[4月24日12:30.天候:晴 新千歳空港・新千歳空港温泉 稲生ユウタ、マリアンナ・スカーレット、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]
かつてはケンショー・レンジャーとの戦いがあった新千歳空港温泉。
しかし今はそんなこともなく、ユタは内湯や露天風呂を楽しんでいた。
(さて、そろそろ上がろう。お昼を食べてゆっくりしていれば、ちょうど飛行機の時間だ)
ユタはそう考えて大浴場から脱衣所に入った。
そこのロッカールームで服を着ていると、
「えー、お風呂上りに冷たい牛乳はいかがですかー?」
片隅に牛乳売りの屋台が出ていた。
それはまるでアイスキャンデー売りの屋台に似ていた。
クーラーボックスの中に、瓶入りの牛乳が入っているようだった。
屋台の店主は麦わら帽子を深く被り、顔はよく見えないが、眼鏡を掛けた中年の男だった。
藤谷春人の父、秋彦と同じくらいだろうか。
服を着終わったユタが近づくと、
「毎度どうも」
「オジさん、そこの自販機でも牛乳売ってるけど、どう違うの?」
ユタが不思議そうに聞いた。
「クフフフフフ……あ、いや、失礼。この牛乳は特製で、そんじょそこらの牛乳とは違うのですよ。どうぞ、お試しください」
「いくら?」
「一本200円です」
「高っ!?」
「クフフフフフ……だから、そんじょそこらの牛乳とは違うと言ったでしょう?」
「ちょっとよく見せて」
ユタはクーラーボックスに入った牛乳瓶を手に取った。
「うっ!こ、これはっ!?鶴丸マーク!?……芙蓉茶寮!?や、やっぱり要らないっ!」
バァーン!(牛乳売りのオヤジの背後にある機械室のドアが思いっきり開く)
「ああっ!?てめっ、ユタ!手に取っちまったもんは、もう後に引けねーぜ、ああっ!?」
「ああっ!ケンショーブルー!?ということは……!」
「グリーンです。先般の総幹部会における大感動は、未だ覚めやらぬものであります」
「で、で、出たーっ!!」
「ああっ!?てめー!人をオバケみたいに言うんじゃねーよ、ああっ!?」
「クフフフフフフ……。稲生君、久しぶりに会ったら、少し太ったんじゃありませんか?この特製牛乳は罪障消滅剤が入っているのです。これを飲んで、お腹の中の罪障を消滅させませんか?ええ、それはもうスッキリしますよ」
「下剤入りかよ!?危ないなぁ!!」
「つべこべ言わずに、飲め、コラ!オメーはよー、センセーの牛乳が飲めねーってのかよー、ああっ!?」
「飲めるかーっ!」
ユタ、一目散に逃走。
「ま、待ちなさい!誓願販売数がまだ……」
「待てや、コラーッ!!」
しかし、ユタの逃げ足は速い。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ゼェ……ゼェ……。くそ……!何でこんなにキツいんだ……ああっ?」
「よ……よる……よる……」
「夜?グリーン、てめー、何言って……」
「よ、寄る年波には勝てないものですね……グフッ!」
「だが心配ねぇ……。女湯はパープルが行ってるはずだぜ……」
「いたぞ!不審者!」
「おとなしくしろ!」
ガシッ!(駆け付けた警備員達に捕まるブルーとグリーン)
「勝手に牛乳売りの商売しやがって!警察に突き出してやる!!」
ズールズールと引きずられるブルーとグリーン。
[同日同時刻 新千歳空港温泉・女湯 マリアンナ・スカーレット]
(師匠、先に上がっちゃったなぁ……。まあいいか)
後から上がる弟子のマリア。
恐らくイリーナは大好きなリラクゼーションを受けに行ったのだろう。
今頃、そこでボディケアでも受けていると思われる。
(お年寄りだからしょうがないよね)
普段はR35の姿をしているが、実際は齢1000年の老魔女なのである。
弟子が若い魔女なら、師匠は老婆の法則だ。
魔法を使って姿を若返らせているとはいえ、それでも30代より下まで下げることは不可能だったようだ。
「ん?」
バスタオルで体を拭いて下着を着けていると、ロッカーの中に小瓶が入っているのに気づいた。
鍵は掛けていたのだが、置いたのがイリーナだと分かると、何ら不思議は無い。
何でもありの大魔道師なら、鍵を掛けていようが……ということだ。
その小瓶の下にはメモ書きで、何か書いてあった。
「……日本語で書きやがって、あの婆さん……!」
マリアは英語で文句を呟いた。
(後でユウタに訳してもらおう)
服を着て外に出ようとすると、
「あー、そこのかわいいお嬢ちゃん、美味しい牛乳はいかがかの?」
「?」
脱衣所の片隅に、牛乳売りの屋台があった。
「あー、プリーズ・ドリンク・ザ・ミルク。ディス・イズ・デリシャス」
牛乳売りの老婆はヘタな英語で話し掛けてきた。
「大丈夫です。日本語分かります」
マリアは魔法で、自分の話す言葉を日本語に切り替えた。
自分は英語を喋っているのに、聞いている側は日本語に聞こえるという不思議な魔法だ。
「おおっ、何じゃ!それを早く言っとくれ!日本ではな、風呂上りには必ず牛乳を飲むという習慣があるのじゃぞ?外人の娘さんもどうじゃ?」
「牛乳か。しかし、そこの自動販売機でも似たようなのが売ってるけど……」
「ギクッ!……い、いや、この牛乳はの、そんじょそこらのモノとは格が違うのぢゃ。1本200円もする高級品じゃぞい!」
「高っ!?……もしかして、観光客だと思って吹っ掛けてる?」
さすがはヨーロッパ人。
日本人観光客と違って、そう簡単に騙されない。
「そんなことは無いぞい。新聞も200円じゃからのぅ……」
「新聞?牛乳と、どう関係が?……とにかく、200円は高いわ。もっと負けて」
ズイっと値引きに掛かるマリア。
日本人観光客なら言い値でそのまま買ってしまうところだが……。
「う、うむ……では、180円に……」
「あそこの自販機では110円だが?せめて130円だね」
「が、外人さん、それではわらわが赤字ぢゃ。せめて150円にしてくれ。先生に申し訳立たぬでな……」
「先生?」
「な、何でもない……!」
「じゃあ、150円にしてあげるよ」
「ま、毎度ありー!冷たい今のうちに飲むのぢゃ!」
「はいはい」
マリアは言われた通り、牛乳を飲んでしまった。
瓶にはやはり鶴丸マークがあったのだが、
(JALと何かコラボした商品なのか?)
としか思わなかったし、
(難しい漢字が書いてあるけど、まあ日本製なんでしょう……)
としか思わなかった。
(それにしても不思議な味……。日本の牛乳って、こんな味なのかしら?)
飲んだ後、脱衣場から出るマリア。
それを見届けた牛乳売りの老婆は、
「成功ぢゃ!グリーンとブルーの役立たずの穀つぶし共はダサく捕まったようじゃが、やはりわらわがセンセーの御心に1番お応えできる唯一の……」
ガシッ!
「ん?」
「ちょっと、そこの紫のお婆さん?ちゃんと営業許可は取ってる?取ってないよね?ちょっと一緒に来てくれる?」
女子プロレスラーみたいな体躯のデカい女性警備員に掴まるパープル。
「うおおおっ!?な、何をする!?ワシゃ、センセーに唯一お応えできる最高幹部の……」
「はいはい。お話は向こうでしましょうね」
ズールズールと引きずられるパープルだった。
(じゃが、特製牛乳を飲ませることには成功したぞい。あとはセンセーの祈りに任せるのみ。ワシはあの逝ってしまった使用済み婆やでもなければ、捨て駒なんぞでもない……)
かつてはケンショー・レンジャーとの戦いがあった新千歳空港温泉。
しかし今はそんなこともなく、ユタは内湯や露天風呂を楽しんでいた。
(さて、そろそろ上がろう。お昼を食べてゆっくりしていれば、ちょうど飛行機の時間だ)
ユタはそう考えて大浴場から脱衣所に入った。
そこのロッカールームで服を着ていると、
「えー、お風呂上りに冷たい牛乳はいかがですかー?」
片隅に牛乳売りの屋台が出ていた。
それはまるでアイスキャンデー売りの屋台に似ていた。
クーラーボックスの中に、瓶入りの牛乳が入っているようだった。
屋台の店主は麦わら帽子を深く被り、顔はよく見えないが、眼鏡を掛けた中年の男だった。
藤谷春人の父、秋彦と同じくらいだろうか。
服を着終わったユタが近づくと、
「毎度どうも」
「オジさん、そこの自販機でも牛乳売ってるけど、どう違うの?」
ユタが不思議そうに聞いた。
「クフフフフフ……あ、いや、失礼。この牛乳は特製で、そんじょそこらの牛乳とは違うのですよ。どうぞ、お試しください」
「いくら?」
「一本200円です」
「高っ!?」
「クフフフフフ……だから、そんじょそこらの牛乳とは違うと言ったでしょう?」
「ちょっとよく見せて」
ユタはクーラーボックスに入った牛乳瓶を手に取った。
「うっ!こ、これはっ!?鶴丸マーク!?……芙蓉茶寮!?や、やっぱり要らないっ!」
バァーン!(牛乳売りのオヤジの背後にある機械室のドアが思いっきり開く)
「ああっ!?てめっ、ユタ!手に取っちまったもんは、もう後に引けねーぜ、ああっ!?」
「ああっ!ケンショーブルー!?ということは……!」
「グリーンです。先般の総幹部会における大感動は、未だ覚めやらぬものであります」
「で、で、出たーっ!!」
「ああっ!?てめー!人をオバケみたいに言うんじゃねーよ、ああっ!?」
「クフフフフフフ……。稲生君、久しぶりに会ったら、少し太ったんじゃありませんか?この特製牛乳は罪障消滅剤が入っているのです。これを飲んで、お腹の中の罪障を消滅させませんか?ええ、それはもうスッキリしますよ」
「下剤入りかよ!?危ないなぁ!!」
「つべこべ言わずに、飲め、コラ!オメーはよー、センセーの牛乳が飲めねーってのかよー、ああっ!?」
「飲めるかーっ!」
ユタ、一目散に逃走。
「ま、待ちなさい!誓願販売数がまだ……」
「待てや、コラーッ!!」
しかし、ユタの逃げ足は速い。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ゼェ……ゼェ……。くそ……!何でこんなにキツいんだ……ああっ?」
「よ……よる……よる……」
「夜?グリーン、てめー、何言って……」
「よ、寄る年波には勝てないものですね……グフッ!」
「だが心配ねぇ……。女湯はパープルが行ってるはずだぜ……」
「いたぞ!不審者!」
「おとなしくしろ!」
ガシッ!(駆け付けた警備員達に捕まるブルーとグリーン)
「勝手に牛乳売りの商売しやがって!警察に突き出してやる!!」
ズールズールと引きずられるブルーとグリーン。
[同日同時刻 新千歳空港温泉・女湯 マリアンナ・スカーレット]
(師匠、先に上がっちゃったなぁ……。まあいいか)
後から上がる弟子のマリア。
恐らくイリーナは大好きなリラクゼーションを受けに行ったのだろう。
今頃、そこでボディケアでも受けていると思われる。
(お年寄りだからしょうがないよね)
普段はR35の姿をしているが、実際は齢1000年の老魔女なのである。
弟子が若い魔女なら、師匠は老婆の法則だ。
魔法を使って姿を若返らせているとはいえ、それでも30代より下まで下げることは不可能だったようだ。
「ん?」
バスタオルで体を拭いて下着を着けていると、ロッカーの中に小瓶が入っているのに気づいた。
鍵は掛けていたのだが、置いたのがイリーナだと分かると、何ら不思議は無い。
何でもありの大魔道師なら、鍵を掛けていようが……ということだ。
その小瓶の下にはメモ書きで、何か書いてあった。
「……日本語で書きやがって、あの婆さん……!」
マリアは英語で文句を呟いた。
(後でユウタに訳してもらおう)
服を着て外に出ようとすると、
「あー、そこのかわいいお嬢ちゃん、美味しい牛乳はいかがかの?」
「?」
脱衣所の片隅に、牛乳売りの屋台があった。
「あー、プリーズ・ドリンク・ザ・ミルク。ディス・イズ・デリシャス」
牛乳売りの老婆はヘタな英語で話し掛けてきた。
「大丈夫です。日本語分かります」
マリアは魔法で、自分の話す言葉を日本語に切り替えた。
自分は英語を喋っているのに、聞いている側は日本語に聞こえるという不思議な魔法だ。
「おおっ、何じゃ!それを早く言っとくれ!日本ではな、風呂上りには必ず牛乳を飲むという習慣があるのじゃぞ?外人の娘さんもどうじゃ?」
「牛乳か。しかし、そこの自動販売機でも似たようなのが売ってるけど……」
「ギクッ!……い、いや、この牛乳はの、そんじょそこらのモノとは格が違うのぢゃ。1本200円もする高級品じゃぞい!」
「高っ!?……もしかして、観光客だと思って吹っ掛けてる?」
さすがはヨーロッパ人。
日本人観光客と違って、そう簡単に騙されない。
「そんなことは無いぞい。新聞も200円じゃからのぅ……」
「新聞?牛乳と、どう関係が?……とにかく、200円は高いわ。もっと負けて」
ズイっと値引きに掛かるマリア。
日本人観光客なら言い値でそのまま買ってしまうところだが……。
「う、うむ……では、180円に……」
「あそこの自販機では110円だが?せめて130円だね」
「が、外人さん、それではわらわが赤字ぢゃ。せめて150円にしてくれ。先生に申し訳立たぬでな……」
「先生?」
「な、何でもない……!」
「じゃあ、150円にしてあげるよ」
「ま、毎度ありー!冷たい今のうちに飲むのぢゃ!」
「はいはい」
マリアは言われた通り、牛乳を飲んでしまった。
瓶にはやはり鶴丸マークがあったのだが、
(JALと何かコラボした商品なのか?)
としか思わなかったし、
(難しい漢字が書いてあるけど、まあ日本製なんでしょう……)
としか思わなかった。
(それにしても不思議な味……。日本の牛乳って、こんな味なのかしら?)
飲んだ後、脱衣場から出るマリア。
それを見届けた牛乳売りの老婆は、
「成功ぢゃ!グリーンとブルーの役立たずの穀つぶし共はダサく捕まったようじゃが、やはりわらわがセンセーの御心に1番お応えできる唯一の……」
ガシッ!
「ん?」
「ちょっと、そこの紫のお婆さん?ちゃんと営業許可は取ってる?取ってないよね?ちょっと一緒に来てくれる?」
女子プロレスラーみたいな体躯のデカい女性警備員に掴まるパープル。
「うおおおっ!?な、何をする!?ワシゃ、センセーに唯一お応えできる最高幹部の……」
「はいはい。お話は向こうでしましょうね」
ズールズールと引きずられるパープルだった。
(じゃが、特製牛乳を飲ませることには成功したぞい。あとはセンセーの祈りに任せるのみ。ワシはあの逝ってしまった使用済み婆やでもなければ、捨て駒なんぞでもない……)