報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ダンテ一門の魔道師は9割が女性で1割が男性」

2018-05-12 19:16:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間4月9日16:45.天候:晴 アルカディアシティ42番街 某カジノ]

 カジノの奥に連れ込まれる稲生達。
 カジノと言えば、バカラ賭博などを行う為のVIPルームがある。
 このカジノにはそんなVIPルームがいくつかあり、外観とは裏腹に意外と大きな店舗であることが分かる。
 1番奥のVIPルームに入ると、やっとそこで魔道師はフードを取った。

 魔道師:「こんにちは。お久しぶりです。僕はアーノルド・フルカス・ウォーレンと申します。ダンテ一門のポーラ組に所属しているミドルマスターです」
 マリア:「お、男ぉ!?」

 マリアが1番驚いた。
 何故なら、先ほど肩を叩いたのはこの魔道師だったからだ。

 稲生:「あれ!?あなたは確か……!?」
 威吹:「ユタに世界樹の葉を譲ってくれた者だったな?……そうか。そういうことか」
 マリア:「勇太!何でそういうこと、早く言ってくれなかった!?」

 マリアは気分が悪そうに、しかし取り乱した様子で稲生の胸倉を掴んだ。

 稲生:「ご、ごめんなさい!まさか、同じ人だとは思わなくて……」
 威吹:「放してやれよ。いくら男嫌いだからって、門内の仲間まで毛嫌いすることもあるまい?」

 威吹はマリアに言った。
 そして、アーノルドの方を向く。

 威吹:「汝も汝だ。門内の女達の8割は男嫌いであることを知らぬわけではあるまい?」
 アーノルド:「いや、申し訳無い。マリアンナさんが余計な魔力を使わないようにと、つい手出しをしてしまった」

 稲生と威吹が顔見知りなのは、稲生に、死人を無理無く生き返らせる際の特効薬として必要な材料である世界樹の葉を譲ってくれたからに他ならない。
 但し、相手は魔道師だ。
 もちろん、タダではなかった。

 稲生:「最後の約束、果たしましたよ。これでもう1つ、僕の願い事を聞いてくれますね?」
 アーノルド:「もちろんだとも」

 アーノルドは大きく頷いた。

 マリア:「最後の約束?何だそれは?」
 稲生:「世界樹の葉を譲ってくれる代わりに、僕がダンテ一門に入門することです」
 マリア:「ええっ!?」
 威吹:「ボクは必死に止めたさ。ボクにとっては、何の旨味も無いからね」
 稲生:「でも、実質的にはアーノルドさんの予言が当たったというだけで、約束を果たしたとは言えないかも……」
 アーノルド:「いや、そんなことは無いよ。ただ、僕の予言も完璧ではなかったがね」
 稲生:「何がですか?」
 アーノルド:「僕的にはうちの組に入って欲しかったんだよ。後輩が増えるのは嬉しいからね。だけど、イリーナ先生に取られちゃったな……」
 稲生:「ああ!そういうことですか。すいません」
 アーノルド:「いや、いいんだよ。あの時はダンテ一門に入門するとだけしか言ってなくて、直接僕の組に入ってくれなんて言わなかったしね」
 マリア:「だけどポーラ組は、アメリカが拠点だろう?勇太は入門した時点で日本から出ることになるな」
 アーノルド:「ま、そういうことになる。引いてはアメリカ国籍を取ってもらうことになっただろうね」
 稲生:「本当に、どこの組に所属するかで違うんですねぇ……」
 アーノルド:「全く違う。組が違うだけで、まるで他の門流にいるみたいな錯覚になるそうだよ」
 稲生:(日蓮正宗の法華講支部みたいだなぁ……)
 威吹:「それより、用件だ。他の魔女から聞いてると思うが……」
 アーノルド:「ああ、分かってる。世界樹の葉の効能を消す薬だろう?もう用意してるよ」

 アーノルドはローブの中から、1つの小瓶を出した。

 稲生:「これを飲めば効能は切れる」
 威吹:「それにしても、死んだ人間を生き返らせるというのは大ウソだったとはな」
 アーノルド:「僕も最初、キミ達が何を言っているのか分からなかったよ。そんなのはゲームやマンガの世界の話であって、現実にはそんなもの存在しないんだ。マリアンナから聞いたと思うけど、実際は悲しみを消す為に、故人の記憶を一切消し去ってしまう薬だよ。もっとも、キミには中途半端にしか効かなかったみたいだね」
 稲生:「これを飲めばいいんですね?」
 アーノルド:「そうだ。グイッといきたまえ」
 マリア:「ちょっと待った。副作用とかは無いんだろうな?」
 稲生:「脳に直接効くわけだからね。少し眠くなるよ。即効性というわけではないから、飲んだらすぐ宿舎に戻るかするといい」
 威吹:「今夜はボクの家に泊まりなよ」
 稲生:「いいの?」
 威吹:「ああ。そこの魔女には、もう少し聞きたいことがあるからね」
 マリア:「私に?」
 威吹:「そう」

 稲生は小瓶の蓋を開けると、一気にそれを飲み干した。

 威吹:「味はどうだい?」
 稲生:「ソルマックとリポDを足して2で割ったような味」
 マリア:「実際そうやって飲んだことは無いだろう?」
 アーノルド:「さあ、飲んだら急いで宿舎に戻るんだ。途中で倒れてはいけない」
 マリア:「何かあったら、連絡させてもらうぞ」
 アーノルド:「どうぞ。もちろん、何も無いように調合したつもりだがね」
 威吹:「よし。じゃあ、ユタ。早く帰ろう」
 稲生:「う、うん」

 稲生達はカジノを出た。
 カジノという場所は中よりも外の方が危険なのだが、今回は大丈夫だった。
 最初は襲って来ようとする者もいたのだが、威吹の姿を見ると慌てて逃げ出すのだった。
 そして、それは……。

[同日17:30.天候:晴 アルカディアシティ42番街 アルカディア地下鉄42番街駅]

 魔族F:「ヒャッハー!ここは通さねぇぜ……って、うぉっ!?」
 威吹:「あぁ?何か用か?」
 魔族F:「よ、妖狐の威吹……!?ひ、ひぃぃぃぃぃっ!」

 慌てて逃げ出すザコモンスター達。
 1面2線の島式ホームに行くと、さっき稲生達が乗って来たのとは別の外国の地下鉄車両が止まっていた。
 造りからして、やっぱりこれもアメリカのどこかのものだろう。
 ドアの横は2人掛け席で、その隣に背中合わせのクロスシートがある。
 先頭車に乗り込むと、そこには他に誰も乗ってこなかった。
 本来ならよそ者をカモるモンスター達は、隣の車両からこちらを遠巻きに見ているだけだったという。
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“大魔道師の弟子” 「ファイナルファイト」

2018-05-12 10:13:58 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間4月9日16:00.天候:晴 魔界高速電鉄(アルカディアメトロ)9号線・42番街支線]

 49番街もまた比較的治安の悪い地域とはいえ、駅構内はまだ秩序が保たれていた。
 ところが、42番街へ行く9号線の支線にあってはとんでもない状況になっていた。
 例えて言うなら、昔のニューヨークの地下鉄。
 電車の内外が落書きだらけで走っていた頃のニューヨーク地下鉄だ。
 車両も当時のものが使われていた。
 で……。

 魔族A:「ヒャッハー!久しぶりの人間だぜぇ!」
 魔族B:「獲物じゃ!獲物じゃ!」

 この支線内から電車内だろうと駅構内だろうと、エンカウントするのである。
 ところが……。

 威吹:「あぁ?」

 威吹は刀を抜くまでもなく、拳で伸してしまうのだった。

 魔族A:「あべしっ!」
 魔族B:「ひでぶっ!」

 稲生:「あっという間……」
 マリア:「呪文を唱えている暇もない!」
 稲生:「2人とも!後ろの車両は混んでるから、なるべく前の方に行こう!」
 威吹:「相分かった。42番街に着くまで、先頭車に籠城作戦だな」
 稲生:「そういうこと!」

 アルカディア地下鉄の電車はほぼ6両編成である(高架鉄道は6両から8両。路面電車は1両または2両)。
 支線とはいえ、丸ノ内線や千代田線みたいに3両編成ということはなく、ここでもちゃんと6両編成であるようだ。

 魔族C:「させるかぁっ!」
 魔族D:「ヒャッハー!ここは通させねぇぜ!」

 バァンと貫通扉をブチ破って、RPGなら後半辺りに登場しそうなザコモンスター達が襲って来た。
 ザコとはいえ、主人公達のレベルが割と上がっている状態でエンカウントしてくる奴らだから、それなりに強いはずだ。

 威吹:「さようか。ならば、押し通る!」
 魔族E:「来いやぁーっ!」

 尚、先頭車に着くまで、威吹は1度も刀を抜かなかった。
 ふと後ろの車両を見ると、車内は死屍累々の地獄絵図だったという。
 威吹に殴り飛ばされて窓ガラスに頭から突っ込み、上半身だけ電車の外に飛び出ている者。
 乗降ドアに激突し、ドアを歪ませた状態で、右腕だけ窓ガラスの外に飛び出せている者。

 稲生:「先頭車に着いたぞ!」
 マリア:「中ボスか大ボスはいないのか?」
 稲生:「……いないみたいですね」
 威吹:「もしかして、このオバハンのことか?」
 逆さ女:「ぎゃあああああっ!?またお前らかーっ!」
 稲生:「逆さ女!?こんな所にいたのか!?」

 稲生の母校である東京中央学園上野高校の校内合宿所に巣くい、狙いをつけた生徒の血肉を貪っていた悪質妖怪である。
 名前の通り、姿を現す時は逆さまの状態である。

 威吹:「魔界でも悪さしてんのか、コノヤロ!」

 威吹、逆さ女にチョークスリーパーを掛ける。

 逆さ女:「ぎゃあああああっ!お、おお、お助けぇぇぇぇっ!妖狐様ぁぁぁっ!威吹様ぁぁぁっ!!」

 過去に威吹にボッコボコにされ、2度と人間を食わないという約束をさせていた。
 思いっ切り皮肉である。
 何故ならこの逆さ女、狙いをつけた人間の所(大抵は気弱な者)に真夜中現れ、妖怪という立場を利用して脅し、そして自分を見たことを誰にも言わないという約束をさせる。
 ところが、逆さ女はあの手この手で約束を破るように仕掛け、そうして約束を破った者をそういう理由で食い殺していたからである。
 妖怪のランクで言うなら、逆さ女より妖狐の方が断然上である。
 威吹にボッコボコにされた後も、しばらくは合宿所に留まっていたようだが、いつしか姿を消していた。
 どこに行ったのかと思っていたら……。

 威吹:「助けて欲しかったら、後ろの奴らを黙らせてこい!」
 逆さ女:「は、はいぃぃぃぃぃっ!」

 後ろの車両からは昏倒から覚めた魔族達がまだ威吹達に立ち向かってこようとする。
 逆さ女は急いで5両目に向かった。

 威吹:「あんなのか頭目を張っているようでは、この先もたかが知れてるな」
 マリア:「うんうん」
 稲生:「いや、あの……2人とも……ああ見えて、あの逆さ女も東京中央学園ではトップを争う有名凶悪妖怪だったんですよ」

 稲生やその他の校内メンバーだけだったら、間違い無く返り討ちにされたであろうとされる。
 威吹が強過ぎただけだ。

〔「まもなく終点……42番街……42番街……」〕

 その時、車内に幽霊のような声が響いた。
 一瞬、有紗がまた現れたのかと思ったが、ただの車内放送だったようだ。
 電車は薄暗いホームに到着した。

 稲生:「やっと着いた」
 威吹:「まだまだ、これからだよ。いかに最寄り駅とはいえ、駅前にあるわけではないだろう?」
 稲生:「そ、それもそうだな」

 3人は人けの無いホームに降りた。
 そして稲生は、運転室の中を覗いてみた。
 そこにいたのは……。

 稲生:「幽霊みたいな声だと思ったけど、やっぱり運転士もだったか」

 運転室には包帯だらけのミイラ男がいた。

[同日16:30.天候:晴 アルカディアシティ42番街 カジノ]

 稲生:「住所だと、ここなんだけど……」
 マリア:「明らかにカジノだな」

 
(モブキャラとして「スロットに興じる客」を演じる作者)

 カジノの中は気をつけていれば、エンカウントすることはないらしい。
 こういう娯楽場の中は意外と安全なのだ。
 外は超が付くほど危険であるが。

 稲生:「どこかに魔道師さんがいるはずですが……」
 マリア:「捜してみよう」

 マリアが水晶球を取り出した時だった。

 マリア:「っひゃあっ!?」

 突然後ろから肩を叩かれた。
 マリアがびっくりして振り返ると、そこには黒いローブを羽織り、フードも目深に被った魔道師の姿があった。

 威吹:「心臓に悪い現れ方をする魔女だなー」

 さすがの威吹も眉を潜めていた。
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