[魔界時間4月9日16:45.天候:晴 アルカディアシティ42番街 某カジノ]
カジノの奥に連れ込まれる稲生達。
カジノと言えば、バカラ賭博などを行う為のVIPルームがある。
このカジノにはそんなVIPルームがいくつかあり、外観とは裏腹に意外と大きな店舗であることが分かる。
1番奥のVIPルームに入ると、やっとそこで魔道師はフードを取った。
魔道師:「こんにちは。お久しぶりです。僕はアーノルド・フルカス・ウォーレンと申します。ダンテ一門のポーラ組に所属しているミドルマスターです」
マリア:「お、男ぉ!?」
マリアが1番驚いた。
何故なら、先ほど肩を叩いたのはこの魔道師だったからだ。
稲生:「あれ!?あなたは確か……!?」
威吹:「ユタに世界樹の葉を譲ってくれた者だったな?……そうか。そういうことか」
マリア:「勇太!何でそういうこと、早く言ってくれなかった!?」
マリアは気分が悪そうに、しかし取り乱した様子で稲生の胸倉を掴んだ。
稲生:「ご、ごめんなさい!まさか、同じ人だとは思わなくて……」
威吹:「放してやれよ。いくら男嫌いだからって、門内の仲間まで毛嫌いすることもあるまい?」
威吹はマリアに言った。
そして、アーノルドの方を向く。
威吹:「汝も汝だ。門内の女達の8割は男嫌いであることを知らぬわけではあるまい?」
アーノルド:「いや、申し訳無い。マリアンナさんが余計な魔力を使わないようにと、つい手出しをしてしまった」
稲生と威吹が顔見知りなのは、稲生に、死人を無理無く生き返らせる際の特効薬として必要な材料である世界樹の葉を譲ってくれたからに他ならない。
但し、相手は魔道師だ。
もちろん、タダではなかった。
稲生:「最後の約束、果たしましたよ。これでもう1つ、僕の願い事を聞いてくれますね?」
アーノルド:「もちろんだとも」
アーノルドは大きく頷いた。
マリア:「最後の約束?何だそれは?」
稲生:「世界樹の葉を譲ってくれる代わりに、僕がダンテ一門に入門することです」
マリア:「ええっ!?」
威吹:「ボクは必死に止めたさ。ボクにとっては、何の旨味も無いからね」
稲生:「でも、実質的にはアーノルドさんの予言が当たったというだけで、約束を果たしたとは言えないかも……」
アーノルド:「いや、そんなことは無いよ。ただ、僕の予言も完璧ではなかったがね」
稲生:「何がですか?」
アーノルド:「僕的にはうちの組に入って欲しかったんだよ。後輩が増えるのは嬉しいからね。だけど、イリーナ先生に取られちゃったな……」
稲生:「ああ!そういうことですか。すいません」
アーノルド:「いや、いいんだよ。あの時はダンテ一門に入門するとだけしか言ってなくて、直接僕の組に入ってくれなんて言わなかったしね」
マリア:「だけどポーラ組は、アメリカが拠点だろう?勇太は入門した時点で日本から出ることになるな」
アーノルド:「ま、そういうことになる。引いてはアメリカ国籍を取ってもらうことになっただろうね」
稲生:「本当に、どこの組に所属するかで違うんですねぇ……」
アーノルド:「全く違う。組が違うだけで、まるで他の門流にいるみたいな錯覚になるそうだよ」
稲生:(日蓮正宗の法華講支部みたいだなぁ……)
威吹:「それより、用件だ。他の魔女から聞いてると思うが……」
アーノルド:「ああ、分かってる。世界樹の葉の効能を消す薬だろう?もう用意してるよ」
アーノルドはローブの中から、1つの小瓶を出した。
稲生:「これを飲めば効能は切れる」
威吹:「それにしても、死んだ人間を生き返らせるというのは大ウソだったとはな」
アーノルド:「僕も最初、キミ達が何を言っているのか分からなかったよ。そんなのはゲームやマンガの世界の話であって、現実にはそんなもの存在しないんだ。マリアンナから聞いたと思うけど、実際は悲しみを消す為に、故人の記憶を一切消し去ってしまう薬だよ。もっとも、キミには中途半端にしか効かなかったみたいだね」
稲生:「これを飲めばいいんですね?」
アーノルド:「そうだ。グイッといきたまえ」
マリア:「ちょっと待った。副作用とかは無いんだろうな?」
稲生:「脳に直接効くわけだからね。少し眠くなるよ。即効性というわけではないから、飲んだらすぐ宿舎に戻るかするといい」
威吹:「今夜はボクの家に泊まりなよ」
稲生:「いいの?」
威吹:「ああ。そこの魔女には、もう少し聞きたいことがあるからね」
マリア:「私に?」
威吹:「そう」
稲生は小瓶の蓋を開けると、一気にそれを飲み干した。
威吹:「味はどうだい?」
稲生:「ソルマックとリポDを足して2で割ったような味」
マリア:「実際そうやって飲んだことは無いだろう?」
アーノルド:「さあ、飲んだら急いで宿舎に戻るんだ。途中で倒れてはいけない」
マリア:「何かあったら、連絡させてもらうぞ」
アーノルド:「どうぞ。もちろん、何も無いように調合したつもりだがね」
威吹:「よし。じゃあ、ユタ。早く帰ろう」
稲生:「う、うん」
稲生達はカジノを出た。
カジノという場所は中よりも外の方が危険なのだが、今回は大丈夫だった。
最初は襲って来ようとする者もいたのだが、威吹の姿を見ると慌てて逃げ出すのだった。
そして、それは……。
[同日17:30.天候:晴 アルカディアシティ42番街 アルカディア地下鉄42番街駅]
魔族F:「ヒャッハー!ここは通さねぇぜ……って、うぉっ!?」
威吹:「あぁ?何か用か?」
魔族F:「よ、妖狐の威吹……!?ひ、ひぃぃぃぃぃっ!」
慌てて逃げ出すザコモンスター達。
1面2線の島式ホームに行くと、さっき稲生達が乗って来たのとは別の外国の地下鉄車両が止まっていた。
造りからして、やっぱりこれもアメリカのどこかのものだろう。
ドアの横は2人掛け席で、その隣に背中合わせのクロスシートがある。
先頭車に乗り込むと、そこには他に誰も乗ってこなかった。
本来ならよそ者をカモるモンスター達は、隣の車両からこちらを遠巻きに見ているだけだったという。
カジノの奥に連れ込まれる稲生達。
カジノと言えば、バカラ賭博などを行う為のVIPルームがある。
このカジノにはそんなVIPルームがいくつかあり、外観とは裏腹に意外と大きな店舗であることが分かる。
1番奥のVIPルームに入ると、やっとそこで魔道師はフードを取った。
魔道師:「こんにちは。お久しぶりです。僕はアーノルド・フルカス・ウォーレンと申します。ダンテ一門のポーラ組に所属しているミドルマスターです」
マリア:「お、男ぉ!?」
マリアが1番驚いた。
何故なら、先ほど肩を叩いたのはこの魔道師だったからだ。
稲生:「あれ!?あなたは確か……!?」
威吹:「ユタに世界樹の葉を譲ってくれた者だったな?……そうか。そういうことか」
マリア:「勇太!何でそういうこと、早く言ってくれなかった!?」
マリアは気分が悪そうに、しかし取り乱した様子で稲生の胸倉を掴んだ。
稲生:「ご、ごめんなさい!まさか、同じ人だとは思わなくて……」
威吹:「放してやれよ。いくら男嫌いだからって、門内の仲間まで毛嫌いすることもあるまい?」
威吹はマリアに言った。
そして、アーノルドの方を向く。
威吹:「汝も汝だ。門内の女達の8割は男嫌いであることを知らぬわけではあるまい?」
アーノルド:「いや、申し訳無い。マリアンナさんが余計な魔力を使わないようにと、つい手出しをしてしまった」
稲生と威吹が顔見知りなのは、稲生に、死人を無理無く生き返らせる際の特効薬として必要な材料である世界樹の葉を譲ってくれたからに他ならない。
但し、相手は魔道師だ。
もちろん、タダではなかった。
稲生:「最後の約束、果たしましたよ。これでもう1つ、僕の願い事を聞いてくれますね?」
アーノルド:「もちろんだとも」
アーノルドは大きく頷いた。
マリア:「最後の約束?何だそれは?」
稲生:「世界樹の葉を譲ってくれる代わりに、僕がダンテ一門に入門することです」
マリア:「ええっ!?」
威吹:「ボクは必死に止めたさ。ボクにとっては、何の旨味も無いからね」
稲生:「でも、実質的にはアーノルドさんの予言が当たったというだけで、約束を果たしたとは言えないかも……」
アーノルド:「いや、そんなことは無いよ。ただ、僕の予言も完璧ではなかったがね」
稲生:「何がですか?」
アーノルド:「僕的にはうちの組に入って欲しかったんだよ。後輩が増えるのは嬉しいからね。だけど、イリーナ先生に取られちゃったな……」
稲生:「ああ!そういうことですか。すいません」
アーノルド:「いや、いいんだよ。あの時はダンテ一門に入門するとだけしか言ってなくて、直接僕の組に入ってくれなんて言わなかったしね」
マリア:「だけどポーラ組は、アメリカが拠点だろう?勇太は入門した時点で日本から出ることになるな」
アーノルド:「ま、そういうことになる。引いてはアメリカ国籍を取ってもらうことになっただろうね」
稲生:「本当に、どこの組に所属するかで違うんですねぇ……」
アーノルド:「全く違う。組が違うだけで、まるで他の門流にいるみたいな錯覚になるそうだよ」
稲生:(日蓮正宗の法華講支部みたいだなぁ……)
威吹:「それより、用件だ。他の魔女から聞いてると思うが……」
アーノルド:「ああ、分かってる。世界樹の葉の効能を消す薬だろう?もう用意してるよ」
アーノルドはローブの中から、1つの小瓶を出した。
稲生:「これを飲めば効能は切れる」
威吹:「それにしても、死んだ人間を生き返らせるというのは大ウソだったとはな」
アーノルド:「僕も最初、キミ達が何を言っているのか分からなかったよ。そんなのはゲームやマンガの世界の話であって、現実にはそんなもの存在しないんだ。マリアンナから聞いたと思うけど、実際は悲しみを消す為に、故人の記憶を一切消し去ってしまう薬だよ。もっとも、キミには中途半端にしか効かなかったみたいだね」
稲生:「これを飲めばいいんですね?」
アーノルド:「そうだ。グイッといきたまえ」
マリア:「ちょっと待った。副作用とかは無いんだろうな?」
稲生:「脳に直接効くわけだからね。少し眠くなるよ。即効性というわけではないから、飲んだらすぐ宿舎に戻るかするといい」
威吹:「今夜はボクの家に泊まりなよ」
稲生:「いいの?」
威吹:「ああ。そこの魔女には、もう少し聞きたいことがあるからね」
マリア:「私に?」
威吹:「そう」
稲生は小瓶の蓋を開けると、一気にそれを飲み干した。
威吹:「味はどうだい?」
稲生:「ソルマックとリポDを足して2で割ったような味」
マリア:「実際そうやって飲んだことは無いだろう?」
アーノルド:「さあ、飲んだら急いで宿舎に戻るんだ。途中で倒れてはいけない」
マリア:「何かあったら、連絡させてもらうぞ」
アーノルド:「どうぞ。もちろん、何も無いように調合したつもりだがね」
威吹:「よし。じゃあ、ユタ。早く帰ろう」
稲生:「う、うん」
稲生達はカジノを出た。
カジノという場所は中よりも外の方が危険なのだが、今回は大丈夫だった。
最初は襲って来ようとする者もいたのだが、威吹の姿を見ると慌てて逃げ出すのだった。
そして、それは……。
[同日17:30.天候:晴 アルカディアシティ42番街 アルカディア地下鉄42番街駅]
魔族F:「ヒャッハー!ここは通さねぇぜ……って、うぉっ!?」
威吹:「あぁ?何か用か?」
魔族F:「よ、妖狐の威吹……!?ひ、ひぃぃぃぃぃっ!」
慌てて逃げ出すザコモンスター達。
1面2線の島式ホームに行くと、さっき稲生達が乗って来たのとは別の外国の地下鉄車両が止まっていた。
造りからして、やっぱりこれもアメリカのどこかのものだろう。
ドアの横は2人掛け席で、その隣に背中合わせのクロスシートがある。
先頭車に乗り込むと、そこには他に誰も乗ってこなかった。
本来ならよそ者をカモるモンスター達は、隣の車両からこちらを遠巻きに見ているだけだったという。