[5月27日16:00.天候:晴 DC埼玉研究所・本館2F小会議室 井辺翔太、敷島孝夫、シンディ]
謎の狙撃テロの際、意識を失って医務室に運ばれた井辺。
幸いどこもケガは無く、数時間後に意識を取り戻した後、シンディに案内されて小会議室に入った。
テロの一報を聞いて駆け付けた敷島がいるとのことだった。
「失礼します」
「おう、井辺君!無事だったか!」
敷島が中にいて、井辺の姿を見つけると椅子から立ち上がった。
「ええ。御心配をおかけしました」
「ケガは無いんだったな?」
「はい。幸い、防弾ガラスが守ってくれまして……」
「そうかそうか。じゃあ俺、身元引受人だから」
「身元引受人?」
すると、別の入口から制服の警察官とスーツを着た刑事が入ってきた。
「テロリストを目撃した数少ない人物として、話が聞きたいってさ」
敷島は肩を竦めた。
すると、私服刑事が口を開いた。
名前を名乗った後で、
「すいません。研究所の監視カメラは内外に多く設置されているようなんですが、そのどれにも映っておりません。こちらの所員さんの話によりますと、あなたがテロリストを目撃した後で意識を無くされたと伺い、どのような人物だったかをお聞きしたいと思いまして」
と、聞いて来た。
「ほんの一瞬だけだったのでうろ覚えですが……」
「それでも構いません」
「それは……。!」
一瞬、井辺の脳裏によぎったフラッシュバック。
「背の高い……女性で……うっ!!」
「どうしました!?」
井辺は口元を押さえ、室内の隅にある洗面台に走って嘔吐した。
「井辺君!どうした!?」
「トラウマ……?」
刑事がふとそんなことを口走った。
「刑事さん、申し訳無いけど、意識が戻ってすぐの聴取はちょっと……」
敷島は眉を潜めて刑事に言った。
「何しろ、防弾ガラスが無かったら、死んでいたかもしれない状況だったんですから」
「社長は死にそうにないけどね」
シンディは井辺を介抱しながらニヤッと笑った。
「俺だったら全部話すさ。俺と井辺君を一緒にするな」
敷島は変な顔をしてシンディに言い返した。
「敷島社長が、あのウィリアム・フォレスト事件の英雄であることは承知しています。ただ、一歩間違えれば警視庁のご厄介になる側だったとも伺っておりますが?」
「いやー、さすがに都バスでバージョン達の包囲網に突撃したのはやり過ぎたかな?」
バージョン達が都心のオフィス街に突如として現れ、街は大混乱に陥った。
ドクター・ウィリーのアジトは知っていたものの、バージョン・シリーズの軍勢がそこを固めていた。
そんな時、敷島は乗員・乗客ともに避難した後で無人の放置された都営バスをたまたま見つけたのだった。
大型自動車免許(一種)は持っている。
それに乗り込み、アクセルベタ踏みでバージョン達の包囲網に特攻し、隙ができた所へエミリーなどが突入していった。
「よく考えたら、近くにタンクローリーも放置されていたから、それに火ィ点けて突っ込ませた方が良かったかもしれない」
「それも困ります」
「てか、ドクター・アリスの方が知ってるんじゃないの?」
と、シンディ。
「ダメだ。あいつ、地下に工具取りに行ってやがって、そもそも銃撃すら受けてねーよ」
「5.0は?あいつらのメモリーには残ってないの?」
「いや、ダメだ。全滅しやがったから」
「あの、役立たずどもがっ!……でもまあ、私も肝心な時に役に立てなかったから、あんまりエラそうに言えないか」
「シンディさんの場合は、しょうがないです。明らかに敵は、それを狙ってのことですから」
「今度からアタシの整備中の時は、エミリー姉さんを警備に引っ張って来た方が良さそうね」
「そう簡単に言うけど、平賀先生が都合良く貸してくれるとは思えんぞ?」
「だからぁ〜、そんな時に出番なのが社長じゃない?」
「都合良く俺を出すな!」
[同日17:00.埼玉県さいたま市西区 敷島孝夫、井辺翔太、アリス・シキシマ、シンディ]
研究所を出た1台のステーション・ワゴン。
敷島が運転し、助手席にアリスが座っている。
アリスの後ろにシンディ、敷島の後ろに井辺といった感じだ。
「取りあえず、アリスを家まで送ろう」
「プロフェッサー平賀からメイドロボットをもらえて良かったわー」
「いや、あれは借り物だぞ」
アリスの言葉に呆れる敷島。
家に残してきた息子のトニーは、メイドロボットで子守り用途の二海が見ている。
因みに、家の警備はバージョン5.0アリス・オリジナルバージョンのマリオとルイージが当たっている。
研究所の5.0は量産型なので、そんなに戦闘力も強くないが、マリオとルイージはアメリカでのテロ対策を思案したもので、当然戦闘力も強い。
それでもマルチタイプの足元にも及ばないと自覚してか、やはりその2体もエミリーやシンディの前では小さくなっている。
敷島はハンドルを握りながら、ルームミラー越しに井辺を見て言った。
「井辺君、具合は大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。御心配をお掛けして、申し訳ありませんでした」
「いやいや。絶対に無理はしないように」
「はい」
「井辺君は俺と違って素人なんだから、そりゃあ、目の前に銃弾飛んできたら気絶もするし、恐怖でトラウマにもなるだろうよ。最近の警察ってな、その辺デリカシーか無いっていうかさ……。あ、そうそう。この車も、防弾ガラスになってるから安心してくれていい」
「はい」
「まあ、エンジンやタンクに被弾したら、諦めてくれ」
「ええっ?」
「なーんてな!」
「出た!笑えないジャパニーズ・ジョーク!」
大笑いする敷島夫妻。
シンディが苦笑しながら井辺に言った。
「この夫婦は多分、それでも生き残ると思うわ。だから、あなたはアタシが守ってあげる。だから心配しないで」
「は、はい!」
頷きながら井辺は、今のシンディのセリフをどこかで聞いた気がした。
(何だろう……?)
「どうしたの?やっぱり具合悪い?」
「い、いえ……。私は……あの女性と会ったことがあるかもしれません……」
「What?」
「それは……昼間の狙撃者のことか?」
「はい。他人の空似かもしれませんが……」
「まあ、テロリストの知り合いなんて、そうそういないだろう。詳しく思い出したら、教えてくれよ。ただ、状況的に俺は人間じゃない気がするけどな」
「銃弾は汎用みたいだけど、私も人間ワザじゃない感じはするね」
井辺の記憶が事件の謎を解く鍵となるか。
謎の狙撃テロの際、意識を失って医務室に運ばれた井辺。
幸いどこもケガは無く、数時間後に意識を取り戻した後、シンディに案内されて小会議室に入った。
テロの一報を聞いて駆け付けた敷島がいるとのことだった。
「失礼します」
「おう、井辺君!無事だったか!」
敷島が中にいて、井辺の姿を見つけると椅子から立ち上がった。
「ええ。御心配をおかけしました」
「ケガは無いんだったな?」
「はい。幸い、防弾ガラスが守ってくれまして……」
「そうかそうか。じゃあ俺、身元引受人だから」
「身元引受人?」
すると、別の入口から制服の警察官とスーツを着た刑事が入ってきた。
「テロリストを目撃した数少ない人物として、話が聞きたいってさ」
敷島は肩を竦めた。
すると、私服刑事が口を開いた。
名前を名乗った後で、
「すいません。研究所の監視カメラは内外に多く設置されているようなんですが、そのどれにも映っておりません。こちらの所員さんの話によりますと、あなたがテロリストを目撃した後で意識を無くされたと伺い、どのような人物だったかをお聞きしたいと思いまして」
と、聞いて来た。
「ほんの一瞬だけだったのでうろ覚えですが……」
「それでも構いません」
「それは……。!」
一瞬、井辺の脳裏によぎったフラッシュバック。
「背の高い……女性で……うっ!!」
「どうしました!?」
井辺は口元を押さえ、室内の隅にある洗面台に走って嘔吐した。
「井辺君!どうした!?」
「トラウマ……?」
刑事がふとそんなことを口走った。
「刑事さん、申し訳無いけど、意識が戻ってすぐの聴取はちょっと……」
敷島は眉を潜めて刑事に言った。
「何しろ、防弾ガラスが無かったら、死んでいたかもしれない状況だったんですから」
「社長は死にそうにないけどね」
シンディは井辺を介抱しながらニヤッと笑った。
「俺だったら全部話すさ。俺と井辺君を一緒にするな」
敷島は変な顔をしてシンディに言い返した。
「敷島社長が、あのウィリアム・フォレスト事件の英雄であることは承知しています。ただ、一歩間違えれば警視庁のご厄介になる側だったとも伺っておりますが?」
「いやー、さすがに都バスでバージョン達の包囲網に突撃したのはやり過ぎたかな?」
バージョン達が都心のオフィス街に突如として現れ、街は大混乱に陥った。
ドクター・ウィリーのアジトは知っていたものの、バージョン・シリーズの軍勢がそこを固めていた。
そんな時、敷島は乗員・乗客ともに避難した後で無人の放置された都営バスをたまたま見つけたのだった。
大型自動車免許(一種)は持っている。
それに乗り込み、アクセルベタ踏みでバージョン達の包囲網に特攻し、隙ができた所へエミリーなどが突入していった。
「よく考えたら、近くにタンクローリーも放置されていたから、それに火ィ点けて突っ込ませた方が良かったかもしれない」
「それも困ります」
「てか、ドクター・アリスの方が知ってるんじゃないの?」
と、シンディ。
「ダメだ。あいつ、地下に工具取りに行ってやがって、そもそも銃撃すら受けてねーよ」
「5.0は?あいつらのメモリーには残ってないの?」
「いや、ダメだ。全滅しやがったから」
「あの、役立たずどもがっ!……でもまあ、私も肝心な時に役に立てなかったから、あんまりエラそうに言えないか」
「シンディさんの場合は、しょうがないです。明らかに敵は、それを狙ってのことですから」
「今度からアタシの整備中の時は、エミリー姉さんを警備に引っ張って来た方が良さそうね」
「そう簡単に言うけど、平賀先生が都合良く貸してくれるとは思えんぞ?」
「だからぁ〜、そんな時に出番なのが社長じゃない?」
「都合良く俺を出すな!」
[同日17:00.埼玉県さいたま市西区 敷島孝夫、井辺翔太、アリス・シキシマ、シンディ]
研究所を出た1台のステーション・ワゴン。
敷島が運転し、助手席にアリスが座っている。
アリスの後ろにシンディ、敷島の後ろに井辺といった感じだ。
「取りあえず、アリスを家まで送ろう」
「プロフェッサー平賀からメイドロボットをもらえて良かったわー」
「いや、あれは借り物だぞ」
アリスの言葉に呆れる敷島。
家に残してきた息子のトニーは、メイドロボットで子守り用途の二海が見ている。
因みに、家の警備はバージョン5.0アリス・オリジナルバージョンのマリオとルイージが当たっている。
研究所の5.0は量産型なので、そんなに戦闘力も強くないが、マリオとルイージはアメリカでのテロ対策を思案したもので、当然戦闘力も強い。
それでもマルチタイプの足元にも及ばないと自覚してか、やはりその2体もエミリーやシンディの前では小さくなっている。
敷島はハンドルを握りながら、ルームミラー越しに井辺を見て言った。
「井辺君、具合は大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。御心配をお掛けして、申し訳ありませんでした」
「いやいや。絶対に無理はしないように」
「はい」
「井辺君は俺と違って素人なんだから、そりゃあ、目の前に銃弾飛んできたら気絶もするし、恐怖でトラウマにもなるだろうよ。最近の警察ってな、その辺デリカシーか無いっていうかさ……。あ、そうそう。この車も、防弾ガラスになってるから安心してくれていい」
「はい」
「まあ、エンジンやタンクに被弾したら、諦めてくれ」
「ええっ?」
「なーんてな!」
「出た!笑えないジャパニーズ・ジョーク!」
大笑いする敷島夫妻。
シンディが苦笑しながら井辺に言った。
「この夫婦は多分、それでも生き残ると思うわ。だから、あなたはアタシが守ってあげる。だから心配しないで」
「は、はい!」
頷きながら井辺は、今のシンディのセリフをどこかで聞いた気がした。
(何だろう……?)
「どうしたの?やっぱり具合悪い?」
「い、いえ……。私は……あの女性と会ったことがあるかもしれません……」
「What?」
「それは……昼間の狙撃者のことか?」
「はい。他人の空似かもしれませんが……」
「まあ、テロリストの知り合いなんて、そうそういないだろう。詳しく思い出したら、教えてくれよ。ただ、状況的に俺は人間じゃない気がするけどな」
「銃弾は汎用みたいだけど、私も人間ワザじゃない感じはするね」
井辺の記憶が事件の謎を解く鍵となるか。