報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ファイナルファイト」

2018-05-12 10:13:58 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間4月9日16:00.天候:晴 魔界高速電鉄(アルカディアメトロ)9号線・42番街支線]

 49番街もまた比較的治安の悪い地域とはいえ、駅構内はまだ秩序が保たれていた。
 ところが、42番街へ行く9号線の支線にあってはとんでもない状況になっていた。
 例えて言うなら、昔のニューヨークの地下鉄。
 電車の内外が落書きだらけで走っていた頃のニューヨーク地下鉄だ。
 車両も当時のものが使われていた。
 で……。

 魔族A:「ヒャッハー!久しぶりの人間だぜぇ!」
 魔族B:「獲物じゃ!獲物じゃ!」

 この支線内から電車内だろうと駅構内だろうと、エンカウントするのである。
 ところが……。

 威吹:「あぁ?」

 威吹は刀を抜くまでもなく、拳で伸してしまうのだった。

 魔族A:「あべしっ!」
 魔族B:「ひでぶっ!」

 稲生:「あっという間……」
 マリア:「呪文を唱えている暇もない!」
 稲生:「2人とも!後ろの車両は混んでるから、なるべく前の方に行こう!」
 威吹:「相分かった。42番街に着くまで、先頭車に籠城作戦だな」
 稲生:「そういうこと!」

 アルカディア地下鉄の電車はほぼ6両編成である(高架鉄道は6両から8両。路面電車は1両または2両)。
 支線とはいえ、丸ノ内線や千代田線みたいに3両編成ということはなく、ここでもちゃんと6両編成であるようだ。

 魔族C:「させるかぁっ!」
 魔族D:「ヒャッハー!ここは通させねぇぜ!」

 バァンと貫通扉をブチ破って、RPGなら後半辺りに登場しそうなザコモンスター達が襲って来た。
 ザコとはいえ、主人公達のレベルが割と上がっている状態でエンカウントしてくる奴らだから、それなりに強いはずだ。

 威吹:「さようか。ならば、押し通る!」
 魔族E:「来いやぁーっ!」

 尚、先頭車に着くまで、威吹は1度も刀を抜かなかった。
 ふと後ろの車両を見ると、車内は死屍累々の地獄絵図だったという。
 威吹に殴り飛ばされて窓ガラスに頭から突っ込み、上半身だけ電車の外に飛び出ている者。
 乗降ドアに激突し、ドアを歪ませた状態で、右腕だけ窓ガラスの外に飛び出せている者。

 稲生:「先頭車に着いたぞ!」
 マリア:「中ボスか大ボスはいないのか?」
 稲生:「……いないみたいですね」
 威吹:「もしかして、このオバハンのことか?」
 逆さ女:「ぎゃあああああっ!?またお前らかーっ!」
 稲生:「逆さ女!?こんな所にいたのか!?」

 稲生の母校である東京中央学園上野高校の校内合宿所に巣くい、狙いをつけた生徒の血肉を貪っていた悪質妖怪である。
 名前の通り、姿を現す時は逆さまの状態である。

 威吹:「魔界でも悪さしてんのか、コノヤロ!」

 威吹、逆さ女にチョークスリーパーを掛ける。

 逆さ女:「ぎゃあああああっ!お、おお、お助けぇぇぇぇっ!妖狐様ぁぁぁっ!威吹様ぁぁぁっ!!」

 過去に威吹にボッコボコにされ、2度と人間を食わないという約束をさせていた。
 思いっ切り皮肉である。
 何故ならこの逆さ女、狙いをつけた人間の所(大抵は気弱な者)に真夜中現れ、妖怪という立場を利用して脅し、そして自分を見たことを誰にも言わないという約束をさせる。
 ところが、逆さ女はあの手この手で約束を破るように仕掛け、そうして約束を破った者をそういう理由で食い殺していたからである。
 妖怪のランクで言うなら、逆さ女より妖狐の方が断然上である。
 威吹にボッコボコにされた後も、しばらくは合宿所に留まっていたようだが、いつしか姿を消していた。
 どこに行ったのかと思っていたら……。

 威吹:「助けて欲しかったら、後ろの奴らを黙らせてこい!」
 逆さ女:「は、はいぃぃぃぃぃっ!」

 後ろの車両からは昏倒から覚めた魔族達がまだ威吹達に立ち向かってこようとする。
 逆さ女は急いで5両目に向かった。

 威吹:「あんなのか頭目を張っているようでは、この先もたかが知れてるな」
 マリア:「うんうん」
 稲生:「いや、あの……2人とも……ああ見えて、あの逆さ女も東京中央学園ではトップを争う有名凶悪妖怪だったんですよ」

 稲生やその他の校内メンバーだけだったら、間違い無く返り討ちにされたであろうとされる。
 威吹が強過ぎただけだ。

〔「まもなく終点……42番街……42番街……」〕

 その時、車内に幽霊のような声が響いた。
 一瞬、有紗がまた現れたのかと思ったが、ただの車内放送だったようだ。
 電車は薄暗いホームに到着した。

 稲生:「やっと着いた」
 威吹:「まだまだ、これからだよ。いかに最寄り駅とはいえ、駅前にあるわけではないだろう?」
 稲生:「そ、それもそうだな」

 3人は人けの無いホームに降りた。
 そして稲生は、運転室の中を覗いてみた。
 そこにいたのは……。

 稲生:「幽霊みたいな声だと思ったけど、やっぱり運転士もだったか」

 運転室には包帯だらけのミイラ男がいた。

[同日16:30.天候:晴 アルカディアシティ42番街 カジノ]

 稲生:「住所だと、ここなんだけど……」
 マリア:「明らかにカジノだな」

 
(モブキャラとして「スロットに興じる客」を演じる作者)

 カジノの中は気をつけていれば、エンカウントすることはないらしい。
 こういう娯楽場の中は意外と安全なのだ。
 外は超が付くほど危険であるが。

 稲生:「どこかに魔道師さんがいるはずですが……」
 マリア:「捜してみよう」

 マリアが水晶球を取り出した時だった。

 マリア:「っひゃあっ!?」

 突然後ろから肩を叩かれた。
 マリアがびっくりして振り返ると、そこには黒いローブを羽織り、フードも目深に被った魔道師の姿があった。

 威吹:「心臓に悪い現れ方をする魔女だなー」

 さすがの威吹も眉を潜めていた。

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