありがとう……」
 稲生:「う、うん。見つけたことは見つけたんだけど、思わぬ邪魔が入って、供養まではできていないんだ。今度、落ち着いたらやっておくから……」
 有紗:「いいの。勇太君が見つけてくれただけで……それでいいの……」
 稲生:「そ、そうか。それで、このバスに乗って成仏しに行くんだね。僕達は後で降りるから、有紗は……」

 すると有紗は悲しそうに俯いた。

 有紗:「そんなこと言わないで……」

 そして、悲しそうに言った。

 有紗:「そんなこと言わないで……」
 威吹:「有紗殿。気持ちは分かるが、そなたは亡者。そして、ユタは生者でござる。まあ、本来なら生者たる我々がこのような乗り物に乗ってはいけないのでござるが……。途中までは同乗し、後で見送りはさせて頂く故、どうか……」
 有紗:「そんなの嫌!勇太君も私と一緒に行くのよ!」
 マリア:「黙れ!」

 威吹は有紗を諭すように語り掛け、マリアさんはそれでも食い下がる有紗にだいぶ苛立っているようだ。
 そんな時、僕はふと気づいた。
 はて?このトンネル、こんなに長かったかな?と……。
 確かに、宮城県と山形県の県境に掘られたトンネルで、長いものはある。
 山形自動車道に掘られた笹谷トンネルがそれで、全長3キロ強ほどだ。
 でも、関山トンネルは数百メートルしか無かったはずだ。
 だから、こうして威吹やマリアさん達が押し問答をしている間に、トンネルを出てもおかしくはないはずなのだ。

 有紗:「勇太君のことは私が最初に好きになったの。あなたは横恋慕してきただけ!」
 マリア:「死んで勇太を悲しませたのはどこのどいつだ!?」
 威吹:「落ち着くでござるよ。こうなったら、某が一思いに楽にしてしんぜよう。それでいかがかな?有紗殿」
 有紗:「冗談じゃないわ!私を殺したヤツの仲間になんか、楽にしてもらいたくない!」

 このままでは埒が明かない。
 僕はどうしたらいいんだ?
 僕は……?

 1:威吹の対応に期待する。
 2:僕が有紗を説得する。
 3:マリアさんが有紗を倒すことを期待する。
 4:運転手にバスを止めるように言う。

 ※バッドエンドがあります。ご注意ください。
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“大魔道師の弟子” 「雨中行軍」

2018-05-21 10:14:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日00:30.天候:雨 曹洞宗保壽寺霊園入口]

 付近住民の通報を受けた警察は、霊園の入口近くに集結した。
 元々は発砲音ではなく、そもそも霊園内に不審者達がいるという通報であった。
 何しろ建設中とはいえ、近くにマンションがあるくらいだ。
 他にも既に居住者のいるマンションはいくつも建っているわけだし、例え真夜中とて、たまたまその様子を捉えた者がいてもおかしくはない。
 そんな時に、ライフルの発砲音だ。
 警察が大騒ぎしてもおかしくは無かった。
 で、霊園の入口に集まっていたところ、黒づくめの服にライフルを持った女が飛び込んで来たのだから、そりゃパニックになるだろう。

 マリアの魔法でマンションから飛ばされた女は、覆面パトカーの屋根の上に落ちた。
 “ゴルゴ13”など、スナイパーを主人公にした作品を御覧になったことのある方は分かると思うが、スナイパーが獲物を狙う時、大抵は高い所から狙う。
 そのマンションも7階建てて、女も最上階に陣取っており、そこから落ちたら死ぬのではないかと思われたが、そこはマリアの魔法。
 それなりに気を使ったようで、何台も止まっているパトカーのうち、屋根に1番着地しやすい覆面パトカーの上を狙ったという徹底ぶり。
 他の普通のパトカーは、屋根の上に大きなパトランプとか色々付いているため。
 車の屋根は意外と柔らかく、車自体は着地の衝撃で大破するものの、これがクッションとなって、マンションの7階や8階くらいから転落しても助かったという事例は存在する。
 今回もそう。
 しかも、着地の衝撃でライフルをもう1発暴発させるというオマケ付き。
 そのライフル弾は、他のパトカーのパトランプを撃ち壊した。

 威吹:「マリア、無事か?」
 マリア:「何とか。勇太は?」
 威吹:「まだ気絶してる。ケガはしていないようだ。だが、頭だからな。どうする?」
 マリア:「私が回復魔法を掛けよう」

 マリアは1番簡単な回復魔法を掛けた。

 威吹:「オレ達、被害者として名乗り出るか?」
 マリア:「いや、やめておこう。こんな時間に墓に行っていたことを詮索されると面倒だ」
 威吹:「そうか?特に、墓暴きに来たわけではないのだから、堂々としていれば良いと思うが……」
 マリア:「骨壺を探しに来たという時点でアウトだと思うぞ」
 威吹:「オマエの占いで発見したんだから、それで良いではないか」
 マリア:「ここがアメリカやイギリスとかだったら、それでもOKだったんだろうがな。日本人はこういうの信じないんだ」
 威吹:「オレの時代の時(江戸時代初期)は結構信じられたものだったがな」
 マリア:「……あの女のことだから、きっと警察の取り調べにも黙秘を貫くだろうな」
 威吹:「ああ、そうか。あの女と対峙したのか。どうだった?」
 マリア:「勇太が目を覚ましたら話すよ。それより今は、どこか雨宿りできる所を探そう」
 威吹:「うむ……」

 威吹達がバス通りに出た時だった。

 威吹:「うぬ?」

 車通りも殆ど無い道を1台のバスがやってきた。
 しかしそのバスはとても古めかしく、とてもワンステップやノンステップバスには見えなかった。
 車体の塗装からして、仙台市交通局に酷似しているが……。
 車体側面の社名が記載されている部分には、『冥界鉄道公社乗合自動車部』と書かれていた。
 通称、『冥鉄バス』である。
 そのバスは、すぐ近くのバス停で停車した。

 威吹:「我々を待ち構えているみたいだが?あれは、あのまま魔界に連れて行かれるというものか?」
 マリア:「いや、違うな。魔界に自動車の乗り入れは禁止されてる。霊界のどこかで間違いない」
 威吹:「最悪、キノの所に世話になるってか。まあいい。雨宿りがてら、乗せてもらおう」

 バス停に行くと、バスは前扉を開けていた。
 仙台市内のバスは基本的に中扉から乗って前扉から降りる方式なのだが、冥鉄バスでは基本的に前乗り後ろ降りである(前扉しか無い車種あり)。 

 威吹:「オレ達は亡者ではないが、乗っても構わぬのか?」

 すると黒い制服をきちんと着用し、同じ色の制帽を被った運転手はコクコクと頷いた。
 その顔は……ガイコツそのものだった。
 もっとも、威吹達はそういうのを何度も見ているから想定内である。

 威吹:「では、都営バスと同じ運賃の210円でも入れておくでござるよ」

 先日、菊川駅前から東京駅丸の内北口まで乗った時、運賃が値上がりしていたことを知らなかった威吹。
 Suicaで支払った際、中途半端な額が引き落とされていたことに驚いていた(普通運賃とIC運賃に分かれたことを知らなかった)。
 運賃を払った後、後ろの席に座る。
 他に乗客はいなかった。
 バスは威吹達を乗せると、前扉を閉めて発車した。
 雨が降っているので、ワイパーが規則正しい動きで雨を拭き取っている。
 今時、床が木張りのバスも珍しい。
 今はもう現存していないだろう。
 鉄道車両が旧型ならば、バスもまたそうであるということ。
 それが冥界鉄道公社だ。
 バスはあえて市街地の方に向けて走って行った。
 途中、あの霊園の方へ向かう小道の前を通るが、バスはそこで止まった。
 サイレンを鳴らした救急車やパトカーが出て来たからだ。
 さすがにあの女も大ケガはしただろうから、それで救急車が呼ばれたのだろう。
 しかし、ライフルを違法に持っていた容疑者だから、警察の護衛付きというわけか。

 マリア:「絶対に黙秘を貫くと思う」
 威吹:「オレに尋問を任せてくれれば、吐かせてやるのだが……」

 江戸時代には様々な拷問があったらしいが……。

 威吹:「キノのいる地獄界は叫喚地獄だったな。本当にこのバスはそこまで行くのか?」
 マリア:「最悪、閻魔庁でもいいんじゃないか?キノは今や閻魔庁勤務なのだろう?」
 威吹:「それもそうだな」

 稲生:「う……」

 稲生は呻き声を上げた。

 稲生は今、マリアに膝枕をされているのだが、それで起き上がった。

 稲生:「あれ……?ここは……?」
 マリア:「バスの中だ。ちょっと今、移動している」
 稲生:「バスの中!?」
 威吹:「心配いらん。ちょっと、場所を移動するだけだ。この分だと、着くまでもう少し時間が掛かりそうだから、もう少し寝てても大丈夫だよ」
 稲生:「一体、何が?」
 マリア:「後で話すよ。私も疲れた……」

 多分、魔法を何度か使ったマリアが1番疲れたのは事実だろう。
 バスは真夜中の市内を雨が降る中、西へ向かって進んだ。
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