木村正治のデイリーコラム

木村正治(きむらまさはる)が世の中の様々な事項について思う事や感じた事を徒然に綴っています。

芥川龍之介の短編小説「西郷隆盛」に見る示唆

2024-07-03 11:53:30 | 随想
ふと立ち寄った郊外の書店で芥川龍之介の
小説や随想が目に止まりパラパラとページを
めくると西郷隆盛という作品がありました。

短編小説で西郷隆盛について述べているのが
小説という形を取りながらも優れた洞察だと
感じ思わず購入しました。
早速、蜘蛛の糸と共に西郷隆盛を読みました。

芥川龍之介の描写は優れていますね。
要するに芥川龍之介は作品の中で西郷隆盛は
西南戦争で死んではいなかったという説を
展開しています。
歴史とは国家機密であり私達一般国民が知らされる
歴史はフィクションである場合が少なくありません
が、それを芥川龍之介は作品にして上手く描写
しています。

明治維新史を研究している本間という大学生が
京都から急行列車に乗り東へ向かう中で米原を
過ぎて岐阜県の境に差し掛かる頃に老紳士と
出会い、会話になり、歴史の踏み込んだ内容の
やり取りを交わしながら史料と事実との違いを
示唆されて最後には唸らされるという内容。

芥川龍之介は作品の中で
・源義経とチンギス・ハンは同一人物
・豊臣秀吉はご落胤だった
・西郷隆盛は西南戦争で死んではいない
という説が当時の日本に存在した事を述べています。

ちなみに私は芥川龍之介が挙げたこの3つの説は
いずれも事実の可能性が高いと認識しています。

明治維新史を研究している本間という大学生に
急行列車内で出会った老紳士が西郷隆盛は生きて
いると伝えます。
しかし信じようとしない本間という大学生に対して
「こういう事実に比べたら、君の史料の如きは
何ですか。すべてが一片の故紙に過ぎなくなって
しまうでしょう。西郷隆盛は城山では死ななかった。
その証拠には、今この上り急行列車の1等室に
乗り合わせている。この位確かな事実はあります
まい。それとも、やはり君は生きている人間より
紙に書いた文字の方を信頼しますか。」
と投げかけます。

他の箇所でも老紳士による切れの良い会話が
展開されますが、芥川龍之介が描いて示唆した
内容は実は歴史の中に随所に見られます。
事実は小説より奇なりという事はよくあります。

芥川龍之介の作品以外でも上野公園での西郷隆盛銅像
の除幕式に参列していた西郷隆盛の妻が除幕された
西郷隆盛の銅像を見て
「主人はこげんな人じゃなか!」
と叫んだ逸話はあまりにも有名ですよね。
明治政府による式典中に主人はこのような姿では
ないと叫んだ西郷隆盛の妻をたしなめる西郷隆盛の弟
の西郷従道でしたが、それでも西郷隆盛の妻は
「主人はこげんな人じゃなか!」
と何度も叫んでいます。

これはどういうことでしょうか。

つまり後世の私達日本人が認識している西郷隆盛
の顔は実は実物とは全く似ていない、または別人
のように刷り込まれている可能性が高いという事
です。
明治時代には多くの人物の顔写真が残っていますが
西郷隆盛だけは本人の写真が残っていません。
私達が認識している西郷隆盛の顔は写真ではなく
イタリア人画家が顔の上半分を西郷従道、下半分
を従兄弟の大山巌の顔を描写して混ぜた肖像画
なのです。

そんな馬鹿な、と思うでしょう。
事実なのです。
様々な説がありますが、西郷隆盛の本当の顔を
知らせてはいけない理由があり、それは明治政府
の国家機密だったという事です。

歴史は思っている以上に真相が違っている場合が
あり、それを紐解いていく事も醍醐味です。

芥川龍之介の作品も読んでみてはいかがでしょうか。
今の世にも通じる示唆を感じます。


コメント (1)
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