ノベラーエクスプレス関東

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“大魔道師の弟子” 「雨中行軍」

2018-05-21 10:14:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月11日00:30.天候:雨 曹洞宗保壽寺霊園入口]

 付近住民の通報を受けた警察は、霊園の入口近くに集結した。
 元々は発砲音ではなく、そもそも霊園内に不審者達がいるという通報であった。
 何しろ建設中とはいえ、近くにマンションがあるくらいだ。
 他にも既に居住者のいるマンションはいくつも建っているわけだし、例え真夜中とて、たまたまその様子を捉えた者がいてもおかしくはない。
 そんな時に、ライフルの発砲音だ。
 警察が大騒ぎしてもおかしくは無かった。
 で、霊園の入口に集まっていたところ、黒づくめの服にライフルを持った女が飛び込んで来たのだから、そりゃパニックになるだろう。

 マリアの魔法でマンションから飛ばされた女は、覆面パトカーの屋根の上に落ちた。
 “ゴルゴ13”など、スナイパーを主人公にした作品を御覧になったことのある方は分かると思うが、スナイパーが獲物を狙う時、大抵は高い所から狙う。
 そのマンションも7階建てて、女も最上階に陣取っており、そこから落ちたら死ぬのではないかと思われたが、そこはマリアの魔法。
 それなりに気を使ったようで、何台も止まっているパトカーのうち、屋根に1番着地しやすい覆面パトカーの上を狙ったという徹底ぶり。
 他の普通のパトカーは、屋根の上に大きなパトランプとか色々付いているため。
 車の屋根は意外と柔らかく、車自体は着地の衝撃で大破するものの、これがクッションとなって、マンションの7階や8階くらいから転落しても助かったという事例は存在する。
 今回もそう。
 しかも、着地の衝撃でライフルをもう1発暴発させるというオマケ付き。
 そのライフル弾は、他のパトカーのパトランプを撃ち壊した。

 威吹:「マリア、無事か?」
 マリア:「何とか。勇太は?」
 威吹:「まだ気絶してる。ケガはしていないようだ。だが、頭だからな。どうする?」
 マリア:「私が回復魔法を掛けよう」

 マリアは1番簡単な回復魔法を掛けた。

 威吹:「オレ達、被害者として名乗り出るか?」
 マリア:「いや、やめておこう。こんな時間に墓に行っていたことを詮索されると面倒だ」
 威吹:「そうか?特に、墓暴きに来たわけではないのだから、堂々としていれば良いと思うが……」
 マリア:「骨壺を探しに来たという時点でアウトだと思うぞ」
 威吹:「オマエの占いで発見したんだから、それで良いではないか」
 マリア:「ここがアメリカやイギリスとかだったら、それでもOKだったんだろうがな。日本人はこういうの信じないんだ」
 威吹:「オレの時代の時(江戸時代初期)は結構信じられたものだったがな」
 マリア:「……あの女のことだから、きっと警察の取り調べにも黙秘を貫くだろうな」
 威吹:「ああ、そうか。あの女と対峙したのか。どうだった?」
 マリア:「勇太が目を覚ましたら話すよ。それより今は、どこか雨宿りできる所を探そう」
 威吹:「うむ……」

 威吹達がバス通りに出た時だった。

 威吹:「うぬ?」

 車通りも殆ど無い道を1台のバスがやってきた。
 しかしそのバスはとても古めかしく、とてもワンステップやノンステップバスには見えなかった。
 車体の塗装からして、仙台市交通局に酷似しているが……。
 車体側面の社名が記載されている部分には、『冥界鉄道公社乗合自動車部』と書かれていた。
 通称、『冥鉄バス』である。
 そのバスは、すぐ近くのバス停で停車した。

 威吹:「我々を待ち構えているみたいだが?あれは、あのまま魔界に連れて行かれるというものか?」
 マリア:「いや、違うな。魔界に自動車の乗り入れは禁止されてる。霊界のどこかで間違いない」
 威吹:「最悪、キノの所に世話になるってか。まあいい。雨宿りがてら、乗せてもらおう」

 バス停に行くと、バスは前扉を開けていた。
 仙台市内のバスは基本的に中扉から乗って前扉から降りる方式なのだが、冥鉄バスでは基本的に前乗り後ろ降りである(前扉しか無い車種あり)。 

 威吹:「オレ達は亡者ではないが、乗っても構わぬのか?」

 すると黒い制服をきちんと着用し、同じ色の制帽を被った運転手はコクコクと頷いた。
 その顔は……ガイコツそのものだった。
 もっとも、威吹達はそういうのを何度も見ているから想定内である。

 威吹:「では、都営バスと同じ運賃の210円でも入れておくでござるよ」

 先日、菊川駅前から東京駅丸の内北口まで乗った時、運賃が値上がりしていたことを知らなかった威吹。
 Suicaで支払った際、中途半端な額が引き落とされていたことに驚いていた(普通運賃とIC運賃に分かれたことを知らなかった)。
 運賃を払った後、後ろの席に座る。
 他に乗客はいなかった。
 バスは威吹達を乗せると、前扉を閉めて発車した。
 雨が降っているので、ワイパーが規則正しい動きで雨を拭き取っている。
 今時、床が木張りのバスも珍しい。
 今はもう現存していないだろう。
 鉄道車両が旧型ならば、バスもまたそうであるということ。
 それが冥界鉄道公社だ。
 バスはあえて市街地の方に向けて走って行った。
 途中、あの霊園の方へ向かう小道の前を通るが、バスはそこで止まった。
 サイレンを鳴らした救急車やパトカーが出て来たからだ。
 さすがにあの女も大ケガはしただろうから、それで救急車が呼ばれたのだろう。
 しかし、ライフルを違法に持っていた容疑者だから、警察の護衛付きというわけか。

 マリア:「絶対に黙秘を貫くと思う」
 威吹:「オレに尋問を任せてくれれば、吐かせてやるのだが……」

 江戸時代には様々な拷問があったらしいが……。

 威吹:「キノのいる地獄界は叫喚地獄だったな。本当にこのバスはそこまで行くのか?」
 マリア:「最悪、閻魔庁でもいいんじゃないか?キノは今や閻魔庁勤務なのだろう?」
 威吹:「それもそうだな」

 稲生:「う……」

 稲生は呻き声を上げた。

 稲生は今、マリアに膝枕をされているのだが、それで起き上がった。

 稲生:「あれ……?ここは……?」
 マリア:「バスの中だ。ちょっと今、移動している」
 稲生:「バスの中!?」
 威吹:「心配いらん。ちょっと、場所を移動するだけだ。この分だと、着くまでもう少し時間が掛かりそうだから、もう少し寝てても大丈夫だよ」
 稲生:「一体、何が?」
 マリア:「後で話すよ。私も疲れた……」

 多分、魔法を何度か使ったマリアが1番疲れたのは事実だろう。
 バスは真夜中の市内を雨が降る中、西へ向かって進んだ。
ジャンル:
小説
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