妻が私の部屋へバタバタと駆け込んできた。指先を切ったとかわめいている。血がぽたりぽたりと床に落ちている。玉葱をスライサーでスライスしていて、ついでに右手薬指の先を削いでしまったのである。傷口から血が吹き出てくるのでなにはともあれたこ紐で第一関節を堅く縛り、水道水で指先を洗ったら傷口が見えた。深くはないけれど真皮は径5ミリぐらい剥がれている。取りあえず二枚のバンドエイドで傷口をふさいだ。
このスライサーは京セラ製でセラミック刃の切れ味が実によい。スライスの厚みを05ミリから1.3ミリ、2ミリ、3ミリと4段階に調節できる優れものである。最初は注意して使っていたが、慣れてきたところでちょっと油断したらしい。右手で玉葱を押さえて、左から右へ動かした時に、下がり過ぎていた薬指を刃がかすめたのであろう。
一晩様子を見たがたこ紐をほどきバンドエイドを取り替えようとするとまた血が流れ出した。仕方がないので病院に行ったところ、一針縫ったあげく大仰に包帯をまかれてしまったので、手袋が使えない。今日で三日目、水仕事を私がみな引き受けている。妻はご満悦である。