[5月17日11:00.天候:晴 仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館前 シンディ]
{「シンディ!応答して!」}
シンディの頭の中に搭載されている通信機の向こうから、平賀奈津子の声が聞こえる。
夫である平賀太一とは別の大学で講師をしているが、今現在育休中の彼女は、夫の世紀の仕事の手伝いをしていた。
「ううッ……!くっ……!」
シンディの両手には、全金属型の人型警備ロボットの胴体が抱えられていた。
頭部は無い。
頭部が乗っていたはずの首からは千切れた配線などが剥き出しになっており、ショートして火花を飛ばしていた。
先ほどサボッていてシンディに叱責された警備ロボットの成れの果てである。
別に、シンディが何かしたわけではない。
「こちらシンディ!遠方から狙撃されました!現在、警備ロボット3PO型1機が全損!」
シンディが報告している間、また遠くから銃声が聞こえた。
それは記念館の窓に命中し、窓ガラスが粉々に割れた。
「館内の人物を狙っているようです。危険ですので、地下から出ないでください」
また撃って来る。
どうやら、シンディを狙っているとは思えなかった。
記念館の窓ガラスが次々と割られているので、館内の人間を狙っているのは明らかだ。
外にいる人間達は避難したが、警備ロボット達は怯まずに出て来る。
が、件のスナイパーは警備ロボットも狙っているらしく、今度はR2-D2によく似たロボットが撃たれた。
(セキュリティエリア外から撃って来ている!?)
シンディは改めて弾が飛んできた方向をスキャンした。
「ちくしょう!遠くてスキャンできない!」
弾を避けながらシンディは弾が飛んで来る方向に向かって進んだ。
「あんた達!被弾しないよう、中に隠れてな!」
シンディは生き残りの警備ロボット達に命令した。
こうしていると、かつて前期型だった頃、ドクター・ウィリーが開発したテロ・ロボット“バージョン・シリーズ”に命令していた時を思い出す。
「でも中のドクター達は死守するのよ!」
シンディの接近に気づいたか、今度はシンディに向かって撃って来る。
銃火器についてはもちろん、狙撃用のライフルだというのが分かった。
シンディの近くに被弾したので、シンディは着弾した弾を調べてみた。
「社長、見えますか?私が使用しているライフルと、弾は同じです」
シンディは自分の目に弾を映しながら言った。
シンディの目はそのまま遠隔監視カメラになっていて、オーナーたるアリスやユーザーたる敷島の端末で見ることができる。
{「銃弾については、通常のものを使用している。それだけでは特定に至らないな」}
通信機の向こうから聞こえてきたのは平賀の声。
東北工科大学のキャンパスは青葉区の山林地帯の中にあり、近未来科学の研究機関でありながら自然に囲まれた立地がうたわれている。
記念館もまたそんな森林地帯に囲まれていた。
「セキュリティエリアを越えました」
やはりスナイパーは、セキュリティエリアの外から撃っていたのだ。
記念館から直線距離で100メートルになろうかという場所にあったのは、大学校舎の5号館。
旧館に分類される古い建物で、屋上には時計台があり、その上からだと記念館が狙える。
シンディは日曜日で誰もいない5号館の中に入った。
まるで、旧華族の洋館を思わせる5号館は日曜日は誰もいない。
……はずなのだが!
「キサマ!!」
シンディは予め右手をショットガンに変形させていた。
中に入ると、目の前にID不確定の“バージョン4.0”がいた。
機先を制して、頭部とその付近に3発撃ち込む。
無論相手はロボットなので、実弾である。
いきなり撃たれたバージョン4.0は、頭部から火花を散らしてその場に倒れた。
「バージョン4.0です!IDナンバーは……読み取れません!」
{「いつの間に入り込みやがった!気をつけろ、シンディ!罠かもしれん!」}
「はい。すぐ、調査を開始します」
漆喰の壁に焦げ茶色の木目が映える手すりの階段を上り、2階へ上がる。
「キュルキュルキュルキュル……」
途中の廊下には、同じようにシンディの命令は聞かないバージョン4.0がいた。
近くにいるヤツはショットガンで、比較的遠方にいるヤツはライフルで狙撃した。
このシリーズも4.0くらいになると、遠くからでも銃を構えて発砲してくる。
構造上、ハンドガン程度の物しか搭載できないのだが、
「マグナムなんか持ちやがって!バージョンの分際で!」
多くが警察官の拳銃クラスの中、ある倒れた4.0の中にはパイソンを搭載している者もいた。
シンディはバージョン4.0を蹴散らして、時計台の上に向かった。
「……!」
時計台の上に出たが、そこには誰もいなかった。
既に、逃げられた後のようである。
だが、床の上には一発の銃弾が落ちていた。
「ライフルか……」
ここから記念館を見てみる。
「確かに、ここからなら狙えるわ……」
風に靡くシンディの束ねた金色の髪。
「こちらシンディ。スナイパーと思しき者は逃走したもよう。尚、5号館内には未確認のバージョン4.0が12機配置されてました」
{「分かった。こちらにも警察が到着した。そっちにも行くから、案内してくれ」}
通信機の向こうから敷島の声が聞こえる。
「了解しました」
パトカーのサイレンが聞こえるまで、シンディはスナイパーが向いていたであろう方向を見ていた。
(人間でもこの距離からは狙えるけど……)
その時、背後で機械の軋む音がした。
「!?」
直後、発砲音がする。
シンディが壊したはずのバージョン4.0だった。
シンディ目掛けて発砲したわけだが、ハンドガン程度の被弾では殆どダメージの無いシンディ。
左手で弾を弾くと、その左手を飛ばした。
チェーン付きのロケットパンチである。
それで殴り飛ばされた4.0は階下に落ちて行き、今度こそ動かなくなった。
(あいつら、本当にボッコボコにしないと自己修復してまた来るんだったっけ……)
シンディはチェーンを巻いて自分の左手を元に戻し、また館内に戻る。
「!?」
すると、さっきまで件のバージョン4.0がいた場所にある物が落ちていた。
「……!?」
それは1つの髪留め。
「あのバージョンが……?どこから取ってきたんだろう?」
警察が来る前に、シンディはそれを服のポケットに隠した。
{「シンディ!応答して!」}
シンディの頭の中に搭載されている通信機の向こうから、平賀奈津子の声が聞こえる。
夫である平賀太一とは別の大学で講師をしているが、今現在育休中の彼女は、夫の世紀の仕事の手伝いをしていた。
「ううッ……!くっ……!」
シンディの両手には、全金属型の人型警備ロボットの胴体が抱えられていた。
頭部は無い。
頭部が乗っていたはずの首からは千切れた配線などが剥き出しになっており、ショートして火花を飛ばしていた。
先ほどサボッていてシンディに叱責された警備ロボットの成れの果てである。
別に、シンディが何かしたわけではない。
「こちらシンディ!遠方から狙撃されました!現在、警備ロボット3PO型1機が全損!」
シンディが報告している間、また遠くから銃声が聞こえた。
それは記念館の窓に命中し、窓ガラスが粉々に割れた。
「館内の人物を狙っているようです。危険ですので、地下から出ないでください」
また撃って来る。
どうやら、シンディを狙っているとは思えなかった。
記念館の窓ガラスが次々と割られているので、館内の人間を狙っているのは明らかだ。
外にいる人間達は避難したが、警備ロボット達は怯まずに出て来る。
が、件のスナイパーは警備ロボットも狙っているらしく、今度はR2-D2によく似たロボットが撃たれた。
(セキュリティエリア外から撃って来ている!?)
シンディは改めて弾が飛んできた方向をスキャンした。
「ちくしょう!遠くてスキャンできない!」
弾を避けながらシンディは弾が飛んで来る方向に向かって進んだ。
「あんた達!被弾しないよう、中に隠れてな!」
シンディは生き残りの警備ロボット達に命令した。
こうしていると、かつて前期型だった頃、ドクター・ウィリーが開発したテロ・ロボット“バージョン・シリーズ”に命令していた時を思い出す。
「でも中のドクター達は死守するのよ!」
シンディの接近に気づいたか、今度はシンディに向かって撃って来る。
銃火器についてはもちろん、狙撃用のライフルだというのが分かった。
シンディの近くに被弾したので、シンディは着弾した弾を調べてみた。
「社長、見えますか?私が使用しているライフルと、弾は同じです」
シンディは自分の目に弾を映しながら言った。
シンディの目はそのまま遠隔監視カメラになっていて、オーナーたるアリスやユーザーたる敷島の端末で見ることができる。
{「銃弾については、通常のものを使用している。それだけでは特定に至らないな」}
通信機の向こうから聞こえてきたのは平賀の声。
東北工科大学のキャンパスは青葉区の山林地帯の中にあり、近未来科学の研究機関でありながら自然に囲まれた立地がうたわれている。
記念館もまたそんな森林地帯に囲まれていた。
「セキュリティエリアを越えました」
やはりスナイパーは、セキュリティエリアの外から撃っていたのだ。
記念館から直線距離で100メートルになろうかという場所にあったのは、大学校舎の5号館。
旧館に分類される古い建物で、屋上には時計台があり、その上からだと記念館が狙える。
シンディは日曜日で誰もいない5号館の中に入った。
まるで、旧華族の洋館を思わせる5号館は日曜日は誰もいない。
……はずなのだが!
「キサマ!!」
シンディは予め右手をショットガンに変形させていた。
中に入ると、目の前にID不確定の“バージョン4.0”がいた。
機先を制して、頭部とその付近に3発撃ち込む。
無論相手はロボットなので、実弾である。
いきなり撃たれたバージョン4.0は、頭部から火花を散らしてその場に倒れた。
「バージョン4.0です!IDナンバーは……読み取れません!」
{「いつの間に入り込みやがった!気をつけろ、シンディ!罠かもしれん!」}
「はい。すぐ、調査を開始します」
漆喰の壁に焦げ茶色の木目が映える手すりの階段を上り、2階へ上がる。
「キュルキュルキュルキュル……」
途中の廊下には、同じようにシンディの命令は聞かないバージョン4.0がいた。
近くにいるヤツはショットガンで、比較的遠方にいるヤツはライフルで狙撃した。
このシリーズも4.0くらいになると、遠くからでも銃を構えて発砲してくる。
構造上、ハンドガン程度の物しか搭載できないのだが、
「マグナムなんか持ちやがって!バージョンの分際で!」
多くが警察官の拳銃クラスの中、ある倒れた4.0の中にはパイソンを搭載している者もいた。
シンディはバージョン4.0を蹴散らして、時計台の上に向かった。
「……!」
時計台の上に出たが、そこには誰もいなかった。
既に、逃げられた後のようである。
だが、床の上には一発の銃弾が落ちていた。
「ライフルか……」
ここから記念館を見てみる。
「確かに、ここからなら狙えるわ……」
風に靡くシンディの束ねた金色の髪。
「こちらシンディ。スナイパーと思しき者は逃走したもよう。尚、5号館内には未確認のバージョン4.0が12機配置されてました」
{「分かった。こちらにも警察が到着した。そっちにも行くから、案内してくれ」}
通信機の向こうから敷島の声が聞こえる。
「了解しました」
パトカーのサイレンが聞こえるまで、シンディはスナイパーが向いていたであろう方向を見ていた。
(人間でもこの距離からは狙えるけど……)
その時、背後で機械の軋む音がした。
「!?」
直後、発砲音がする。
シンディが壊したはずのバージョン4.0だった。
シンディ目掛けて発砲したわけだが、ハンドガン程度の被弾では殆どダメージの無いシンディ。
左手で弾を弾くと、その左手を飛ばした。
チェーン付きのロケットパンチである。
それで殴り飛ばされた4.0は階下に落ちて行き、今度こそ動かなくなった。
(あいつら、本当にボッコボコにしないと自己修復してまた来るんだったっけ……)
シンディはチェーンを巻いて自分の左手を元に戻し、また館内に戻る。
「!?」
すると、さっきまで件のバージョン4.0がいた場所にある物が落ちていた。
「……!?」
それは1つの髪留め。
「あのバージョンが……?どこから取ってきたんだろう?」
警察が来る前に、シンディはそれを服のポケットに隠した。