[5月11日12:00.東京都墨田区 敷島エージェンシー シンディ、井辺翔太、Lily、結月ゆかり]
(シンディの一人称です)
お昼になりました。
人間の皆さんは、お昼休みの時間ですね。
私達は充電の必要もありません。
午前中、ゆかり達を連れて児童養護施設への慰問に行っていた井辺プロデューサー達が帰って来る頃ですね。
井辺Pは今年の4月に大学を卒業して入社したばかりの新人プロデューサーで、初めて見るボーカロイド達に毎日が緊張の連続だったようです。
しかしその割には戦闘力があるのか、暴走して研究所を脱走しようとした鏡音リンを素手で取り押さえたとか……。
まあ、20代男性の平均身長も平均体重も超えているので、力はあるのでしょう。
「ただいま、戻りました」
おっと、早速プロデューサー達が帰ってきましたよ。
「お帰りなさい。2人も、お疲れさま」
「お疲れさまでーす!」
「お疲れさまです」
プロデューサーが新人ボーカロイド達の方を向いて言いました。
「今日はお疲れさまでした。明日に備えて、体を十分に休めてください」
「はーい」
「何か不具合などありましたら、私の所まで」
……プロデューサー、1ヶ月以上経ったのに、相変わらず表情が硬いですね。
学生の頃は、もっとバイタリティに溢れていたと聞いていたのに……。
それにしても……私は自分のハードディスクメモリーの中から、新人達のスケジュールを出しました。
ミク達と比べると、スッカスカのスケジュールです。
未夢に至っては、メモリーの用量が減っていないのですが。
私は事務所の奥へ引っ込んだ新人達を追いました。
「ええっ?PR動画ですか!?」
「そう。今日撮るの。聞いてるでしょ?」
ゆかりはトレードマークのパーカーのフードを被っていましたが、私の話を聞いてフードを取りました。
ピンク色の髪はルカに似ていますが、ルカがストレートなのに対し、ゆかりはツインテールにしています。
もっとも、ミクのツインテールと比べると、随分ボリュームは控えめですが。
「ゆ、結月ゆかりです。今年の3月、できたてのホヤホヤです」
「さっき、どんなお仕事をしてきたのか、教えてくださいな」
「は、はい。都内の児童養護施設への慰問です。親がいない、もしくは親と暮らせないコ達の為に一生懸命歌ってきました」
「持ち歌とかってあるの?」
「いえ、まだです。主にミク先輩やMEIKO先輩の持ち歌を借りたり、Lilyと一緒に歌ったりしました。わ、私も早くミク先輩のようになりたいです!」
「……Lilyです。ボーカロイド劇場から来ました。よろしくお願いします」
「相変わらず素っ気無いねぇ……。昔のルカみたいだよ」
「何がですか?」
「アイドルなんだから、もっと笑顔で」
「私はクール路線での売りなので」
「……慰問の仕事はどうでしたか?」
「1人でも私達の歌で笑顔になってくれたら嬉しいので、お役に立てて良かったです」
おっ、少し笑顔になりましたね。
「未夢は勘違いしちゃいましたけどね」
「シーッ!それは言わない!」
未夢は勘違いした。
マルチタイプの悪い癖で、すぐに分析とかスキャンとかしちゃうんです。
ミクちゃんのバックダンサーとしてステージデビューしたはいいものの、その集客数がボーカロイドライブの標準だと未夢は勘違いしたのですね。
あれはあくまで、トップアイドルとしてのミクちゃんの集客数であって、ボーカロイドだからすぐにお客さんが集まるわけではないんです。
当然彼女達はまだマイナーで、彼女達の初ユニットライブで、集客数が少なかった為に未夢が混乱して、ステージが終わった後、錯乱してしまったことがあって……。
そんなわけで、未夢は現在調整中なんですよ。
私的には、そろそろ解禁してあげてもいいような気がするんですが。
「はい、Lilyもアピールして」
「本当はもっと大きな事務所が希望なのですが、劇場時代に培ったノウハウを生かして、ボーカロイドが人間の芸能人に負けない所を見せたいと思います」
つ、強気の発言……さすがです。
私も前期型の時、こういう所があったなぁ……。
「え?私はプロデューサーですので結構ですが……」
ちょうどお昼のお弁当を食べている井辺Pを直撃です。
外に食べに行かず、戻りがてら、ついでにお弁当を買ってきていたようです。
自分の机で食べている所が、いかにも忙しいサラリーマンって感じですね。
「ダメよ。社長命令で、事務所の関係者全員の動画を撮るように言われてるんだから」
「はあ……。しかし今、昼食中ですので……」
「いいのいいの。社長からは自然体の姿を撮るように言われてるんだから。今日のお昼ご飯は何ですかー?」
「牛ステーキ弁当です」
「おおっ!豪華ですねー!」
「そうでしょうか?安い輸入牛のモモ肉を2枚乗せただけのシンプルなお弁当ですが……」
「いつもお昼はこういうものを?」
「まあ、午後の方が忙しいので、パワーを付ける為に、なるべく昼は肉料理を食べるようにしています」
「さすがですねー。あ、そうそう。ミクちゃんからで、給湯室に食後のデザートのクッキーが置いてあるそうですよ」
「ありがとうございます。後で頂きます」
「ミクちゃんはお菓子作りが趣味なのよね?」
「そのようです。昔は社長によく作ってあげていたらしいですが、社長も初音さん自身もお忙しくなったので」
「では、プロデューサーさんに今後の意気込みを聞いてみましょう」
「んぐっ……!意気込み……ですか?」
「はーい。私の目を見て、ガツンと言っちゃってくださーい!」
プロデューサーはペットボトルのお茶を飲んで、一息つきました。
「えー、井辺翔太と申します。入社してまだ日は浅く、手探りの状態ですが、いつか必ずこの事務所を業界トップの事務所にしたいと思います。ここのボーカロイドの皆さんはとても優秀なので、実現可能だと信じております。頑張ります」
「はい、ありがとうございました。……えーと、まだ撮っていないのは、ルカとリン・レンか。あと、KAITOと一海」
「一海さんもですか?」
「そうよ。関係者全員だって言ったでしょ」
「はあ……。KAITOはドラマの撮影が深夜に及ぶ予定ですが?」
「KAITOは直接撮影現場に行って撮ってくるわ。大丈夫。交渉なら私がするから」
「大丈夫でしょうか?」
「任せて。それより、リンとレンはいつ戻って来るの?」
「と、言いますと?」
「ほら、一海は夕方、整備から戻って来るし、ルカは夜、大阪から帰ってくるでしょ?リンとレンは?」
「……下の居住区で休んでると思います」
「……え?」
「午前中、確かにテレビの収録があったのですが、他の事務所のタレントに回されてしまいまして……」
「それ、他の事務所に仕事横取りされたってことじゃないのよ!何やってんの!!」
「す、スイマセン……」
本当に大丈夫なのかしら、この人……。
まだ撮影は終わってないので、次回に続きまーす。
(シンディの一人称です)
お昼になりました。
人間の皆さんは、お昼休みの時間ですね。
私達は充電の必要もありません。
午前中、ゆかり達を連れて児童養護施設への慰問に行っていた井辺プロデューサー達が帰って来る頃ですね。
井辺Pは今年の4月に大学を卒業して入社したばかりの新人プロデューサーで、初めて見るボーカロイド達に毎日が緊張の連続だったようです。
しかしその割には戦闘力があるのか、暴走して研究所を脱走しようとした鏡音リンを素手で取り押さえたとか……。
まあ、20代男性の平均身長も平均体重も超えているので、力はあるのでしょう。
「ただいま、戻りました」
おっと、早速プロデューサー達が帰ってきましたよ。
「お帰りなさい。2人も、お疲れさま」
「お疲れさまでーす!」
「お疲れさまです」
プロデューサーが新人ボーカロイド達の方を向いて言いました。
「今日はお疲れさまでした。明日に備えて、体を十分に休めてください」
「はーい」
「何か不具合などありましたら、私の所まで」
……プロデューサー、1ヶ月以上経ったのに、相変わらず表情が硬いですね。
学生の頃は、もっとバイタリティに溢れていたと聞いていたのに……。
それにしても……私は自分のハードディスクメモリーの中から、新人達のスケジュールを出しました。
ミク達と比べると、スッカスカのスケジュールです。
未夢に至っては、メモリーの用量が減っていないのですが。
私は事務所の奥へ引っ込んだ新人達を追いました。
「ええっ?PR動画ですか!?」
「そう。今日撮るの。聞いてるでしょ?」
ゆかりはトレードマークのパーカーのフードを被っていましたが、私の話を聞いてフードを取りました。
ピンク色の髪はルカに似ていますが、ルカがストレートなのに対し、ゆかりはツインテールにしています。
もっとも、ミクのツインテールと比べると、随分ボリュームは控えめですが。
「ゆ、結月ゆかりです。今年の3月、できたてのホヤホヤです」
「さっき、どんなお仕事をしてきたのか、教えてくださいな」
「は、はい。都内の児童養護施設への慰問です。親がいない、もしくは親と暮らせないコ達の為に一生懸命歌ってきました」
「持ち歌とかってあるの?」
「いえ、まだです。主にミク先輩やMEIKO先輩の持ち歌を借りたり、Lilyと一緒に歌ったりしました。わ、私も早くミク先輩のようになりたいです!」
「……Lilyです。ボーカロイド劇場から来ました。よろしくお願いします」
「相変わらず素っ気無いねぇ……。昔のルカみたいだよ」
「何がですか?」
「アイドルなんだから、もっと笑顔で」
「私はクール路線での売りなので」
「……慰問の仕事はどうでしたか?」
「1人でも私達の歌で笑顔になってくれたら嬉しいので、お役に立てて良かったです」
おっ、少し笑顔になりましたね。
「未夢は勘違いしちゃいましたけどね」
「シーッ!それは言わない!」
未夢は勘違いした。
マルチタイプの悪い癖で、すぐに分析とかスキャンとかしちゃうんです。
ミクちゃんのバックダンサーとしてステージデビューしたはいいものの、その集客数がボーカロイドライブの標準だと未夢は勘違いしたのですね。
あれはあくまで、トップアイドルとしてのミクちゃんの集客数であって、ボーカロイドだからすぐにお客さんが集まるわけではないんです。
当然彼女達はまだマイナーで、彼女達の初ユニットライブで、集客数が少なかった為に未夢が混乱して、ステージが終わった後、錯乱してしまったことがあって……。
そんなわけで、未夢は現在調整中なんですよ。
私的には、そろそろ解禁してあげてもいいような気がするんですが。
「はい、Lilyもアピールして」
「本当はもっと大きな事務所が希望なのですが、劇場時代に培ったノウハウを生かして、ボーカロイドが人間の芸能人に負けない所を見せたいと思います」
つ、強気の発言……さすがです。
私も前期型の時、こういう所があったなぁ……。
「え?私はプロデューサーですので結構ですが……」
ちょうどお昼のお弁当を食べている井辺Pを直撃です。
外に食べに行かず、戻りがてら、ついでにお弁当を買ってきていたようです。
自分の机で食べている所が、いかにも忙しいサラリーマンって感じですね。
「ダメよ。社長命令で、事務所の関係者全員の動画を撮るように言われてるんだから」
「はあ……。しかし今、昼食中ですので……」
「いいのいいの。社長からは自然体の姿を撮るように言われてるんだから。今日のお昼ご飯は何ですかー?」
「牛ステーキ弁当です」
「おおっ!豪華ですねー!」
「そうでしょうか?安い輸入牛のモモ肉を2枚乗せただけのシンプルなお弁当ですが……」
「いつもお昼はこういうものを?」
「まあ、午後の方が忙しいので、パワーを付ける為に、なるべく昼は肉料理を食べるようにしています」
「さすがですねー。あ、そうそう。ミクちゃんからで、給湯室に食後のデザートのクッキーが置いてあるそうですよ」
「ありがとうございます。後で頂きます」
「ミクちゃんはお菓子作りが趣味なのよね?」
「そのようです。昔は社長によく作ってあげていたらしいですが、社長も初音さん自身もお忙しくなったので」
「では、プロデューサーさんに今後の意気込みを聞いてみましょう」
「んぐっ……!意気込み……ですか?」
「はーい。私の目を見て、ガツンと言っちゃってくださーい!」
プロデューサーはペットボトルのお茶を飲んで、一息つきました。
「えー、井辺翔太と申します。入社してまだ日は浅く、手探りの状態ですが、いつか必ずこの事務所を業界トップの事務所にしたいと思います。ここのボーカロイドの皆さんはとても優秀なので、実現可能だと信じております。頑張ります」
「はい、ありがとうございました。……えーと、まだ撮っていないのは、ルカとリン・レンか。あと、KAITOと一海」
「一海さんもですか?」
「そうよ。関係者全員だって言ったでしょ」
「はあ……。KAITOはドラマの撮影が深夜に及ぶ予定ですが?」
「KAITOは直接撮影現場に行って撮ってくるわ。大丈夫。交渉なら私がするから」
「大丈夫でしょうか?」
「任せて。それより、リンとレンはいつ戻って来るの?」
「と、言いますと?」
「ほら、一海は夕方、整備から戻って来るし、ルカは夜、大阪から帰ってくるでしょ?リンとレンは?」
「……下の居住区で休んでると思います」
「……え?」
「午前中、確かにテレビの収録があったのですが、他の事務所のタレントに回されてしまいまして……」
「それ、他の事務所に仕事横取りされたってことじゃないのよ!何やってんの!!」
「す、スイマセン……」
本当に大丈夫なのかしら、この人……。
まだ撮影は終わってないので、次回に続きまーす。