報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「帰りの旅」

2015-05-02 20:02:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月24日09:45.天候:晴 JR旭川駅 稲生ユウタ、マリアンナ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・スカーレット]

〔「4番線に停車中の列車は9時55分発、函館線特急“スーパーカムイ”16号、札幌方面新千歳空港行きです。発車までご乗車になり、お待ちください。……」〕

 新しい駅舎の階段を登り、高架ホームに上がると5両編成の新型特急が停車していた。
 ホームと階段の間に仕切り扉があるのは、いかにも極寒の地らしい。

〔「……4号車は指定席uシート車です。乗車券の他、指定席特急券が必要です」〕

「藤谷班長が乗った785系とは違いますねー」
 そう言いつつ、4号車に乗り込むユタ。
「師匠。寝るなら、せめて乗ってから!」
「参ったよぉ……。夜中も来訪者が来るなんて……」
「師匠も魔道師の世界じゃVIPなんですから、当たり前じゃないですか」
「たははは……」
 ユタは座席をくるっと向かい合わせにした。
「いいんじゃない?そのままで。どうせ師匠寝てるし」
「いえ、札幌で進行方向が変わるんですよ」
「そうなの?」
「先生は窓側に座って頂いて……」
「うぃー……着いたら起こしてね……」
 イリーナは頭からローブのフードを被り、あとは座席を倒して爆睡モードに入った。
 旧型の785系と比べてヘッドレストは浅いが、上下可動式のピローが付いている。
「空港まではどのくらい?」
「2時間ちょっとですね」
「そんなものか」
「そんな所です」
 その割には車販は無いので、ホームの売店で用意する必要あり。
 ユタは帰りの旅に必要なチケットを全て出した。
「飛行機の時間が14時30分。この電車の新千歳空港着が12時2分です」
「約2時間か」
「国内線だから、そんなに急ぐ必要も無いでしょうからね。また、あの温泉入ってみます?」
「おっ、いいね。師匠、温泉ですって」
「クカー……」
「ダメだ。寝てる」
「この魔道師は……」
 2人の弟子は寝付きの早い師匠に呆れた。

[同日09:55.JR函館本線L特急“スーパーカムイ”16号4号車内 ユタ、マリア、イリーナ]

 電車は静かに旭川駅を定刻通りに発車した。

〔これから先、揺れることがありますので、お気をつけください。お立ちのお客様は、お近くの手すりにお掴まりください。今日もJR北海道をご利用頂きまして、ありがとうございます。函館線、千歳線直通、L特急“スーパーカムイ”、新千歳空港行きです。……〕

 抑揚の無い男声の自動放送が車内に鳴り響く。
 その後流れる女声の英語放送だけ、東北新幹線で流れる英語放送と声優が同じだ。
「さすがにこの前来た時より、すっかり雪は融けてますね」
「もう春だしね」
 この前の北海道には、普通にユタの大学卒業旅行として、イリーナが連れてきてくれたもの。
 新しく迎え入れた弟子を旅行に連れて行くのは、ダンテ一門の伝統らしい。
 もっとも、それを律儀に踏襲しているのはイリーナくらいのもの。
 イリーナ自身、大師匠ダンテに買われて弟子入りした際、ダンテの思い付きで旅に連れられたことがいい思い出だったらしい。
 その話を思い出したユタは、
「マリアさんも弟子入りした後は、先生と旅行に行ったんですか?」
「私の場合はイギリスを脱出して、フランスやドイツに行ったけどね」
「へえ……」
「多分、ユウタなら楽しかったんじゃないか?」
「えっ?」
「移動は高速鉄道だったよ」
「おっ、ということは!?英仏海峡トンネルを通る“ユーロスター”とか?」
「それでイギリスからはおさらばだ。フランスではTGV(フランス新幹線)に乗ったし、ドイツではICE(ドイツ新幹線)に乗った」
「いいですねぇ……」
「頼めば連れてってくれるんじゃないの?」
 マリアは爆睡しているイリーナをチラッと見て言った。
「それにはもう少し、英語力を付けないとなぁ……」
 ユタは頭をかいて笑った。
「でも、フランスやドイツは……まあ、英語通じるか」
「師匠は50ヶ国語くらい喋れるからいいけどね。私もイギリスでフランス語を5年くらい習ったけど、全然喋れない」
「ご、ごじゅ……!?」
 そのうちの1つに日本語があるわけだ。
「最低でもエレーナみたいに5ヶ国語くらい、素で喋るようになりたいもんだね」
「エレーナさんも、何でそんなに喋れるんですか?」
 その為、東京のホテルで働いていた時、外国人宿泊客との接客には困らなかったという。
「さあ……」
「イリーナ先生と同じロシア人だから、ロシア語が母国語で、それにプラス英語?」
「日本語と中国語と……あと何だっけ?韓国語?……一応、ロシアとその周辺の国の言葉は喋れるってさ」
「そりゃ凄い!僕も早く上達しないと……」
「私も、もう少し勉強しようか。せっかく日本に住んでるのに、エレーナや師匠みたいに素で喋れるくらいにはなるべきか」
「あ、そうか。それ、魔法で喋ってるんでしたっけ?」
「そう」
「素だと、どれくらい喋れます?」
「うーん……」
 そこへ車掌が検札にやってきた。
「失礼します。乗車券と特急券を拝見致します」
「あ、はい」
「ゴクドーサマデス」
「?」
「? ……新千歳空港までですね。ありがとうございました」
 一瞬、時間が止まるユタ達の座席回り。
「あれ?間違えた?ドゥブラェウートゥラ?」
「……それ、ロシア語」
 寝ていたイリーナが一瞬目を覚まし、マリアにツッコんだ。
 ユタは自分のスマホを出した。
「あなたも、もう少し外国語の勉強が必要かもね」
「はあ……」
「よし。じゃあ、あなたは素で日本語が喋れるまでになりなさい。ユウタ君が英語が素で喋れるようになるのとは、対照的にね」
「すると、先生……」
「お互い、切磋琢磨しなさい。マリアはユウタ君にいくらでも日本語の質問をしていいし、ユウタ君は英語の勉強に対してマリアにいくらでも聞いていいから」
「あ、はい。分かりました」
「帰ったら、本格的にね」
「分かりました」

「ドゥブラェウートゥラ……分かった。『おはようございます』ですね」
 ユタがスマホでロシア語の翻訳をし、ようやくマリアが呟いたロシア語の意味が理解できた時、既に列車は札幌市内の高架線を走行していたという。
「遅イヨ……」
 マリアは呆れていた。
 で、片言の日本語で素でツッコんだのだった。
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“大魔道師の弟子” 「旭川滞在」 final 

2015-05-02 15:59:27 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月23日15:30.天候:晴 イオンモール旭川駅前4階・イオンシネマ 稲生ユウタ&マリアンナ・スカーレット]

 新しくできたモール内のシネマコンプレックスで映画を観ているユタとマリア。
 ジャンルはホラーアクションなのだが、かつては妖狐を連れていたユタと、魔道師として恐れられる側としては大した恐怖は無く……。

〔「メーデー…メーデー…こちらクイーンゼノビア……救難信号……メーデー…メーデー……めぇえええええでぇええええええええ!!!!!!!!!」「な、なに、コイツ?!」「気をつけろ!今までのとは違うぞ!」〕

(ホムンクルスで作れそうな化け物……でもないか)
 マリアはユタとの間に置いたポップコーンを口に運んだ。
(ヤノフ城で、あんなのと相手しなくて良かった……)
 ユタは映画の主人公達が化け物と苦戦している様子を見て、心底ホッとした。
 最後にその化け物は主人公達にライフルやマシンガンを何発も食らって、ようやくあの世へ送られたのだが。

〔「これが通信士長の成れの果てか!?」「非常用通信室の鍵を持っていたから、間違いないわね」〕

 いかにも化け物ですといった者に関しては、ユタも緊張するだけで震え上がるほどではない。
 それほどまでに、今までの激戦で慣れさせられてしまったということだ。
 幾度と無く色々な中ボスが現れる、ハリウッドのホラーアクション映画。
 人間がウィルスに感染して化け物になってしまったものが怖かったが、完全に化け物になってしまい、人間だった名残が殆ど無くなってしまった者に関しては、そんなに怖いという感じはしない。
 緊張はするが。
 で、当然映画の方もそれが分かっているらしく、ちゃんと人間だった名残がかなりある中ボスが登場してきた。

〔ベチャ……ビチャ……。「みぃつけたぁ…きゃははははっ……!」「!」〕

「!!」

〔{「どうした、ジル!?」}「目標と遭遇したわ!でも、彼女は……」{「感染してたっていうのか!?」}……「わたしのぉ…ごちそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうぅぅ!!!!」〕

「……!……!」
 ユタは少し震える感じで、横にあるコーラを取った。
(さすがに人間だった頃を知る登場人物が、その後感染して再登場ってのは怖すぎるな……)
 ユタはコーラを一口啜る。
 だが、隣のマリアから視線を感じた。
「?」
 マリアはユタの飲み物に視線を向けていた。
「な、何ですか?」

〔「キャアアアッ……!」〕

「おっ!?」
 どうやら主人公が、感染して襲い掛かって来た半分化け物を倒したらしい。

〔「やっぱり彼女がレイチェルだったのね」〕

 主人公が倒した半分化け物から鍵を取った。
 それを見てから、ユタが、
「何ですか?」
 と聞いた。
 すると、パッとマリアがユタの飲み物を奪い取る。
 そして、ユタが口を付けたストローに自分も吸い付いた。
「!?」
「これ、私の」
「……あっ!?」

〔「ジル、無事か!?」「何とかね。鍵を手に入れたわ」〕

[同日17:00.イオンモール旭川駅前 ユタ&マリア]

「す、すいません。よそ見してたせいで、間違ってマリアさんの飲んじゃって……」
「……まあ、いいけど。それにしても、ユウタも結構怖い映画好きだねー?」
「主人公が非力で、化け物や敵から逃げ回ったり隠れたりするのもいいんですけど、銃火器で武装した特殊部隊が派手に戦ってくれるのは見ててスッキリするんですよ」
「魔法で作った化け物も、今ではショットガンやライフルで倒されてしまう時代だからなぁ……」
「え?」
「……って、師匠が言ってた」
「そうなんですか。でもイリーナ先生なら、無敵の怪物でも作れそうですけどねぇ……」
「戦車の使用を一般解禁するようなもので、こっちの身が持たなくなるってさ」
(一般人が戦車に乗るとは思えないけど……)
 と、ユタは思った。
「ちょっと早いんですけど、夕食どうします?ここで食べて行きますか?」
「そうだね。どうせ師匠は、お偉方との付き合いで、私達とは一緒にできないだろうから」
 午後からイリーナの身を案じた魔道師達が引っ切り無しにやってきて、イリーナはその対応に追われた。
 国内にいた魔道師は元より、外国からもわざわざ来たくらいだ。
 既に弟子としてのマリアは知られているし、ユタに関してもわざわざ紹介するまでもないということで手持無沙汰になり、こうして街中に出たわけである。
 駅前に新しいイオンモールができたということで、ここに来てみたという経緯である。
「何か、旅行の度にイオンモールに来てる感じですね」
「まあ、私の家の近くには無いから」
「確かに……」
「ユウタの家の近くにはあって、羨ましかったよ」
「そうですか?」
 イオンモール与野である。

 レストラン街で店を探した。
 取りあえず、そこで見つけた和食の店に入ることにした。
 帰宅後は、またしばらく和食が口にできなくなるからと……。

[同日19:00.旭川市内ビジネスホテル ユタ、マリア、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 夕食を終えてホテルに戻る。
 するとロビーにイリーナと、向かい合って別の魔道師が座っていた。
「おっ、ちょうど弟子達が帰って来たわ」
「そうですか」
「ただいま、戻りましたー」
「おー、ご苦労さん」
 どうやら魔道師の地位の高い者達と本当に会食をやったらしく、イリーナからは少し酒の臭いがした。
 もっとも、ユタとマリアも実は夕食時に乾杯したのだが。
「あれ?新しく入れたお弟子さんって、男性ですか?」
「ええ」
 イリーナと向かい合って座る魔道師は、少年のようであった。
 まるで地元の中学生か高校生が学校の制服着て、イリーナと向かい合ってる感じ。
「気をつけて。あれでも、500年以上は生きてるから」
 マリアがコソッとユタに耳打ちした。
「稲生ユウタです。今月付けで、イリーナ先生の弟子になりました」
「エリック・ハミルトンです。うーむ……」
 エリックと名乗る少年のような魔道師は、ユタの顔から足元まで見回した。
「な、何ですか?」
「オタクっぽい見た目からは溢れ出るオーラ。タダ者ではないと見た!」
「ええっ?」
「でしょー?何しろそのコ、ついこないだまで妖狐を手なずけてたくらいだからね」
「ええっ!?」
「そ、そんな……。手なずけるなんて……」
「あの高等妖怪の一種、妖狐をですか」
「契約金として、いきなり小判60両せしめたってよ」
「せしめてませんよ!威吹の方からくれたんです!」
「ううっ、そんな逸材が日本にいたなんてなぁ!」
「探せば、まだまだ日本にはダイヤモンドの原石がいるかもよー?」
「よ、よし!こうしちゃいられない!ボクも早く後継者を探さないと!」
 エリックは魔道師のローブを着込むと、ホテルから出て行った。
「ふぅ……。来訪者の相手をするのも大変だよー」
 イリーナはトントンと自分の肩を叩いた。
「面会者はこれで最後ですか?」
 ユタが聞くと、
「だと、いいんだけどねぇ……。ああ、あなた達は気にしなくていいからね」
「明日、ここを出発しますから、もうお休みになられては?」
 ユタが促すと、
「あー、そうだねぇ……。このホテル、大浴場があるんだっけ?」
「ええ。最上階に」
「ちょっと、浸かってこようかねぇ……」
「その方がいいですよ」

 ユタもまた、フロントに預けていた鍵をもらった。
 旭川市滞在最終日の今日も、平和で終わった。
 “魔の者”との戦いが、まるで嘘のように……。
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小説の途中ですが、本日の雑感をお送りします。

2015-05-02 00:33:38 | 日記
 日付が変わってしまったが、メーデーは私にとって風物詩の1つである。
 出世に全く縁の無い私が、シュプレヒコールを上げられる側に回ることは今生において望み薄であろう。
 そんな人間の特権だ。
 大いに使わせて頂く。
 それで、だ。
 何も、文句を言う相手は富裕層だけではない。
 年に10回以上の登山や数時間の唱題を行っているにも関わらず、一向に功徳の現証を寄越さない御本尊に対しても功徳の要求を行った。
 周囲で唱題中の信徒達がビックリしていたのだから、私のキレ具合も相当だっただろう。

 功徳も寄越さないで、おとなしく拝まれると思ったら大間違いだぞ!

 という鬱憤をブチまけて、後は逃走。
 ま、気に入らなかったら、クビでも何でもして頂いて結構。
 宗教なら他にも沢山あるんだし、御利益のある所をまた探すだけだ。

 厳虎独白で妙観講員の大沢さんと学会員の沖浦さんが、またバトルを繰り広げておられる。
 沖浦さんの言い分も分かる。
 生い立ちが本当であるなら、確かに功徳と言えばそんな気もする。
 沖浦さんの求めた功徳というのは、貧困からの脱却だったのか。
 彼の体験発表が本当であるなら、確かにそれは成功したのであろう。
 それを功徳と呼ぶことには吝かではない。
 そして、大沢さんの仰ることも分かる。
 ここに引用させて頂くが、

>本当に自ら信仰の功徳を実感している人は、誰に何を言われなくても自ら動きますよ。

 である。
 厳虎独白でも書かせて頂いたが、功徳の実感が無い私がストライキに入るのもしょうがないということだ。
 しかし妙観講は私の所属先の「求める信心」に対し、「引っ張る信心」だと聞いたのだが、功徳の実感の無い人にはどうしているのやら……。
 “となりの沖田君”を見ていると、少し嫌な予感がするのだが、まあ気のせいということにしておこう。

 よほどの事が無い限り、次回は小説の続きを書く予定です。
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